佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス (戦闘U)

<<   作成日時 : 2016/10/01 00:40   >>

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それから月日は矢のように過ぎていった。

2004年2月、七村が“イヴィル・テンタクル”を捕捉するも、すんでのところで逃亡される。
2004年3月、二葉が“イヴィル・ポイズン”を捕縛。
2004年4月、龍閃村へ七村と十島が向かう。
2004年5月、九古鈍郎の能力デビュー。
2004年6月、十島の単独任務。六道が“ファイバー”として覚醒。
2004年7月、三角、八谷が、それぞれ“オールド”、“オネスト”として覚醒。
2004年8月、みんなでプールへ行く。
2004年9月、10月、11月・・・

あれから1年が経とうとしていた。
約束のクリスマスまで、後わずか。鈍郎は自分の能力制御に、自身が持てるところまで来ていた。
この能力で、妻を傷つけてしまうことはない。それが予感から確信へ変わり、意識するまでもない境地へ達した。
(いける・・・!)
三角に諭されてから、自分の中で歯車がガッチリ噛み合う感覚が、頻繁に生じるようになった。
からからと、がらがらと、がりがりと。
軽快と重厚のハーモニックには、以前までの軋みは感じない。
このとき鈍郎は、自らの能力“偶石握殺”(サークルファイア)を完全に制御した。精神と連動して、肉体も軽い。
能力トレーニングの一環として行っていた、身体トレーニングも、違和感を生じなくなっていた。
子供の頃から運動が苦手で、よく見下されてきた鈍郎は、運動をする度に嫌な記憶が蘇る。それが無くなったわけではないが、それに伴うギクシャクが消えた。
肉体的な修練と、精神的な成果が、ようやく自分の中で噛み合ってきた。
クリスマスまで、あと5日、4日、3日・・・。
気力が充実し、意識がクリアーになる。
そして12月24日。
1年前は七村の勘違いで襲われて、大変だったが、今となっては笑い話に出来てしまう。そんな自分は、成長したものだと思う。
子供の頃は、大人になれば成長は止まると、漠然と思っていた。それは限界に達するという意味ではなく、人格が完成するという意味であり、20歳になっても幼い自分に吐き気がしたものだった。
20歳になっても完成に程遠い自分は、人間として根本的な欠陥があるのではないかと思った。
しかし、そうではない。子供の頃の自分が思い描いていた程度の“完成”などは、大人になった自分から見れば未完成も甚だしいということである。
成長していないのではない。自分の見る目が厳しくなっていたのだ。
考えてみれば、成長しているのなら、それを評価する目も成長しているということ。大人の成長は子供の成長とは違うが、しかし大人も成長するのだ。
物事を気にしないのではなく、気にしつつも芯はブレない。揺らがない。
それこそ“不惑”。
孔子の言う40歳まで、あと6年を切った。この感覚を定着させるには、丁度いい時間の猶予を与えられた。
1年前のことが、まるで昨日のように思い返される。
小さなケーキを買って、夜道を歩いていると、あのときのことが鮮明に思い出される。
(七美ねえさんも、この1年で柔らかくなった。)
彼女を義姉と慕うことも、以前なら考えられなかった。邑甘富良実を救う為に奔走する中で、家族のような親しみを感じたのだ。
性的な意味でなく、本当に血を分けた姉のような感覚だった。
(・・・まさか、な。)
ふと浮かんだ想像を押し込め、鈍郎は茶倉に考えが移った。
知的でクールな姉系美人。けれど情熱的な面があると知って、もっと好きになった。
冷たさの中に熱さのある人間が好きだ。
熱血を勘違いしている人間や、思考停止の冷笑的な人間が多い中で、ようやく出会えた、器用なクールさを持つパートナー。
(手放すものか。)
心が若返る。
「茶倉。」
妻の名前を呼んだ。
「愛してる。」

