佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   プロローグまたは前夜祭 (後編)

<<   作成日時 : 2016/10/16 00:10   >>

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◆ ◆ ◆



その頃、佐野は手ぬぐいで汗を拭きながら、ようやく目的の人物を探し当てていた。
神出鬼没のヴァンパイア、学生時代からのライバル、東仙OB、波佐間京介。

「波佐間、入るぞ。」

「どうぞ・・・・・お久しぶりです・・・・・・佐野さん・・・・。」

中に入るなり佐野は絶句した。
波佐間はボサボサの髪が乱れていて、ベッドから起き上がっていて、それはいいのだが。
隣に全裸の稲守蛍(シーツを纏っているので、おそらくだが)が目をこすりながら欠伸をしている。

「どうしましたか・・・・・佐野さん・・・・・・。決闘祭の話を、しに来たのでは・・・・ないのですか・・・・・?」

どうやら、わざとやってるわけではなさそうだ。
しかし波佐間のことだから、わざとかもしれない。
どちらなのかは読めない。あるいは、わざとか天然かという区別は、この男には無いのかもしれない。

「話が早いな。」

「いいですよ・・・出場しても・・・・・・。リベンジも、果たしたいところですからね・・・・・。」

レベル5能力者である波佐間が負けたことは、数えるほどしかない。
佐野には、すぐにリベンジの相手が見当ついた。

「おや・・・・佐野さん・・・。他人事みたいな顔を、していますが・・・・・・ボクが、立て続けに3回も負けたのは・・・・未だに1人しか・・・・いないんですよ・・・・・?」

「・・・!」

そのうち1回は策略としての敗北とはいえ、ここぞというときの2回目に勝てなかった以上は敗北のうちである。
だいたい、立て続けに2回も負けた相手も、佐野春彦をおいて他にはいない。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

殺気にも近い緊張感と共に、互いにデュエルディスクを展開する。
そこへ柔らかいソプラノが、上手い具合に中和させる。

「デュエル〜!」


佐野春彦:LP8000
波佐間京介:LP8000




◆ ◆ ◆



「おーっす、葉継さーん。調子どーっすか?」

全身チェック模様のタイツを着た人物が、気さくな調子で部屋に入ってくる。
ここは反カンサー統一戦線“キューブ”のアジトのひとつであり、スーパーコンピューターが置いてある。
7年前の戦いで、情報戦・電子戦の中枢区画となっていた場所だ。

しかし現在は、専ら泣笠葉継が執筆場所として使っている。
スパコンも埃を被って、その上にノートが積まれていた。

「良いとは言えないわね。斑が向こう(脳堂家)行ってるし。」

「葉継さんでも嫉妬するんっすね。」

「・・・・・・。」

淵乃井斑と距離が離れるほど身体能力(及びデュエリスト能力のレベル)が落ちるだけなのだが、嫉妬してないと言えば嘘になるので、葉継は敢えて黙っていた。

「それはそうと、決闘祭。もちろん出るんすよね?」

「出ないわよ。」

「えーっ? そんなこと言わないで出ましょうよ。フェイシンさんも出るんっしょ?」

「彼は中国代表だから、まず出ないわけにはいかない。けれど日本には7人もいるのよ。」

「だからこそ勢揃いしましょうや。あっしと違って表舞台に出ても差し支えない身でがしょ?」

「あなたでも嫉妬するのね、エニグマ。」

「・・・・・・。」

先程の意趣返しをされて、エニグマは両手を挙げた。
しかし食い下がる。

「淵乃井くんが出るんなら、出ません?」

「私と斑を引いて5人。丁度いいじゃない。」

そう言いながら葉継は席を立って部屋を出ていった。
彼女の後姿を見ながら、エニグマは微笑んだ。

「いや〜、淵乃井くんは幸せ者っすねえ。」

葉継は別にエニグマに腹を立てて席を立ったわけではない。
エニグマは葉継の行き先がわかっていた。



◆ ◆ ◆



引き締まった体躯の青年が、受話器を片手にプールサイドで座っていた。
野性味のある顔立ちが、やや険しくなっている。

「ホントに実現したのかよ、あの企画・・・。はー、どうすっかなー。」

通話を終えて、大河柾は憂鬱な溜息を吐いた。
額に手を当てるマサキに向かって、横から親友が楽しそうに言う。

「念の為にプールを貸し切りにしておいて正解だったね。」

「いや、それは関係ねえだろ。」

ちなみにマサキは普通にトランクスタイプの水着を着ているが、竜堂神邪は全裸に大きなシャツを着ただけという、たいへん不健全な格好をしている。彼の中性的な外見と相まって、怪しい雰囲気を醸し出していた。
どうして女じゃないのだろうと、マサキは頭痛の種が増えた。

