佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 「サトリン」 第十二話 狂戦士 (上)

<<   作成日時 : 2016/10/01 00:10   >>

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■■■■■



濃霧の中で虎と竜が戦っている。
闇と炎が交錯する中で、何度も激突が繰り返される。
黒い虎は全身を傷だらけにして血を流している。
白い竜は苦しそうに息を切らしながらも動き続ける。
やがて虎が竜巻を掻い潜り、竜の咽笛を噛み千切った。


- - - - - -


「夢・・・。」
まだ寒さの残る日だったが、四方髪凜は汗をかいて目覚めた。
電子力場の覆っていない生身の肌は、まだ火傷の痕が入れ墨のように残っている。発汗作用を失ったケロイドの合間、滑らかな肌から汗が粒になって染み出していた。
(どうして、あの夢を今・・・。)
以前は頻繁に見ていた夢だったが、半年前に白竜命と決着をつけて以来、とんと見なかったはずなのに。
厚手のシーツを纏いながら、凜は静かに体を起こした。
隣には最愛の人が寝息を立てている。彼女は優しく笑って彼の頬を指で突いた。
「んん・・・おはよう、凜。」
「あら、起こしちゃった?」
「半分くらい起きてた。」
そう言って彼は目をこすりながら身を起こした。
シーツがめくれて凜の裸身が晒されそうになる。」
「きゃっ?」
凜は慌ててシーツで胸を隠した。
ほんのり染まった彼女の顔を、彼の指が撫でる。
「待って舜平、こんな朝っぱらから・・・!」
そう言いながらも凜の体は既に準備を始めていた。
舜平の腕に身を任せながら、凜の頭の中から夢の余韻が消えていく。
けれど、どうしても消せない不安があった。
あの夢には続きがあった。
初めて見る、続きが。


- - - - - -


炎が虎に纏わりつく。
虎の左足が焼けながら胴を離れ、くるくると回転しながら焦げていく。
それと炎と闇が混ざり合って、奇怪な生き物へと変貌していた。
それを“生き物”と呼んでいいのかも見当がつかなかった。


- - - - - -


昼前になってから凜と舜平は街中へ繰り出した。別々に家を出て、駅前の大きな招き猫の前で待ち合わせをすることにしていた。
「早く来すぎちゃったかな。」
凜はベレー帽にサングラス、そして5月の陽気の中だというのに、長袖長裾の服装で、体の傷を隠していた。
サングラスも、顔の傷を目立たせない為の工夫である。
「・・・。」
ハンカチで汗を拭っていると、3人の男が声をかけてきた。
「カノジョー、1人?」
「待ちぼうけ?」
「オレらと遊ぼうぜー?」
男たちは凜を囲んでニヤニヤ笑う。
「断るわ。」
心底くだらないものを見る目つきで、凜はきっぱりと言った。
「おーい、お高くとまっちゃってんぜ?」
「生意気じゃね?」
「やっちゃう?」
男の1人が凜の手を掴んで引き寄せる。
「チッ・・」
まともに話をする気が無いと判断。凜は凄みを利かせた声で威圧した。
「「とっとと消えろドサンピンが!」」
彼女の声に、重なる声があった。
見れば舜平が男の手を掴んで睨みつけている。いや、掴んでいるというよりは、握り潰そうとしている。
男は悲鳴をあげて凜から手を離した。
「いてえっ! やりやがったな!」
「カレシかよ?」
「やっちまえ!」
ろくに考えもせず、男たちは腹立ちに任せて殴りかかった。
しかし舜平がリーダー格の男にソバットを決め、凜が1人をいなして、もう1人の腹部に打撃を決める。
「がはっ・・・!」
「おおうう・・・!」
一瞬で2人が倒され、残った1人は怯えながら逃げていった。
「ひいいいい!」
途中で足が縺れて転びそうになっていたが、すぐに視界から消え失せた。
「ふっ。」
「ははっ。」
凜と舜平は笑みを漏らして、それからハイタッチを交わした。
その光景は、恋人というよりは親友のようだった。