「やァん、萌えるーわ☆濡れるーわ!」

「・・・!?」
いつの間に側にいたのか気付けなかった。
毒々しい“E”の文字の下に、邪悪に楽しげに笑う双眸があった。
「初めましてのコンバンハ! 私は“イヴィル”と申します♪ アナタのお名前なんてーの?」
思わず飛び退いた鈍郎の正面で、サトリンそっくりの少女は、踊りながら指を振る。
「何者だ!?」
「る・ら・ら・ら〜、名乗ってるよ、“イヴィル”だよ。どうしちゃったの“インビンス”?」
「名前を言えば、何者か明かしたことになるのか?」
「ありゃま、こりゃウッカリだ。失礼、失礼、ここまで動けるようになったのが嬉しくてさ。」
見れば見るほどサトリンに似ていた。
あどけないなりに曲線の豊かな肉体に、くるくる変わる表情。
目つきや口調などに違いはあるが、サトリンが見せている別面だと言われたら、しっくりきてしまう。
「サトリン・・・なのか?」
「ん、ん、んあっん〜、よくぞ見抜いた。ある意味そういうことだからね。でも“インビンス”・・・鈍郎が知ってる“サトリン”じゃないから、私のことは“イヴィル”って呼んでくれると嬉しいなあ。」
(邪戦士について、七美ねえさんは多くを語らなかった・・・。それは、こいつのせいか?)
鈍郎は冬なのに、全身が熱くなっていた。
1年前とは違う。あのときの比ではない、そんな危機だ。
(色々おかしいこと、腑に落ちないことがあったが・・・それらは全て、こいつに繋がっているのか?)
「それでイヴィル。ここへ来たのは、私を殺しに来たのか?」
「る・ら・ら・ら〜、そんなわけないじゃん。赤点だなあ、もう。赤は赤でも血の赤じゃない。もちろん共産主義でもない。赤ちゃん作りに来たんだよ♪」
目の前の少女は何を言ってるのだろう。
サトリンそっくりな顔で、サトリンではない邪悪な目つきで。
「“暗黒顆粒”(チャームウイルス)の効果で、君の肉体から自由は奪われた。そして“電子防御”(プロテクト)の効果で、周囲に結界を張ってある。邪魔者はいない。」
淫らな笑みを浮かべながら、少女は服を脱いでいく。
自分より少し背の低い、極めてスレンダーな肢体。それでいて、出るとこは出ている、均整の取れたボディライン。
白く滑らかな肉体は、少女らしい瑞々しさに溢れているばかりか、成熟した色香も備えていた。
まるでアニメのヒロインのような、不自然なほどにパーフェクトな肉体。
この骨格で人間は生きていられない。普通の人間ならば、だが。
「ん、ん、んあっん〜、どうかな、私の体は。ずっと寝たきりだったから骨と皮だけになっていたんだけど、“揺体変化”(オクトパイレン)を使えば、ほれこの通り、ここ掘れワンワン、ニャンニャンニャ〜♪」
電子力場で作成した猫耳と肉球を付けて、“イヴィル”はポーズと鳴き真似をする。
(こいつの能力は、コピー能力?)
死んだ者の能力まで使っているということからしても、裏切りよりは可能性のある推論だ。
しかし違和感は他にもある。
(こいつ・・・服を、“脱いだ”?)
サトリンよろしく電子力場で作った肉体だとしたら、服など自在に消せるはずだ。
そして、ずっと寝たきりだったというセリフ。
まさか。
まさか。
「実体・・・なのか・・・?」
「そうだよん。だから言ったでしょ、子作りするってえ。」
「・・・!」
鈍郎は青くなった。
相手が電子力場の幻影であれば、不可抗力であることも加味して、オナニーのようなものだと自分を納得させることも、ギリギリ出来たかもしれない。
だが、実体なら話は別だ。
それが不可抗力であれ、他の女とセックスするなど、妻に対する裏切り行為以外の何物でもない。
「ん、ん、んあっん〜、おっきくなってるう♪」
“イヴィル”は嬉しそうに唇を舐めた。
「くっ・・・!」
「る・ら・ら・ら〜、悔しがることないじゃない。オトコノコとして正常な反応でしょ? 自信ついちゃうな〜♪」
鈍郎の服が、見えざる刃で切り裂かれ(それも器用に服だけを!)、素肌が顕わになった。
正直あまり体に自信は無い。“ガーディアン”の指導で鍛えたといっても、常人程度だ。
しかし“イヴィル”は、お気に召したようで、邪悪な目を輝かせて唇を舐めている。
「ん・ん・んあっん〜、やっぱオトコノコの体ってイイなあ・・・。私も男に生まれたかったくらいだよ。」
「くあっ・・・!」
触れられてないのに、性感が高まる。“暗黒顆粒”の効果だろうか。
「君って童貞なんだって?」
「それがどうした!?」
「る・ら・ら・ら〜、馬鹿にしてるわけじゃないよ。むしろ楽しくなってきたよね? これから君の初めて、いただいちゃいまーす☆」

