佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十四話 白羽の矢 (結)

<<   作成日時 : 2016/10/01 00:24   >>

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■■■■■



それより少し前。
理事長室。
「あんっ・・・んんっ・・・ぐ・・・・・」
1人の少女が悶えていた。
「だ、大丈夫かい!?」
「大丈夫なわけないでしょ・・・見てわかんないの?」
苦悶の顔から汗を噴き出しながら、邑甘恵須実は男を睨みつけた。
「ご、ごめん・・・。」
男は、廊下で苦しんでいる彼女を見つけて、すぐに近くの理事長室に運んで寝かせたのだ。
しかし恵須実の容態は悪くなるばかりだった。
「悪いと思ってんなら、んぐっ・・・私の言う通りにして、よ。・・・くっ、うう、そのパソコンを立ち上げて、く・・・」
「わ、わかった。」
彼は焦りを抑えてパソコンのスイッチを入れた。
ブゥンと起動音が響き、画面に光が点る。
起動完了まで時間にして2分ほどだったが、やけに長く感じられた。
「ネット・・・んん、繋げ・・・」
言われてすぐに、男はインターネットのケーブルをチェックし、パソコン画面の表示をクリックした。
「イヴィルんチャット・・・検索して・・・ううっ・・・・・」
「・・・・・・。」
カタカタと、男は一心不乱にキーボードを叩く。
真剣そのものの顔は、いっぱいいっぱいでありながら、確かな集中力を携えていた。
「はぐっ・・・・IDは、小文字でi、半角で1、0、くぅ・・・何で私が・・・こんな目に・・・・」
状況を呪いながら、恵須実はIDの続きと、パスワードを伝える。
男はそれを、素早く打ち込んでいく。
「あっ・・・あアン・・・・・・
恵須実の容態は、目に見える勢いで悪くなっていく。
男は険しい顔で、チャットへ繋いだ。



<イヴィルんチャット>

パニック:誰かいませんか
イヴィル:ん、ん、んあっん〜♪ どしたのパニック?
パニック:いえ、代理です
イヴィル:るるる? 君もしかしてオネスト・・・八谷和真じゃないの?
パニック:そうです
イヴィル:やっぱりね〜。やっばいね〜。
パニック:ここに繋げと言われたのですが
イヴィル:ん、ん、んあっん〜♪ な・る・ほ・ど〜、パニックは力の使いすぎでオーバーロードしてるんだね。
パニック:よくわからないですがイヴィルさんは解決できるんですか
イヴィル:出来ないこともないかもだけど、パニックの力を抑えたら、せっかく張った結界が解けちゃうんだな。
パニック:どういう意味ですか
イヴィル:る・ら・ら・ら〜、とってもとっても驚いているのに、至って冷静に質問してくるね。流石は第十の戦士?
パニック:戦士とは何ですか
イヴィル:教えてあ〜げない。この件はヴァイラスに一任してるから、ホントは私が口を出すのもダメなんだよ?
パニック:あなたは何者ですか
イヴィル:ん、ん、んあっん〜♪ 私は“イヴィル”。狂ってる人の味方だよ。そんじゃ、ばいちゃ♪


全身から汗が出てくる。
八谷和真は顔の汗を袖で拭って、再びパソコンを操作し始めた。わけのわからない状況ではあるが、どうすればいいかは理解できている。
馬鹿正直で愚かしい、指示待ち人間である彼だが、指示されたことは愚直にこなすということでもある。
遂行・達成に過度な時間を要するから無能と見られるが、決して無力ではないのだ。
「・・・・・・。」
何年も前のことだ、あの“番号”を書いたメモは既に消失している。
しかし八谷は、きちんとパソコンのフォルダに保存していた。
どこに保存したかまでは覚えていないが、彼は自分のパソコンを開いて、中を片っ端から捜索し始めた。
傍らで恵須実の苦しむ声を聞きながら、かつてない集中力でコンピューターのファイルを開けていく。
単純であるからこそ辛い作業だが、それは八谷にとっては得意領域だ。
(あった!!)

