佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 22 収束

<<   作成日時 : 2016/11/26 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



「理解できないなら理解しなくていい」

それが竜堂神邪という人物のモットーであり、生き方である。
理解できないものを、無理に理解することはない。理解が不可能なことは、理解の必要が無いものだ。
人生は、子供の頃に思っていたほど短くはないが、有限だ。時間は有意義に使いたい。

誤解されがちだが、最初から理解する努力を放棄していいという意味では、決してない。
むしろ竜堂は、理解する努力を尊び、また、理解できないままでいることに多大な苦痛を覚える人間である。
自分に可能な限り理解する努力をして、それでも理解できないなら―――というモットーだ。

よく、「人の気持ちはわからない」と言って、理解を放棄しようとする人間がいるが、竜堂は辟易している。
そんなセリフは、理解しようと絶え間ない努力を続けている人だけに許されたものだと思うし、その努力を続けている人は、言葉として口にすることはあっても、思想として主張することは無いだろう。

確かに他人の“気持ち”を理解することは、テレパシストでも難しい。
思考を読み取れても心理を読み取れるとは限らないし、逆もまた然り。
両方とも把握できても、それに対して加える解釈は、本人とは違うものになるだろう。
ゆえに、厳密な意味で「人の気持ちを理解する」ことが不可能であるのは、竜堂も認めること吝かではない。

しかし、他人の“立場”を理解することは出来る。そう思っている。
いわゆる“人の気持ちを理解する”ということは、立場を理解することに近似されると言っていい。

言語化すると、何やら小難しく聞こえるが、実際のところは小学生レベルですらない。
完璧に実践することは誰にも出来はしないが、可能かどうかで言えば、幼児でも可能な部類に入る。
10歳を過ぎても他者の立場を理解できない奴は、死んだ方がいい。竜堂は、そう思っている。

理解してから、それについて何を思い、どう行動するか―――それは別問題だが、少なくとも理解そのものを放棄するようでは、知的生物としての最低水準も満たしていない。
たとえ人から理解されなくても、人を理解する努力は続けたいし、続けねばならないと思う。
権利であり義務、希望であり信念、哲学であり強迫観念。あるいは、生き様。

親しい間柄なら別の理屈もはたらくのだろうけれど、それはもう“他人”ではない。別の概念で呼ばれる。


たとえば、「親友」とか―――



◆ ◆ ◆



「速攻魔法《時の飛躍》!」


「ぶひいいいいいいいっ!!」

無堂勝:LP8000→6600→3300→0



「ふぅ、長引けば多分ヤバかったな・・・。」

大河は一息ついて、デュエルディスクを折り畳んだ。
それと同時に、闇の瘴気も引いていく。

「おい、事情を聞かせてもらうぜ。」

無堂の胸倉を掴んで、大河は凄む。

「ひぃ・・・」

ぶるぶる震える無堂は、根こそぎ戦意を喪失しているように見えた。
実際、闇のデュエルで敗北して、何か反撃が出来るわけもない。

「・・・・・・。」

しかし、事情を聞き出すことも出来そうにない。
大河は目を細めて頭を掻いた。

(こいつの単独行動ならともかく、組織立った匂いがすんだよなあ。)

あっという間に倒せたものの、明らかにメタを張った能力。
他の高レベル能力者にも、刺客が差し向けられている可能性を考えたのだ。

とりあえず麦庭に連絡を取ってみることにした。

しかし、出ない。

(チッ・・・出ねえ・・・)

まだ偶然の可能性が高いとは思いつつ、大河は嫌な予感を深める。


そこへ、落ち着いた雰囲気の少女が、泣きじゃくる少女を連れて歩いてきた。

「ふぇ〜ん、デュエルにも恋にも敗れちゃったよぉ。波佐間さん、こわいよぉ・・・。死ぬかと思ったよぉ・・・。」

「落ち着きなさい、ノーラ・トロメア。心の準備が足りてませんよ。」

そう言ってエルスは、大河を見つめた。
直感的に大河は、無堂の仲間だと感じた。

「おま――」

デュエルディスクを構えようとしたときに、エルスが手を挙げたので、大河は途中で言葉を止めた。

「戦うつもりはありません。我々みんな、真正面から戦って負けたのです。今更あなたを倒そうとも思いませんし、倒せるとも思っていません。準備不足を恥じて、いちから出直しますよ。」

