佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 23 現実

<<   作成日時 : 2016/11/27 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



「理解できないなら理解しなくていい」

それが竜堂神邪という人物のモットーであり、口癖である。
理解できないものを、無理に理解することはない。
下手な理解をされることは、全く理解されないことよりも苦痛だ。

誤解を恐れずに言えば、竜堂神邪に対する評価は「全て正しい」。
量子力学ではないが、虚無的で曖昧な精神状態が、他者の評価を受けることで確からしくなる。
つまりは、およそ評価された通りの人間として振舞うのだ。

言い換えれば、竜堂に対する評価は、むしろ評価する方の性質を顕している。
竜堂を壊れていると評価する人間は壊れているし、つまらないと評価する人間は陳腐で無神経だ。
心が強いと評価する人間は、決まって心が強い人だし、変わりたくない者は、そのままでいろと竜堂に言う。
人間味があると評価する人は、自身が人情に篤い。献身的だと評価する人は、自身が献身的な人である。

すなわち竜堂にとって、自身に向けられる評価は、相手を“判断”する材料なのだ。
よく失念されることだが、何かを評価するとき、その評価そのものも評価の対象になりうる。
先のモットーは、決して理解を放棄することの推奨ではなく、竜堂は他者を理解する為に「評価を評価する」。

内容の正確さなどは至極どうでもいい。全てが正しいのだから。
重要なのは、その評価を聞いて何を感じるかだ。
その評価が好きか、嫌いか。それ以外に何も無い。

たとえ自分に好意的でなくても、誠実さや共感を示してくれる評価は好きだ。

その逆に、たとえ正論であろうとも、剥き出しの嫌悪をぶつけてくるような輩を、竜堂は心底軽蔑する。



◆ ◆ ◆



「・・・?」

癒虫は、顔をしかめた。
自分が闇のデュエルで倒した相手は、《魂の牢獄》に封印されるはず。

(・・・あ、そっか。負けたら奴隷になるって契約で、上書きされてんのか。)

得心いって、ソリッドビジョンが消えるのを待つ。

待つ。

・・・待つ。

「・・・・・・?」



竜堂神邪:LP0、手札0
場:
場:

癒虫鰐条:LP7500、手札4
場:バーサーク・デッド・ドラゴン(攻0)
場:




「・・・・・・!?」

どういうことだ。
癒虫は、本当に理解できなかった。

すると、倒れていた竜堂が、むっくりと体を起こしてきた。

「げほっ・・・。やれやれ・・・闇のデュエルで攻撃力3500なんて、食らうものじゃないね。」



デュエルは終わっていなかった。



「・・・? どうしたの?」

竜堂はわけがわからないよという顔で尋ねた。
それは皮肉でも嫌味でもない。
先程まで、あれだけ自分を罵っていた人が、急に目を白黒させて黙る。意味がわからない。

竜堂は基本的に、相手を過小評価しない。
まず尊敬から、そうでないにしても肯定から入るのが、竜堂のやり方だ。
侮蔑や嫌悪、冷笑を向けられたとしても、まず考えることは「自分に非があるのでは」ということだ。

とはいえ、基本があれば応用もある。
傷つけられて、傷つけられて、それが臨界点を超えたときに、ようやく相手の非を認めるのだ。

「まさかとは思うけど。」

憎悪にも近い表情で、竜堂は推測を口にする。
あまりに荒唐無稽だと思いながらも。

「本気で僕の能力を封じたつもりだったわけ?」

馬鹿馬鹿しい。
自分で言ってて嫌になる。

絶対能力者を倒すことを目的としている者が、この程度のことに気付けないわけがない。
だからこそ、露骨な挑発行為の裏に何かあると考えて、能力を使わずにいたのだ。

(この態度も何かの罠か?)

そう考えて、竜堂は適当なことを言ってるに過ぎない。
表面だけを見て、うわべだけの言葉を投げかけているに過ぎない。


だが、現実は竜堂が思っていたより、遥かに陳腐なものだった。


「ありえねえ・・・! あ、ありえねえ・・・! テメーの能力は、デュエルしてないときでも発動できるが、それでもオレの能力の範疇だ・・・そのはずだ・・・!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

竜堂の表情は、シャボン玉に映ったかと思うほどに歪んだ。

(マジで・・・? マジにそんなこと言ってるわけ・・・?)

