佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 不思議な世界で遊戯王〜導かれし五人の勇者達〜 (前編)

<<   作成日時 : 2017/01/14 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



<場面1、コタツでみかん>

果てしなく広大な空間を彷徨っていた。暗く冷たい闇の空間。
彼は生まれたままの姿で漂いながら、不思議と羞恥心は無かった。
突如として光の洪水が渦を巻き、その中心にコタツがあった。
コタツは神々しい光を放っている。生まれたての宇宙のようだ。
そこに吸い込まれるようにして、無垢なる裸身は産道を通る。
「あったかい……ひかり……?」

気が付けば、どてらを着こんでコタツに入っていた。
しかも手には、剥きかけの蜜柑があった!
「何…これ……」
疑問が指に力を込めた。
蜜柑の汁が噴き出し、目に入った。
「ぐあああああああああ!!!」

眼球を襲う激痛の中。
常人ならば痛みで転げ回っていただろう。
しかし、彼――ゴドールは違った!
ゴドール「ぐ……僕を罠にかけるとは!けど僕はホムンクルス!眼を潰されようが、瞬時に再生できるのさ!」
別に眼を潰されたという程ではないが、彼の人間を逸脱した眼球は蜜柑汁のダメージからすぐに回復した!

???「流石はゴドールさんですね。」

ゴドール「…誰?」
瞬時に再生した目を開けると、そこには頭の上に三匹の猫を乗せている白い髪の少女がいた。そして、さっきの彼の叫び声に反応して、コタツの周りに寝ていた人間達も起きてきた。

???「ふふふ、私は猫魔神。猫の神様です。」
微笑みながら返答する少女は、頭の上に三匹の猫を乗せていた。どんな状況だ。しかも全く重さを気にしている様子は無い。本物ではなくアクセサリーか何かだろうか?

猫魔神「さあ、皆さん起きて下さい。コラボ番外編の時間ですよ。」

猫の少女は声と共に手を叩いて大きな音を出す。それに反応して目をこすりながら起き上がった者達は男ばかりが四人。
どてらの下にジャケットを着た野性的な青年に、どてらの上から赤いマフラーを巻いた精悍な青年、どてらを着ているが渋い雰囲気の細身の男、どてらの下に白衣を着た科学者風の壮年。
まるで脈絡の無い奇妙な恰好の四人だが、どてらの下は白衣にビキニ一丁のゴドールに、恰好のことでとやかく言われたくはないだろう。
猫の少女と自分自身をいれて六人がコタツを囲んでいるという不思議。この中の誰一人として、知った顔の者はいない。

猫魔神「さて。」
三匹の猫を頭に乗せた少女は、ポンと手を叩いた。
猫魔神「初めまして皆さん。私は猫魔神。そして、ここはTRPGの開発場『ユメノナカ』です。本日は新作TRPGのテストプレイにご参加頂き、真にありがとうございます。」

ゴドール「ねえ、ソーガはここに来てないの?」
ウロボロス「地獄に落ちる前の座興か。せいぜい楽しませてもらうとするかネェ!」
マサキ「……俺は何故ここにいる?」
龍明「どういうことだ、これは……。」
九郎「……なるほど、夢か。珍しいな、知らない人が出てくる夢は。」
どうやら他の男たちも、互いに知らない間柄のようだ。

白い髪の少女は、柔らかい笑顔で頷いた。
猫魔神「そう、これは夢です。気が付けば目が覚めている、そんな前座のような時間です。ここに集まったのは皆さんだけ、それぞれの作品から1名ずつだけです。こうして集まれたのも何かの縁。せっかくの夢なので気軽に楽しんでもらえれば、と思います。」

ゴドール「作品って、何だかメタな発言が出てきたね。」
猫魔神「今回のストーリーは、ギャグ進行となっております。」
マサキ「…早くも嫌な予感がしてきたぞ。」
龍明「ハピフラ代表なら、俺よりも賢治か幸恵ちゃんのほうが適任じゃないか?」
猫魔神「今回は代表1人だけですから。1人だけなら出ないと断られちゃいました。」
龍明「俺に断る権利はないのか……。」
九郎「せっかくテストプレイヤーに選ばれたんだ。楽しもうじゃないか。」
ウロボロス「キミとは気が合いそうだネェ!」