「その格好、似合ってるね。」
歩き出しながら凜が言った。
舜平は上着こそ半袖のシャツだが、下は長い袖の少々厚手の腰履きだった。
自分に合わせてくれたのかと思うと、嬉しかった。
「り、凜も・・・。」
「ん?」
「いや、その・・」
舜平は顔を赤くして横を向いた。
凜の格好は露出こそ少ないものの、プロポーションを強調する薄手の素材で、生え揃ってきた髪や、白い首筋が垣間見える。傷跡さえも背徳的な色気を醸し出していて、若い男には目の毒だった。
(和服も似合ってたけど、こーゆーカッコもイイよなあ・・・。男なら誰だってクラッとくるぜ!)
そう思うと先程の男たちにも多少の同情が湧いたが、すぐに独占欲と優越感が塗り潰した。
(誰にも渡しやしねえ。凜は俺だけの・・・!)
舜平は微笑んで凜の手を握った。
「ん・・・。」

動物園で過ごしているうちに12時を過ぎ、売店で焼きそばとサンドイッチを買って食べた。
午後から再び園内を回り、虎のところで写真を撮った。虎は仲間だと思ったのか、笑顔のような表情で近寄ってきていた。
「にゃ〜ん♪」
(イイ・・・!)
猫の真似をしながら虎に向かってポーズを取る凜に、舜平は激しく萌えていた。
動物園を出てからは、アクセサリーを買いにデパートへ行ったり、CDショップを巡ったりした。
3時過ぎに喫茶店でパフェを注文。舜平は照れてるのか、コーヒーだけを頼んだ。
「こんなフツーの女の子みたいなデートがしてみたかったんだ。」
胸いっぱいに河川敷の空気を吸い込んで、凜は笑みを浮かべた。
「もちろん、舜平とね。」
「わ、わかってるよ。あらためて言われると照れるな・・・。」
舜平は川辺の方を向いて頭を掻いた。
川辺では、中年と思しき男が釣りをしている。のどかな光景だった。
「これからどうしよっか? ゲーセン行く? それとも何か映画でも観る?」
「そうだな・・・あ、見たい絵があるって言ってなかったか?」
「そうだったわ。美術館、行こっか!」
2人は笑い合って歩き出した。

