佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 13 絶対

<<   作成日時 : 2016/11/17 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



天神と見城は、吉井のところへ向かっていた。
もう既に、不穏な気配は漂っている。さっきから携帯電話が通じない。
ミスティックサイエンスの行き届いた会場で、携帯電話が不通になる理由など、ひとつしか考えられない。

「・・・っ、天神!」

見城は咄嗟に天神を突き飛ばした。
奇っ怪な風切音と共に、十字槍が飛んできたのだ。

「見城さんっ!?」

声をあげたときには、見城は槍に貫かれていた。
電流が走るように、見城の全身に闇の瘴気が迸る。

「あああああっ!!」

見城はビクビクと痙攣しながら気を失った。

そして槍を投げた人物が、凍えるように冷たい表情で歩いてきた。
まだ幼さを残している少年だ。

「死んではいないっすよ・・・。生きていてこその人質っすからね。」

刺さっているように見えるのは、闇の力が中に食い込んでいるということらしい。
だが、それで安堵する理由にはなっても、そんなことを許す理由にはならない。

「見城さんを放しなさい!」

女神のように荘厳な声で、天神は凛とした眼光を少年に向けた。

「いいっすよ・・・。ただし、おれとデュエルして勝てばね・・・。」

そう言って少年は、デュエルディスクを展開する。

「おれは題座千天(だいざ・せんてん)。“平等思想”の題座千天。天神美月・・・お前の両手両足にも、外すことの出来ない枷を嵌めてやるっすよ。」



◆ ◆ ◆



「は・ざ・ま、さぁ〜ん、デュエルしましょ?」

愛らしい少女の声が、どこからか聞こえてくる。
声はすれども姿は見えず。波佐間は足を止めて、ゆっくりと周囲を見回した。

「あたしなんかの誘いを、断らないでよ? そんなことしたら、稲守蛍なんかがどんな目に遭うか、わかったもんじゃないのよ? 24時間つきっきりで側にいることが出来ますか? あたしなんかはフリーダムに何でもやっちゃうけど。」

いつの間にか、周囲に人がいなくなっている。
人ごみを避けてきたから気付くのが遅れた。

闇の瘴気が展開され、一陣の風と共に、カイバーマンの仮面を被った少女が出現した。

「きゃっ、恥ずかしい! 仮面あっても恥ずかしい! 笑わないでよ? 好きな人の前に出るって、すっごく勇気がいることなんだから!」

「・・・・・・・・・。」

やや面食らいながらも、波佐間はデュエルディスクを構えた。
好意を寄せられること自体はともかく、稲守に危害が及ぶのは許してはならない。
2年前のことを思い出して、波佐間は心が冷えた。

「それでは・・・・・このデュエルに、ボクが勝ったときは・・・・・死んでもらいましょうか・・・・・・フフ・・・・・。」

「いいわよ? 恋する乙女は、いつでも命懸けなんだから! あたしなんかが勝ったときは恋人になってもらうわ!」



◆ ◆ ◆



「レッドラム様、たくさん食べてくれた。」

脳堂美宇は、食器を片しに流しへ来ていた。

そこへ背後から忍び寄る影。
闇の力が籠もった槍が、彼女を貫く。

「んああああっ!?」

「細工は流々、仕上げは万端。後はマサル君が上手くやってくれるといいのですが・・・。」



- - - - - -



「美宇!?」

悲鳴が聞こえて、レッドラムは咄嗟に跳ね起きた。
同時に泣笠も扉を開けて外に出た。

そこに、太った少年が立っていた。

「ぼ、ぼく、泣笠とデュエルするんだな。ねちょねちょの、ぐちょぐちょに、するんだな。うへっ、うへっ。」

「何だこいつは・・・?」

レッドラムは顔をしかめる。

「斑! 美宇を! こいつは私が引き受けるわ!」

「・・・っ、わかった。」

気持ち悪いだけでなく、ただならぬ不気味さがある。
そんな奴のところへ泣笠を残しておきたくはなかったが、脳堂を助けないわけにもいかない。



◆ ◆ ◆



時間は少し前に巻き戻る。


「えっけけけけけ、集まったね。みんな、ねっへへへ。」

異様な笑い方をしながら、しわくちゃの老人が車椅子で登場する。
しわくちゃすぎて何歳なのかもわからないほどだ。杖を持つ手は震えがきている。

「いよいよ世界のレベル5能力者、公式の12人が揃う。わかっておるな。」

無堂幻大(むどう・げんだい)。
彼は選抜した5人のデュエリストを、この場に揃えた。

「長かった・・・。この日を待っていた・・・。我が悲願が、いよいよ成就される。ゆめゆめ油断するなかれ、わたしのようになりたくなければな!」

しわくちゃの顔には、涙が伝っていた。
手だけでなく体も震え、彼は激昂した。

「あああ、思い返すもハラワタの煮えくり返ることよ! お前らの生まれる前、わたしは竜堂眸に闇のデュエルを挑み、負けた! そして若さを吸われ、老いてしまった! プレイングを磨いて再挑戦するも、負けた、負けた、負けた! その後もだ、レベル5能力者の量産計画などというものが、努力を嘲笑うかのように次々とレベル5能力者を作り出し、わたしは負け負け負け負け負け負けえええええええ!! 気が付けば50年も老いていた!」