壮年の科学者の人懐っこい態度に、九郎は何故か弟を思い出していた。容貌は似てないし、第一年上だが、どこか似ているものを感じたのだ。

マサキ「しっかし、見事に男ばっかりだな。しかも一癖も二癖もありそうな……」
どうせなら可愛い女子にも参戦してほしいと思ったマサキだが、男同士のハードボイルドな冒険も嫌いではない。
むしろ油断ならないのは、目の前の猫魔神であると感じた。ギャグ進行と言われているが、ギャグ作品のキャラが酷い目に遭うのは、お約束である。

猫魔神「さて、皆さん。今日はTRPGデュエルを始めます。ざっくり説明しますと、皆さんにはデュエルモンスターズのカードを使って、協力してクエストをこなしてもらいます。初期ライフは4000です。以上!」
マサキ「ホントにざっくりだな!」
猫魔神「尺の都合がありますから。」
マサキ「癪に障る……」

猫魔神「というわけで皆さんには、それぞれの脳内から構築された“TRPG用デッキ”が用意されております。何が出るかな♪何が出るかな♪」
猫魔神が歌うと、“破滅の光”に包まれながら、五つのデッキが舞い降りてきた。
マサキ「何か禍々しい色の光だな……。」
猫魔神「コタツに着地するまで、触らないでくださいね。」

だが、デッキはゆっくりと降下する焦らしプレイだった。さっき尺の都合とかほざいていたのは何だったのだろうか。
ようやく着地して、光が解除されたデッキを手に取ると、自動的に中身が頭に浮かんできた。

猫魔神「それでは一夜の冒険の仲間達に自己紹介をお願いします。」
龍明「なんか新学期みたいだな……。俺は野口龍明。えーと、何を話そうか。ああ、ドラゴン族デッキを使っている。」
マサキ「…もしかして、弟か妹いたりする?」
龍明「ん、まぁ、弟みたいな友人なら。きみは?」
マサキ「おっと、自己紹介だったな。俺は大河マサキ。デュエリスト能力者……いや、サイコデュエリストって言った方がいいのか?エースモンスターは《ダーク・アームド・ドラゴン》だ。」
ウロボロス「キミもダークモンスターを使うのか。」
マサキ「闇属性プラスアルファってとこかな。」
ゴドール「それで君は?」
ウロボロス「人に名前を問うときは、先に自分から名乗りたまえ。」
ゴドール「僕はゴドール、錬金術師さ。」
九郎(錬金術師!?)
ゴドール「好きなデュエリストはソーガ・ダイモン。好きなカードは《黄金のホムンクルス》だ。」
マサキ「除外デッキなのか?」
ゴドール「直球で訊くね。駆け引きを楽しもうとは思わないのかい?」
マサキ「駆け引きも何も、協力プレイなんだから……。」
ゴドール「敵を騙すには味方からとも言うよ。それで、僕は名乗ったけど?」
ウロボロス「ワタシはウロボロス。科学者だ。一晩の友好の印に、ワタシの研究成果を賞味いかがかね?」
そう言って彼は、懐から瓶詰のジャムを取り出してコタツに置いた。蓋を開けると、芳香族化合物の良い香りが漂ってくる。早速ゴドールは味見をした。
ゴドール「これは美味しいジャムだね!製造方法は訊かない方がよさそうだけど。」
ウロボロス「いやいや、実に聞きたそうな顔をしているネェ!後で教えてやろう。」
ここへ来てあまり時間も経っていないのに、かなり打ち解けている。だが、二人合わせてハチャメチャ戦車のような危なっかしい雰囲気もあった。

