佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第一話

<<   作成日時 : 2016/08/18 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は、人には言えない事情がある。

それは人によっては、大したことがない事柄だろう。
あるいは逆に、病的に否定されることかもしれない。



◆ ◆ ◆



「デュエルしてぇ。くっそマジ決闘してぇ。」

伸びてきた前髪を弄りながら、黒須数多(くろす・あまた)は呟いた。
取り立てて特徴の無い顔を焦燥に彩り、壁にもたれて、腰と膝をカタカタ鳴らす。

「だ、だったら私が相手しよっか?」

おずおずと話しかけてきたのは、ロングヘアの少女。
ぱっちりとした目で、数多を見つめている。

「おお、ひじきじゃねえか。久しぶり。」
「久しぶりって、創立記念日挟んで3日よ。」

“ひじき”というのは、彼女の本名ではなく、好物だ。
実家が海産物を扱っていて、幼い頃から食べている。

本名は、手塩聖夜(てしお・のえる)という。
“聖”の字は“ひじり”とも読めるので、それと掛けた渾名であった。

「しっかし、お前もすっかり正統派美少女になっちまったよな。」
「な、何よ急に?」

しみじみと見つめられて、ノエルは目を見開いた。

「ちっちゃい頃は、俺を引っ張って泥だらけで走り回ってて。白状するけどさ、お前のこと男だと思ってたんだぜ。」
「・・・知ってるわよ。」
「それがコーコー生の今や、日本人形っつーか、大和撫子? ほんと女の子。あ、知ってた? そっか。」
「誰かさんに男みたいって言われたから、女らしくなろうと、これでも努力したんだからね?」
「・・・ふーん。」

数多は憮然とした表情で呟きながら、頭を掻いた。

「男みたいってのは、悪い意味じゃねーと思うけどな。まあいい、デュエルだデュエル。ウッキウキしてくるね!」
「行くわよ。」

2人はデュエルディスクを展開して、適度な距離を取った。


「「デュエル!」」


黒須数多:LP8000
手塩聖夜:LP8000



「俺の先攻だな。閃光のドロー!」

平凡な顔立ちだが、デュエルするときの雰囲気は際立っている。
それは彼が持っている“ある才能”も関係していた。

「まずは《強欲で謙虚な壺》を発動。強欲だけど謙虚って、まるで俺みたい。《アマゾネスの剣士》を手札に。」

「言ってなさい。私は手札から《パペット・キング》を特殊召喚よ。」

「うほっ!」


パペット・キング レベル7 地属性・戦士族
攻撃力2800 守備力2600
(1):相手がドロー以外の方法でデッキからモンスターを手札に加えた時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードがこのカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した場合、
次の自分ターンのエンドフェイズに発動する。このカードを破壊する。



「いやいや、この程度で驚いてどうする俺。デュアルモンスター《マジック・スライム》召喚!」


マジック・スライム レベル3 水属性・水族・デュアル
攻撃力700 守備力1200
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードが戦闘を行う事によって受けるコントローラーへの戦闘ダメージは相手が受ける。



「そしてカードを1枚伏せて、ターンエンドオブザワールド!」

「・・・・・・。その恥ずかしいエンド宣言、なんとかならない?」

「なに? カッコイイじゃねえか! 手を繋ごー♪輪になろおー♪」

「・・・私のターン、ドロー。」

顔を赤くしながら、ノエルはカードを引いた。
手札から出したのは、巨大なマシーン悪魔。


G・コザッキー レベル4 闇属性・悪魔族
攻撃力2500 守備力2400
フィールド上に「コザッキー」が表側表示で存在していない場合、このカードを破壊する。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊された場合、
その時のコントローラーにこのカードの元々の攻撃力分のダメージを与える。



「ひじきのデュエリスト能力、いつ見ても羨ましいぜ。」

いつものように、数多は顎を撫でながら言う。
しかし今の彼は、どこか様子が違っていた。



黒須数多:LP8000、手札3
場:マジック・スライム(攻700)
場:伏せ×2

手塩聖夜:LP8000、手札4
場:パペット・キング(攻2800)、G・コザッキー(攻2500)
場:




「数多の《マジック・スライム》は、再度召喚されてないわ。《パペット・キング》で攻撃よ!」

「おおっと、永続罠《スピリットバリア》発動だぜ!」


スピリットバリア (永続罠)
自分フィールド上にモンスターが存在する限り、
このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。