070−38−197169399375105824974944592307816

すぐさま八谷は携帯電話をコールし、懐かしい番号にコールする。
かつては数十回のコールを要したが、今回はすぐに繋がった。
「もしもし、サトリンですか!?」
《こんにちは! 私イヴィル!》
「・・・っ!?」
聞こえてきたのは“彼女”の声でありながら、決して“彼女”のものではない声だった。
《ん、ん、んあっん〜♪ こんな古い回線を知ってるなんて、八谷くんってば物知りなんだゾ♪》
床に落とした携帯電話から、底知れぬ邪気が響いてきていた。
《もしもーし? もひもひ? ひゃくとうばーん! ばばーん! るるるるるるる!》
「・・・・っ、あ・・・」
ふざけた声が恐ろしい。
八谷は真っ青になって、へたり込んだ。
そこへ扉を開いて、2人の人物が入ってきた。
「ふあっ?」
振り向いた八谷の目に映ったのは、三角と才場だった。
「あ・・・」
何を言っていいかわからず、八谷は呆けた声を出した。
それがいけなかった。
「・・・どうやら、あの刑事さんの言っていたことは正しかったようだ。」
三角は、江口白羽と名乗った刑事の剣幕が、大袈裟でなかったと思った。
普段とは別人のような鋭い目で、八谷を睨みつけた。
「残念だよ八谷くん・・・いや、イヴィル・ヴァイラス。」
悶え苦しむ少女を一瞥して、三角は怒りを吐息に交えた。
「え、いや、違います!」
八谷は慌てて首と手を振った。その様子は、とても悪人には見えない。
「・・・。」
三角は考える。これが誤解である可能性を考える。
元より、怒りに身を任せるタイプではないのだ。
(しかし、そう思わせる超能力だとすれば・・・)
先程、才場に話した自説を、反芻する。
横を見れば、才場も行動を決めかねている様子だった。
しかし、その膠着状態も、恵須実の言葉で崩されることになる。
「・・う・・・ァう・・・ヴァイラス・・・来てくれたの・・・?」
その言葉にギョッとしたのは八谷だった。ギョッとして彼は、才場を見た。
その視線に三角も、釣られて才場の顔を見た。
才場の顔は歪んでいた。
「馬鹿が。」
黒い靄のようなものが、彼の手から放たれ、恵須実に入っていく。
「んあ――――っ!?」
恵須実の能力“障壁障害”(スタイミウォール)が強制発動され、三角と八谷は吹っ飛ばされて叩きつけられた。
八谷は気を失い、廊下の壁に叩きつけられた。
三角も痛みで動けなかった。体の痛みだけでなく、心の痛みで、ショックで。
「この馬鹿が。せっかく八谷に疑いが向いていたというのに、くだらない一言で台無しにして・・・。」
「うっ・・・あう、ご、ごめんなさい・・・でも・・・」
苦しかったのだ。
ずっと苦しかったのだ。
耐えられなかったのだ。
「罰として、そこで死ぬまで力を放出してろ。」
黒い靄が恵須実の体表にザラつく。
「やめて・・・・・・やめて―――っ!! ああ――――っ!?」
肉体が痙攣し、失禁すると共に口から泡を吹く。
(長くはもたないだろうが、奴を倒すまで生きていればいい。)
「出て来い、“ガーディアン”! 8年前の決着をつけるぞ!」
荒っぽくパソコンを操作しながら、才場は叫んだ。その顔は、普段の優男が信じられないほどに歪んでいた。
《る・ら・ら・ら〜♪ ムキになっちゃって可愛いゾ〜♪》
八谷が落とした携帯電話は、まだ繋がっていた。
その声に才場はハッと我に返り、ゆっくりと携帯電話を拾い上げた。
「イヴィルさんですか?」
《そうだよ。八谷くんってば、こんな古い回線、どこで知ったんだろうね?》
「電話で教えてもらったそうです。“アインストール”か“トランジスター”でしょう。古い回線は軒並みイヴィルさんに乗っ取られているというのに、馬鹿な奴ですね。ハハハ。」
《ん、ん、そんな単純な話でもないよ。八谷くんの能力が完全なら、乗っ取った回線は軒並み取り返されちゃうしさ。あとそれと廊下の方、注意しなよ?》
「・・・!」
才場が振り向いたのと、その人物が駆け込んできたのは、殆ど同時だった。
「イヴィル・ヴァイラス!」
銃を構えた江口白羽が、怒りと憎悪を込めた目で立っていた。
彼女の能力、空気を圧縮して弾丸のように打ち出す“風翼空弾”(ウイングシュート)が、真っ直ぐ放たれた。

