佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第二話・後編

<<   作成日時 : 2016/08/20 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は、人には言えない事情がある。

それは人によっては、大したことがない事柄だろう。
あるいは逆に、病的に否定されることかもしれない。



◆ ◆ ◆



黒須数多:LP7700、手札5
場:
場:

白木原ダリア:LP7000、手札2
場:ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻3000)、メタモルポット(攻700)、おジャマ・ナイト(守2500)、おジャマ・キング(守3000)、The tripping MERCURY(攻2000)
場:D・D・R(装備魔法)




隅田川に、雨が降る。


音も無く降り注ぐ雨粒は、やがて誰の耳にも存在を主張し始める。


ごうごうと荒れ狂う雷雨は、地上へ水を叩きつけ、河川の嵩を増す。


緩やかだった流れは濁流となり、激しく走る牙となって、しもべを葬り去った。




《ホワイト・ローズ・ドラゴン》 (破壊)
《メタモルポット》 (破壊)
《おジャマ・ナイト》 (破壊)
《おジャマ・キング》 (破壊)
《The tripping MERCURY》 (破壊)




「・・・・・・《激流葬》? ・・・どうして?」

しおれた花弁は露に濡れ、疑問の形に首を捻っていた。


激流葬 (罠カード)
モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールドのモンスターを全て破壊する。



「・・・《ホワイト・ローズ・ドラゴン》は、俺の場のカードも破壊していた。」

濁流で濡れた制服は、重く、そして誇らしい。
数多は手の泥を払い、墓地からカードを取り出して提示した。


クロス・カウンター・トラップ (罠・魔法カード)
このカードが相手の効果によって墓地に送られたターンに
1枚まで手札から罠カードを発動できる。



「わたくしの布陣・・・鉄壁の布陣・・・非は無かった・・・・・・だが・・・・・・ま・・・・・・」

がっくりと膝をついたダリアは、そのまま床に手を突いて、うなだれた。



黒須数多:LP7700、手札4
場:
場:

白木原ダリア:LP7000、手札2
場:
場:




「・・・・・・だ、まだ・・・・・・」

「―――っ」

あわや土下座に近い姿勢から、まばゆい光が放たれた。
ダリアは勢いよく起きると、濁流で汚れた制服の泥を払った。

「まだまだ、ですわ。この目から未来は消えていないですわ。」

彼女は光り輝いていた。
もはや払うまでもなく、泥が飛んでいく。

「速攻魔法《エクシーズ・ダブル・バック》ですわ!」


エクシーズ・ダブル・バック (速攻魔法)
自分フィールド上のエクシーズモンスターが破壊されたターン、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。
自分の墓地から、そのターンに破壊されたエクシーズモンスター1体と、
そのモンスターの攻撃力以下のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。



「黄泉還りなさいませ! 《ホワイト・ローズ・ドラゴン》! 《The tripping MERCURY》!」

「・・・っ、水星の攻撃力の低さが、こんな形で活かされるとは! ダリア・・・お前のデュエリストセンスはっ!」

数多は正直、マーキュリーを舐めていた。
しかし認識を改めざるを得ない。

「うう、だが俺も! 手札の《ドッペル・ゲイナー》をコストに、《カオスハンター》特殊召喚!」


カオスハンター レベル7 闇属性・悪魔族
攻撃力2500 守備力1600
(1):相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、
このカード以外の手札を1枚捨てて発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手はカードを除外できない。



「ほほほ! ほほほ! わたくしは既に、墓地の《おジャマ・ナイト》を除外して、《クリスタル・ローズ》復活させていましたわ!」

「なにっ、俺が《カオスハンター》を出すことを事前に察知していたのか!」


クリスタル・ローズ レベル2 光属性・岩石族
攻撃力500 守備力500
「クリスタル・ローズ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
手札・デッキから「ジェムナイト」モンスターまたは「幻奏」モンスター1体を墓地へ送る。
エンドフェイズまで、このカードは墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。
(2):このカードが墓地に存在する場合、
自分の墓地から融合モンスター1体を除外して発動できる。
このカードを守備表示で特殊召喚する。




黒須数多:LP7700、手札2
場:カオスハンター(攻2500)
場:

白木原ダリア:LP7000、手札1
場:ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻2400)、The tripping MERCURY(攻2000)、クリスタル・ローズ(攻500)
場:




「カードを1枚伏せて、ターンエンドですわ! 安心なさいませ!」

《カオスハンター》を出したことで、このターンでの敗北は免れた。
しかし状況は決して良くはない。

数多は、濁流に濡れた制服が重かった。

「俺のターン、ドロー。」

ダジャレを言う余裕も無く、数多はカードを引く。

「・・・《マジック・スライム》召喚。《二重召喚》を発動し、再度召喚する。」

もしも伏せカードがミラーフォースであれば、攻撃を仕掛けた途端に全滅する。

数多は恐かった。

結婚することが、ではない。
負けることでもない。

(くそ・・・黙れ・・・)

エクストラデッキから、悪魔の手招きが見える。
“あいつ”が呼んでいる。

「バトルだ! 《カオスハンター》で《クリスタル・ローズ》を攻撃!」

「ほほほ! その未来も読み筋ですわ! 《クリスタル・ローズ》をリリースし、《光霊術−「聖」》発動ですわ!」

「ぐげっ・・・」


光霊術−「聖」 (罠カード)
自分フィールド上の光属性モンスター1体をリリースし、
ゲームから除外されているモンスター1体を選択して発動できる。
相手は手札から罠カード1枚を見せてこのカードの効果を無効にできる。
見せなかった場合、選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。



(くそっ、《ドッペル・ゲイナー》を捨てるんじゃなかった! ミス・・・センスの鈍化・・・!)

攻撃が、かわされる。
代わりに、翼を折り畳んだ鶴が舞い降りた。

「《聖鳥クレイン》を特殊召喚したので、カードを1枚引かさせていただきますわ。ドロー!」

「ならばマーキュリーを攻撃だ!」


《The tripping MERCURY》 (破壊)
白木原ダリア:LP7000→6500



「更に、《マジック・スライム》で《ホワイト・ローズ・ドラゴン》を攻撃! 俺のモンスターは戦闘で破壊されず、1700の戦闘ダメージをスライムが反射するぜ!」


白木原ダリア:LP6500→4800



「痛くも痒くも・・・・・・ありませんわ! それで打ち止めですの!?」

「強がりはよせ、ダリア。ターンエンドオブザワールド!」



黒須数多:LP7700、手札1
場:カオスハンター(攻2500)、マジック・スライム(攻700)
場:

白木原ダリア:LP4800、手札1
場:ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻2400)、聖鳥クレイン(攻1600)
場:




「強がり・・・ほほほ、既にわたくしの手札には必勝のカードが来ていますわ、更にドロー!」

混沌の渦がフィールドを包み始める。
しかしダリアのモンスターたちは、巨大な脚に隠れたように影響を受けない。

「必殺の、《カオス・エンド》ですわ!」


カオス・エンド (魔法カード)
自分のカードが7枚以上ゲームから除外されている場合に発動する事ができる。
フィールド上に存在する全てのモンスターカードを破壊する。



《カオスハンター》 (破壊)
《マジック・スライム》 (破壊)



「ほほほほ、カオスを狩る者が、カオスに巻き込まれてしまうなど、形無しですわ! 片腹大爆笑ですわ!」



黒須数多:LP7700、手札1
場:
場:

白木原ダリア:LP4800、手札1
場:ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻2400)、聖鳥クレイン(攻1600)
場:




「ま・・・まずっ・・・・・・」

口に入った泥よりも、今の状況がまずい。

「ほほほほ、墓地の《おジャマ・キング》を除外して、《クリスタル・ローズ》再び復活ですわ! そして《ジェムナイト・ルマリン》を墓地へ送り、同名カードとして扱いますわ!」

「ジェムナイト・・・お前、融合も使うのか?」

「ローズという名前だけで、クリスタルを入れていると思っていたのかしら? 伊達や酔狂ではないですわ!」

そして手札は花弁から宝石となる。

「ほほほ、わーたくしは、《吸光融合》発動ですわ!」


吸光融合 (魔法カード)
「吸光融合」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、
自分は「ジェムナイト」モンスターしか特殊召喚できない。
(1):デッキから「ジェムナイト」カード1枚を手札に加える。
その後、以下の効果を適用できる。
●自分の手札・フィールドから、「ジェムナイト」融合モンスターカードによって
決められた融合素材モンスターを除外し、
その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。