「・・・《スピリットバリア》? そんなもの一時しのぎにしか―――」


しかし次の瞬間、ぱっちりとした瞳は大きく見開かれることになる。

青いスライムは破壊されることなく、飛沫をあげていた。



「ジャンジャジャ〜ン! お待たせしました俺の時代! デュエリスト能力だあ〜!」



両手を大きく広げて、少年は17歳の体躯を目一杯に主張した。
少女は驚き半分、喜び半分で、思わず聞き返してしまう。

「あ、数多もデュエリスト能力に目覚めたの!?」

「そうよ! 予想してなかったか?」

「・・・なるほど、モンスターが戦闘破壊されない能力ってとこね。」

「ま、そんなとこかナー。」

「カードを1枚伏せて、ターンエンドよ。」

「ターンエンドオブアヌビスって言わねえのか?」

「言うわけないわよね!?」



黒須数多:LP8000、手札3
場:マジック・スライム(攻700)
場:スピリットバリア(永続罠)、伏せ×1

手塩聖夜:LP8000、手札3
場:パペット・キング(攻2800)、G・コザッキー(攻2500)
場:伏せ×1




「そんなわけで俺のターンツイスター!」

「《ツイスター》を発動するの?」

「いいや、《アマゾネスの剣士》召喚だ。」

空気を切る、きりっとした音が響く。
剣を持った褐色の女がフィールドに現れた。

「そして《二重召喚》を使って、召喚権を増やすぜー。《マジック・スライム》本領発揮!」

「来るのね。」

「まだまだ! バトルフェイズに罠カード《アルケミー・サイクル》! これで俺のモンスターの攻撃力はゼロだ!」


アルケミー・サイクル (罠カード)
発動ターンのエンドフェイズ時まで、自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスター全ての元々の攻撃力を0にする。
この効果によって元々の攻撃力が0になっているモンスターが戦闘によって破壊され
墓地へ送られる度に、自分のデッキからカードを1枚ドローする。



「・・・《アルケミー・サイクル》?」


《マジック・スライム》 (攻700→0)
《アマゾネスの剣士》 (攻1500→0)



「行くぜ、《パペット・キング》に攻撃!」



「《聖なるバリア−ミラーフォース−》が、数多の全モンスターを打ち砕くわ!」



少女は輝かしい笑顔で、罠に嵌まった少年を指差した。
自分の戦略が思い通りにいくのは、デュエリストの喜びである。

「うそ〜ん!!」

頭を抱えて悲鳴をあげる数多の前で、スライムは飛散し、剣士は光になって消えた。


《マジック・スライム》 (破壊)
《アマゾネスの剣士》 (破壊)



「うああ・・・スライムが悲惨に飛散、剣士が戦死・・・。カードを1枚伏せて、ターンエドフェニックス・・・。」

「苦しいわね。ダジャレも、状況も。」



黒須数多:LP8000、手札0
場:
場:スピリットバリア(永続罠)、伏せ×2

手塩聖夜:LP8000、手札3
場:パペット・キング(攻2800)、G・コザッキー(攻2500)
場:




「私のターンよ、これで終わらせてあげるわ。ドロー!」

「終わってたまるか、たまり醤油!」

「いいえ、終わりよ。私が終わりと言ったら終わりなの。昔から決まってるでしょ?」

ざわついた空気が、少女の髪を浮かせた。
ぱっちりとした瞳が手札に注目し、あたかも静電気が発したような錯覚を覚える。

そして《スピリットバリア》がパリンと割れた。

「・・・っ、《トラップ・イーター》!?」

「ご名答。」

少女はクスッと笑ってカードを見せた。


トラップ・イーター レベル4 闇属性・悪魔族・チューナー
攻撃力1900 守備力1600
このカードは通常召喚できない。
相手フィールド上に表側表示で存在する罠カード1枚を
墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。



「単なる除去ではアドバンテージにならない。アドバンテージを取ってこその除去よ。」

「ひいい、チューナー来たあ!」



「スクラップにしてあげる・・・シンクロ召喚!」



スクラップ・ドラゴン レベル8 地属性・ドラゴン族・シンクロ
攻撃力2800 守備力2000 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを
1枚ずつ選択して発動する事ができる。選択したカードを破壊する。
このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、
シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する
「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。




手塩聖夜のエースモンスター、トタン屋根のような翼を持つ、禍々しい機械竜が降臨した。


「効果発動。《スクラップ・ドラゴン》自身と、相手の伏せカードを1枚、破壊するわ。」

「ひじきの方はデュエリスト能力で破壊されない・・・だが、俺も《スケープ・ゴート》! 戦闘破壊不可能の、4匹の壁が立ちはだかるぜ!」

「無駄なことを・・・《パペット・キング》をリリースし、《軍神ガープ》の召喚。全てのモンスターは攻撃表示になるわ。」

「げげっ! だが、いいのか? 俺のフィールドには、まだ伏せカードが残ってるんだぜ?」

「そうね。この状況じゃ使いものにならない《ドッペル・ゲイナー》が残ってるわね。」

「何でバレてんのぉ〜!?」


ドッペル・ゲイナー (永続罠)
相手フィールド上に存在するモンスターの効果によってダメージを受けた時、
受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。



