佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 14 平等

<<   作成日時 : 2016/11/18 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



「・・・ぅ・・・・あ・・・・・」

槍で貫かれた見城は、おぼろげに意識があるようだった。それだけに余計に残酷だ。
虚ろな目に涙を滲ませて痙攣しているのが痛々しい。

同じ人質を取るにしても、リンネとは真逆。
不必要な苦痛を与えず、相手の力を最大限に引き出すのが、永劫回帰の支配者。
決して善ではないけれど、悪の方に近いけれど、彼女はデュエリストとして正々堂々とした勝負を望んでいた。

そして正々堂々というだけでなく、抜かりもなかった。
メインプランとして吉井康助を置いていたが、サブプランとして99名のデュエリストに干渉していた。
そのうちの3名に、佐野春彦、霧原ネム、サン・レイティアがあった。

99名に共通することは、デュエリストであることは勿論だが、欠かせない資質がある。
それは、大切な人が危機に陥ったときに実力を増すということだ。

能力抜きで【オレイカルコス】に殆ど勝利した佐野春彦は言うに及ばず、霧原にしろ、タイヨウにしろ、人質の存在が実力を底上げしたことは否めない。
それ自体が本人の望むところではないにしろ、人質の存在が実力を高めた―――あるいは、実力を如何なく発揮させたことは、事実として存在するのだ。

デュエルモンスターズの神からすれば、一流も三流もドングリの背比べ。
ならば人間同士の優劣や勝率とは、別のモノサシで測るのが当然。

少々デュエルが強かろうと、ちゃちな精神力では神の相手をする資格など無いし、人質の存在が気を散らす要因になるのでは、興醒めも甚だしい。
大切な人を失うまいとする刹那、限り無く強くなる―――そうでなくては、戦う価値が無い。

当然サブプランの中には、武藤遊戯や結城十代の存在もあったが、上手く行かないだろうと踏んでいた。

遊戯は基本的に「その時代の危機は、その時代のデュエリストが解決するものだ」というスタンスを取っている。
例えば、アカデミア黄金期に起きた数々の事件に関与していないのは、そのスタンス通りである。
それは彼の祖父・双六から受け継いだ資質であり、後継を甘やかさない強さの顕れであった。

十代は遊戯よりは乗せやすいだろうが、ユベルという参謀が付いている。(ついでに大徳寺もいる)
心理戦においてユベルやアムナエルの裏をかくのは殆ど不可能であるし、肝心の人質に適役がいない。
厳密には、いないこともないが、焚き付けるには少々物足りない。

そうした処々の問題を、デウスエキスマキナ的に解決することは、美学に反する以前に実行不可能である。

リンネの力は決して万能ではない。それは天神も認識していることであり、また当然のことでもある。
あらゆる意味で物理的な攻撃が通用せず、魔術的な攻撃も、デュエルの勝利という事実それのみしか通用しない、まさしく神としか言いようがない特性と引き換えに―――あらゆる意味で物理的攻撃力を有しておらず、魔術的な力も並みの魔導師と大差ない。絶対的であっても、絶対値が大きいわけではない。


脇道へ逸れそうな話は、このあたりで終えることにして、要点だけを述べると―――

―――天神美月は、人質を取られたときに弱くなるタイプだ、ということだ。




天神美月:LP8000
題座千天:LP8000




「私のターン、ドロー! ・・・。・・・・・・。」

見城の苦しんでいる様子がチラついて、デュエルに集中できない。
目の前のカードとの距離が遠い。
自分は、こんなに弱かっただろうか。


『今からおよそ1年後に、とある少年がアマガミさんの元を訪れる。わたしの《掌握の力》を託すに足るその少年は、アマガミさんよりもずっと強い。その少年に、希望を託してみるのもいいかもしれないね。きゃははっ♪』


リンネの言っていた言葉の意味が、よくわかる。
確かに吉井康助は、天神美月よりも“ずっと強い”。

どうして自己犠牲が良くないのかというと、その答は意外と単純だ。
すなわち、「大切な人を守り通せるだけの力量に欠けているから」である。
別の局面では、献身的あるいは人情的として発露するが、戦いの場では実力を引き下げる要因になり得る。

事実として天神は、あの闇の槍が、最初から見城を狙ったものであることに・・・未だ気付けていなかった。


「手札から、《トレード・イン》を発動。《堕天使スペルビア》を捨てて2枚ドロー。」(手札6→4→6)