「・・・?」
手ごたえが無い。
それどころか白羽は、自分の体が思うように動かせないことに気付いた。
(これ、は・・・!)
そこへ才場が、クスッと笑って彼女の顎を触る。
「忘れたのかい。君は7年前から僕の支配下にある。」
「あっ・・・」
白羽の顔が、怒りと羞恥で赤くなる。
“イヴィル・ヴァイラス”才場静輝は、白羽の肩、胸、お腹と腰へ、順々に触っていく。
「この美しい肉体も、気高い精神も、全て僕のものなんだよ。パニックの“ヒンダーリアライズ認識障壁”は知ってるだろう? 認識を狂わされた君は、ありもしない方向を撃ってしまったのさ。」
「ひ・・卑怯者!」
「いい言葉だ。より強い者への、良き賛辞だ。」
色鮮やかな白羽の唇に指を這わせ、“イヴィル・ヴァイラス”は笑う。
「優れた能力は、時として卑怯と捉えられることがある。見当違いの批判や、下卑た悪口を投げつけられることもある。君なら理解してくれるだろう?」
「わからないわ、そんなの! わかりたくもない! あなたの言ってることは論理の摩り替えよ! 自分の悪行を正当化する為に、詭弁を振るってるに過ぎないんだわ!」
動けない体で、白羽は果敢にまくし立てる。口が利けるのなら、口で戦うまでだ。
しかし“イヴィル・ヴァイラス”は、堪えている様子が無い。
「優秀な者が才能を発揮するとき、それを悪行と呼ばれることも少なくない。能ある鷹は爪を隠すというが、それは爪を使わないという意味ではないし、雄大な翼や鋭いクチバシは隠せないものだ。ひけらかすなと言われても、優れた者からしてみれば、普通に振舞っているに過ぎない。それで害を被る者がいても、それは劣っている者の責任だ。仕方ないだろう、優れてるんだから・・・。」
“イヴィル・ヴァイラス”の言葉は、彼自身のことを言ってるようでいて、同時に別の誰かのことを言ってるようでもあった。
そのことに心当たりが無い白羽でもない。
「本当に優れているなら、劣った者を導けると、馬鹿丸出しの口を利く人もいる。優れていることと完全であることの違いを理解してない人々だ。」
彼は話を続ける。
「優れていることで好かれ称えられる者は、どうでもいい。そんな人に僕の助けは必要ない。僕が力になりたいのは、優れているがゆえに、はみ出してしまう者たちだ。君には君の正義があるように、僕には僕の正義がある。“イヴィル・ヴァイラス”は常に、こぼれてしまう者の味方であり・・・・・・優れた者の味方なんだよ。」
「どんな大層なお題目を掲げようと、あなたが女生徒たちを弄び傷つけたことに変わりはないわ! 何度でも言ってあげる・・・! あなたは悪よ!」
白羽の腕が少しずつ動く。
彼女の能力“風翼空弾”(ウイングシュート)は、その威力、並みの銃と大きな差があるわけではない。
その真骨頂は威力よりも弾数にあり、空気を撃ち出すゆえに、ほぼ無尽蔵であることが、超能力ならではの利点だ。
それは裏を返せば・・・というより、当然のことであるのだが、刑事である彼女が持っている拳銃には、まだ実弾が残っている。初弾の空砲は能力の使用と共に使っており、次に出るのは実弾だ。
超能力である“風翼空弾”を使うには、相応の精神力を要するが、拳銃なら引き金を引くだけでいい。
心を操られようが、指さえ動けば、心無き弾丸が発射される。既に撃鉄は起こした。
(角度・・・あと・・・もう少し・・・・)
銃口が足へ向いた。
引き金を。