もうホント何かの罠としか思えない。

(ありえない・・・。)

自分を倒そうと思ってないなら理解できる。
倒そうと思ってないなら、わからなくて当然だ。
やっつけてやろうと思っていないのに、攻略法を研究するのは、異常者とまでは言わないにしても少数派だ。

あるいは、能力を知らないなら理解できる。
未知の能力について、何が起こってるかなど普通はわからない。
極めて少ない情報からでも能力を推察する、相田たのかのような人間は、極めて稀な存在だ。

自分を倒そうとしていて、能力テキストを知っていて、デュエル中でなくても発動できることまで知っていて。
それで今の現象に狼狽するというのは、竜堂の常識では絶対ありえないことだった。
態度に見合うだけの実力もなく、どうして闇のデュエルに身を投じることが出来るのだろうか。わからない。

懸かっているのは、命とか、それに準ずるもの―――今回であれば、奴隷、絶対服従。そんなデュエルなのだ。
軽いノリで報酬もなくロシアンルーレットに興じるくらいなら、まだ理解できる。その感覚はわかる。
しかし、相手の人格を否定し、心を傷つけ、それで“これ”は理解できない。わからない。わからない。わからない。


「デュエル中でなくても発動できるのは何故か、考えたことはなかったのかい?」

そんなわけねーだろと心の中でツッコミを入れながら、竜堂は尋ねた。

「“掌握の力”や“回帰の力”でもない能力が、どうしてデュエルしてないときでも発動するのか、一度も疑問に思わなかったの?」

「ああ・・・・・・???」

癒虫は汗を流しながら顔を歪めていた。
これが演技だとしたら、演劇の世界で名を馳せることが出来そうだ。



「“シフト1”は、数字を元の値から±1出来る。能力を持たない者をレベル0と見なしてレベル1に出来る。」



「・・・っ、そんなことわかってる! テメーが人の能力をいじくるサイテー野郎だってことだろ!」

癒虫は汗を飛ばしながら叫ぶ。

何だ、やっぱりわかってるんじゃないのかと思いながら、竜堂は続ける。



「また、自身のテキストに適用することで、『数字を元の値から±2出来る』とも出来る。」



「何・・・だと・・・?」

目を剥く癒虫だったが、どうせ本気で驚いてはいないんだろうと嘆息し、竜堂は続ける。



「“数値”ではなく“数字”を操るから、レベル1をレベル−1にすることは出来ないが、レベル0をレベル−0と見なすことで、レベル−1にも、レベル−2にも出来る。」



やや回りくどいが、順序だてて話すのが様式美というものだろう。
とはいえ、気恥ずかしいものがあるのは否めない。
真犯人が、自分でトリックの種明かしをするようなものだ。

(ああもう・・・誰か、たのかさん呼んでくれ。)

自分でなく、相田が得意気に解説するなら、バッチリ決まって素敵だろう。
もったいぶって推理ショーを行うのは、探偵の領分と決まっている。
竜堂は恥ずかしさで泣きそうになりながら、自分への拷問を続けた。



「数の概念を複素数まで拡大して、レベル6をレベル6+0i とする。それをシフトして、レベル6+2i 。ご存知の通り、複素数に大小の概念は無い。レベル5以上を無効化しようが、レベル99以下を無効化しようが、以上でも以下でもない複素数レベル能力は無効化できない。」



虚数能力は、現実の所作に影響を及ぼすことが出来る。
だからこそ自分がデュエルしてないときでも発動できるのだ。

ライフが0になっても敗北してないのは、「ライフが0になったら敗北する」をシフトして、「ライフが1になったら敗北する」としているからである。

「僕のデュエルタクティクスが貧弱なのは否定しないけどね、君が倒そうとしている大河柾は、テキストを伝えただけで推測してきたんだぜ・・・。それでよくマサキを倒そうとかほざけるね。イライラするよマジで。」

不愉快だ。怒りが込み上げてくる。

(海堂とあれほどのデュエルを繰り広げた人が、どうして僕に対しては馬鹿げた側面しか見せてくれないんだ。)