「露出度で言えばマサキの方が高いのに、僕の方が不健全だと言われるのは納得いかないなァ。こんな小説を書いている奴の方が不健全に決まってるのに。」

不健全な格好のシンヤは気味悪い目つきで肩を竦めた。

「誰も言ってないし、小説って何のことだ。」

「ほら、結局こーゆう場面って、小説に書かれる訳だから。読者サービスって奴だよ。」

「サービスねえ。」

マサキの視線の先で、白いビキニを身につけた女が軽く泳いでいた。
若く瑞々しい肌と、健康的な茶色い髪が水を弾いている。

「マサキの細身ながらも逞しい肉体と肉食系の顔つき、彼女の童顔ながら手足は伸びて凹凸もある体つき、これで読者の目を惹きつけようという作者の邪悪な意図が見え隠れするよね。」

たいへん不健全な格好のシンヤは、とても説明的なセリフを口にした。

「まだ書かれてねえよ。それにプールに行こうとか言い出したのはシンヤじゃねえかよ。」

「本当は自宅のベッドで、けだるく寝乱れ姿を披露するつもりだったんだけどね。それは先んじられたから、仕方なくプールを貸し切りにしたんだ。僕がシャツしか着てないのも、その名残だ。」

「この状況を貸し切りと表現するのは若干おかしいけどな・・・。」

翔武学園のプールは室内にあり、夜でも泳げる設計ではある。
特に関係者でもないシンヤは、何らかの胡散臭い手段を使って内部に入り込んだのだ。

「胡散臭いと思うなら多分そうなんだろう。そう思ってる人にとってはね。」

とても不健全な格好のシンヤは、胡散臭い顔で陰険なセリフを吐いた。

「・・・誰と話してるんだ?」

「それよりもマサキ。決闘祭どうするの?」

「それなんだよなあ。引き受けない理由も見つからねえが、ストリートデュエルやるようになってから、どうも表舞台ってやつが苦手になってんだ。」

「それじゃあ僕が代わりに出ようか。こーゆう真面目なイベントは好きだし。」

「お前こそガチで表沙汰に出来ない、絶対能力者じゃねえかよ・・・。」

「そうですねえ。竜堂神邪の能力はバツグンですから。」

今まで黙っていたゴーストフェイスが、か細くも不気味な声で言った。
彼は常に黒い覆いを被き、楽しそうなのか、つまらなそうなのか、よくわからない。

「久々の表舞台、楽しまれてはいかがかと思います。マサキさんに出てもらった方が、わたしとしてもバツグンに動きやすいですし、竜堂神邪のモチベーションもアップしますからね。」

「・・・何か、あんのか?」

「何も無いといいんだけどね。」

シンヤが笑みを消して、少しトーンを落とした声で言った。
不健全な格好だが、雰囲気は真面目だ。

「こういう楽しいイベントには、決まってケチをつける奴が出てくるもんだよ。大概はKCとI2が対応するだろうけど、イベントの盛り上がりって一種の際どいバランスがあるからね。」

「なるほどな。何かあったときの為に、デュエリストは多い方がいいか。」



◆ ◆ ◆



昼下がりのカフェテラスで、淵乃井斑は車椅子に座ってケーキを食べていた。
もとい、脳堂美宇に食べさせてもらっていた。

「あ〜ん♪」

「ん・・・美味しい。」

酷死病の症状で手足に麻痺があり、斑は1人では満足に食事も出来ない。
“超刻”を使えば出来なくはないが、食事の為だけに魂に負担をかけるのは割に合わない。
以前ほどではなくても肉体にも負担がかかるので、本末転倒だ。

「それで、決闘祭への参加は、やはり無理かい。」

心配そうに、同時に残念そうに、脳堂景眞が言った。

「はい・・・。」

斑も残念そうに、同時に申し訳なさそうに言う。
美宇だけは特に残念そうでもない。

そこへ後ろから、胡散臭い声が響いてきた。

「君の症状は泣笠葉継が近くにいないことが原因だ。彼女も一緒に参加すればいい。そうしよう。」

さっきまで無人だった席に、コーヒー牛乳と青年が現れていた。
青年といっても見た目は少年くらいだ。

「誰かね、君は。」

景眞は警戒しながら娘と斑を庇うように前に出た。
美宇も思わず斑の側に寄る。

「僕は怪しい人じゃない。ただの竜堂神邪だよ。まずは淵乃井斑と・・・いや、あなた方と友達になろうと思うんだ。」

「竜堂・・・!?」

景眞はゾッとして懐に手を入れた。
そこにエマージェンシーコールが入っている。

「ちょっと待って。E・HERO、もといボディーガードを呼ぶ前に、ちょっと待って。3つ・・・。まずはエクレアを食べ」

どこからか出てきたエクレアを神邪が食べようとした瞬間、黒い影が跳んできて膝蹴りを入れた。
神邪とエクレアは地面に転がった。

「ああっ、3秒ルール! 3秒ルール!」

慌てたシンヤは痛みを堪えながらエクレアを拾い、急いで口の中へ入れた。
じゃりっと音がして、エクレアは咀嚼されていった。

「ふぅ・・・何するんだよ、葉継。痛いじゃないか。しかし美女に暴力を振るわれるのは正しいことだから仕方ないね。うん、ある意味、仕方ない。この恨みは10倍にして返してやるからな。嘘だけど。」