九郎「俺はクロウ・ササライ。九郎でいい。I2社でカードの開発と、テストプレイヤーをしている。」
マサキ「ってことは、TRPGとかも詳しい?」
九郎「ああ。TRPGは設定が複雑でちょっと敷居は高いが、理解するほど奥深くて飽きずに楽しめるから、もっと流行してほしいと思う。弟とはよくプレイしたものだが、その元祖は1974年にアメリカで発売された『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、通称『D&D』だと言われているけど、その3年前に『チェーンメール』というゲームが発売されていて、これが原型と言った方がいいかな。1980年代には『ウィザードリィ』などのコンピューターPRGも登場して―――」

ウロボロス「どうやらリーダーは決まったようだネェ!」
龍明「ああ。」
マサキ「異議なし!」
ゴドール「よろしくね、九郎さん。」

猫魔神「自己紹介ありがとうございました。それでは私の語りで皆様をTRPGの世界へとご案内します。」

ファンタジー風のBGMが流れてくる。

猫魔神「――――それは突然の出来事でした。本来なら異なる世界に居て決して出会うことのない者達が偶然にも夢の奇跡とコタツの魔力に導かれ一堂に会した。そのことが異世界への扉を開くなどと誰が想像したでしょう。コタツの床がパカッと開いて、皆さんは大きな落とし穴へと落ちていくのでした…。」

大落とし穴
通常罠
同時に2体以上のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。フィールド上のモンスターを全て破壊する。

一同「うわあああああ…!!!」





<場面2、魔王グルゴアステル>

猫魔神「落ちる、落ちる、落ちる!オチがないぐらい落ち続ける!どこまで落ちるのか分からないぐらい長く落ち続け、ついにはスカイダイビング感覚で落ちるのが楽しくなってきたぐらいの頃に底の方に光が見えました。このまま地面に叩きつけられれば大変なことになります!しかし、皆さんはクッションのようなものに当たって事なきを得ました。」

???「ガッ!ギッ!グッ!ゲッ!ゴッ!」

猫魔神「おや?誰かの声がしました。何と、皆さんが当たったクッションのようなものは魔王だったのです。」

魔王グルゴアステル「誰だあ…!ワシの眠りを妨げるのはあ…!」

猫魔神「魔王グルゴアステルが現れました。全長30メートルの黒い大熊みたいな見た目です。」
マサキ「でかっ!?」
30メートルというと、ネズミから見た人間ほどに相当する。
見上げると首が痛くなりそうな巨体だが、平然としている者たちもいた。
ウロボロス「勝手な怒りだネェ。ワタシの行く先に鎮座しているのが悪かろう。」
ゴドール「いかにも悪魔って外見だね。悪魔族使いのソーガと戦うのに役立ちそうだし、捻り潰そうかな。」

その声が聞こえたのか定かではないが、魔王はクワッと目を見開いて、足元の五人を眺め回した。
魔王グルゴアステル「むむむ…!お前達は人間…!このワシが風邪を引いているのをいいことに寝首を掻きに来たのだなあ…!」
マサキ「ああ、その通りだぜ!」
ウロボロス「お前に興味などないが、寝首を掻かれたいのであれば、望み通り打ち滅ぼしてくれようか。」
ゴドール「君の首なんて興味無いけど、僕と戦いたいのなら望むところさ。」
九郎「ちょっと待て、クエストの内容が魔王と戦うかどうかは……」
マサキ「え?TRPGだから魔王を討伐するんじゃねえのか?」
龍明「その場合だと、いきなり魔王から始まるのはおかしくないか。」
マサキ「言われてみれば…」

しかし考え込む時間を与えられず、猫魔神がシナリオを進める。
猫魔神「怒った魔王グルゴアステルがマサキさんに向かって突進してきました。」
魔王グルゴアステル「ばおおおおん!!」

マサキ「うおっ!あぶねえ!」
猫魔神「マサキさんは間一髪のところで魔王の突進をアクションカードのように回避しました。風邪を引いていて魔王が本来の力を出せないのが幸いしました。当たっていれば700ポイントほどのダメージを受けてペチャンコになっていたでしょう。」
マサキ「何気にやばくね?それ。」

