佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS クロス・アバター   第四話・前編

<<   作成日時 : 2016/08/24 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



俺は、人には言えない事情がある。

それは人によっては、大したことがない事柄だろう。
あるいは逆に、病的に否定されることかもしれない。



◆ ◆ ◆



「俺は・・・どうすればいい・・・?」

自室で数多は寝台に腰掛けて、頭を抱えていた。
まだ17歳の少年は、単純な答えを出せずにいる。

単純でもあっても、簡単ではない。
何が正解なのかわかっていたとしても、それを実行に移せるかどうかは別の話だ。


『数多が好き。ずっと好きだった。数多に女の子として見て欲しくて、男の子の格好をやめたの。』

『髪を伸ばして、料理も覚えたし、編み物だって。数多のお嫁さんになる為に、頑張ってきたの。』


友情の輪は破れてしまった。脳内でノエルの切実な想いがリフレインする。
いじらしい彼女の切実さに、申し訳ない気持ちが湧き起こってくる。

「これが“逆”だったら、どうしてたかな。考えても仕方ねえか。」

そう言いながら、考えずにはいられない。
もしも自分が――

「・・・っと。」

コールを聞いて、数多は携帯電話を取った。

《あたしよ、黒須。》
「園花?」
《ねえ、デュエルしない?》

彼女の声は、いつもの元気さではなく、どこか暗い妖しさを漂わせていた。

《あたし、寂しいの。こっち来てよ。》
「園花・・・?」
《来ないと白木原さん、死んじゃうかも。》
「っ!?」
《黒須、来てよ。ねえ・・・》



- - - - - -



(どっちだ?)

1分後には、数多は自転車を漕いでいた。
ペダルにかけた足が痛い。

2つの可能性を、数多は考えていた。

ノエルが自分にキスをして、それを見て逃げた園花。
それを見て何とも思わないほど、数多は鈍くない。

「どっちだとしても・・・負けるわけにはいかない、か。」


学校が見えた。

無人の、夜中。
だけど今は無人ではない。

体育館が不気味に明るい。


「園花! ここか!?」

体育館の扉に手を当てると、軋みながら開いた。
中へ入ると、園花が奥で、デュエルディスクを構えて立っていた。

ショートヘアの隣には、白い薔薇が倒れている。

「ダリア!」
「眠らしてあるだけよ。今のところはね。」

園花は別人のような響きの声で告げる。
数多はデュエルディスクを展開しながら近付いた。

「何で・・・なんて訊くほど野暮じゃねえ。理由は、話したいときに話せ。」
「理由なら、今からだって話すわよ。というか、鈍いんじゃない?」
「・・・俺が憎いのか?」
「そうね、憎いわよ。あんたのことが、好きだから。」

少女は肩を震わせて泣いていた。

「好きなのに・・・あはは、憎くて憎くて、たまらない・・・。」

湧き起こる感情が止まらないとき、決闘者の選択は決まっている。

「さあ、あたしとデュエルしなさいよ! あんたが勝ったら白木原さんは無事に帰す。だけど負けたら殺す。白木原さんじゃなくて、あんたを殺す。あんたを殺して、あたしも死ぬ。命は天秤に載せられたわ!」

「・・・っ、させるかよ!」

倒れているダリアには、首輪が装着されている。
そこから連想されるものは、爆弾を置いて他にない。

(このデュエルを断れば、ダリアが殺される。)

数多は深呼吸をしてから、デュエルディスクを展開した。


「「デュエル!」」


黒須数多:LP8000
笑氏園花:LP8000



「あたしの先攻! デュエル開始時に、デッキからフィールド魔法を発動する!」

景色が体育館から暗雲へ変貌した。
ぎりぎりと軋む音が聞こえてくる。

「デッキから発動するフィールド魔法だと!?」

それは、心を闇に染めた者に与えられるカード。
いびつで、異質な、くるくる回る世界。


歯車の軋む闇の世界 (フィールド魔法)
このカードはデュエル開始時に、デッキまたは手札から発動する。
このカードはフィールドから離れない。
ターンプレイヤーはスタンバイフェイズに、
デッキからレベル4以下の「古代の機械」モンスター1体を特殊召喚できる。