半世紀ほど前にも、年齢を賭けた闇のゲーム(デュエルではない)を行った2人がいて、負けた方は一夜にして50年も老いてしまったという。
無堂幻大が竜堂眸に挑んだのは、約20年前。歴史は繰り返されたのだ。

「年齢を賭けすぎたのだ! わたしは満足にデュエルも出来ない体になった・・・。好きなデュエルも出来ない・・・もう一度デュエルがしたい、全力で! だからこそ次の世代に望みをかけたというのに、勝(まさる)! お前の体たらくは何だあ! 暗堂(あんどう)の娘に負けおって! おかげでまた10年も老いたわ!」

激昂した無堂老人は、小太りの少年を杖で不規則に打ち付ける。
無堂勝は両手で頭を庇いながら、低い呻き声を発して蹲る。

「10回もデュエルして1回も勝てんのか! 恥を知れ、このゴミクズがああ! 無意味で無価値なブタがああ!」

3年前に幻大は、暗堂飛竜(あんどう・ひりゅう)という男と賭けをした。子供同士をデュエルで戦わせ、年齢1年分をアンティとするというものだ。勝てば1年若返り、負ければ1年、年老いる。
かつてバトル・シティで、武藤遊戯とマリク・イシュタールが闇のデュエルを行ったとき、それぞれに罰ゲームを肩代わりする人質が存在したが、それと似たようなルールである。

「死ねっ、役立たず! ゴミっゴミっゴミっ! ・・・はああ、だが、わたしも悪かったのだ。準備不足だったのだ。今度こそ準備万端だ。そうだな、みんな。えっけけけけ、ねっへへへへ。」

「そうですとも。準備は尊いものです。」

エルス・レッスルが淡々とした口調で同意する。
彼女にとっては目の前の光景も驚くに値しない。それなりに修羅場は潜ってきて、おかしな人物とも少なくない数、出会ったり付き合ったりしてきたのだ。(恋人としてではないが)

「準備、準備。人生の9割は準備で決まります。このわたし、エルス・レッスル、準備をする人が大好きです。レベル5能力者といえど、準備をしない相手に負けるつもりはありません。」

「たいそうな自信ね、羨ましいわ。あたしなんか、もう不安でドキドキよ。」

地味で鉄面皮なエルスとは逆に、表情の豊かな少女が胸に手を当てて言った。
ふわりとした髪の毛に、ふわりとした服装。全体的に柔らかい印象を受ける。

「ドキドキの、もう半分は、あたしなんかが恋してるからね。恋する乙女は強いのよ?」

ノーラ・トロメアは、赤みの差した顔でウインクした。
それにドキッとした様子を見せたのは、題座千天。この中では最年少、13歳の少年だ。
千天は密かにノーラに思いを寄せているが、ノーラには他に好きな人がいる。

「うむ、うむ、ああ、ああ。頼もしい、頼もしいぞ。」

無堂老人は少し咳き込みながら、杖を持った手を打ち鳴らした。
やや不恰好な拍手だが、それなりに見られたものでもあった。

「エルス・レッスル、お前の相手は淵乃井斑だ。」

「はい。このわたし、エルス・レッスル、準備不足のデュエリストには負けません。」

「ノーラ・トロメア、お前は暗堂の娘と波佐間京介。」

「あ、わかりました。どっちから先に相手しようか、困っちゃうな。ドキドキするわ。ドキドキして心臓が破けそうだわ。」

「題座千天、お前は天神美月、呉星十字、エウレカ・セデミクラを。」

「はい、了解っす。大任、感謝しますよ、じっさん。」

「勝、無堂勝、お前は泣笠葉継、大河柾、タイヨウ、ゼロサムだ。やれるな?」

「・・・・う、うん。が、がんばる。」

「ふん、頑張って勝てるようなら世話ないわ。まあいい、構わない。えっけけけ、こっちには最終兵器が用意してあるからな。ねっへへへへ、癒虫鰐条(いえむし・わにじょう)。お前こそ、わたしが手塩にかけて育てた、とてつもなくワンダフルなデュエリスト能力者なのだからなあああああ!!」

「わかってるぜ。残るフェイシンとリュドミラ・・・それと、そいつらが取りこぼしたら、オレが片付けりゃいいんだろ? 任せとけよ。」

工事現場の大工が穿くような緩いズボンの、ポケットに両手を突っ込んだまま、鰐条は首をブンと振って帽子のツバを回した。不敵な笑みを浮かべた顔が、白日のもとに晒される。