猫魔神「突進を交わされた魔王ですが、突然高笑いを始めます。」

魔王グルゴアステル「ふはは…!我が風邪を引いているからといって寝首を掻きに来るとは愚かな人間共よ…!風邪っ引き中の我に触れた者は呪われるのだ…。『デュエル』が『でゅえぽ』としか言えなくなる呪いになあ!」

マサキ「でゅえぽ!…っ、本当だ……」
試してみてマサキは蒼白になった。今の突進は回避したが、ここへ落ちてきたときに魔王に触れてしまっている。そのときに感染していたのだ。

猫魔神「戦慄が場を覆いました。この病気を治さない限り、今後どんなシリアスな場面だろうと、デュエルが始まれば『でゅえぽ!』と叫んでしまうことになります。絶対に治さなくてはならない。全員の頭の中にその言葉が浮かびました。」

魔王グルゴアステル「しかも、更に症状が進めば、『ドロー』は『どろろんぱ』となる…。それ以上進行した場合は…恐ろしくて我の口からは言えんなあ…。がっはっは!これ以上恐ろしい目に遭いたくなければ我の風邪が治るまで家に篭っているがよい。我の風邪が治りし時、呪いも解けるのだからな…。」

ゴドール「なるほど!つまり魔王を倒せばいいんだね、死んだら風邪は引けないからさ。」
龍明「いや、普通は治療するとか…。」
ウロボロス「害獣を治療してどうする。倒せば呪いは解けるのだろう?打ち滅ぼしたいところだが、ワタシたちの能力値的には討伐が可能なのかね?」
猫魔神「魔王グルゴアステルのHPは約600000000ポイントです。魔王らしく自動回復能力があり、1ターンで最大HPの約8割を回復します。対する皆さんの攻撃手段はデュエルモンスターのカードを召喚し、攻撃することが基本になります。」
龍明「魔王を倒すのは現実的ではなさそうだな。」
マサキ「……《レジェンド・デビル》で70万ターンくらいかかる。どう考えてもクエストこなす方が早い。」
ウロボロス「《黒蛇病》なら23ターンだが、こちら側のリスクが高すぎるナァ!治療に専念するとしよう。」
九郎「こういう場合、クエストをこなしていけば治療薬か何かが手に入るはずだ。」

魔王グルゴアステル「何と!?お前達がワシの風邪を治せる薬を取ってくるだと!?面白い…。もし、成功した暁にはワシのレアカードをやろう。」

ゴドール「レアカード!僕のデッキに入るカードかな?」
マサキ「そう来なくっちゃ!」
龍明「いや、この展開は多分……」
九郎「《ヲーの翼神竜》かな。」
ウロボロス「ふむ。もらえるものはもらっておくとしよう。」

猫魔神「レアカード、それはデュエリストの心をくすぐる魔法の言葉。魔王がレアというほどですから、どんなカードなのかドキドキですね。」

しかしドキドキしているのはゴドールとマサキだけだった。

猫魔神「そんなこんなで、皆さんは魔王グルゴアステルの風邪を治すために【秘伝の妙薬】を探し出さなければならなくなりました。しかし、肝心要の【秘伝の妙薬】の在り処も作り方も魔王は知りません。一体どうすればいいのでしょうか…。」

ご隠居の猛毒薬 (速攻魔法)
(1):以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分は1200LP回復する。
●相手に800ダメージを与える。


マサキ「薬の前に、まずは体を温めてやらねえとな。」
ゴドール「体を温めればいいんだね、なら簡単だ。彼を改造して炎属性のキメラデュエリストにしよう。まあキメラデュエリストに適合しなかったら拒絶反応を起こし属性エネルギーが暴発するけど。」
魔王グルゴアステル「……」
ゴドール「魔王なら属性エネルギーの暴発で肉体が木っ端微塵になる程度じゃ死ななそうだし行けそうだよね。」
魔王グルゴアステル「断固として拒否する。」