「ん・ん・んあっん〜、オンナノコの純潔に拘るオトコノコって結構いるじゃん?」
鈍郎を押し倒して、“イヴィル”は言う。
跨る格好になっていて、鈍郎の先端が彼女の濡れた肉に当たっている。暗くて見えないが、毛の感触は無い。
「好きな子の処女は自分が奪いたい、自分以外の男とは肉体関係を持たない。そんな女が理想ってね。」
何の話をしているのか、おぼろげに理解できた。
だからこそ逃れようと体をよじるが、“暗黒顆粒”(チャームウイルス)の効果で動かない。
「処女性に拘ることを悪く言おうってワケじゃなくて、君ならわかるかな。オンナノコにも、オトコノコの純潔に拘るのが結構いるってこと。」
「お前も・・・そうなのか・・・?」
「ん・ん・んあっん〜、イイ男の初めてを奪うなんて、サイッコーに興奮するじゃなァい! アイシーには悪いけど、こーゆーのって早い者勝ちだと思うし?」
「くっ・・・!」
「る・ら・ら・ら〜、あんな美人な妻がいるってのに、セックスさせてもらえないなんて、かわいそー。」
「黙れ! 育てる力量も愛情も無く、無責任な性交など出来るか!」
「ん・ん・んあっん〜、ということは〜、セックス自体は、シたいと思ってるんだよね。オンナノコの中に入れて、ドピュドピュしたいんだよね?」
「美人妻とイチャつくだけで、俺は満足だ!」
「る・ら・ら・ら〜、そうでなくて、私なら責任とか関係ないってこと。これ本当よ? 無責任な中出しエッチ、しちゃいなよ☆」
「断る! 俺が愛しているのは茶倉だけだ!」
「そうだよね、そうでなくちゃ。複数のオンナノコとエッチしたいオトコノコの童貞なんか、いらないもんね。貞操観念の強い男の、子供が欲しいんだあ。私の目的の為にもね♪」
「目的・・・?」
「ん・ん・んあっん〜、残念ながら私は、永遠に生きる神などではないのさ。0と1の世界では不死身に近い私でも、1の世界では無力に近いからね。自分の弱さにヘドが出るくらい・・・。」
「まさか・・・」
「そっ♪」
“イヴィル”はウインクしながらピースサインを作った。
「子供の肉体を乗っ取り続けながら、私は生き続けるの。血族が多いと、障害を持った子供が生まれやすくなるから、一子相伝がいい。」
「・・・っ!」
ゾッとするようなことを聞いて、鈍郎は背筋が寒くなる。
「ん・ん・んあっん〜、君の子孫、私に頂戴?」
ぐにゅっと、熱く柔らかいものが押し当てられる。
「やめろ・・・やめろっ!」
「体と違って言葉は信用できないな。平気で嘘をつくんだから。」
「やめろ・・・!!」
「ん・ん・んあっん〜、私は君の子供にもなるわけだから、パパって呼んじゃおっか。ねえ、パパ、私を犯して?」