勇敢な人に臆病と罵られるように。
心優しい人に冷たいと蔑まれるように。

“お前に対しては良い面などで接してやるものか”と、言われているようだ。

「ええと、“包装紙”とか言ってたっけ? 同じようなことを言った人がいるけどね、その人は丁寧に包装紙をほどく人なんだよ。決して、汚い手でビリビリに破かないんだ。」

人間には、賢い面と愚かな面があるだろう。
あたたかい面と辛辣な面があるだろう。

「無効化能力ってのは、それ自体は残虐で無慈悲な能力だ。だからこそ使い手の人格が問題で、使い手の発言が問題で、使い手の行動が問題なんだよ。」

うわべを取り繕うことは、建前を述べることは、それだけの価値を相手に認めているということでもある。
取り繕いもせずに正直に、剥き出しの本音をぶつけるのは、相手に敬意を払う価値を微塵も認めてない。

「君の能力、君の発想は、相手の個性を認めず叩き潰すだけの、陳腐なものでしかない。強いものや優れたものを前にして、それを認めたくないというだけの僻み根性だ。その程度で“最強”を倒すとか、笑わせるなよ。」

そもそも前提から間違っているのだと、竜堂は思う。
自分は最強などでは、決してないのだから。

「そもそも僕の能力は、文字通りに、掛け値なしに脆弱だ。君が言った通り、僕はメチャクチャ弱い。絶対能力なしではデュエルに勝つことが出来ない。」

最弱ではないにしろ、極めて脆弱。

「この絶対能力は、心が壊れて、多くのものを諦めた僕が、ようやく手にした宝だ。かけがえのない力だ。」

どれだけの苦痛を味わってきただろう。
どれだけの喜びを汚されてきただろう。
数えることすら出来やしない。

「君がやってることは、最強を倒すってカッコイイ反逆なんかじゃない。人が大切にしている宝物を、ぐしゃぐしゃに踏み躙って得意になってるだけなんだ。楽しいか? 人の心を土足で踏み躙って、そんなに楽しいか?」

心が冷える。
すうっと冷える。
どんな残酷なことでも今なら出来そうだ。

「同じことを言わせてもらうが、僕の方こそ期待はずれの外だ。『相手のデュエリスト能力を無効化する』って能力者にも勝ってきた僕に、君の能力で、どうして勝てるわけ? 君の能力“だけ”で。」

絶対能力に頼りっきりの竜堂が“弱い”ように。
癒虫もまた、能力頼りのデュエルをしてしまった。
まるで竜堂を鏡映しにしたように。

厳密に言えば、他者の性質を反射することは、多かれ少なかれ誰でもやっている。
竜堂は、その度合いが強いだけに過ぎない。度が過ぎて強いだけに過ぎない。

優れた人が自分には劣った対応をしてくるのは、すなわち自分が低劣だからではないのか。
自分の頭が悪すぎて、自分の性根が腐りすぎていて、わずかに反射するだけでも、今の癒虫みたいになるのか。

真っ当とは言えないまでも平穏な人間社会を、毒で汚すのが自分という存在か。

だから自分は、「悪い奴」なのだ。

たとえ、間違っていなくても。



「僕のターン、ドロー。」



竜堂神邪:LP0、手札2
場:
場:

癒虫鰐条:LP7500、手札4
場:バーサーク・デッド・ドラゴン(攻0)
場:




「《コカローチ・ナイト》を召喚し、《強制転移》を発動。」



竜堂神邪:LP0、手札0
場:バーサーク・デッド・ドラゴン(攻10000)
場:

癒虫鰐条:LP7500、手札4
場:コカローチ・ナイト(攻900)
場:




「これで最後だ。《バーサーク・デッド・ドラゴン》の攻撃・・・ジェノサイド・カプリッチオ!!」


「うぅ・・・・・・うぁあああああ・・・・・・・・・・・」


癒虫鰐条:LP7500→1




“シフト1”によって、ライフが1になったら敗北する。

すなわちこのデュエルは、癒虫鰐条の敗北で。

竜堂神邪の勝利に終わった。







つづく

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