マサキ「俺は、お粥でも作るか。ばあちゃんが風邪ひいたときも、よく作ったもんだ。」
猫魔神「マサキさんは手馴れた感じでお粥を作ります。作り方は完璧でした。誤算はただ一つ、食材は全て魔界産だということでした…。テテーン、奇怪な物体が出来ました。」
お粥「うじゅるうじゅる……ごぼぼぼぼ……」
マサキ「このゲームマスター、シンヤ並みに性根が曲がってるな……」
猫魔神「褒め言葉、ありがとうございます。」
マサキ「だが、何かに使えるかもしれねえ。持っていくか。」

【お粥】を手に入れた。

マサキが料理をしている間に、ウロボロスは魔王の口に紫色の物体を流し込んでいた。その魔王はさっきまで裸だったのに、いつの間にか服を着ていた。
ウロボロス「とりあえず、そのあたりで調達したもので衣類と栄養剤を用意した。」
マサキ「このデカブツの体を覆えるだけの服をどうやって!?この短時間で!」
ウロボロス「軍のサバイバルで鍛えたからな。」
龍明「なんか誤魔化されている気がするが……。」
ウロボロス「キミがそう思うなら、そうだろう。栄養剤の残りは持っていくとしよう。」
マサキ「うっ…ひどい匂いが……」

【栄養剤】を手に入れた。

ウロボロス「どうやら、このあたりの材料では完治することは出来ないようだネェ。」
九郎「ゲーム的な縛りというやつだな。ゲームマスターの言葉からして、【秘伝の妙薬】は合成できる可能性もあるようだが。」
ゴドール「仲間を合成の材料にすることって出来る?」
龍明「出来ても俺が止めるぞ。」
マサキ「こういう場合、村で情報収集するのが基本だよな?」

猫魔神「こうして一行は風邪薬を求めて近くの村に行くことにしました。」





<場面3、絆の芽生え>

魔王に気を取られて、これまで周りを眺めている余裕が無かったが、見渡す景色はいかにも中世ファンタジー世界という様相だった。現代らしきコンクリートの建物や電線などはどこにも無く、メルヘンチックな建造物の数々が並んでおり、腰に剣を携えた厳めしい男や、ローブを羽織って杖を持った優男、十字槍を構えた修道士などが歩いている。
マサキ「うおお…。ほんとに異世界に来ちまったんだな…。」
これまでマサキは地下都市やダンジョンなどを冒険したことはあったが、異世界を訪れたことはない。本で読むようなファンタジー世界に、興奮と感動を禁じ得ない。

九郎「このグラフィック、実に良く出来ている。画素を細かくするほど処理落ちが発生しやすくなるものだが、視点を小刻みに動かしてもスムーズなものだ。早く戦闘シーンも確かめてみたいな。」
別の意味で九郎のテンションも上がっていた。

猫魔神「ちなみに念じれば先ほどのコタツの部屋に戻ることが出来ます。戻っている間は、この世界での時間は経過しませんのでピンチの時の作戦会議などにどうぞ。」
九郎「ゲームのポーズ画面のようなものか…。」
猫魔神「そういうことですね。どなたにも使う権利がありますが、合わせて三回までしか使えませんので使いどころは―――――」
ゴドール「あ、みかん食べてる途中だった。」
途端に景色が歪んだ。

猫魔神「停刻の砂時計が発動し、全員は異世界を抜けてコタツの前へと戻ってきました。これで戻ってこれる回数は残り2回です。」

マサキ「おいいいい、なに無駄遣いしてんだよ!?」
ゴドール「無駄じゃないさ。みんなもみかんを食べるといいよ!ジャムも美味しいよ!」
すみれの花のような無垢な笑顔で、みかんとジャムを差し出すゴドール。どうにも毒気を抜かれてしまい、怒る気にもなれない。
九郎「…せっかくだから、いただこう。」
龍明「先が思いやられるな……。」