ダァン

銃声と共に、男は悲鳴を発して唾を吐いた。
だが、それは“イヴィル・ヴァイラス”ではなく、八谷和真だった。
「あうううう!?」
足を撃たれて失神から目覚めるなど、最悪の目覚め方と言ってもいい。
「あ・・・そんな・・・?」
呆然とする白羽を、背後から“イヴィル・ヴァイラス”の手が、腕を掴む。
「認識を狂わせてると言っただろう? 君が僕の足だと思っていたのは、八谷の足だったのさ。」
「・・・っ!」
腕を動かすことが出来ない。
細い腕は、“イヴィル・ヴァイラス”に掴まれたまま、拳銃を取り上げられて手錠をかけられた。
「君が高校生だった頃の3年間、たっぷりと可愛がってあげたことを、思い出してみるんだ。」
「・・・っ、許さない・・・あんただけは絶対!」
「ふっ・・・。」
睨む白羽の顎をクイッと持ち上げると、“イヴィル・ヴァイラス”は笑った。
「そんな威勢のいい口も、じきに男を求める甘美な喘ぎを発するのさ。ほら、もう君の体は欲しがって疼いている。僕に支配されたがっている・・・。」
“イヴィル・ヴァイラス”の手が、胸の先を弄り、スカートの下を這う。
「くっ・・・んああああ!?」
口からは、すぐにでも善がった声が漏れてしまう。
心は屈しないが、体は今にも腰砕けになりそうだ。
(これは超能力・・・超能力のせいよ・・・!)
必死に支配を拒む白羽だが、それを易々と踏みにじるようにヴァイラスは追い討ちをかける。
「任務に、こんな短いスカートが必要なのかい? こんないやらしい下着が必要なのかい?」
下着越しに秘所をまさぐりながら、ヴァイラスはもう片方の手で制服のボタンを外していく。
「・・・っ、・・・っ!」
こらえようとするが、唇の隙間から熱い息がスタッカートで放たれる。
「認めるんだ。君は僕に犯されたがっている。その証拠に、これから君は人生最大のエクスタシーを味わい、そのときこそ僕の“暗黒顆粒”(チャームウイルス)が心の奥底まで染み渡る。従順で可憐なしもべになるんだ。」
「・・・っく、う・・・」
秘所を弄る指が、体を縦に貫く電撃のように感じる。
身をよじって逃れようとするが、“イヴィル・ヴァイラス”の能力で動きが制限されているせいで、自分から腰を振っているような形になってしまう。
「いいよ、実にいい。とても魅力的だ。乱れる君は美しい。」
「馬鹿に・・・っ、しないで!」
「褒めているのが理解できないのかな。僕のような上等な男に愛されるのが、女の幸せというものだ。」
「それが馬鹿にしてるっていうのよ! あなたは女を愛してなんかいない! いいえ、誰も愛してなんかいない!」
「ふっ・・・確かに僕は、特定の誰かだけを愛することはないさ。そういう意味では、僕は誰も愛してはいないのだろう。しかし女を愛している。」
「くぅ・・・っく、あなたが・・・あなたが愛しているのは、う・・・女じゃなくて、女の体でしょ! 女を性的にしか見ないことの、何が愛!? 笑わせないで! 女が年老いても愛せるのが本当の愛よ! あなたの愛は偽物だわ!」
