佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第三話

<<   作成日時 : 2016/08/21 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は、人には言えない事情がある。

それは人によっては、大したことがない事柄だろう。
あるいは逆に、病的に否定されることかもしれない。



◆ ◆ ◆



「ねえ、数多。」

黒い髪が視界の側を流れた。
自然な女の匂いは、ダリアの香水とは違う。

「ひじき、どーした?」

不安そうな顔の手塩ノエルに、数多は頬杖を外して姿勢を正した。

「その・・・白木原さんと結婚するの?」
「何だ、そのことか。しねえよ。」
「そ、そう。」
「そりゃまあ、ダリアと結婚すれば良いことずくめだろうけどさ、あいつに悪いよ。俺はダリアを愛せない。友達としちゃ、いい奴なんだけどさ。」
「そ、そうなんだ。」

ノエルは不安を和らげて、小声で「良かった」と漏らした。
数多はノエルの安堵に気付かなかったが、ノエルも数多の寂しそうな表情を見逃していた。

「それにまあ、結婚するとしたら婿養子だろうし。」
「婿養子は嫌なの? 数多って、そういうの拘るタイプだったっけ。」
「いや、禁書的な意味でアレだからよ。」
「きんしょ?」
「あー、通じねえか。」

同じ施設で育った仲ではあるが、今ではデュエル以外の話題が噛み合わない。
ちょっとしたことなのだが、積もり積もれば寂しさになる。

(ま、ひじきに限ったことじゃねえがな。)

他人と違うことを喜べるのは、他人と同じ部分が多いからだと、数多は思う。
共通部分の方が多くを占めていなければ、差異の希少価値は無い。

自分の感覚が人と違っているとき、数多は常に、ちくりとした痛みを心に抱えていた。
突き刺さった棘は、抜けることはない。



- - - - - -



「おっはよー、黒須!」

ショートヘアの元気な声が教室に響き渡った。
数多と水平な目線で、少女は手を振る。

「おはよ、園花。今日も元気だな。」
「そりゃもう、あたしの取り得ですから。」

そう言って長身の少女は、ノエルに挑戦的な視線を送る。
ノエルも唇を結んで、睨み返す。

天秤のように首を傾ける少女は、笑氏園花(えみし・そのか)。
数多、ノエルとは、中学時代からの付き合いだ。

「笑氏さん、私とデュエルしない?」
「いいよ。負けないから。」

「・・・何か、ケンカ腰?」

目の前で火花を散らす少女たちに、数多は首をかしげていた。
思えば中学時代から、何かと衝突していたが、取っ組み合いとかではないので数多も仲裁できない。
どうしてデュエリストがデュエルすることを、止めることが出来ようか。

(ま、ケンカするほど仲が良いってことか。女同士だし、色々あらぁな。)

彼の見ている前で、少女たちは互いに距離を取った。


「「デュエル!」」


手塩聖夜:LP8000
笑氏園花:LP8000



「あたしの先攻、線香花火! ドロー!」

「だから面白くないわ、それ。」

「うっさい。あたしは《古代の機械騎士》を召喚。この子はデュアルモンスターだから、まだ効果を使えないけど。」

兵士よりも装甲が厚い。
それが“騎士”。

「そんでもって2枚の永続魔法。《前線基地》と、《機甲部隊の最前線》よ。」


前線基地 (永続魔法)
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に
手札からレベル4以下のユニオンモンスター1体を特殊召喚する事ができる。


機甲部隊の最前線 (永続魔法)
機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、
そのモンスターより攻撃力の低い、
同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。



「いえーい、出だしは上々! 戦いの天秤は、あたしに傾いている!」

永続魔法を発動して、園花は両手でピースサインを作ってみせた。

「そうかしら?」

「そうよ。何しろフィールド魔法《ユニオン格納庫》まであるんだから。発動!」


ユニオン格納庫 (フィールド魔法)
「ユニオン格納庫」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、
デッキから機械族・光属性のユニオンモンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):1ターンに1度、自分フィールドに機械族・光属性のユニオンモンスターが
召喚・特殊召喚された場合、そのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターに装備可能で、カード名が異なる機械族・光属性の
ユニオンモンスター1体をデッキから選び、そのモンスターに装備する。
この効果で装備したユニオンモンスターは、このターン特殊召喚できない。



「この効果で、あたしはデッキから《A−アサルト・コア》を手札に加えるわ。」

「それなら私は、手札から《パペット・キング》特殊召喚よ。」

「わお!」

突如として眼前に出現した、チェック模様の王。
園花は思わず仰け反った。

「・・・って、いやいや。この程度で驚かないってー。《A−アサルト・コア》を特殊召喚。ユニオンの基地は、いつでも出撃準備オーケーってね?」


A−アサルト・コア レベル4 光属性・機械族・ユニオン
攻撃力1900 守備力200
???



