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zoom RSS 「サトリン」 第三話 エイミー

<<   作成日時 : 2016/09/09 00:10   >>

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エイミーはおしゃまな女の子。
まだ10歳なのにセックスの意味をわかってるし、キスだって済ませている。
今は19歳の彼に片思い中だ。

わたしはエイミー。もう10歳になるのよ。
大人はわたしのことを子どもだっていうけど、エイミーもう子どもじゃないもん。エイミーが子どもに見られるのって、絶対、年齢と身長のせいだと思うな。
まったく、外見やステータスだけで人を判断するのって、心が幼稚な証拠よ。パパもママもなにかというと、すぐに「子どものくせに」って言うのよ。やんなっちゃう。
わたしは今、恋をしてるの。相手は19歳の大学生。同年代の男の子ってガキっぽくて、わたしには釣り合わないと思うの。ガキっぽいっていえば女の子もそう。きっとこんな子どもたちばっかりだから、わたしも同じように見られるんだわ。
そうそう、わたしの彼(になる予定)だけど、名前はアーノルドっていうの。サラサラの金髪で、イシスみたいな真っ赤な瞳と、クレオパトラのような立派な鼻を持っていて、とても優しく笑うの。あの笑顔で見つめられたら、もうわたしクラクラしちゃう。彼にならわたし、ヴァージンを捧げちゃってもいいかも。

その日、エイミーはいつものようにパソコンで遊んでいた。クラスメートは誰一人できないブラインドタッチを軽々とこなし、チャットで会話をしている。
ハンドルネームは本名そのまま“エイミー”。
相手は“サトリン”となっている。

『ねえねえ、聞いてサトリン。今日ね、隣のクラスのボブがわたしの胸を触ってきたのよ。最低よね。女の子の胸をみだりに触るってことが、どんなに失礼なことかわかってないのよね。まったくガキよね。あーもう、子どもって大っ嫌い! あ、精神的にって意味でよ。精神が幼い人ってわたし生理的にダメなの。あーもう、ホントむかつく〜!』
『の・の〜、エイミーは今日も怒ってるね。でも、いつも怒ってるのは精神が活発だからじゃないかな。』
『そうねー、まあ誰もがわたしみたいな高い意識レベルを持ってるわけじゃないしー。ああ、天才って孤独。天才は普通の人より賢い分、苦悩も大きいと思うわ。サトリンもそうだったんでしょう?』
『んんっん〜、苦悩の度合いは人それぞれだから、一概にそうは言えないと思うけど、私も能力の高さゆえに苦労したことはあるよー。今でこそコンピューターは高い性能を持ってるけど、私の時代には拙くてねー。私の能力にコンピューターが追いつかなくてイライラしたもんだわ。それで、ついには自作でコンピューターを作ったりしてね。楽しかったなー。』
『えー、サトリンって自分でコンピューター作れるんだ。すごーい!』
『の・の〜。照れちゃうなー。』
『ところでサトリンって、彼氏いる?』
『の・の・の・の〜、コンピューターが恋人さ。私がエイミーくらいの頃は、人間の友達なんて1人もいなかったよん。』
『そうなのー。やっぱり天才って友達少ないわよね。私も友達っていないわー。』
『の・の〜、私がいるじゃん。』
『ああっ、そうね。それにわたし、好きな人も出来たしね。』
『それは素敵ね! 名前、何てゆーの?』
『アーノルド君。19歳の大学生。笑顔が素敵なんだから! サトリンにも見せてあげたいわ。』
『んんっん〜、それは是非見たいね。彼氏になったら、カップルで写真送ってよ。』
そこでエイミーは溜息をついた。
『それなのよね、問題は。わたしと彼って、接点少ないじゃない? 毎週日曜日に家庭教師をしてもらうだけの間柄。平日はお互い学校があるから離れ離れ。寂しいわ。』
『告白とかは?』
『ダメ、そんな雰囲気じゃないわ。それに、女の子の方から告白するのって、とても勇気のいることよ。』
『んんっん〜、じゃあ私が協力してあげようか?』
『え? ホント? でもどうやって?』
『それは今夜のお楽しみ。ぐっすりお休みなさい。夢の中で会いましょう。』
『夢の中で会うって・・・サトリン、そんなことできるの?』
『出来るよ。やったことあるもん。』
エイミーは、その言葉を信じた。
その日は早めにチャットを終えて、さっさと眠ることにした。

なんだかドキドキしちゃうわ。
サトリンって、子どもの頃絵本で読んだ魔法使いみたい。
ああ〜、早く眠らなくちゃ。

ベッドに入って、明かりを消して、目を瞑っても、エイミーはなかなか眠れず手足をジタバタさせた。
(そうだわ。運動すれば疲れて眠れるかも。)
エイミーは腕立て伏せと腹筋を5回ずつ行った。
「ふう・・・。」
そして布団に潜ってじっとしていたが、やはり寝付けない。
(あーもう、眠れないわ。どうしよう・・・。・・そうだ、前にサトリンが言ってたわ。眠れないときはホットミルクを飲めばいいって。)
エイミーは台所へ行ってコップ一杯のミルクを電子レンジで温め、ゆっくりと飲み干した。
そしてベッドに入ると、次第に心が落ち着いてきて、いつしかエイミーは眠りの状態に移行していた。