後ろに。

“何か”の気配を感じて振り向いたのも、殆ど同時だった。
「・・・?」
「誰かいたような気が・・・。」
横の方から澄んだ声が聞こえてきたのは、その直後のことだった。
「るらっる〜、るらっる〜、るらっる〜♪ フツーの女の子だって? 笑えるね〜!」
その女は、橋の欄干からフワッと跳んで、しばし滑空した後、凜と舜平の近くに降り立った。
「ズルいよ凜ちゃん。今更フツーの女の子に戻ろうだなんて、この私が許さないゾ♪」
近くで見ると、明らかにデザインが違った。
“E”の文字は黒と紫が混じったような色彩で、形は全体的に歪んでいる。ふざけたレタリングのように刺々しい。
しかし、そんなことを考えるまでもない。目の前の女は、凜の知っている人物に似ているようで、根本的に何かが違うように思えた。
少なくとも、別人。
「お前、誰?」
凜は寒気を感じながらも、睨みながら尋ねた。
「ん♪ん♪んあっん〜、どうしちゃったのかな、四方髪凜。もとい、第六の戦士“ジャスミン”?」
「ふざけは結構よ。お前がサトリンでないことは、もうわかってるわ。」
「る・ら・ら・ら〜、違う違う。どうしちゃったのかって、フツーの女の子のフリなんかするから、どうしちゃったのかって言ってるんだよ?」
女は小首をかしげながら人差し指を立てた。少女のような、あどけない顔。
「凜はフツーの女の子だ! テメーが何モンだか知らねえが、馬鹿にすんなら承知しねえぞ!」
「ん♪ん♪んあっん、君が九古舜平か。凜ちゃんが腑抜けたことを言い出すようになったのは、君のせいでもあるんだよね。どうせ裏でサトリンの奴が糸を引いてるに違いないだろうけど〜。やんなるなあヤンヤン?」
「腑抜け・・・!?」
凜のオーラが怒りを纏う。舜平も同じく怒気に満ちている。
「ん♪ん♪んあっん〜、私はどんな愛も否定しないよ。でも舜平くんには死んでもらうけどね?」
「なっ!?」
「・・・・・!?」
2人はギョッとして、しかし体勢は即座に戦いの構えを取っていた。
それを見て女は、不穏な笑みを浮かべながらウインクした。
「申し遅れましたが、私は“イヴィル”。狂ってる人の味方だよ。」
「お前の名前も信念もどうでもいいわ。けれど舜平を殺すというのなら、その前にお前を殺す! 地獄へ行きな!」
凜の目がサングラスの奥で冷たく燃える。
彼女の拳にエネルギーが集約される。
「四十四の制裁技の1つ、“百拳連舞”(ひゃっけんれんぶ)!!」
(出た! 凜の百連コンボだ!)
“ブラックタイガー”時代に何度も目にした技。無数の打撃がイヴィルを襲う。
・・・が。
「ん♪ん♪ん♪ん♪」
当たらない。
いや、ただ当たらないだけなら問題ではない。一発の命中率は低い技なのだ。
「るらっる〜♪ 下手な鉄砲ナントヤラって発想、この私には通用しないよ。バツだば〜♪」
「くっ・・・!?」
百発打って、百発とも掠りもしなかった。
「まだハッタリ半蔵だとでも思ってるのかな? 舜平くんには死んでもら――」
死角からの蹴り。
舜平の放った“死廻・哥薩克踊”(デス・コサック)がイヴィルの頭を捉えていた。
・・・が。
イヴィルは振り向きもせずに紙一重でかわし、続く凜の“千拳乱舞”(せんけんらんぶ)も余裕の表情で回避。
凜と舜平の息はピッタリだ。互いに攻撃がぶつからない。けれど、相手にも当たらない。
かわせるのが当たり前だとでもいうように、イヴィルは不敵な笑みを浮かべて回避し続ける。
(・・・・何だ?)
舜平は先程から、視界の端で何かがチラつくのを感じていた。
それは何か黒いもの。
よく見れば、50センチほどの×印が宙に浮かんでいた。
(・・・!?)
そのとき凜も×印に気付き、2人は同時にイヴィルから離れ距離を取った。
「何だ・・・それ!」
宙に浮かぶ×印。物体ではなく立体映像のようだ。
「るららら、舜平くんは知らないんだね。知らなくていいよ。これから死ぬかららららら・・」
「させない!」
凜がイヴィルに向かって突進する。サングラスが落ちる。
そのとき×印がザラッと崩れ、○印になった。
「・・・!? ・・・凜! 駄目だ!」
敵の能力を理解したわけではない。しかし直感的に「ヤバい」と感じ、舜平は愛しい人を呼び止めた。
だが、そのときにはイヴィルの拳が凜の肩にヒットしていた。
「かっ・・・!」
「るららららららら!」
イヴィルの拳が凜のガードをすり抜けて命中する。
「嘘だろ・・・!?」
舜平が驚くのも無理はない。イヴィルの打撃は全弾命中、一発も外れない。
しかし更に驚くべきは、その技だった。
一番近くで見てきたのだ、見間違えるはずもない。“百拳連舞”だ。
混乱しながらも舜平の体は動いていた。渾身の蹴りがイヴィルの頭を狙う。
命中の寸前に○印は再び×印に変わり、舜平の蹴りは外れた。
しかし同時にイヴィルは攻撃を中断していて、その隙に凜は距離を取った。
「あっ・・・ハァ・・・・」
イヴィルに殴られた跡が痛む。
電子力場プロテクトを凌駕するイヴィルの攻撃力は、恐るべきものだった。
しかし舜平を見れば、いよいよ凄まじい顔になっていた。
「凜を傷つけたなテメー、女だからって容赦しねえぞ。」
「るららら〜、とっくに容赦なんかしてないと思ってたけど。どうせ口だけだろん。なーにが出来るのかな。君に、なーにが出来るのかな。」
「分析。」
「る?」
「テメーの能力は、攻撃と回避を同時に行うことは出来ねえんだろ? どーゆう理屈だかわかんねーが、○印のときは絶対命中、×印のときは絶対回避。当たりだろ。」
「るらら、そうだよ。名付けて“正否聖痕戦闘特化”。カッコイイとか思わない?」
「テメーのペースにゃ乗らねえよ。それより、何でテメーが凜の技を使える?」
「るららら〜、君は馬鹿か?」
「何・・・?」
無知を嘲るというよりは、わからないはずがないという顔。
舜平は戸惑ったが、そこへ凜が口を開く。
「馬鹿は貴様の方よ。調子に乗ってベラベラと喋りくさって・・・おかげでどういう能力かもわかったし、攻略法も見ィ出せたわ。」
そう言って彼女は野生の笑みを浮かべて、舜平を一瞥する。
「行く“ぜ”。」
「ああ。」
凜と舜平は呼吸を整えた。
「「新・制裁技の一、“百華百撃双流水”(ひゃっかひゃくげきそうりゅうすい)!!」」
その瞬間、2人の動きは水になった。
イヴィルは、かわしきれなかった。激流に巻き込まれて全身に200発の拳打を食らって吹っ飛んだ。
「くあっ・・・」
「ほら、思った通り。その×印が瑠璃子の“正否聖痕”に属するものなら、その本質は理屈もクソもない絶対回避ではなく、高度な演算能力による行動予測。だったら、その演算能力を上回る攻撃を繰り出せばいい。私と舜平の合わせ技、お前のデータには無かったか?」
「ん、ん、ん、んあっん・・・。」
土埃に塗れてイヴィルが立ち上がった。その顔からは笑みが消えていた。
「るららら、自分の弱さにヘドが出そうだね。ん♪ん♪んあっん〜、それでも舜平くんには死んでもらうけどね。」
ぐにゃりと首を曲げて、イヴィルは笑った。
「殺させるかよ!」「死なねえよ!」
2人が同時に叫んだ。
「ん♪ん♪んあっん〜♪いったい全体どういう理屈こねれば、そんな結論が出てくるのかな?」
「理屈じゃねえ、魂だ!」
舜平が拳を握る。
「愛と言い換えてもいいけどね!?」
凜が片目を閉じて人差し指を立てる。
「・・・ご立派。そういうの私も、理屈抜きに好きだよ。でもでもでもね、そんな綺麗な魂じゃ、私の狂気は満たされない・・・・・・」
イヴィルは紅潮した顔で目を細めた。
「・・・・・・恋愛ゴッコは、ここで終わりだ!」
その目が大きく見開かれ、両手の周りにエネルギーが集約する。
そしてダッシュ!
一気に距離が詰まる。
(舜平は死なせはしない! お前なんかに殺されてたまるものか!)

