佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 傀儡師は夜に眠らない あとがき

<<   作成日時 : 2016/09/30 00:00   >>

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「放置していた作品に日の目を!」と思い至り、蔵出し&加筆した短編でした。
何年前に書き始めたのか忘れましたが、2012年より前なのは確かです。
そのときに結末まで構想していましたが、途中で筆が止まってしまい、長らく埃を被っていました。

自分で読み返していて、現在とは考え方や感じ方が違うところも結構あると思いました。
年月が経つことで、変化・成長したものはありますが、失ったものも確実にあります。
そういう意味で、私にとっては貴重な短編なのかもしれません。
かつての自分を見つめ直し、今の自分に取り込んでアップグレートする機会になりました。


アルカディアNo.2の執事、アモン・ガゴルグが同性愛者だというのは、お気づきの方もいたと思います。
今回それを明示しておきましたが、作中でギルも述べている通り、物語の主軸ではありません。

ざっくり言うと、これは視点を変えた「蟹工船」なんです。
「蟹工船」には、男性の労働者たちが、女性の労働者に、下品なからかいを発した場面があります。
小林多喜二としては、そうした野卑な労働者が、危機的状況の中で団結していく価値を描いたのでしょう。
しかし私は、その場面ひとつで、作品への評価を大きく下げました。

これが“共産主義者”の描いた作品だからこそ、相対的には極右よりも始末が悪い。
あのような連中を“革命の主人公”として描く、“肉体労働者による男らしい革命”など、ヘドが出る。
時代を考慮に入れても、どうしても呑み込めない。おおらかさと無神経を履き違えてるとしか思えません。
どうにも私は、小林多喜二は、軍部に殺されたから高く評価されたのではないかと思えて仕方ないのです。

“虫食いを以って果実を語る勿れ”ではありますが、“大事の前の小事”という言葉もあります。
そして“小事”は、本当に小事でしょうか。それが降り積もって大事になるのではないでしょうか。

「進撃の巨人」や「ドリフターズ」には、「危機的状況で団結が深まるなど嘘っぱちだ!」という意見が登場します。
まったくもって、その通りだと思います。
彼らは基本、右寄りの作家ですが、述べてることは生半可な左翼など及びもつかない鋭さを持っています。
そして私と深い部分で通じ合えるのは、思想的な立ち位置よりも、そうしたラディカルさなのです。

呉越同舟とか、よく言うがな。
危機が迫ると軋轢や不和がなくなると、んな事ァ絶対に無ぇ!!
誰かのしくじりの度に噴出し、誰かの功成りの度に口に上る。
住時の不和は、なりをひそめても時を選ばずわき出てくる。
むしろ鉄火場の土壇場に狙いすまして露になる!!
そして取り返しのつかない事になるのだ!!
          (ドリフターズ第59幕より)

思想の左右を軽んじるつもりは毛頭ないのですが、だからこそ本来的な唯物史観に近いものに惹かれます。
それまでの経緯を無視した“団結”などは、観念論の中でも拙劣なところに位置するものでしょう。
左翼を名乗る人々が、部落の人々や在日コリアを排斥し、弾圧を受ける農民を冷笑し、いじめ問題に無神経で、
セクシャル・マイノリティーを蔑んできたことを、決して忘れることは出来ません。


アモン・ガゴルグは、肉体労働者としての思想を持ちながら、そこに留まらない人物として描きました。
これまで登場回数は少ないですが、20世紀の彼は、ミセス・ジュエルに仕える“執事”であり、口調も丁寧です。

彼の丁寧な口調の背景には、ギル・パイアーの一件が関わっています。
ざっくり言うと、「日頃から細かいことにも気を付けよう」を、ずっと続けているわけです。
反省というと少し違うのですが、あらためて気を引き締めたというのが近いでしょうか。

ギル・パイアーは、からかいを受けた女性労働者のポジションであり、同じく肉体労働者から蔑まれることが多い
肉体的・運動能力的に劣位な男性という人物になりました。
そうした人間が、無神経な嘲笑を浴びて、どれほど傷つき怨みを募らせているか、その一端と言えます。

ギルの心境を端的に言うと、「皆殺しにしても足らない」ということです。
アモンの視点で物語を進めているので、あっさり気味の薄味ですが、代わりに“光景”で、心理を描写しました。
敢えてセリフを控え目にするのも、いつもと違う味があって、これはこれで良いのではないかと思っています。


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