夢の中でエイミーは、果てしなく続く薄明るい空間にいた。忙しなく光の粒のようなものが飛び交っている。
(夢・・・? でも何かリアル・・・。)
エイミーは非常にハッキリとした意識で、その場に浮いていた。
手を握ろうとすれば握れたし、首をかしげることも、足を曲げることも出来た。
(寒む・・・。)
エイミーは厚手のパジャマを着ていたが、それでも寒かった。
「やっほー、エイミー。」
突然エイミーの前にビキニ姿に帽子を被った女性が現れた。帽子は赤地に前の部分が白で、緑の“E”の文字が付いていた。ビキニは朱色に青の縦縞が入っている。顔は帽子のツバに隠れてよく見えないが、面長な感じの美人らしかった。
「も、もしかしてサトリン・・・?」
「そうだよー。」
そう言ってサトリンは帽子のツバをクイッと後ろへやった。
彼女の顔が顕わになる。やはり美人だ。
「こうやって直接会うのは初めてだねー!」
「うん。」
そう言いながらエイミーはサトリンの服装が気になっていた。
「寒くない? サトリン。」
「んんっん〜、暑いくらいだよ。・・・というか、寒さを感じるの?」
「え? そうよ、寒いわ。」
「んんっん〜、テレパシーの出力を上げすぎちゃったみたいね。」
そう言ってサトリンは右手をエイミーの頭にかざした。
「あ・・・あったかくなってきたわ。」
「よしよし、成功。」
「サトリンって、超能力者なの?」
「そうよー。電脳(エポ)のエスパー、名はサトリン。永遠の17歳よ。」
「すっごーい! 超能力者って本当にいるんだ!」
「ふっふーん。だからエイミーをアーノルド君に会わせることも出来るんだ。これから彼の意識を、ここに呼び寄せるからね。」
「あっ! ちょっと待って!」
「ん?」
「こんな格好じゃ恥ずかしいわ。寝巻きのままなんて・・・。」
「んんっん〜、そっかー。それじゃあ自分の好きな服をイメージしてみて。」
「こう?」
エイミーは頭の中で純白のドレスを想像した。
すると彼女の体の周りに光の粒が集まり、想像した通りのドレスになった。
「わー、すごーい!」
「ここは電脳空間。今のエイミーは精神だけの存在だから、外見は自由に変えられるんだよ。」
「やっぱりサトリンは天才だわ。」
「・・・じゃあ、アーノルド君を呼ぶよ。3、2、1、それっ!」
光の渦に包まれて、金髪紅眼のハンサムボーイが現れた。
「ん? んん?」
アーノルドは辺りをキョロキョロ見回した。
いつの間にかサトリンは姿を消していて、純白のドレスに包まれた少女だけが彼の目の前にいた。
「こ、こんにちは。」
「・・・・エイミーちゃん?」
アーノルドは呆気に取られていた。
「あ、あのね・・・」
エイミーの心臓はドクドク鳴っていた、彼女は両手で胸を押さえながら、顔が赤くなるのを感じた。
「わ、わたし・・・その・・・・」
「な、なに? というか、これ、夢だよね?」
「うん。でも、夢であって夢じゃないというか・・・。そ、それでね、わたしね・・・」
(勇気を出すのよエイミー!)
エイミーは目をギュッと瞑って自分に言い聞かせた。
そして目をパチッと開けて息を大きく吸い込んだ。
「わ、わたし、あなたのことが好きなんです!」
(い、言えた・・・!)
エイミーは息を荒くして顔をほころばせた。
だがしかし次の瞬間、アーノルドの言ったセリフがエイミーの心を奈落に突き落とした。
「あー・・・俺、ガキと付き合う気は無いから。」
「え・・・・?」

ガキと付き合う気は無いから。
ガキと付き合う気は無いから。

「嘘・・・・・。」
エイミーは目の前が真っ暗になった。
景色が掠れ、消え、闇が到来した。



ふと目を開けると、エイミーは自分のベッドで仰向けに寝ていた。
目からは涙が流れていた。
(わたし・・・・アーノルド君に・・・・ひどいこと言われて・・・・。)
悲しみに暮れながらも、エイミーはいつも通りの朝の身支度を整えていった。
その日一日、エイミーは悲しく歪んだ顔で過ごした。