「・・・・・・。」

嘘は感じられない。

これから何かが始まるとかではなく、既に事は収束しつつあるのか。

「お前ら、何人いる?」

「無堂さん・・・その子の父親はデュエルできませんから、デュエリストは4名です。このわたし、エルス・レッスル、この子はノーラ・トロメア。そちらの無堂勝、それから題座千天。4人とも敗北しました。」

「・・・そっか。それぞれ誰と戦ったんだ?」

「わたしは淵乃井と。ノーラは波佐間と。無堂は、前に泣笠と。題座は天神と。いずれも敗北しています。」

「ふーん。お前ら、レベル5を倒そうとしてたのか?」

「そうです。“最強”という概念を潰すこと、それが我々“メラノーマ”の目的であります。」

「なるほどな。それでレベル5を・・・。ああ、そうか、エルス・レッスルって、ダンジョンの・・」

記憶が繋がった。
かつて滞在していた都市で、試験官を務めていた人だ。

「はい、デュエル・ダンジョンで雇われていましたが、フリーになったところを無堂さんに拾ってもらいました。」

「そうか。そりゃ良かった。で・・・」

大河の目つきが険しくなる。


「シンヤのところには誰が向かってるんだ?」


その質問にエルスがギクッと反応したのを、大河は見逃さなかった。
エルスが後ずさるより早く、その胸倉を掴んで壁に押し当てた。

「どうやら図星か。お前ら本当は何人いやがる?」

カマをかけられたと理解したときには、エルスの首は絞まりつつあった。

「う・・・ぐ・・・」

「いいや、デュエルで決めよう。俺が勝ったら、シンヤ・・・竜堂神邪のところへ案内してもらう。」

険しい目つきのまま、大河はデュエルディスクを展開しようとする。

「けほっ・・・ま、待ってください。わかりました、案内します。」

「な、何でわかったの?」

ノーラが胸に手を当てて、不思議そうに尋ねる。

「単にカマかけただけだが・・・強いて言えば、絶対能力者を狙わないはずがないって思ったからな。」



- - - - - -



歩きながら、エルスは間がもたないので話しかけた。

「竜堂神邪が心配ですか?」

「・・・・・・。」

返事が無い。ただのしかばね・・・ではないが、不気味なのは同じだ。
そもそも何となく歩いているが、走れとか言わないのだろうか。

「まあ、心配でしょうね。」

「当たり前だ。」

ぶっきらぼうな声で、大河は言った。
つっけんどんな感じがして、エルスは怯える。

(ノーラを連れてくれば・・・いえ、同じですか。)

むしろ下手にノーラや無堂勝を連れて歩く方が、リスクが高いかもしれない。
1対1なら、さっきのような手荒な真似はしないだろう。そう思いたい。

「能力が無ければ、そのへんの雑魚以下ですからね。」

ちょっと挑発してみた。
内容は本音だが、これを言っての反応で、今後の身の安全を考える材料になる。

「・・・・・・。」

また返事が無い。

「わかっていると思いますが、もうデュエルは始まっています。いえ、終わっている可能性が高いです。それをわかっているから、急がないんですよね?」

「・・・・・・。」

「ということは、竜堂を相手にしている者の、能力もわかっておられるので?」

切り口を変えてみる。
すると大河は、軽く頷いた。

「能力の無効化だろ?」

「・・・!」

またカマをかけているのだろうか。それとも、「能力が無ければ〜」の発言から読み取ったのか。
いずれにしても、大河が親友の仇を取るつもりなのだとしたら、ここで情報を得ておくのは有利だ。

(どうしましょうかね。)

今度は表情には出さなかったが、この情報は伝えておくべきかとエルスは思った。
おそらく癒虫の性格からして、互いに能力を明かしてのプレイは望むところ。ならば?