これまで狂った人間には大勢出会ってきた。
少なからず人間は、狂気を宿して生きている。それが多いか少ないか、制御されているか否か、自覚か無自覚か、そうした差異はあるだろうが、誰もが狂気を抱いて生きている。究極的には生まれたばかりの赤子でさえ例外ではないと、鈍郎は思っている。
“大多数が正常と判断すれば、いかなる狂気も正常と認識される。我々の知る正常の大部分は、そういうものだ”
この言葉を、鈍郎は心の宝箱に保存している。
その鈍郎をしても、目の前の少女は、少女の形をした“何か”は、かつてないほどの狂気だった。
「ん・ん・んあっん〜、処女喪失の瞬間! 意外と痛いけど、ちょっとカ・イ・カ・ン♪」
鈍郎のサイズは普通とはいえ、乱暴に処女に突っ込むには大きすぎた。これが“イヴィル”でなければ、泣き叫んでも、おかしくないだろう。
「ん〜、君の、なかなか、イイね。あはっ、といっても、他の男、知らないんだけど、さ。」
「ぐっ・・・く・・・」
「あれ? やめろって声が聞こえなくなったよ? 意識を集中してないと、今にもドピュドピュ出ちゃいそうなのかなあ。自分の具合の良さに誇りが持てそうだよ。」
「ヘドが・・・出る・・・っ!」
わざとらしく聞き耳を立てるポーズの“イヴィル”に、鈍郎は涙を滲ませながら悪態をついた。
妻以外と関係を持ってしまった事実が、彼を打ちのめしていた。
「る・ら・ら・ら〜、ヘドでも精液でも思う存分ぶちまけるとイイよ。あ、動けないようにしてたんだっけ、悪い悪い。もっと動いてあげる・・・あン、まだ、ちょっと、痛い、かな。」
“イヴィル”の中は、熱くドロドロで、鈍郎をキツく締め付けていた。
破瓜の血は愛液で流されて、水溜りが出来ている。
「そうそう、特別ゲストを用意しておいたよ。ん・ん・んあっん〜、電話しといたんだ。そろそろ来る頃だね、あ、ほら、あの子が駆けて来る♪」
「・・・!?」
汗で滲む視界に移ったのは、重火器で武装した茶倉が、血相を変えて走ってくる姿だった。
「ん・ん・んあっん〜、ヒーローは遅れてやって来るもんだね。この場合はヒロインなのかな?」
「鈍郎に何してるのっ!!」
「る・ら・ら・ら〜、レイプで童貞いただき中。指一本だけ“雷撃雷化”(トゥールアクセル)!」
“イヴィル”の向けた人差し指が、巨大な雷光に変わり、茶倉に降り注いだ。
「あああああっ!!」
「うっ・・・」
妻の悲鳴に、鈍郎は体が反応してしまう。
悔しくて、申し訳なくて、情けない。
「おうっ? 今ビクンってなった? やっぱ夫婦愛だね〜感心感心。」
「あな・・・た・・・」
雷撃を浴びて倒れた茶倉は、何とか意識を保っている状態だった。
「茶倉・・・茶倉ァアアア!!!」
耐えられなかった。
「んんっ!? んんっ、んあっん〜! ドビュッ、ドビュッ、してるよ! やったあ!」
「あうっ・・・くあっ・・・・!」
いったん堰が切れてしまえば、溜め込んでいた水量は、止め処も無く理性を押し流した。
“暗黒顆粒”が、鈍郎の奥底まで浸透する。
(キモチイイ)
彼の顔が邪悪な快楽に歪み、それを見る茶倉は絶望に染まる。
「あなた・・・あなたあああ!!」
「イイねイイねえ最高だね〜、その夫婦愛オイシイですモグモグ! でも茶倉、君が悪いんだよ? 子供が欲しくないなら〜、ピルでも飲んで、コンドームか何かも使って、それでも出来たら、堕ろせばよかったんだよ。セックスを楽しんで、無責任に命をドブに捨てるのって、サイッコーの気分だと思わない? ・・・あ、それだと体に負担かかって、肌荒れたり体型が崩れたりする心配があるのか。じゃあ、君が邪戦士になれば解決するんじゃね?」
“イヴィル”は手のひらにシャボン玉のような黒い球体を作り出した。
「これは名付けるならば、“人格付与”(インストール)。復元可能な“人格消去”(マインドデリート)と違って、取り返しの付かないやつ〜♪ 精神に変なモノが混ざって、ひとつになっちゃうの。これ、あげるね。」
「や、やめろ・・・やめろおおおおおおおおお!!」
絶叫する鈍郎の前で、暗黒が茶倉の中に侵入した。
「うぐっ・・・あっ・・・ん・・・・」
「茶倉ああっ!!」