火花。
激突は一瞬だった。
凜の目の前に舜平の顔があった。
彼女の耳にイヴィルの声が響いてくる。
「勘違いしてるようだけどね?」
凜の目の前に舜平の顔があった。
舜平の放った渾身の蹴りが凜の腹部に命中していた。
「私は舜平くんを殺したりなんかしないよ?」
能天気な声が耳障りなほどに響いてくる。
凜の目の前に舜平の顔があった。
舜平の蹴りは、電子力場プロテクトで威力を削がれていて、凜は腹部に多少の痛みを覚える程度だった。
「舜平くんは、凜ちゃんが殺すんだよ。」
凜の放った拳が、プロテクトを持たない舜平の体を貫いていた。
「・・・嘘?」
凜の目の前に舜平の顔があった。
その顔が、かくん・・・と傾いた。
そして、じんわりと彼の重みが伝わってきた。
「嫌ああああ!!? 舜平っ!!?」

凜の絶叫が響く川辺で、イヴィルは上機嫌で笑っていた。
両手を後ろで組んで、リズムを取るように体を小刻みに動かしていた。
「るらっる〜♪ 恋人の亡骸を抱いて泣き叫ぶ美女の図。即興でイケてるよね? 萌えるよね? ちょっと写真を撮っちゃおうかしら〜?」
イヴィルは携帯電話を取り出して、カメラ機能でパシャッと1枚。
そしてフフッと笑って小首をかしげた。
「さーて凜ちゃん? そろそろ戦闘再開といこうじゃあーりませんか。」
けれどイヴィルの声は、もはや凜には届いていない。
「ん?」
反応は無い。
「んん?」
何も無い。
「・・・・・・る〜るる〜、あんまり私をガッカリさせないでくれるかな?」
肩を竦めて、イヴィルは溜息をついた。
そのとき、凜が動いた。舜平の体を地面に横たえ、ゆらりと立ち上がった。
「お?」
振り向いた凜の顔は青白かった。目の色が真っ白になっている。