怒りが、快楽に溺れそうになる肉体を凌駕する。
誇りが、神経を蝕む誘惑のウイルスを焼き払う。
信念が、男に支配されようとしている自分を正気に戻す。
(そう)
(あたしは)
(正義の為に)
(その為に)
(彼女に)
催眠能力は、大西警部が言うほど万能ではない。
神化系能力でもなければ、100パーセント有効な催眠能力など無い。
対テレパス訓練を積んでいるか、それと同じような、日頃から精神の鍛錬を欠かさない者ならば、B級のヒュプノシスに対して完全にかかることは殆ど無い。
四番以降の邪戦士の中で、真にA級戦力たる者は1人もいない。ヴァイラスとてB級に過ぎないのだ。
「死ねっ、女の敵!」
白羽の能力“風翼空弾”(ウイングシュート)が放たれた。
それは真っ直ぐ“イヴィル・ヴァイラス”を貫き、ぶっ倒した―――
(殺った!)
―――ように見えた。
(・・・?)
倒れたはずの“イヴィル・ヴァイラス”の姿が無い。それどころか、再び体が動かなくなっている。
「あ・・・」
震える白羽の後ろから、“イヴィル・ヴァイラス”の声が響いてきた。
「2つ、勘違いしているようだね。」
背後から心臓を掴まれた気分だった。
「女を、下卑た欲望の捌け口にするような男こそ、僕が最も軽蔑してやまないものだよ。若く美しい女を求めるだけで、自らを磨こうともせず、年老いた女をババアだの賞味期限切れだのとほざくカスども・・・。そんな奴らこそ、女の敵だ。若く美しい女を好むなら、女が若さと美しさを保てるように行動しなければならない。“女を愛する”というのは、そういうことだ。“姿形がどうなってもいい”と主張するのなら、それはもういい。そういう者には男女限らず、僕の助けは必要ない。豊かな内面を持っていれば、外見にこだわることもないだろう・・・。しかし人間、そうそう成熟した内面など持てないものだ。君から若さと美しさを取ったら、何が残る? 僕に出会うまで、君の人生は何色だった? 僕を憎み続けることで、君は自分を磨くことが出来たんだ。尊敬に値する優秀な者を敵とすることが出来て、嬉しいだろう! 僕と知り合えて、僕に支配されて、嬉しいだろう!」
背後から体に指が這う。
乱れた服の中に、“イヴィル・ヴァイラス”の手が進入する。
「もうひとつは、この期に及んでも僕を甘く見てるってこと・・・。今まで君に割いていたのは、全能力の20パーセントに過ぎなかったのだ!」
「なっ・・・! そん、な・・・!?」
「動けまい。今ので30パーセントだ。そして、これが60パーセントだ!」
「んぐっ・・・!?」
恐ろしい感情が心の底から溢れてくる。
この男に屈服し、身も心も委ねたい。それを観測し否定する理性が、熱いナイフに切り刻まれるバターのように、崩れ溶かされていく。
「ああっ・・・・ダメッ・・・嫌ァ・・・・嫌あああああっ!!!」
白羽は昇天し、だらんと口を開けて“イヴィル・ヴァイラス”の手に落ちた。