「ん・ん・んあっん〜、世の中は楽しいことが多いけど、嫌なことが多くて多くて、どうしようもない世界なんだよね。いつの時代でも、どうしようもなく嫌なことを引っ被る者が出てくる。狂気は無くならないし、偉大なる狂気は無くならない。そして邪悪も無くならない。私は“イヴィル”。狂ってる者の味方だよ。おふたりさん、もう善人ゴッコは疲れたろ? おしまいにしようよ。そして始めよ? 私は歓迎するよ。」
いそいそと服を着てから、“イヴィル”は両手を広げて優しく笑った。
鈍郎と茶倉は、黒色の電子力場に包まれながら、虚ろな目で黙っている。
「ようこそ狂った世界へ。ん・ん・んあっん〜、“イヴィル・プランク”に“イヴィル・ピクチャー”。十一と十二の邪戦士よ。」
ビシッと何かが割れるような、あるいは孵化するような音を立てて、2人の双眸に不気味な光が宿った。
「・・・何だか、清々しい気分だな、茶倉。」
「・・・ええ、あなた。これから邪戦士として、イヴィル様の為に働きましょう。」
「そうだな・・・その前に、茶倉の処女をいただこうか。」
「喜んで。あ、ちょっと待って。私の能力“魔道絵筆”(ペンタブレット)で、性感の設定を高めておくわ。痛いのは無駄だもの。」
「ついでに俺の精力も回復させてくれ。」
「OK、設定完了よ。」
「流石、早いな。俺の能力は戦闘面にしか使えないから、羨ましいぜ。」
「その能力で私を守ってくれればいいわ。」
「そうだな。茶倉は俺が守るぜ。」
茶倉と鈍郎は、互いに邪悪に微笑み合った。
「ん・ん・んあっん〜、麗しき夫婦愛だね。感動のあまり涙が出そうだよ。うん。」
「ありがとう、イヴィル。お前のおかげで吹っ切れた。そうだ茶倉、ただ性感を高めるだけじゃ芸が無い。俺が茶倉の名を呼んで、愛してると告げるたびに、性感が高まるってのはどうだ?」
「いいわね! 邪戦士になったおかげで、素晴らしいアイデアが湧いてくるわ!」
「しかし初夜が路上ってのも味気ないな。イヴィル、どっかイイ場所あるか?」
「ん・ん・んあっん〜、そうだね〜、幾つか候補を検索してみるよ。」
「ほお、脳に直接画像が入ってくる。こりゃ便利だ。」
「どの場所も素敵だけど、それだけに迷うわ。」
「ゆっくり選びたいところだが、茶倉の能力でギンギンなんだよな。今すぐナマで中出ししたい。」
「それよ! 私の能力なら、ちょっと時間はかかるけど、いいとこ取りの場所を構築できるわ! この為にあるみたいな能力ね!」
「その手があったか・・・。よし、イヴィルは邪魔が入らないように見張っ・・・・・・あ?」
「え?」
「る・ら・ら・ら〜、うん、残念だよ、おふたりさん。どうやら邪魔者が来ちゃったみたいだね。空気の読めない奴らにヘドが出そうだよ。」
“イヴィル”の睨む先に、2人の少女と、1人の青年がいた。
それらの顔に茶倉も鈍郎も、見覚えは無かった。

