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zoom RSS 「サトリン」 第一話 サトリン〜都市伝説〜

<<   作成日時 : 2016/09/09 00:00   >>

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最近は携帯電話が普及して、連絡が簡単になってきた。
そして、それと共にひとつの都市伝説が生まれたことを知っているだろうか。
これは私の友人が体験した、世にも不思議な物語である。


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ノストラダムスの嘘がバレて、しばらく経った1999年11月。
私の友人、八谷(はちや)は28歳だった。
私が八谷と出会ったのは21世紀になってからの話で、この頃の彼は家族も友人もいない生活を送っていたと聞いている。
八谷という男は、冴えない風貌をしていて印象が薄く、髪も薄く、くたびれた感じをしているのだ。
私は彼のそういうくたびれた様相も好きなのだが(だってくたびれた冴えないオッサンって萌えるだろう?)、私が彼と友人付き合いを続けているのは彼の性格が素直で正直だからだ。
ただ、その性格の故か、彼は人に騙されやすい。
20年前――だから1983年の話だが――クラスメートの1人に下品な単語を教えられて、それを大声で叫べば幸せになると騙されて、実行したところ近所からは変態扱いされて親からは殴られたという。
そして大人になってからも人に騙されまくって、大量の借金を抱え込んだ。その額およそ3000万円。
にっちもさっちもいかなくなって八谷は自己破産をしたのだが、騙す人間の悪辣さ、八谷の借金の多くは闇金から借りた扱いになっていた。
取立ての連中は執拗に彼を追い詰めた。暴力団のような男たちに付き纏われ、八谷は住居を転々とした。
心身共に疲弊した彼は、何度も自殺を考えたという。その頃の記憶は定かではないが、家からは一歩も出てないと言っていた。

そんなとき、八谷に一本の電話がかかってきた。
トゥルルルル
『はい・・・。』
受話器を取ると、陰気な女の声が聞こえてきて恐かったと言っていた。
『八谷和真(はちや・かずま)かしら?』
『はい、そうです・・・。』
『お前は“サトリン”様を知っているかしら?』
『いいえ・・・。』
普通の人なら悪戯電話だと判断して切るところだが、八谷はそうではない。彼はどんなくだらない相手にも誠実に応対するのだ。
『かしらかしらご存知かしら? 現代にも幸福の神がいるということを? その名はサトリン、都市伝説。困ったことがあるなら、これから言う電話番号を書き留めておくのがいいかしら。』
八谷は言われるがままに鉛筆と紙を取り出した。
『いくわよ、070−38−197169399375105824974944592307816。』
『え、え?』
『もう一度言おうかしら? 070−38−197169399375105824974944592307816。』
その謎の女に4、5回繰り返してもらって、八谷はそのどう考えてもインチキとしか思えない長ったるい電話番号を書き留めた。
『サトリン様を信じること。サトリン様のお力にすがること。それが幸福への道。わかったかしら?』
『は、はい。』
八谷が返事をすると電話は切れた。

さっそく八谷は、その電話番号にダイヤルしたという。
『えーと、070−38−197169399375105824974944592307816。』
トゥルルルル
トゥルルルル
コール音だけが鳴り響き、誰も出ない。だが、「この番号は現在使われておりません」とかいう放送が流れることもなく、50回くらいコール音は続いたという。
よくもまあそんなに我慢できたものだと私は呆れたが、八谷ならやりかねないと思った。
『こんにちは、私サトリン!』
数十回のコールの果てに、甘ったるい少女の声が聞こえてきたという。
『初めまして、八谷和真くん!』
その少女は何故か八谷の名前を知っていた。
『悪い人に騙されて、3000万円も借金作っちゃったんだって? 可哀想にねー。でも心配いらないよ! 私が助けてあげるから!』
『・・ど、どうやって・・・?』
『ちょっと待っててねー。今夜、夢の中で君にプレゼントがあるから!』
『夢の中?』
『そうだよー。ちゃんとオネンネしましょうね。じゃあ、また今夜ねー!』
そこで電話は切れたという。
悪戯でも何でも、とにかく夜は眠らなければならない。私でもひねくれて起きてるなんてことはない。純粋な八谷は、わざわざ睡眠薬まで買って飲んだという。

