佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 呪われた森 6

<<   作成日時 : 2016/08/10 00:00   >>

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「先生、大変です!」
「どうした。」
青い顔で駆けてきた弟子を見て、八武の顔は真顔に戻った。
「酋長の娘が、急変・・」
「すぐ行こう。」
意識朦朧とした彼女を置いて、八武は翻して集落へ戻った。

「ふむ、高熱と・・・嘔吐か。」
酋長の娘を抱きかかえて、八武は額に氷嚢を当てた。
「竜太郎くん、検査結果は?」
「はい、それが・・・特に異常は・・・。」
簡易キットで全てがわかるわけではない。
原因が不明なら、対処も不明。
(ここから先の試みは無限だ・・・とても間に合わん・・・。)
かつて味わった無力感が、再び襲ってくる。
軍医として、平常なら治せる患者を安楽死させることがあった。
災害派遣の折、無数の患者を前に残酷な選択を迫られたことがあった。
「しかしまあ、助けるがね。」
「っ・・・ん・・・」
少女の未成熟な肢体を、八武は撫で回し、つつき回す。
その意味がわからない酋長は、おずおずと質問した。
「あの・・・お医者様、何をなさって・・・?」
「人体には経脈というものがある。手首には心を落ち着ける点があり、足の裏は様々な臓器と連動している。人体の全ては脳髄と連動しており、体の様々な部分が複雑に絡み合っている。」
このとき八武は、紛れもなく純粋な医者だった。
「脳髄だけではない。人体とは複雑な機構だ。それゆえ、常にどこかが不具合を起こしている。それを気功によって整えてやれば、人は健康になる。医者は病を治す存在ではなく、人が治るのを助ける存在だ。」
「先生、バイタルが安定してきました!」
「よろしい。実によろしい。・・・はっ!」
カウンターショックのように、八武は心臓へ剄を打ち込んだ。
「ああんっ!」
酋長の娘は、初めて味わう感覚に喘ぎ声を発し、そのまま目を閉じて安らかな寝息を立て始めた。
(・・・が、これで完治したわけでもないな。)
酋長たちの感謝の言葉も、八武の耳には届いていない。
治療が完了するまで、彼の耳は感謝を拒否する。
「気は進まないが、やはり佐久間を頼るしかないか。」
1ヶ月が経っても戻らないときは、妻から佐久間へ連絡が行くようになっている。
気功治療を続ければ、1ヶ月は安定させられるはずだ。
(その間に私は、美女たちと蜜月を過ごすことにしようかねぃ。うっしっし・・・。)
瞬く間に不純な藪医者に成り果てた八武は、赤い舌で円を作った。



つづく

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八武死根也シリーズ小説目録
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2016/08/15 00:06

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