ドローしたカードは、《神の居城−ヴァルハラ》と《アテナ》。
おあつらえ向きのドローカードだ。

「永続魔法《神の居城−ヴァルハラ》を発動するわ。この効果で、手札から《アテナ》を特殊召喚!」

天神のエースカードにして、よく似た雰囲気を持つ、凛とした戦乙女。
彼女は盾と矛を構えて悠然とフィールドに降り立ち―――




―――そして、手札に戻った。




「・・・っ、これは・・・・・・!」

天神は即座に察した。
自分の推測が正しいかどうかを確かめる為に、手札から《オネスト》を召喚してみる。

正直な男は、音もなく手札に戻り、再び召喚しようとすると、けたたましいアラームが鳴り響いた。

もう間違いない。


「レベルE能力“平等の枷”(イコライザー)。あんたが他人にかける枷は、あんたの枷にもなる。」

題座は冷たい口調で言い放った。
そこにあるのは、恨みにも似た感情。

「ドローフェイズをスキップしてくるなら、相手のドローフェイズもスキップする。初期手札を落としてくるなら、相手の初期手札も落とす。モンスターをバウンスしてくるなら、相手のモンスターもバウンスする。最初から、おれの相手は天神と決めていたっす。仲間の調べで、あんたらの結束の強さは知ってるっすよ。」

「・・・っ!」

もしも見城めがけて槍を投げれば、天神が庇って受けたに違いない。
天神を狙って投げたからこそ、見城が庇って受けることになったのだ。

「・・・ターンエンドよ。」



天神美月:LP8000、手札5
場:
場:神の居城−ヴァルハラ(永続魔法)

題座千天:LP8000、手札5
場:
場:




「おれのターンっす、ドロー!」

しかし題座も2つのミスを犯していた。

まずは、自分の能力を早々に明かしてしまったこと。
コピー能力であると偽装することも出来ただけに、少々早まったと言わざるを得ない。
このことが後に、彼に深い傷を負わせることとなる。

そして、「相手を天神と決めていた」ということは、「見城を脅威と見なしていた」という意味でもある。
閉鎖空間を作るだけなら、必ずしも人質を取る必要は無い。
見城を狙ったということは、題座の能力が見城には文字通りに無意味ということもあるが、それでも条件は五分。
すなわち題座の実力は、高く見積もっても、常識的なデュエリストの範疇ということだ。

しかし、そこから導き出される次なる可能性として、「対天神デッキ」を組んでいるとも推測できる。
例えば【フルモンスター】のガリスバーン軸。あるいはリンネの考案した【ミスト・バレー1キル】。
黎川零奈が構築したデッキなどは、複数の手段を組み込んだ超メタデッキだった。





「《邪竜カンサーカイズ》3体の攻撃―――!!」





結論から言えば、そのどれでもなかった。





邪竜カンサーカイズ レベル8 闇属性・ドラゴン族
攻撃力3000 守備力0
このカードは手札からバトルフェイズに参加できる。


邪竜カンサーカイズ レベル8 闇属性・ドラゴン族
攻撃力3000 守備力0
このカードは手札からバトルフェイズに参加できる。


邪竜カンサーカイズ レベル8 闇属性・ドラゴン族
攻撃力3000 守備力0
このカードは手札からバトルフェイズに参加できる。




3体のドラゴンが、暴虐のブレスを放つ。

そして天神は、あろうことか、この1ターンで―――





天神美月:LP8000、手札2






・・・吉井から借りていた3枚の《クリボー》を、使い果たしてしまった。





「・・・ああ、そうっすね。吉井さんから戦闘防御カード、借りてたんでしたね。」

題座は目を細めて、手札をシャッフルする。
クセなのか、それとも公開したカンサーカイズの位置を隠す為か。判断はつかなかった。

「吉井さんと言えば、おれも実は結構、憧れてんすよね。不平等な状況を逆に利用してしまう、吉井さんのデュエリストセンスには頭が下がるっす。」

控え目な性格ゆえにスポットが当たることは少ないが、吉井康助のファンは多い。
その筆頭は見城薫であるが、例のDVDで吉井の戦いぶりを見た人の中には、少なからず彼の才能を見抜いている者がいた。題座もその1人であり、その後に天神とのデュエルの顛末を知ることになる。

「相手の能力を逆に利用するってのは、親近感を覚えるっすね。強力な能力でチョーシこいてる奴を、そいつ自身によって滅ぼす。この快感は、病み付きになるっすよ。」

「吉井くんは、あなたとは違うわ。」

「そうっすかね? そんな不健全な衝動とは思わないっすけど・・・。そんな目で見られるような。」

確かに、ある意味で題座の言うことは正しいのだろう。
しかし50パーセントまでだ。題座の言葉は、単に吉井のメタゲーマーとしての性質を述べているに過ぎない。

残る50パーセントの吉井康助を、題座は知らない。
そして天神は、よく知っている。


「・・・まあ、いいっすよ。おれは永続魔法《波動キャノン》発動。カードを2枚伏せて、ターン終了っす。」


天神美月:LP8000、手札2(アテナ、オネスト)
場:
場:神の居城−ヴァルハラ(永続魔法)

題座千天:LP8000、手札3(邪竜カンサーカイズ×3)
場:
場:波動キャノン(永続魔法)、伏せ×2



波動キャノン (永続魔法)
自分のメインフェイズ時、フィールド上に表側表示で存在する
このカードを墓地へ送る事で、このカードの発動後に経過した
自分のスタンバイフェイズの数×1000ポイントダメージを相手ライフに与える。