やって来た3人のうち、青年は奇妙なポーズで語り出した。
「当たりき車力の鬼くらげ! おまけにお客がホイサッサ! 影月X帝(えいげつかいてい)クラメーション! こ・こ・に・参上〜!! パラリラパラリラ、ピッピ〜!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「イヴィルの親戚か?」
「どころなくイヴィル様に近いものを感じるわね。」
「ああん、プランクもピクチャーも空気読みすぎ! いじられキャラとしてのプライドが満たされちゃうなあ!」
自分の肩を抱きながら、クネクネと揺れる“イヴィル”。
そこへ青年の怒号が飛ぶ。
「くおらイヴィル! 俺が自己紹介してるってのに、クネってんじゃねーさん! 事件です!」
ボケが2人いると大変だ。
少女のうち、赤いショートヘアの方が、持っていた手錠で青年を殴った。
「あたあ!?」
「せっかく極上の狂気を前にして、話が進まない・・・。」
その少女の声は、狂気で澄んでいた。
残る1人の少女だけが、真っ直ぐな目をしている。黄色のショートヘアを揺らして、頷きながら同意した。
「そうですよ、蔵目さん・・・もとい、クラメーション。わたしたちの任務は、そこの“ε”を沈静化させ、身柄を拘束することです。くだらないギャグで時間を使わないでください。」
「く、くだらない? そんなバナナ! あがっ!」
再び手錠を顔面に食らって、蔵目と呼ばれた青年は涙目。
流石に鈍郎も呆れた顔で、溜息をついた。
「イヴィル。何なんだ、こいつらは。」
「ん・ん・んあっん〜、それは本人たちに名乗ってもらおうかな。何故なら、その方が場面が映えるから!」
「余裕ね、イヴィル様。」
「る・ら・ら・ら〜、正直そこそこ厳しいんだけど、プランクとピクチャーが協力してくれれば楽勝だよ。」
「なにっ、お前ら“ε”の味方なのか?」
蔵目が冗談なのか本気なのかつかない顔で訊く。
「当然だろう? これから妻と中出しセックスを楽しもうと思っていたのに、お前らの登場で、おあずけ食らった犬の気分だ。」
「あなた、さっさと片付けて、私の中に欲望を解き放って。子供が出来ても、あなたの能力で始末して、私の能力で体の調子を整えられるわ。エッチな共同作業しましょうよ。」
「任せろ。子供なんか殺してやる。」
「お、お前ら・・・正気に戻れ! その考えは人格を“ε”に支配されてるんだ!」
「馬鹿だろ、お前。俺たちが人格を支配されてるなら、正気とやらに戻るわけない。」
「この世に正気なんてものがあることすら疑わしいのにね。」
「悪魔に負けるなあっ! 正義の心を取り戻すんだ! 俺の声よ、お前らのハートに届けーーっ!!」
「生憎だが、やたらと大声で正義を口にする者は信用しない主義なんでね。お前の正義など、イヴィルの前では霞んで見えるカスに過ぎない。」
「あなたまでボケる?」
「おっと、ついノリで。まあ別に邪戦士だからって、シリアスでなくてもいいし。楽しくセックスして、出来た子供は無造作に殺そう。」
「お前らに・・・俺の魂は届かねえのかよ・・・!」
「さあな。少なくとも、3人とも名乗ってくれないと話しにならないのは確かだ・・・いや、悪かった。名乗るなら俺が先だな? ミュージック、スタート!」
照明と音響が出現し、ぎんぎんのロックミュージックが流れた。
「イヤッホオオオ! 世界の萌えキャラ救う為〜、邪悪の海から舞い降りた〜、ちょっと悪めなイイ男〜、邪悪なる第十一の戦士、“イヴィル・プランク”!!」
「そして、その妻にして、朽ちることなき肉奴隷! 第十二の邪戦士“イヴィル・ピクチャー”!」
「いいわあ、いい狂気よ・・・私は“焦熱美帝”(しょうねつびてい)ユイファ・テスタロッサ!」
赤いショートヘアの少女が、双眸まで赤く染めて宣言した。
黄色のショートヘアも続く。
「・・・わたしは、“鉄鬼雷帝”(てっきらいてい)入流小松(いりる・こまつ)。知ってますよね、“ε”・・・“イヴィル”は・・・よく知ってますよね、“姉さん”!!」
「あは☆なるほど確かに、こまっちゃんは私の妹ってことになるのかな? ん・ん・んあっん〜、我らが母にカンパーイ!」