その夜、八谷は不思議な夢を見た。あれから3年経った今(2003年1月)でも、はっきりと覚えているという。
夢の中で八谷はサイケな空間にいた。ヒュンヒュンと何か光るものが飛び交い、辺りは青やら赤やら緑やらが眩暈を起こすような色彩で構成されている。
『な、なんだ、ここ!?』
八谷がそう言うと、突然光の粒が目の前に集まってきて、シュパッという音と共に少女の姿になったという。
八谷は少女について詳しく話してくれた。
まず、身長は150センチ強といったところ。赤地に白の帽子を被っており、白のところには緑の文字で“E”と表記されていた。帽子のツバの部分をクイッと下げており、顔は半分隠れていた。髪は帽子の横からとんがって生えていて、顔は丸い感じ。黒のTシャツに青の上着、水色のジーパンと、まるで男の子のような格好をしていたが、胸の膨らみがその人物が女である事を示していた。青の上着は襟と袖は白色で、ボタンは1つしかなく、左右にポケットが付いていた。ジーンズにはベルトが付いていた。手には黒色の指出し手袋を着けていて、足には白と黒で構成されたスニーカーを履いていた。
『はあい!』
少女が口をきいた。電話で話した、あの甘ったるい声。この少女が“サトリン”なのか。
少女は左手で帽子のツバを取って、クイッと後ろにやった。悩みなど何一つ無いとでもいうような、屈託のない笑顔が現れた。
『こうやって会うのは初めてだねー! ・・さてと、じゃあ約束通りプレゼントをあげる。』
少女は悪戯っぽく笑った。彼女は、ただ可愛いだけではない。到底10代の少女には醸し出せないような深みのある大人の色気を持っていたという。
少女が右手を肩のあたりに持っていくと、そこに光の粒子が集まってきて、手帳のようなものが出現した。
『はい、これ、君の為に作った預金通帳。3000万円振り込んでおいたよ。』
『・・・あ、ありがとうございます! でも、どうして僕なんかに・・・?』
すると少女はチッチッと指を振った。
『の・の・の・の〜。そんなこと言っちゃダメよう! “僕なんか”じゃなくて、“僕だから”と思いなさい! いやホント、年上の言うことは素直に聞くものよ。』
『年上?』
『の・の・の・の〜。まあサトリンは永遠のセブンティーンなんだけどー。』
少女は舌を出しながら照れ笑いをした。
『はあ・・・。』
『とにかく、がんばるのー。』
『はい。』
八谷が通帳を受け取ると、突然辺りは真っ暗になったという。

そして朝起きてみると、八谷の手には通帳が握られていた。中を確かめると、確かに3000万円入っていた。
『すごい・・・。』
私なら、そんな馬鹿な・・・と言うところだ。
八谷は早速その金で借金を完済して、今に至るというわけだ。


- - - - - -


八谷は嘘をつくような人間ではない。彼ほど正直な人間を、私は他に知らない。しかし科学を信じる私としては、こんな話を信じるわけにはいかない。
・・・この話、八谷の妄想ではなかろうか。
そう思って私は出張先のホテルで、八谷から教えてもらった番号に電話をかけた。八谷が妄想に取り付かれているのなら、私が救ってやらねばなるまい。
トゥルルルル
トゥルルルル
長いコール音が続いた。八谷の言う通りだ。
まさか。
まさか。
コール音を数えたら53回だった。そして、その後に甘ったるい女の声が聞こえてきた。
「こんにちは、私サトリン!」
本当に、いたよ。
私は目を大きく見開いて驚いた。
「あんた・・・誰だ・・・。」
「あ、その声は八谷くんの友達の九古くんね。」
私は更にギョッとした。何で私の名前まで知ってるのか。八谷から聞いたのか?
「初めまして九古くん! 八谷くんは元気!?」
「あ、ああ、元気だ。」
「よかったー! ・・ところで、君もここにTELしてきたってことは、困ってることがあるのね。心配いらないよ。サトリンは困ってる人の味方だから。」
「あんた・・・何者なんだ・・・?」
「の・の・の・の〜。それは秘密。女の子には秘密がいっぱいあるのよ! それよりも、あなたの困ってることは何かしら。」
「・・・当ててみな。」
困ってること。そりゃいっぱいあるさ。だが、中でも一番困っているのは・・・。

そのとき、電話の向こうで彼女が不敵な笑みを浮かべたように思えた。
「あら、そう来る? いいわよー! 君は八谷くんと違って心の中が読みにくいけど、努力してみるね。んんっんー、んんっんー、んんっんー。」
心を読むだと? 出来るものならやってみろ。
水兵リーベ僕の船。何間があるシップすぐ来らー・・・。一十百千万億兆京垓𥝱穣溝澗正載極・・・割分厘毛糸忽微・・・・
「わかったー!」
何だと。
「ずばりワイフと上手くいってない!」
「!!」
どうしてわかった。
確かに私は妻と上手くいってない。何だかギクシャクしてしまうのだ。私が男も好きである(特にオヤジ萌え)ということを話していないせいだろうか。もっとも、それを話したら破局は避けられないわけだが。
言っておくが私は男より女の方が好きだ。だが同時に男も好きなのだ。どうこうしたいというわけじゃないが、私が八谷に友情以上のものを感じているのは確かだ。
これは浮気だろうか。体の関係は無い(八谷の方でお断りだろう)が、たとえ想像の中でも浮気は罪だ。そう考えると頭が痛くなってくる。ああ、頭が痛い、痛い、痛い・・・。
「の・の・の・の〜。もっとリラックスして! 大丈夫、私が何とかしてあげるから!」
「・・・何とかって・・・?」
「すぐにわかるよ。」
そう言ってサトリンは電話を切った。
「・・・本当に居やがった・・・。」


それ以来、私は妻と上手くいっている。
別に妻の態度が変わったわけではないのに、ぎくしゃくだけが無くなっている。どういうわけだろう。
・・・もしかしたら、私も妄想に取り付かれているのかもしれない。ぎくしゃくが無くなったのは私が変化したからではないだろうか。
八谷の妄想に感化されたのか。それとも八谷との会話まで全て私の妄想なのか。
それとも。
それとも。




   第一話   了

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