「物心ついたときからデュエルしてるのよ。数多のやることなんて、お見通し。」

ぱっちりとした瞳でウインクしながら、少女は舌を出す。

「・・・ってのが半分。カマかけたのが、もう半分よ。」

「あー、きったねー!」

「この程度の会話フェイズは汚いうちに入らないわ。バトルフェイズに速攻魔法《デーモンとの駆け引き》発動。」


突如として出現した暴虐の屍竜は、痩せぎすの体躯から虐殺の吐息を放った。

哀れな羊たちは、為す術もなく焼き尽くされ、同時に数多のライフも奪い去った。


黒須数多:LP8000→4500→1000→0



「何そのオーバーキル!?」

数多は叫んで、がっくりと床に手をついた。
意気込んで挑んだ勝負だけに、負けたときの落差が重力となって襲ってくる。

「だぁ〜、カッコわりぃ・・・。覚醒しといて負けるとか、なっさけねぇ〜。」

軽口で和らげようとするが、それでも泣きそうになる。
これまでも決して勝てないわけではなかったが、ここぞというときに勝てないのは、悔しいというレベルではない。

「そんなこと・・」


「まったくだ。情けないな。」


ノエルの声を遮って、男の声が突き刺してきた。
精悍な長身の男が、呆れた顔で立っている。

「ネクロ・・・。」

数多は起き上がって、手の埃を払った。
そこへ彼は、親しげに肩を組んで、囁くように問う。

「何で使わなかった、数多?」
「どういう意味だ。」
「お前には“アレ”があるだろ。真の力を封印して戦おうとするから、引きが鈍るんだ。なあ?」

彼はノエルを見て言った。
ノエルはムッとしているものの、否定もしない。

「お前の能力レベルは、見たとこ三ツ星。同じ三ツ星の手塩とは、互角に戦えるはずなんだ。そうだろ?」
「離せよ。」

数多は身をよじって、腕から逃れた。

「やれやれ。あまり僕を失望させるなよ、黒須数多・・・。お前の中の悪魔を、いつか見せてくれよな。」

尊大な態度たっぷりに、彼は制服のポケットに手を突っ込んで歩き去っていった。





   第一話   了

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決闘学園・壊   目録
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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/08/28 00:27

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内 容 ニックネーム/日時
安定して面白いながらもなんだかんだ慣れてきたところで、放送2年目の4クール目相当(77話〜89話)あたりでさらに面白さがハネるぷり。「語尾」という概念にここまで真摯に向き合い、昇華させたアニメは前代未聞だと思うぷり。「頭おかしい」に「慣れ」て「普通に感動」するのではなく、「頭おかしい=感動」と一体化していくぷり。自分でも何言ってるか分からないけどだいたいそんな感じぷり。ハードル上げすぎた感はあるけど、自分の素直な気持ちを吐露するとわりとそんな感じぷり。プリパラならそんな上げすぎたハードルにも余裕でついてきてくれると信じているぷり。ちなみに、わりとクリティカルなネタバレを含むので、サブタイトルは次回予告を観て始めて知る状態が望ましいぷり。サブタイトル一覧とかには注意ぷり。まさに今リアルタイムで放送中の最新話も超面白かったので、早く追いついてくれることを全力でわくわく期待しているぷり。Arc-Vと並んで毎週の楽しみが1つ増えるぷり。生きる活力になるぷり。

というわけで、ぷりの表記はひらがなが正しいぷり。そっちの方がかわいいぷり。



ビバ・ノウレッジ!!!
豆戦士
2016/08/18 00:21
「カバー二度見。」の意味が普通にわからんかった豆戦士です。
豆戦士
2016/08/18 00:29
>豆戦士さん

そうか、慣れてきたのではなかったぷりッ!
我が“精神”が“プリパラ”に“馴染んで”きたというのかッ!
フハハハハ、馴染む、馴染むぞ! ぷりが馴染むぷり!

そんなわけで更に楽しみになってきました。記事には書いてないけど、男の娘とかも結構驚いていたり。フルフルとゼパル?
天使と悪魔もなかなか楽しい・・・特に悪魔が。設定を練り込んで書き連ねるあたりとか、いろいろ親近感が。
サブタイ一覧は、やべえ、見てしまった・・・けど、覚えきれてないから多分セーフ。今度から注意するぷり!
77話まで、あと25話。月末には“本番”まで辿り着けそうです。
語尾に秘められた謎とは・・・!?


「スクライド」は、荒れ果てた世界で男たちが戦う物語だと聞いていたので、第1話が学園コメディだったので「これホントにスクライドか?」「カバーかけ間違えたんじゃ?」と、思わず二度見してしまいました。
まあT・Tが出てきた頃には、すっかり染まっていましたが。

思いついたアイデアは、頭おかしい順に採用すべし!
これが反逆っぷり!
アッキー
2016/08/18 01:21

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クロス・アバター   第一話 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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