「さあ、白羽。昔と同じように、僕の言うことに従ってごらん。」
「は、はい・・・。」
笑顔の“イヴィル・ヴァイラス”に向かい合って、白羽は俯きながら返事をした。
どことなく、ぎこちない動作で、震えている。
「どうやら、まだ抵抗があるみたいだね。羞恥心が理性に味方しているのかな。」
「あ、う・・・」
「けれど僕の命令には逆らえない。もはや君は、僕に絶対服従なんだ。さあ、服を脱いで。」
「い、いやあ・・・」
「脱ぐんだ。」
「ああ・・・そんな・・・」
嫌がりながらも、体が動いてしまう。
白羽は服を脱ぎ捨てて下着姿になった。ほんのりと青みがかった、白い下着。
「いいね、とても美しいよ。その恥らう顔と合わせて愛らしい。」
“イヴィル・ヴァイラス”の手招きが、操られた状態の白羽を引き寄せる。
「君の唇をいただくとしよう。」
「や・・・ああ・・・ダメ・・・・」
しかし体中すみずみまで“暗黒顆粒”(チャームウイルス)に侵食されている白羽は、言葉で拒絶するのが精一杯。
「その反応、もしかして僕が初めてかい?」
「・・・っ、うう・・・」
「どうやら、そのようだね。ファーストキスが僕みたいな上等な男で・・・嬉しいだろう!」
言うが早いか、“イヴィル・ヴァイラス”は白羽の唇を貪った。
「んんんんんっ!?」
全身に電流が走ったように、快楽の嵐。
まるで稲妻に撃たれたようだ。
「ん―――――っ!!」
キスだけで達してしまった。
これも“暗黒顆粒”の効果なのか。
唇が離れた後も白羽は、蕩けた目つきでピクピクと痙攣していた。
「下着は僕が脱がしてあげる。」
ブラを外され、ショーツも下げられる。
抵抗できない。
「あン・・・・・」
「セクシーな君の姿に、この“イヴィル・ヴァイラス”も興奮してしまったようだ。」
はちきれそうなズボンの膨らみが、外気へ触れて、その姿を現す。
初めて間近で目にする、男のシンボル。その凶悪さに白羽は恐れおののく。
「さあ、僕に跨って。自分から腰を落として、入れるんだ。」
「い・・・・や・・・・」
「まだ抵抗できるとは、理性だけとは思えない・・・。ひょっとして。」
“イヴィル・ヴァイラス”は、白羽の中に指をいれ、まさぐった。
「あ・・・アッ・・・」
「そうか、僕が初めての男になるわけだね。恐れることはない。素敵な初体験をプレゼントしてあげよう。」
“イヴィル・ヴァイラス”は白羽の脚を開かせて、間に入った。
「そのまま、ゆっくり腰を下ろすんだ。」
「ああ・・・」
「僕に初めてを捧げるんだ。さあ・・・!」
「は・・・」
脳内が暗黒の波に染まっていく。
集団すら支配下に置ける“暗黒顆粒”の、実に60パーセントに精神を冒され、白羽は。