 「 こ ろ す 」

柔らかく澄んだ声で、凜は宣言した。
「ん♪ん♪んあっん〜♪そうこなくっちゃ♪」
イヴィルは喜びを顔に顕し、拳を作った。
しかし次の瞬間には殴り飛ばされていた。
(・・・あん、速い♪)
宙を舞いながら、イヴィルは笑った。
「そうこなくっちゃ、そうこなくっちゃ、そうこなくっちゃ〜! ちょっと本気で相手してあげるるるるる〜っ!!」
逆さのイヴィルの右手に、稲妻が降り注ぐように電気の剣が出現した。
「“雷光剣レクラ”!」
「そんなもの・・・」
虚ろな目のまま、凜は両手にエネルギーを集約させる。
彼女の必殺技“スミロドン・アタック”。それが双撃。
「死ィねええええええええええええええええええっ!!!」
その瞬間、凜の瞳に光が戻った。涙が後方へ飛ぶ。
黒い虎が牙の双撃は、イヴィルを確実に捉えていた。

「・・・・・・。」
凜は無言だった。
「・・・・・・。」
かわせないはずだった。
かわせるはずがないと、思っていた。
しかし気が付けば自分は、血まみれで横たわっている。
「・・・・・・。」
声も出ない。
(何故?)(何故?)(何故?)
疑問だけがリフレインする。
その耳に、イヴィルの澄んだ声が響く。
「ちゃあ、恋人を殺されて、この程度か。所詮おままごとの恋愛では、失ったときの悲しみも怒りも、大したことはないらしい。んっ、んっ、んっ、つまらないな。もっと怒って、もらおうか?」
イヴィルが舜平の体に近付いていた。
(やめろ)
(やめろ!)
次の瞬間にはボロボロの凜がイヴィルの前に立ちはだかっていた。
「ん♪ん♪んあっん〜♪ よく動けたもんだね♪」
「舜平は、舜平を、これ以上、傷つけさせはしない!」
「亡骸であっても守りたいの? 守りたいだけで力で動けてるの? それは称賛に値するけど、動けるだけでは勝てないよ。さっさと、どけ。」
イヴィルが凜に手を翳した。
「“雷撃獣バルバロッサ”!」
至近距離から放たれる電気の塊。凜は、成す術もなく吹っ飛ばされた。
痺れて動けないが、意識だけはハッキリしている。その目に舜平と、彼に向かうイヴィルの姿が映っていた。
(舜平―――――――――――――――――――――――――っ!!!)
その声なき叫びに一瞬だけイヴィルが目を凜にやり、それと同時に彼女の頭に蹴りが入った。
「がっ・・」

「呼んだか、凜?」
息を切らして、青い顔をして、九古舜平が立っていた。
「しゅん、ぺい・・・・・?」
「どうやら凜は戦いに飽きたみたいなんでな。こっからは俺が相手だ。」
舜平は血色の悪い顔で、無理やり笑顔を作った。
「る〜、る〜、る〜、る〜・・・」
イヴィルは壊れたスピーカーのように、不満そうな声を繰り返している。
「どうしたイヴィル? お前があまりにも弱そうなんで、俺は凜に任せて昼寝してただけだぜ?」
それが強がりであることは、彼の顔色と、べっとりと服にこびりついた鮮血が物語っていた。
しかし、ただの強がりではない。体を貫かれたにもかかわらず、こうして立ち上がっているのは説明がつかない。
「どうやら、お前の弱さが想像を絶するほどだったようで、凜は俺に任せて昼寝を始めたようだ! ま、お前ごときが凜と戦うなんて、十年早かったってことだな。」
言いながら舜平は、抜かりなくイヴィルとの距離を詰めていた。
拳打が、蹴撃が、面白いほどに当たる。
「る・・・」
イヴィルは苦い顔で防戦一方だ。
「これが愛なのか! これが愛の力なのか! 滾るぜえ、漲るぜえええ! さっきドテッ腹に風穴開いたような気がしたが、まったく気のせいだったぜ!」
高く、高く、イヴィルの体は蹴り上げられた。元より舜平も並ではない。
イヴィルは悔しそうな顔で、弱々しく着地した。姿勢がグラつく。
「るる・・・」
「これが凜と俺の、愛の力だ!」

そのとき、後ろから間延びした声が聞こえてきた。
「舜平くん・・・そりゃないだっぺよ・・・。」
腹を押さえて脂汗を流しながら、第四の戦士“アプリケイション”こと、五留吾永須が立っていた。
「あ・・・?」
その後ろには、十島瑠璃子と九古鈍郎もいた。


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2016/10/01 01:05

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「サトリン」 第十二話 狂戦士 (上) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
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