「ドロー、スタンバイ。デッキから《古代の機械猟犬》を特殊召喚。」

「ハウンドドッグ! 園花、お前・・・!」


古代の機械猟犬 レベル3 地属性・機械族
攻撃力1000 守備力1000
(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、
相手は魔法・罠カードを発動できない。
(2):1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。
相手に600ダメージを与える。
(3):自分フィールドにこのカード以外の
「古代の機械」モンスターが存在する場合に発動できる。
融合モンスターカードによって決められた、 このカードを含む
融合素材モンスターを自分の手札・フィールドから墓地へ送り、
その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。



「そんでもって、手札からも。この意味わかる?」

「融合か!」

「ご名答。さぁ猟犬たちよ、混ざりなさい。融合召喚―――」

拳を合わせた彼女の背後で、青と橙の渦が巻く。
そこに吸い込まれた猟犬たちは、ふたつの頭を持って出てきた。

「カードを1枚伏せて、ターンエンド!」



黒須数多:LP8000、手札5
場:
場:

笑氏園花:LP8000、手札4
場:古代の機械双頭猟犬(攻1400)
場:歯車の軋む闇の世界(フィールド魔法)、伏せ×1




「俺のターン、ドロー! 《アマゾネスの剣士》を召喚。」

「このままじゃ破壊されちゃうわね。だけど、ダブルバイト・ハウンドドッグ第二の効果! ギア・アシッドカウンターを載せるわ!」


古代の機械双頭猟犬 レベル5 地属性・機械族・融合
攻撃力1400 守備力1000 「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」
(1):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、
相手は魔法・罠カードを発動できない。
(2):1ターンに1度、相手フィールドに
モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動できる。
そのモンスターにギア・アシッドカウンターを1つ置く(最大1つまで)。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):ギア・アシッドカウンターが置かれているモンスターが
戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。
そのモンスターを破壊する。



「これで《アマゾネスの剣士》が攻撃したら、第三の効果で破壊されちまうってわけか。だが、そんなことを俺が考えてねえと思ったか?」

数多の手札から、暗い顔の少女が飛び出してきた。
その赤い目は、双頭の猟犬を青白い火で焼き尽くす。


幽鬼うさぎ レベル3 光属性・サイキック族・チューナー
攻撃力0 守備力1800
「幽鬼うさぎ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
フィールドのモンスターの効果が発動した時、
またはフィールドの既に表側表示で存在している魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分の手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。
フィールドのそのカードを破壊する。



「なるほどね、あたしがダブルバイト・ハウンドドッグの効果を発動しなければ、そのまま戦闘で破壊するだけってことか。・・・ねえ、だけど黒須、そんなことくらい考えてないと思った?」

「・・・っ、その伏せカード、《激流葬》じゃねえのか?」

「読みが違うわね。そんなんだと黄泉へ行くことになるわよ。リバースカードオープン、《古代の機械再生融合》!」

妖しい目をした少女は、ショートヘアを揺らしてカードを開いた。
再び渦が巻いて、双頭の猟犬が吸い込まれていく。


古代の機械再生融合 (罠カード)
自分フィールドの「古代の機械」モンスターが相手の効果でフィールドから離れた場合、
そのモンスター1体を対象として発動できる。
その対象のモンスターが融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターである場合、その融合モンスター1体を
自分のエクストラデッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)



「融合召喚っ・・・! 現れ出でよ、《古代の機械参頭猟犬》!」

ひとつ頭の増えた猟犬は、より攻撃的になっていた。
徐々に圧力が増してくる。


古代の機械参頭猟犬 レベル7 地属性・機械族・融合
攻撃力1800 守備力1000
「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」
または「古代の機械猟犬」+「古代の機械双頭猟犬」
(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。
(2):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、
相手は魔法・罠カードを発動できない。



「俺は・・・《アマゾネスの剣士》で攻撃。戦闘ダメージは反射する。」

笑氏園花:LP8000→7700


「デュエリスト能力で《アマゾネスの剣士》は破壊されない。カードを1枚伏せてターンエンド。」

「ターンエンドオブアヌビスって言わないの?」

「言う空気か? これでも空気は読む方だぜ。」

「言うわね、鈍感なくせに。」



黒須数多:LP8000、手札3
場:アマゾネスの剣士(攻1500)
場:伏せ×1

笑氏園花:LP7700、手札4
場:古代の機械参頭猟犬(攻1800)
場:歯車の軋む闇の世界(フィールド魔法)