「そして格納庫の効果で、デッキから《B−バスター・ドレイク》をユニット! カードを1枚伏せてターンエンド!」

先攻1ターン目から、フィールドに出したカードは7枚。
アクティブにして後先を考えない、いつもの園花だった。



手塩聖夜:LP8000、手札4
場:パペット・キング(攻2800)
場:

笑氏園花:LP8000、手札1
場:古代の機械騎士(攻1800)、A−アサルト・コア(攻1900)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)、B−バスター・ドレイク(装備)、伏せ×1




「相変わらず、馬鹿のひとつ覚えみたいに全力全開ね。少しは様子見というものを覚えないの?」

黒髪が尊大に揺れる。
鋭い眼光が、伏せカードさえも見抜こうとしている。

「あたし不器用だからさあ。下手に手を抜いて負けるなんて、バッカみたいでしょ?」

ショートヘアが上から言い返す。
小首が天秤のように傾く。

「そう、だったら教えてあげるわ。笑氏ごときが全力を出したところで、私の様子見にも及ばないってね!」

ぱっちりとした目を、ひときわ大きく見開いて、ノエルはカードを引いた。


「私は《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を特殊召喚するわ。」

機械の騎士と、機械の蠍の背後に、炎の巨人が出現する。
溶岩に塗れた腕が2体を握り潰し、園花のフィールドに降臨した。


「何すんのよう!?」

「なにって、除去よ。」

せっかくのモンスターを一掃されて激昂する園花だったが、ノエルは意に介さない。
しかし園花も、《B−バスター・ドレイク》の効果を使って、デッキから《C−クラッシュ・ワイバーン》を手に入れた。


B−バスター・ドレイク レベル4 光属性・機械族・ユニオン
攻撃力1500 守備力1800
???
(3):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキからユニオンモンスター1体を手札に加える。



「予定通りね。2体目の《パペット・キング》特殊召喚よ。」



手塩聖夜:LP8000、手札3
場:パペット・キング(攻2800)、パペット・キング(攻2800)
場:

笑氏園花:LP8000、手札2
場:溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム(守2500)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)、伏せ×1




「バトル、マジェスティック・チェッカーよ! ラヴァ・ゴーレムを葬って!」

「くっ・・・」


《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》 (破壊)



「もう1体の《パペット・キング》でダイレクトアタックよ!」

「っちゃあ・・・」


笑氏園花:LP8000→5200



「カードを1枚伏せて、ターンエンドよ。」

黒髪を挟んで、2体の王。
対するショートヘアは、しもべを従えていない。

「痛くも痒くも・・・・・・ある、けど負けない! ドロー! 《古代の機械兵士》を召喚、そして《激流葬》!」

伏せられていたカードが開き、豪雨が濁流を呼んだ。
フィールドに君臨していた双王は、無表情のまま流され、消えていった。

《パペット・キング》 (破壊)
《パペット・キング》 (破壊)


「何するのよ!」

「さっきのお返しよ。こっから倍返し・・・ううん、3倍で返してやるんだから。」

無事なままの《古代の機械兵士》は、彼女のデュエリスト能力を示していた。
ショートヘアは揺れて、止まらない。

「カードを1枚伏せて、《前線基地》の効果で手札から《C−クラッシュ・ワイバーン》特殊召喚。格納庫の効果で、デッキから《B−バスター・ドレイク》装備!」



手塩聖夜:LP8000、手札2
場:
場:伏せ×1

笑氏園花:LP5200、手札0
場:古代の機械兵士(攻1300)、C−クラッシュ・ワイバーン(攻1200)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)、B−バスター・ドレイク(装備)、伏せ×1




「手塩、あんたの身を守るのは、その伏せカード1枚のみ・・・。だけど、それを除去できる手段があるとしたら?」

「この感じ・・・来るのね。」

「行くわよ、墓地のAとB、フィールドのCを除外して合体! 英語の始めは《ABC−ドラゴン・バスター》!!


軽快な音声と共に、3体のマシーンが分解、合体していく。

派手な色彩の戦車がフィールドに走り込む。


「Bの効果で手札に加えたCを手札から捨てて、その伏せカードを除外する!」


ABC−ドラゴン・バスター レベル8 光属性・機械族・融合
攻撃力3000 守備力2800
「A−アサルト・コア」+「B−バスター・ドレイク」+「C−クラッシュ・ワイバーン」
自分のフィールド・墓地の上記カードを除外した場合のみ、
エクストラデッキから特殊召喚できる。(「融合」は必要としない。)
(1):1ターンに1度、手札を1枚捨て、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):相手ターンにこのカードをリリースし、除外されている自分の機械族・光属性の
ユニオンモンスター3種類を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。



「残念ね、見えてるわ。チェーン発動《強欲な瓶》よ。」


手塩聖夜:手札2→3



「“残念”・・・? 何を言ってるのかな、これで手塩のフィールドはがら空きだってのに! 《古代の機械兵士》、《ABC−ドラゴン・バスター》、行っちゃえ!」


手塩聖夜:LP8000→6700→3700



「ちゃあ、倍返しにもならなかったか。」

「やってくれたわね。」

得意気に揺れるショートヘアを、黒髪が目を剥く。



手塩聖夜:LP3700、手札3
場:
場:

笑氏園花:LP5200、手札0
場:古代の機械兵士(攻1300)、ABC−ドラゴン・バスター(攻3000)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)、伏せ×1




「だけど、その進撃もこれまでよ・・・ドロー!」


突如として目の前に、禍々しい悪魔が椅子に座っていた。


戦慄の凶皇−ジェネシス・デーモン レベル8 闇属性・悪魔族
攻撃力3000 守備力2000
このカードはリリースなしで召喚できる。
この方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になり、
エンドフェイズ時に破壊される。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分は悪魔族以外のモンスターを特殊召喚できない。
また、1ターンに1度、自分の手札・墓地の
「デーモン」と名のついたカード1枚をゲームから除外して発動できる。
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。



「これは・・・」

呟いたのは、数多だった。
人がデュエルしているときは沈黙を尊ぶ彼だが、この“勝負どころ”には思わず声が出てしまう。

(どっちだ?)
(どっちなの?)

思考の天秤がグラグラ揺れてる。確かな答えなど、どこにも無い。
本人たちは与り知らぬが、園花と心の声がシンクロしていた。

「手札の《デーモンとの駆け引き》を除外して、《ABC−ドラゴン・バスター》を除外するわ!」

「・・・っ、分離して! ドラゴン・バスター!」

がちゃまかしい音を立てて、カラフル戦車が分解していく。

「攻撃・・・守備・・・どっち・・・?」

ショートヘアは迷いに揺れていた。
その間にも分解は進んでいく。

思考の天秤が軋む。



手塩聖夜:LP3700、手札2
場:戦慄の凶皇−ジェネシス・デーモン(攻1500)
場:

笑氏園花:LP5200、手札0
場:古代の機械兵士(攻1300)、A−アサルト・コア(守200)、B−バスター・ドレイク(守1800)、C−クラッシュ・ワイバーン(守2000)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)、伏せ×1




「・・・3体とも守備表示よ!」

迷いは吹っ切れた。羽のように気分が軽い。
ショートヘアの下で、虹色の瞳が攻撃的に潤む。

(そうだ、俺でもそうする。ひじきの手札には間違いなく2枚目の《デーモンとの駆け引き》がある。そうでなければ手札コストなどで消費しない。・・・だが、そう見せかける為のブラフか?)

数多は園花を見た。
彼女も読みきれてはいないようだ。

そしてノエルは迷いなく手札からカードを出す。

「逃がさないわ。《アドバンスドロー》よ。」


アドバンスドロー (魔法カード)
自分フィールド上に表側表示で存在する
レベル8以上のモンスター1体をリリースして発動できる。
デッキからカードを2枚ドローする。



(これで《デーモンとの駆け引き》の発動条件を満たした・・・。)

数多は、ノエルとは長い付き合いだ。
彼女の目に勝利の確信が灯っているとき、それが外れたことはない。

ぱっちりと勝利が瞼を開く。

「速攻魔法《デーモンとの駆け引き》で、《バーサーク・デッド・ドラゴン》よ!」

「・・・っ、やっぱりね・・・だけど、《激流葬》!」

悪魔を贄に出現した屍竜は、すぐさま押し流されていった。

(・・・《激流葬》のオンパレードだな。)

泥水を被った顔を拭くと、視界にはノエル、園花、そして園花のモンスターたち。


・・・と。



手塩聖夜:LP3700、手札1
場:バーサーク・デッド・ドラゴン(攻3500)
場:

笑氏園花:LP5200、手札0
場:古代の機械兵士(攻1300)、A−アサルト・コア(守200)、B−バスター・ドレイク(守1800)、C−クラッシュ・ワイバーン(守2000)
場:ユニオン格納庫(フィールド魔法)、前線基地(永続魔法)、機甲部隊の最前線(永続魔法)




「3枚目の《デーモンとの駆け引き》を引いていたわ。」

まるで濁流に耐性を持っているかのようだった。
屍竜は、“DEAD”・・・既に死んでいる。だから“死なない”。

「これで終わりよ、《H−ヒートハート》で貫通効果を持たせて、バトル・・・・・・ジェノサイド・カプリッチオ。」


笑氏園花:LP5200→1400→0



天秤は傾き、地に落ちた。


「・・・あたしの、負けね。勝ったら、今日こそはって思ってたけど・・・・・・」

ノエルに負けるのは初めてではないはずだが、さっきまでの元気を園花を失っていた。
いつもなら、デュエルに負けても、さばさばしているはずだ。数多は訝しがった。

「だと思った。だから最高の力で叩き潰したのよ。」

黒髪が独占欲で揺れている。
数多は話についていけない。

「・・・どういう意味だ?」

するとノエルの香りが肩にかかった。



「好きよ。」



ノエルの唇が数多に触れるのと、園花が教室を飛び出していったのは、ほとんど同時だった。





   第三話   了

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2016/08/28 00:27

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