おどけた青年クラメーションが、やおら真顔で“何か”を展開した。
重力ではない、さりとて普通の念でもない、空間そのものを歪める力。
「影装“月船”(えいそう・つきふね)展開完了!」
「待ちくたびれたわ・・・。街の人なんか気にせず、何もかも燃やし尽くしてしまえばイイのに・・・その方が、ずっと気持ちイイのに・・・はあ・・・考えただけでイっちゃいそう・・・!」
「物騒なことは言わないでくださいユイファさん、冗談でも! わたしたちは仮にも、正義の執行者なんですよ? それとクラメーション、時間かかり過ぎなのはユイファさんの言う通りです。」
「わーりぃ、わーりぃ、水割りィ。“ε”の電子力場を解析すんのに手間取ってたんだ。」
ふざけた調子であるものの、言ってることが本当なのは、イヴィルの表情からも察せられた。
「る・ら・ら・ら〜、これヤバいやつかなあ。」
「そんなにヤバい能力なのか、イヴィル?」
「ん・ん・んあっん〜、街の人を巻き込まないって考えてる以上、ナンバー13が直接戦うことはないかもだけど、あとの2人がね・・・。こんなにアッサリ場の有利を奪われるとは、計算違い。自分の弱さにヘドが出そうだよ。」
「ふーん? しかし3対2なら数的にも有利だと思うが。」
すると赤髪のユイファがクスクスと笑って、気合を放った。
「3対2ィ・・・? 3対200の間違いじゃないの・・・?」
彼女の肉体が燃え盛ったかと思えば、それは百以上もの火の粉となって散乱し、それぞれが人の形を作ってユイファそっくりになった。
「いくら数を増やそうが、俺の能力の前には0か1でしかない。加えて“魔道絵筆”(ペンタブレット)で熱を防ぎ、イヴィルが攻撃。それで勝つ。」
「ん・ん・んあっん〜、そんじゃまあプランクのプランでレッツゴー! 右手一本“雷撃雷化”(トゥールアクセル)!」

だが、その瞬間だった。
イヴィルの放った雷撃は、イヴィル自身を直撃。
それだけでなく、体に何やら文字のようなものが書き込まれ、イヴィルは苦しげに咳き込んだ。
「あぐっ・・かふっ・・・」
「“魔道絵筆”。直接ダメージを書き込んだ。」
その声が合図となり、200近い炎人形が一斉に火を放つ。

「「「「ウルカヌス!!!」」」」

集約された炎は、すぐにでも周囲への行き場を失い、空高くへ逃れようと巻き上がる。
紅蓮の炎は空を燃やし、赤く染め、雲を突き抜けて、一部は成層圏まで達した。
そして大音響が、しばらく支配していた。
「ちょ、やりすぎ! ユイファさん! 殺しちゃったら駄目なんですよ!?」
「何をズレたこと言ってるの・・・? この程度で死ぬような狂気なら、とっくに私が呑み込んでいるわ? あ・・・あ・・・・絶頂しすぎて・・・あ・・・またイく・・・・・」
「しゃあねえドMだな。しかしまあ、俺もユイファに賛成だ。あの化物が、そうそうくたばるはずもねえ。そうだよな?」
クラメーションが問いかけた相手は、彼の空間干渉で守った、鈍郎と茶倉だった。
「死んでいたら、それでいいですけどね。」
「そうね。死ぬべきよ。」
「いやいやいやいや、死なせるワケにはいかねえワケが―――」
言葉を途中で切って、クラメーションはハッとして爆心地へ目を向けた。
そこに、電磁バリアで守られたイヴィルが、笑みの消えた顔で浮かんでいた。
「流石はナンバー14、大した攻撃力だ。一発がナパーム弾三発分に相当する火力・・・それを200発近く。マジで死ぬかと思った。・・・しかし、それよりも、どういうわけで私の支配から逃れた? まさか本当にナンバー13の言葉に感化されたわけでもあるまい。」
いつもとは違う、イヴィルの口調。これが素なのか、テンションが落ちてるだけなのかは判断つかない。
「俺の・・・いや、私の能力を忘れたか? “偶石握殺”(サークルファイア)は味方に対する敵意や攻撃意思を相殺させる能力だ。勝手に人格いじくり回すような行為を、まさか攻撃でないとは言わないよな?」
「それでも50パーセント以上は・・・今でも30パーセントくらいはイヴィルさんの支配下にあるわ。そうでなければ、ああまで狂ったセリフはスラスラ出てこない。」
「すまなかった、蔵目さん。芝居とはいえ、馬鹿にしたような口を利いて。」
「いいってことよ。俺の方こそ、演技がバレそうな探りを入れて悪かった。」
「ん・ん・んあっん〜、そういうわけか・・・。自分のカリスマ性の低さに、心底ヘドが出そうだよ。」
やや元の調子に戻りつつあるイヴィルは、憮然とした顔で溜息を吐いた。
「ん〜ん〜んあっ〜ん〜」
イヴィルは眠そうな目をして首を振る。
「完全復活したとはいえ、復活が完全なだけだからなあ。10番台ごときに後れを取るだけでなく、演技を見抜くことも出来ないなんて、自分の情けなさに愛想が尽きそうだよ〜。」
しょげた声と内容だけ聞けば、意気消沈しているようにも思える。
だが、イヴィルを纏う電子たちが、かつてなく盛んに脈打っていることを、5人とも感じていた。
まだ戦いは続く。