「私のターン、ドロー!」

いいカードを引いた。
動揺していてもドローパワーは下がらない。メンタルの強さに難があるとはいえ、天神は一流のデュエリストだ。

「手札から魔法カード《手札抹殺》を発動するわ。」

天神の手札から《アテナ》と《オネスト》が、そして題座の手札からは3枚のカンサーカイズが墓地へ落ちる。

「・・・っ!」

「カードを1枚伏せて、ターン終了よ。」



天神美月:LP8000、手札1
場:
場:神の居城−ヴァルハラ(永続魔法)、伏せ×1

題座千天:LP8000、手札3
場:
場:波動キャノン(永続魔法)、伏せ×2




「おれのターンっす、ドロー!」

これで題座の手札は4枚。伏せカードも2枚。
アドバンテージでは大きく差をつけられてしまっている。

「カンサーカイズを墓地に送ればどうにかなると思ったっすか? リバースカードオープン、《悪夢再び》!」



悪夢再び (魔法カード)
自分の墓地から守備力0の闇属性モンスター2体を選択して手札に加える。



「それに、おれも《トレード・イン》を発動するっすよ。カンサーカイズをコストに2枚ドロー。そしてもう1枚のリバースも《悪夢再び》! おれがハンデス対策を怠ってると思ったっすかぁ?」

8枚に膨れた手札のうち、3枚はカンサーカイズ。

それらが再び、灼熱のブレスを天神めがけて放つ!


「きゃああああ!!」

天神美月:LP8000→5000→2000


闇のゲームはダメージが魂に響く。
天神は激しい痛みと熱を味わい、悲鳴を発した。

「・・・《ガード・ブロック》っすか・・・・・・。また吉井さんに助けられたっすね。けれど、あんたのデッキは、あんた自身を相手にしたときのことを想定した構築になっていない。ジ・エンドっすよ。」

そして題座は、手札から魔法カードを発動する。

「《火炎地獄》っすよ!」

「・・・っ、《ハネワタ》で防ぐわ。」

「今の《ガード・ブロック》で引いたんすか・・・。吉井さんは、どれだけあんたを助けるんだか。不平等っすよね。」

題座の眼が暗くなる。

「“平等思想”の名を冠するといっても、おれは平等を徹底しようとは思っちゃいないっす。この不平等な世の中、杓子定規に平等を徹底すれば、それは不平等を徹底することになる。・・・でも、世の中は、もう少し平等になっていい。」

歯を剥き出しにして笑う題座は、とても13歳の少年には見えなかった。

「魔法カード《マジック・ガードナー》発動っす。《波動キャノン》にカウンターを乗せるっすね。」


マジック・ガードナー (魔法カード)
自分フィールド上に表側表示で存在する魔法カード1枚を選択して発動する。
選択したカードにカウンターを1つ置く。
選択したカードが破壊される場合、代わりにそのカウンターを1つ取り除く。




「これで次のターン、《波動キャノン》を墓地に送って、ジ・エンド。たとえ《波動キャノン》を処理できても、それならそれで結構っす。3体のカンサーカイズ、もはや止められないっすよ!」



天神美月:LP2000、手札1
場:
場:神の居城−ヴァルハラ(永続魔法)

題座千天:LP7500、手札5
場:
場:波動キャノン(永続魔法・カウンター1)






つづく

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内 容 ニックネーム/日時
天神さんは人質がいると弱くなる!確かに、人質を取られると強くなる人もいれば、弱くなる人もいますね。どちらでもない人は多分少ない。人質に成り得るということはそれだけその人の心の中を占めているということ。人質を取り戻そうとエネルギーに換えることが出来るか、はたまたそのエネルギー分だけ焦りや不安が出たり、集中力を欠いて普段のプレイングが出来なくなってしまうか。
ここで眸さんのお気に入りのカード(多分)、カンサーカイズ登場。えっ!?あれって世界に3枚だけしかないとか、そんなことはなかったの!?グールズよろしく、コピーカード?それにしても眸さんに寿命取られてもカードはしっかり利用する。坊主憎けりゃ何とやらとはなっていない辺り、客観的かつ入念に勝てるように準備してきたことの表れかもしれません。
追い詰められた天神さんですが、逆転の一手をドロー出来るか…?
千花白龍
2017/01/22 20:50
>千花白龍さん

もしも天神さんが人質に取られてい(ることを知ら)なければ、吉井くんはダメージを反射されて負けていたので、精神論とかではなく事実として強くなるんですね。
天神さんは若干メンタル弱めで、不安と焦りから実力を発揮できないでいますが、吉井くんを引き合いに出されたことで、調子が戻るでしょうか?
逆転のヒントは冒頭の長文の中に隠されているかもしれない!

カンサーカイズは竜堂眸から神邪へ、そして亜依へと渡りましたが、回りまわって今ここにある・・・かもしれないし、別のレッドアイズがカンサー化して枚数が増えたかもしれません。
幻大のスタンスについては、ちょっとした伏線です。もちろん、利用できるものは何でも利用するという貪欲さもありますが、彼の本性は実は・・・。
アッキー
2017/01/22 23:40

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