「おいでなさい、《ジェムナイト・パーズ》!」

トパーズの名を持つ雷の戦士が、マントを翻して現れる。


ジェムナイト・パーズ レベル6 地属性・雷族・融合
攻撃力1800 守備力1800 「ジェムナイト・ルマリン」+「ジェムナイト」モンスター
このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚できる。
(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。



「わたくしは3体のモンスターで総攻撃ですわ!」

「うっ・・・ぐあっ・・・っ・・・・・・」


黒須数多:LP7700→6100→4300→2500→100



「ターンエンドですわ! 未来へ向かって足掻いてみなさいませ黒須数多さぁん!?」



黒須数多:LP100、手札1
場:
場:

白木原ダリア:LP4800、手札0
場:ホワイト・ローズ・ドラゴン(攻2400)、聖鳥クレイン(攻1600)、ジェムナイト・パーズ(攻1800)
場:




「黙れ・・・」

「あらあら、言葉遣いが荒っぽくなっていますわよ? 未来の旦那様には相応しくないですわね。」

しかし数多が睨んでいたのは、自らのエクストラデッキだった。
もっとも、今の手札では出すことが出来ないモンスターだ。

今の手札では。

「・・・・・・っ」

次に引くカードによっては、出せてしまうかもしれない。
数多は、“あいつ”に頼りたくはなかった。

しかし、“あいつ”を出すことが可能なデッキを組んでいる時点で、どこかで頼っているのかもしれなかった。


「ドロー・・・」


引いたカードは、レベル5の雷族モンスター。

(・・・・・・っ、引いちまった・・・)

“あいつ”を出す為の、キーカード。

(はっ・・・しかも、おあつらえ向きに、この状況・・・ダリアのライフを丁度ゼロに・・・過不足なく、きっちり仕留められるじゃねえか・・・・・・)

がっくりと頭を垂れた数多は、デッキに手を置いた。


すなわち、サレンダー。


「・・・・・・黒須さん?」
「俺の負けだ。結婚でも何でもする。」

半ば泣き声で、数多は言った。

「ふざけないでくださいませ。譲られた勝利を受け取るほど、誇りを捨ててはいませんわよ。」

言葉ほどの怒りは、ダリアからは発せられていない。
白い薔薇は棘を引っ込め、しおらしくなる。


「やはり“アレ”を出してはくれませんのね。」


「―――っ!?」

ダリアの言葉に、数多は目を見開いた。

「教えて欲しいのですわ。それほど頑なに“アレ”を出さない理由を。勝てる勝負を投げることが、決闘の輪を外れていることは自覚していますわよね?」
「あれは、“あいつ”は・・・」

苦い声で、数多は目を伏せる。

「・・・あれは俺が生み出してしまったカードだ。」
「よくあることですわ。わたくしの《ホワイト・ローズ・ドラゴン》と同じですわ。」
「違う。」

数多は小さな声で、しかし強く否定した。

「あのカードは強すぎる。性能はもちろん、出しやすさが違う。一般に流通しているレベルじゃねえんだ。」

デュエルモンスターズには、様々なカードが存在する。
強くて出しにくいモンスターも、弱くて出しやすいモンスターも、多く存在する。
しかし、数多の持つそれは、強くて出しやすい。バランスの壊れたモンスター。

「ドラマではさ、よく初見のカードで逆転する場面があるよな。」
「そうですわね。」
「それ、傍から見てる分には違和感ねえが、もしあれが自分だったらって思うと、違って見えるんだ。」
「・・・・・・。」

搾り出すような声で、数多は言う。

「追い詰められたとき、オリジナルカード使って勝っても嬉しくねえよ。」

ともすれば暴言に聞こえるそれは、強いカードを持った者ゆえの悩みだった。
ダリアは、「贅沢な悩みだ」と非難することなく、フッと笑って肩を竦めた。

「そういう考え方もありますわね。」

しかしダリアは、あらためて花弁を散らして、こうも言った。

「ですが黒須さん、例えば・・・大事な人の命が懸かった、絶対に負けられない戦いでも、同じことが言えますの?」

それは予言にも聞こえる言葉だった。
彼女はデュエルディスクを折り畳んで、教室を去っていった。


「・・・わたくしの命が懸かっているとき、貴方はどちらの選択を行うのでしょうね?」

颯爽とした足運びが、少しだけ不安げに揺れた。





   第二話   了

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2016/08/28 00:27

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