そう思っていただけに、次のイヴィルの言葉は意外だった。
「る・ら・ら・ら〜、私の負けだ。降参する。」

「・・・?」
鈍郎は油断なく気を引き締める。
その横でクラメーションと小松が、渋い顔をしていた。
「ん・・・ん・・・んあ・・・ん・・・だいぶ眠くなってきたし、ここいらで“試運転”は終わりにしておくよ。煮るなり焼くなり好きにすればい・・・い・・・・・・・」
そのままイヴィルは、ゆっくりと降下し、アスファルトに体を横たえて目を閉じた。
「“魔道――」
「待って!」
茶倉に殺気が帯びたのと、小松が叫んだのは、殆ど同時だった。
イヴィルの肉体は、クラメーションの“月船”に包まれていた。
「何のつもり?」
「“母さん”の体を、壊さないで・・・。」
「・・・っ」
それは茶倉にとっては、トラウマを呼び覚ます言葉だった。そう言われたら手は出せない。
側で鈍郎も、険しい顔で目を閉じている。
「ねえ、クラメーション。このまま置き去りにする選択肢は無いわよね・・・?」
赤から緑になった双眸で、ユイファが不気味に笑いながら言う。
「そうなるな。“ε”だけでなく、あんたたちの身柄も拘束しなければならねえ。」
「願ったり叶ったりだ。君たちに付いて行けば、我々の知りたいことを知ることが出来るのだろう?」
「どうやら、そうみたいね。ただし、イヴィルから得た力は残ってるみたい。夫と私に危害を加えるようなら、死ぬまで抵抗するわ。」
「わかってる。こちらとしても、あんたらを敵に回したくはない。絶対にな。」
クラメーションの目は、強い輝きで満ちていた。
そして小松は、茶倉と鈍郎の手を握りながら唇を結んだ。
「あの、おふたりは、これから・・・知りたいことだけでなく、知りたくなかったことも知ってしまうかもしれません・・・。ですが、どうか絶望だけは、しないでください!」
聞きようによっては脅しとも取れる言葉だが、要は資格を計っているのだ。
今更、である。
軽んじているわけではないが、耐え難いことなど何度も経験してきた。恐れることはあっても動じることはない。
“知る”ことは“知らない”ことより幸せであるというのは、心の強度を無視した観念遊びでしかないということなど、とっくに知っているのだから。
きっと耐えられないような話が飛び出すのだろう。
それがどうした?
泣き叫び、苦痛で飯も咽を通らずに、何日も過ごすのだろう。
それがどうした?
そんなことなら、何度も何度もあった。
全ては過去の踏襲だ。
未来を見失うほど、楽な生き方はしていない。


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「サトリン」第二部まとめ読み
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佐久間闇子と奇妙な世界
2016/10/01 01:06

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「サトリン」 第十五話 約束のクリスマス (戦闘U) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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