「わすr」

「もちろん、忘れてないさ。」

無堂老人が何か言いかけたところへ食い気味に、鰐条は指を立てて笑う。


「絶対能力者を倒す。この世に“絶対”なんてモンは無いってことを、オレが知らしめてやるよ。」


まだ声変わり前ではあるが、無堂老人をもして息を呑ませるだけの迫力あるボイス。
声ひとつ取っても、只者ではないことを感じさせてくれる。

「そうだ、お前は世界の王にもなれる器だ。この大祭でレベル5能力者とレベル6能力者を倒し、愚民どもの目を覚まさせてやるのだ。レベル偏重主義に終止符を打ち、真に優れたるは才能ではなく、努力と根性であることを、今一度この世界の不文律とするのだ!」

無堂老人は咳き込みながらも興奮して止まらない。

「根性が腐っていても、性格が悪くても、才能さえあれば罷り通る世の中だ。どんなにイカれてようが、強ければ正道。そんなものは間違っている! 品行方正で努力を惜しまない若者が報われるような、そんな社会を作るのだ! 高レベル能力者を倒すのは、その“さきがけ”となるのだ!」

もはや涙すら流れている。興奮して涙が止まらない。

「清く! 正しく! 美しく! 優しく慈愛に満ち溢れた人間こそ、世界の王となるに相応しい! 優しい王者が世界を統一すれば、戦争も無くなる! 貧しさも差別も、消えて無くなる! 平和だ、圧倒的平和だ! へっけけけ、えっけけけけけ、ねっへへへへへ、た、楽しみだなああああああああああああああああああ!!!」

無堂老人は、叫びながら失禁した。

熱くなっているところ申し訳ないが、とでも言いたそうな雰囲気で、鰐条はポケットから手を出して帽子を取り、クルクルと回して椅子に座った。

「世界征服やら世界平和には興味ねえが、チート能力者が気に食わねえってとこは、今も昔も共感できるぜ。ついでにチートカードも気に食わねえし、財力で所持カードの格差が出るのも嫌いだ。そーゆー意味じゃ、貧富の差ってのは無くした方がいいだろうな。」

「おや、チートカードは嫌いかね?」

無堂老人は咳払いをして残念そうな顔をした。

「あるから使ってるが、少なくとも好きじゃねえ。オレは最強になりたいんじゃなくて、最強って概念を潰したいんだからよ。・・・まあ、あのカードだけで最強を名乗るには、デュエルの世界は広すぎるがな。」



“準備不足”のエルス・レッスル
レベル1能力者

“粘着気質”の無堂勝
レベル3能力者

“恋愛地獄”のノーラ・トロメア
レベル3能力者

“平等思想”の題座千天
レベルE能力者

“相対性理論”の癒虫鰐条
レベルE能力者




- - - - - -



「そーいえば、例のカードなんかが盗まれたって聞いたけど、それホント?」

ミーティングが終わってから、ノーラが千天に尋ねる。

「あ、そうっすよ。あんまり大きな声では言えないすけど・・・。」

千天は小声になる。
意中の人に話しかけられて、彼は内心緊張していた。

「秘密裏に“壊し屋”って人に依頼して、2日目のプログラムに間に合わせようとしてるみたいっす。おれの役目は重大っすね。呉星はともかく、天神とエウレカは潰しとかニャーならんっしょ。」

それにノーラも頷く。

「あたしも安藤燈炉子なんかは倒しとかないとね。そういう意味では、勝くんなんかホント任務重大なんだけど。」
「大丈夫っすかね? まあ、あのカードがあるっすけど・・・。」

千天は、自分もデッキからカードを取り出す。
同じくノーラもカードを取り出して眺める。

「エルスなんかにはホント感謝よね。鰐条(わにじょう)なんかはチートカード好きじゃないみたいだけど、実際レベル5能力者と戦おうと思えば、それなりのカードなんかは必要だと、あたしなんかは思うのよ。」





つづく

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
計画されていたかのように同時刻で次々と襲撃者が現れる。レベル5相手に単騎で勝負を挑む辺り、色々と能力とかカードとか準備してるんだろうなぁ、と思ってたら、カンサーの準備の人キター!決闘都市から逃げ出したカンサー側のデュエリストの内、どれぐらいが生き残っているんでしょうね。どの道、社会復帰が難しい人々だから、別のカンサー都市に向かったり、各地の地下に潜ってデュエルやったりしてるのかと思ってましたが、ここにもいた。○堂関係の確執も色々と複雑で深そうですね…。さて、レベル5だけでなくレベルE能力者まで出て来た今回の大会、一体どうなることやら…。
千花白龍
2017/01/22 16:46
>千花白龍さん
華やかな大会の裏で、レベル5抹殺計画が動き出し始めました。
シュライン・ファミリーが1人、無堂幻大。30代後半にして80を過ぎた老人の姿になっているMr.クラウン状態。相性を考えて、ぶつける相手を選んでいます。
準備と言えばエルス・レッスル、決闘都市第三街こと迷宮都市で番人を務めていましたが、ここにも姿を見せていますね。
今後も生き残りメンバーが登場する予定なので、ご期待ください。
生き残りの多くは他の都市や派閥に吸収されていますが、フリーの地下デュエリストになる者や、社会復帰を目指す者も、少数ですが存在しています。逃げ出すことに成功した場合、それ以降の生存率は(今のところ)高いかな・・・?
アッキー
2017/01/22 19:44

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