「戦闘で破壊されないデュエリスト能力に、戦闘ダメージを反射するモンスター。それで足止めのつもり? そんなんじゃ、あたしは止められないわ・・・ドロー! スタンバイフェイズにデッキから《古代の機械猟犬》を特殊召喚!」

「・・・っ、厄介なフィールド魔法だぜ。」

猟犬は、ケルベロスで打ち止めではない。
まだ先がある。

「ハウンドドッグの効果発動、モンスターがいるから、黒須に600ポイントのダメージ!」

「っ・・・」

黒須数多:LP8000→7400



「そして融合召喚、現れ出でよ、《古代の機械究極猟犬》!!」

古代の機械猟犬、最終形態。
もはや最初の面影は無い。
キメラチックな機械獣が、そこにいた。


古代の機械究極猟犬 レベル9 地属性・機械族・融合
攻撃力2800 守備力2000 「古代の機械参頭猟犬」+「古代の機械」モンスター1体
(1):このカードが融合召喚に成功した場合、相手のLPを半分にする。
(2):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回まで攻撃できる。
(3):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、
相手は魔法・罠カードを発動できない。



「アルティメット・ハウンドドッグ第一の効果! 黒須! あんたのライフを半分にするわ!」


黒須数多:LP7400→3700



「・・・っ、やってくれる・・・!」

「戦闘ダメージでも効果ダメージでもない、こんな効果には対策できてないでしょ? それと、モンスター効果の対策を行ってるのも、あんただけじゃない。《レインボー・ヴェール》発動!」

虹色の光が猟犬を包んだ。


レインボー・ヴェール (装備魔法)
装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、
バトルフェイズの間だけその相手モンスターの効果は無効化される。



「―――っ!!」

「アルティメット・ハウンドドッグは、3回攻撃できる!」

巨大な猟犬は、雄叫びをあげて口吻から光線を放つ。
それを防ぐ手立ては、数多には無かった。


黒須数多:LP3700→2400→1100



「・・・っ、ドラマと違って、アクションカードが無えんだもんな。やんなるぜ。こうして《クリボー》に頼るしか・・」

ボロボロになった数多は、軽口を叩きながら立ち上がった。
そしてすぐさま口を閉じた。


園花が泣いていた。


「ねえ、黒須・・・あんた何で、あたしのことを下の名前で呼ぶの?」

少女の怒り。
少女の告白。

「あたしは、あんたのこと苗字で呼ぶのに・・・あんたは親しげに名前で呼んでくるから、勘違いしちゃうじゃない!」

気にしない人の方が多いから、些細なことだと片付けられる。
だけど少女にとっては大事なことで、心を絡め取られてしまう。

「あんた、あたしのこと好きなんでしょ? 好きって言ってよ! でないと、あたし馬鹿みたい! 期待して馬鹿みたい!」

繰り返される日常の中で、自然と呼ばれ続けた名前。
数多に下心が無いからこそ、園花の心の壁を乗り越えてしまった。

そう、下心は無い。これっぽっちも無い。

「・・・すまん。他人を下の名前で呼ぶのは、俺のクセだ。」

少女の痛々しい叫びに、数多は罪悪感で胸が痛くなる。
少女は顔を抑えて震える。

「あはは、そうよね。わかってた。わかってたのに、好きになってしまう。好きなのに、憎んでしまう。ううん・・・」

少女は首を振る。

「わかっていたから好きになるし・・・好きだから憎いんだよね・・・。どっちに傾いても、天秤は落ち着かない。カードを1枚伏せてターンエンド。」



黒須数多:LP1100、手札2
場:アマゾネスの剣士(攻1500)
場:伏せ×1

笑氏園花:LP7700、手札3
場:古代の機械究極猟犬(攻2800)
場:歯車の軋む闇の世界(フィールド魔法)、レインボー・ヴェール(装備魔法)、伏せ×1





つづく

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2016/08/28 00:27

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