学校から帰ってきて、エイミーはパソコンを起動した。
(どうか昨日のことがただの夢でありますように・・・。)
心痛が過ぎたエイミーは、あれが虚構であったのではないかという想念に囚われ始めていた。
だが、サトリンとのチャットの記録を見てエイミーは愕然とした思いで現実に引き戻された。
確かにそこには紛れもなく、記憶通りのサトリンとの会話があった。
「うっ・・・うっ・・・・」
エイミーは、たまらず泣き出した。
するとパソコンが勝手に起動し、チャットルームが出現した。
「えっ?」
エイミーが驚いていると、画面にサトリンの名で文字が書き込まれていった。
『ごめんね、エイミー。まさかこんなことになるなんて・・・。私の責任だわ。』
それを読んでエイミーは更に涙が溢れてきた。
「う、うわーん、違うよ、違うよ、サトリンのせいじゃないよ・・・。」
『エイミー・・・。』
「ありがどう・・・ザドリン・・・。」
エイミーは涙でくしゃくしゃになりながら言った。

サトリン、本当のこと言うとね、ちょっとだけサトリンのこと逆恨みしちゃってたの。ごめんね、サトリン。
ねえ、この胸の苦しみも、いつか消えるのかな?
悲しくて、苦しくて、たまらないよ。助けてサトリン・・・助けて・・・。

日曜になり、いつものようにアーノルドが家庭教師としてやって来た。
「エイミー、ケインズさんがいらっしゃったわよ。」
エイミーの母が呼びかけたが、エイミーは部屋に引きこもったままだった。
アーノルド・ケインズの来訪。いつもなら喜んで迎えるのだが、今の彼女は事情が違っていた。
「どうしたのかしら、あの子ったら。いつもは大喜びで出てくるのに。」
「・・・・・・。」
アーノルドは表情を曇らせた。
「ちょっと・・・俺が呼んできていいですか・・・?」
「ええ、もちろん。どうも、お世話かけます。」

アーノルドは鞄を持って家に上がった。エイミーの部屋の前まで来て、彼は扉をノックした。
「開けてくれないか、エイミー・・・ちゃん。話があるんだ。」
エイミーは部屋の中で耳を塞いでいた。
「大事な話があるんだ。」
エイミーは首を横に振った。
うんともすんとも言わないエイミーに対して、彼女の母親は辛抱できなくなって扉を強引に開けた。
「いい加減にしなさい! 何をそんなに拗ねてるの! そんなんだからあなたは子供なのよ!」
エイミーは更にギュッと耳を押さえた。
それを見てアーノルドは、エイミーの母を制して部屋の中へ入った。
「ここは俺に任せてもらえませんか。」
「あ、はい・・・。」
エイミーの母は落ち着きを取り戻して、しかしエイミーを一睨みしてから去っていった。

ママの馬鹿! ケインズ先生の馬鹿! わたしの気持ちも少しは考えてよ!
何よ何よ! 何でわたしがこんな目にあわなくちゃいけないのよ!
フッた女の前に顔を見せに来るなんて残酷よ!

アーノルドは、耳を塞いで座り込んでいるエイミーの側に行って囁いた。
「ねえ、エイミー、話を聞いてくれないか?」
エイミーは耳を押さえたまま首を振った。
「聞こえているね。それじゃあ言うよ。・・・俺と、付き合って欲しい。」
「えっ?」
エイミーは耳から手を外してアーノルドを見た。彼の発する言葉以外の雑音が消えた。
「今・・・なんて・・・?」
(付き合ってほしいって、言われた・・・の?)
「俺と付き合って欲しいって言ったんだ。あれから考えて、よくよく考えて、本当はエイミーが好きだってわかったんだ。」
「・・・嬉しい・・・・。夢じゃないかしら・・・・。」
エイミーは嬉しさのあまり泣き出したが、そのときハッとして言った。
「あ・・・で、でも、ケインズ先生、ガキとは付き合わないって・・・。」
「ああ、ごめんな。それは・・・


- - - - - -


サトリンからメールが届いたのは、その翌日だった。
『おめでとう、アーノルド君と上手くいったみたいだね。でも、これだけは覚えておいて。現実は夢のように甘くないってこと。私がやったのは、アーノルド君の、10歳の少女と付き合ってロリコン扱いされたら嫌だという、心のしがらみを取っ払っただけ。この先、周りの視線にも耐えていかなければならないし、アーノルド君と上手くいかないことがあったりするかもしれない。けれど、そんなときは今の気持ちを思い出して乗り切るのよ。・・・じゃあ、さよなら。』
「ありがとう・・・サトリン。サトリンのおかげだったんだね。」
エイミーは早速お礼を言おうとサトリンとのチャットのページを開こうとしたが、いつの間にかページが消えていた。
「あれ・・・?」
(・・・・・そっか、もうわたしにサトリンの助けは必要ないんだね。ちょっと寂しいけど、わたしがんばるわ。もう大人なもんね。)

その後、少女エイミーがサトリンと会うことは二度と無かった。



   第三話   了

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