堕ちた。

「はい・・・“イヴィル・ヴァイラス”様・・・」
幸せそうに蕩けた顔で、白羽は腰を下ろした。

それと殆ど同時だった。
「うおあああおっ!!」
飛び込んできた男の体当たりによって、白羽の体は腰が落ちきる前に、“イヴィル・パニック”の方へ転がった。
「ぐっ・・・」
“イヴィル・パニック”も、まだ生きている。かろうじてだが生きている。
クッションにしてしまったことを申し訳なく思いながらも、三角龍馬は“イヴィル・ヴァイラス”に向かい合った。
体格的には不利だと見ていたが、しかし“イヴィル・ヴァイラス”の表情に余裕は無かった。
「なぜ・・・“暗黒顆粒”(チャームウイルス)が効かない・・・?」
何故と言われても、三角にもわからない。
三角に向けられた黒い靄は、煙のように消えていく。
「才場くん・・・才場・・・!」
三角が睨む、“イヴィル・ヴァイラス”才場静輝は、ペニスを出したままだ。
見たくはないが、有利だと思った。
(そんな格好で、まともに戦えるものか。)
両親に習わされた形だが、三角は格闘技の心得がある。見た目より多少は強い。
それを知っている“イヴィル・ヴァイラス”は、思わず唾を飲む。
そのとき、床の携帯電話から声がした。
《ん、ん、んあっん〜♪ 三角くんの能力が、発動しちゃってるみ・た・い、だね♪》
「・・・イヴィル、さん。」
三角を見据えたまま、“イヴィル・ヴァイラス”は苦々しく呟く。
“イヴィル”に対する敵意ではなく、ここで“イヴィル”が口を挟むことの意味を察したのだ。
《る・ら・ら・ら〜、三角くんの“老化現象”(タイムオールド)は、読んで字の如く、老化を促進する能力なのら〜。るりゃりゃ〜。つまり“暗黒顆粒”は老化して滅されてしまったわけ。天敵みたいなものだべさ〜。あひゃひゃんひゃん。そして天敵であるのは》
その言葉が終わる前に、八谷のタックルが“イヴィル・ヴァイラス”を吹っ飛ばした。
「ごっ・・」
《・・・八谷くんの“電子保護”(マインドガード)も同じだって言おうとしたんだけど〜遅かったプー?》
遅かったのは“イヴィル”ではない。
こうして“イヴィル”が口を挟んできた時点で、“イヴィル・ヴァイラス”の負けだと判定されたに等しいのだ。
《もちろん“ガーディアン”の“電子防御”(プロテクト)に比べれば弱っちい能力だけど、あれが“外からの防御”であるのに対して、“電子保護”は“内からの防御”・・・つまり・・・》
ゆらりと、立ち上がる気配があった。
江口白羽と、邑甘恵須実。
“イヴィル・ヴァイラス”の支配から解き放たれて、攻撃準備OK!
恵須実の“リフレクション物理障壁”が逃げ場を封じ、そこへ白羽が、ありったけの力を込めて、“風翼空弾”!
(美しい。)
“イヴィル・ヴァイラス”は、ロビンフッドのセリフを思い出していた。

『我らの道を切り開け、疾風の如き金の矢よ』

一糸纏わぬ姿から撃ち出された風の刃が、“イヴィル・ヴァイラス”の心臓を貫いた。

再び携帯電話から声が響いてきたのは、そのときだった。
《かんぱーい!》
4人がギクッと驚いたのと、携帯電話から稲妻が出てきたのは、殆ど同時だった。
電撃は“イヴィル・ヴァイラス”を包み込むと、そのまま彼の体を携帯電話に引きずり込んでしまった。
「“雷撃雷化”(トゥールアクセル)!?」
驚愕する恵須実に、“イヴィル”の声が響く。
《いや〜、完敗。ヴァイラス完敗。とんでもない日だね〜。アタッカーをはじめ、味方の裏切りを想定してなかったのが、彼の敗因かな〜。本領発揮する前に死にたかないだろうから、ちょこっと無理してでも返してもらうよんよん? 次回、楽しみに待っててね〜、ばいちゃ♪》
「待て!」
恵須実が障壁を張る。
《無理しちゃダメだぞ、パニックちゃん。裏切りのことなら不問に処すから、また私に会いたくなったら、いつでも戻ってきてね〜。にゃははははん♪》
それっきり、携帯電話は沈黙した。


学校を囲っていた三重障壁が崩れ始めてから数分。
完全に消えた。
警官隊が突入し、生徒の保護に向かう。
その最中、大西と小森、ホログラムの“サトリン”と“ガーディアン”の前に、電撃と共に帽子の女が姿を現した。
「る・ら・ら・ら〜、ひっさしぶりィ、サトリン? 相変わらず人助けに励んでいるのかな?」
「イヴィルちゃん! こんなこと、もうやめてよ!」
余裕の表情で唇を舐める“イヴィル”とは対照的に、“サトリン”の方は焦っている。
「“イヴィル”・・・!」
“ガーディアン”が殺気立った目で、足を前に出した。
「ん、ん、んあっん〜、ここで戦おって気は更々ないよ。私はヴァイラス助けるのに無理しちゃったし、そっちは“損傷引受”(ダメージシフト)で生徒全員の傷を引き受けちゃってるでしょーん。具現化してられる残り時間だって少ないんだからあ。お互いに。」
「の・の・の・の・・・。」
「ああん、あはっ、そう警戒しなくても大丈夫だよ〜っ、ホントのホントに顔見に来ただけだから。今回は全て私の思い通りに事が進んだし、満足♪ ま、それは同時にサトリンの思い通りってことでもあるんだけどね〜。」
爪先を地面にコツコツと当てて、“イヴィル”は笑みとも怒りともつかない表情をしていた。
「サトリン、サトリン、サトリンリン、お前は誰の味方なの?」
その問いに“サトリン”は、真剣な顔で答える。
「私は“サトリン”。困ってる人の味方だよ。」
「私は“イヴィル”。狂ってる人の味方で・・・・・・お前の、敵だ。」
ゾッとするような声を最後に、“イヴィル”の姿は跡形も無く消えていた。