「この3人に手を出したら殺す・・・!」

ふざけてるのか本気なのか曖昧な神邪に対し、ふざけの隙間が無いほど凍える声で葉継は言った。

「信用ないなあ。もっと僕を信用してくれてもいいのに。決闘祭に誘いに来たんだよ。せっかくマサキを意味深な言葉でその気にさせて参加させたというのに、葉継や斑が参加しなかったらモチベーションが下がる。葉継だってさあ、この話を小説に書くとしたら全員参加の方がいいだろう?」

「親友を平気で騙す奴を、どうやって信用すればいいのかわからないわ。」

「騙したけど騙してないよ。嘘にも良い嘘と悪い嘘があるだろう。マサキには表舞台で活躍して欲しいんだ。そういった僕の個人的な薄汚い善意に過ぎないから、何も心配しなくていいんだよ。確かに、沈むと知っていてタイタニック号に乗るのは不安だ・・・。しかし最初から泳ぐ覚悟を決めていれば、意外と乗れるかもしれない。」

「心中するなら斑と決めている。帰れ。」

「やはり口では勝てないか。それならデュエルで決めようじゃないか。1対1でも1対4でもいいけど、僕が勝ったら葉継と斑は強制参加だ。だいたい今回のイベントは、ある意味でリンネの葬式でもあるんだからさァ、参加する義務は無くても義理はあるんじゃないかな。デュエリスト能力者として。なァ。」

ようやく笑みを消した神邪が、デュエルディスクを展開する。
そこで景眞はエマージェンシーコールを発動した。
すぐにボディーガード20人が現れ、デュエルディスクを構える。
そして、葉継、斑、美宇、景眞も、デュエルディスクを展開した。


「なるほど、人数を揃えれば“レトロスペクティブ”や“マールファイア”の威力は絶大になる。友達の多そうな能力だ。その基準で言えば“ヘブンズゲート”や“ブラックローズ”は付き合いが難しく、“オンリーワンス”や“アステロイドベルト”は信奉者を集め、“アブソリュート8000”は敵も味方も多そう・・・半分くらいは持ち主のことを言い当てているんじゃないかな。・・・・・・・・・・・・・・ところで葉継、勝率0パーセントの戦いに挑むって、どんな気分?」



◆ ◆ ◆



「全員参加、っと。」

佐野は安堵した表情で手続きの書類を確認した。
安藤や大河は性格的に、淵乃井は体調的に、かなり難しいと思っていただけに、かえって不気味なくらいだった。

物事が上手くいってるときは、落とし穴が待ち受けている。
走る速度は落とさずに、もしも落とし穴があったら跳び越えるように構えておかなくてはならない。

「呉星は・・」

任務で参加確認が取れてない呉星十字のことを、加賀美が指摘した。

「彼女なら断らないだろう。ただ・・・」

佐野は若干の不安を口にしかけたが、加賀美が苦笑いして頷いたので言葉を切った。
そして磯野に書類を渡して、部屋を出て行った。










―――デュエル・フェスティバル―――


限界レベルたたきつけて お祭だっていいんじゃない

時は満ちた 次のデュエルの 時代が開く
神様のカードが回る 「きゃはっ♪」

幕は落ちた 胸の炎が 激しく広がる
選ばれし者よ さぁ集い競え

New Age デュエルの未来へ
Find our way 読みを尖らせろ
「何を引けば勝てるの?」

だから限界レベルたたきつけて 間違ったっていいんじゃない
タイムリミットまで 諦めないぜ そうさ 負けるものかよ
限界レベルかっとばして 燃え尽きりゃ最高じゃない
世界中が この時代が さぁ お前と Ride on!


諦めない 絶望の壁 立ちはだかって
脳髄が揺さぶられても

負けはしない 次のドローに 全てを賭けよう
選ばれし者の 心が叫ぶ

New skill 新たな力を
Find onerself 身につけるたびに
「突き抜ける この解答」

もっと限界レベルぶつけ合って インフレだっていいんじゃない
ZEROが近くても 全開でイイ そうだ 本気で行くZE
限界レベル競い合って 燃え尽きりゃ本望じゃない
未だ知らない 次の敵は もう お前と Ride on!



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2016/10/16 00:10

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
当然ながら全員参加のお祭りに。裏で暗躍している人がいたり、イベントの裏では何かを企んでいる者がいたりするのもお祭りならでは。どうせなら目一杯、盛大に。

しかし、全裸の稲守さんがけしからん!遊戯王は全年齢…。あ、エロ戦車の漫画だった…。
千花白龍
2016/10/31 22:56
>千花白龍さん

なんてったってお祭り。みんな揃って会場へ向かいます。
そこに待ち受けているのは、盛大なイベント。裏では何があるかわかりませんが、楽しいデュエル大会を!
・・・まあ、遊戯王の大会が健全に進行することは稀ですが。

GXでは全裸で屋外を走り回る男も登場しており、そうか、ここまでやっていいんだと思うと、スタッフには感謝するしかありませんでした。

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アッキー
2016/11/01 00:33

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