「・・・その通りです。」

正直に言う。

すると大河は、いっそう顔を険しくした。
見れば、わずかに足取りが重くなっている。

「ヤバいな。」

そう呟いたのを、エルスは聞き逃さなかった。

(ああ、それはそうですよね。レベル5だって、デュエルは恐いものでしょう。まして自分の能力が、無効化されてしまうのであれば・・・。)

同じレベル5でも、かつての変態上司とは随分違うと思いながら、エルスは何だか微笑ましい気分になった。



◆ ◆ ◆



「葉継! 無事だったか!?」

ブルーアイズジェットで戻ってきたレッドラムが、走ってきて泣笠に抱きついた。

「ええ、斑のおかげで勝てたわ。その後、ちょっとアクシデントがあったけど、相田さんに助けられてピンピンよ。」

「アクシデント?」

「癒虫鰐条。どうやら竜堂とデュエルしてる最中のようね。」

“ブック・オブ・ザ・ワールド”を開いて、泣笠は確認する。
それを見て、レッドラムは目を丸くする。

「おい・・・おいおいおいおい、何で一方的にやられてんだ? え、あ、レベル5以上の無効化ァ? 何だそりゃ。もしかして葉継も襲われたのか?」

蒼白な顔で両腕を掴んで、レッドラムは温もりを確認する。

「まあ、助かったから結果オーライよ。見ての通り。」

「そうじゃなくて、この癒虫ってヤローに何かされなかったか?」

「えーと、ちょっとカードに封印されただけよ? こうして脱出できて・・」

だが、みるみるレッドラムは怒りの表情へと変貌した。

「ぶっ殺してやる・・・!」

実際問題、レッドラムなら癒虫と互角の勝負が出来るだろう。
“ブック・オブ・ザ・ワールド”で情報アドバンテージは得た。

「止めるなよ。」

「わかったわ。でも私も行くわよ。」

「わたしも! そいつの能力がレベル5以上の無効化なら、わたしは役に立つはずよね?」

さっきまで闇の力を食らってたとは思えない元気で、脳堂が手を挙げて言った。

「ああ。心強いぜ。」



◆ ◆ ◆



「すいませんでしたー! おれの完敗っす!」

天神の目の前で、題座が見城に土下座していた。

「気にすんな! デュエルが終わればノーサイドだ!」

健康的な声で、見城が題座を立たせる。
手を取ってもらって、彼は見城が天使に見えた。健康的な、天使。

「それよりも、午後のプログラムに出てみねえか? アンタなら、面白いデュエルが出来そうだぜ!」

「えっ・・」

「私もそう思うわ。」

女神のような微笑みで、天神が同意する。

「い、いいんすか? だって、おれ・・・闇のデュエルで・・・」

「いいのよ。」



- - - - - -



天神と見城に付いて行き、題座はインダストリアルイリュージョン社の名誉会長と対面した。

「Oh〜、千天ボーイ! ユーの心に、迷いの雲と自由の青空が見えマース。」

「自由の、青空・・・っすか?」

恐縮しながら、題座は晴れやかな気分になる。

「かつて私も、ある目的の為に罪を犯しました・・・。そのことを忘れることはありまセーン。人は誰しも、己の罪から逃げることは出来ないのデース。ですが、己の罪と向き合ったときから償いは始まるのデース。彼のように・・・。」

ペガサスは、どこか遠くを見つめていた。
あるいは、ここから遠くないところにいる人物を思っていた。

「千天ボーイ。ユーは既に、己の罪を認め、向き合ってマース。謝って、許されたのなら、それでいいではないですか。私が許可を出しまーす。デュエル・フェスティバルを、楽しんでいってくだサーイ。」

それがM&Wの創造主としての喜びだと付け加え、ペガサスは微笑んだ。
片方の眼が隠れた微笑みは、大人の男性に用いる形容詞としては相応しくないかもしれないが、純真で無邪気な妖精のようだった。
それは、デュエルモンスターズの“概念”の創造者の、子供らしい笑みにも似ていた。






つづく

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