- - - - - -


<イヴィルんチャット>

イヴィル:る・ら・ら・ら〜、おつかれカツカレー!
アイシー:さむ・・・
バトラー:寒いですイヴィル様。
イヴィル:わあ酷い2人とも。今度のギャグなら絶対大爆笑だと思っていたのに。しくしく三十六。
バトラー:何を考えて生きてらっしゃるのですか?
イヴィル:そこまで言う?
アイシー:キャハハハハ!
バトラー:寒いギャグのことより、ヴァイラスどうなりました?
アイシー:そーそー、クソ寒いギャグなんかどうでもいいから。
イヴィル:グレてやる・・・。
ヴァイラスが入室しました
ヴァイラス:不覚を取りましたが、何とか無事です。イヴィルさんに助けてもらわなければ、人生終了でした。
アイシー:あ、ヴァイラス〜。きゃっほー。
バトラー:お元気そうで何よりです。
ヴァイラス:それが・・・
イヴィル:ヴァイラスよく頑張ったね〜。おつかれカツカレー!
アイシー:イヴィル空気嫁
バトラー:どうしました>ヴァイラス
ヴァイラス:僕だけでなく、イヴィルさんまでしばらく動けないのです。申し訳ないです。
バトラー:そうですか・・・。やはり無理が祟りましたね。
アイシー:まー仕方ないってー。私もバトラーも動けないのに、ヴァイラスを失うわけにはいかないもんね。
イヴィル:ねえねえヴァイラス、私のギャグどうだった?
アイシー:氏ね
バトラー:・・・
ヴァイラス:ギャグって何か言いましたっけ。
イヴィル:がびーん! 無かったことにされてる坊主! ギャグ要員としてのプライドが傷ついちゃう!
バトラー:・・・いつからギャグ要員になったんですか?
アイシー:そんなことより、これで相手は十戦士が揃っちゃったわけで。
バトラー:しかも、こっちは半分に減りましたからね。
イヴィル:寂しいな〜。
アイシー:キャハハハ、ザコが抜けて丁度いいって。
バトラー:同胞を見下すような物言いは慎みなさい、アイシー。
アイシー:だって、ヴァイラス以外の6人は、邪戦士だってのが信じられないほどの出来損ないじゃん?
ヴァイラス:まあ、僕の能力で強化して、あのザマですからね・・・。
アイシー:せっかくイヴィルから与えられた能力なのに、何やってんの頭おかしいの風邪ひいてんの〜?
バトラー:まあ、気持ちはわからなくもないですが・・・。
イヴィル:る・ら・ら・ら〜、与えられた能力の使い方は、それぞれの勝手だよ。
アイシー:キャハハハ、それでイヴィルは悔しくないわけ? プレゼントをドブに捨てられて!?
イヴィル:ん、ん、んあっん〜? アイシーちゃんは私の心配してくれてるのかな?
アイシー:主に頭をね。キャハハハハ!
バトラー:悠長なことを言ってる場合ですか。
イヴィル:焦らない、焦らない。ひと休み、ひと休み。そろそろ夏休みだし、プールにでも行ってきなよ。んあっん〜♪






   第十四話   了

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「サトリン」第二部まとめ読み
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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/10/01 01:06

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「サトリン」 第十四話 白羽の矢 (結) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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