しかしウロボロスは悠然とした顔で頷いていた。
ウロボロス「ふむ、これが“戻ってくる”感覚か。使用感を確かめたのは有益だったネェ。」
マサキ「え?無駄使いじゃなかったのか?」
ウロボロス「この機能を使うのは危機が迫っている時。使い慣れていないと、その時に戸惑って全滅する恐れがあるからネェ。」
龍明「ゴドールはそこまで考えて…。」
ゴドール「みかんうまうま。ジャムぺろぺろ。」
九郎「いや、あれは何も考えずに使った顔だ。」
龍明「…。」
猫魔神「おめでとうございます。みなさんの絆が1ポイントアップしました。」
龍明「ポイント制なのか、絆…。」

マサキ「そうだ。今のうちにデッキの中身を確認しておくか。」
ウロボロス「既に済んでいる。」
九郎「基本的には、いつも使っているデッキにプラスされている感じだったよ。」
龍明「い、いつの間に確認を…?」
ウロボロス「戦場では情報が生死を分けるからネェ。」
ゴドール「《黄金のホムンクルス》、他にも見慣れた僕のカード達だ。これなら問題なく戦えそうだよ。」

猫魔神「それでは皆さん、再び異世界へレッツゴーです。」

コタツの部屋に戻ったときと同じく、一瞬で異世界に景色が移った。
のどかな村に、五人の男たちが降り立つ。

ゴドール「早速僕のモンスターを呼んであげようかな。」
九郎「待った!ここで出すと目立ち過ぎる。」
マサキ「余計なトラブルに繋がるかもしれねえしな。」
龍明「大型のドラゴンモンスターとか出したら、ここの世界の人達に退治されかねない…。」
ウロボロス「あっちの林の方は人気がなさそうだ。」

猫魔神「一行は自分達のデッキの中身と使用感を確かめるために村から少し離れた広い場所に行きました。」

マサキ「戦激の闇より出でよ、《ダーク・アームド・ドラゴン》!」
アームド「グオオオオオ!!」
マサキ「おお!召喚出来た!特殊召喚モンスターだから、いきなりは無理かと思っていたが…。」
九郎「王国ルールが上級以上のモンスター召喚に生贄を必要としないのに近いのかもしれない。」
マサキ「よし、ダムド。伏せ!」
アームド「グオっ。」
マサキ「お手!」
アームド「ガオ。」
マサキ「一回だけ、軽くジャンプ!」
アームド「ガオッ。」
龍明「言うこと聞いてる…。しかも細かい指示まで…。」
ウロボロス「これは便利だネェ!」

猫魔神「一行は一通りモンスターを出したり、魔法カードを使ったりして、使い方を確認した後、本来の目的である聞き込みのために村へと戻るのでありました。」

猫魔神「聞き込みの結果、秘薬を持っているというご隠居の住処まで案内出来るというバスを発見しました。ガイドさんはデスガイドさん、常に笑顔が眩しいです。」
デスガイド「どうもー。」
猫魔神「運転手さんはワイトさん、常に笑顔が止まりません。」
ワイト「ケタケタケタケタ!」

龍明「これ、本当に乗っても大丈夫なのか?」
ゴドール「面白そうだ、乗ろうよ!」
ウロボロス「所詮は黄泉路への寄り道、今さら恐れることでもないネェ!」
二人はさっさと乗り込んでしまった。
マサキ「仕方ねえ。死なばもろとも、旅は道連れだ。」

全員が乗り込むと、ゲームマスターの声が響いてきた。
猫魔神「運転手であるワイトさんがバスのエンジンをけたたましく鳴らし、いよいよ出発です。ところが、ご隠居さんの住処へはデゴボコ道が続いています。バスは進むたびにガタガタと揺れました。」
マサキ「本当に大丈夫か、このバス…。」
デスガイド「ご安心ください。運転手のワイトさんはこの道80年のプロですから。」
マサキ「逆に不安なんだが…。」

猫魔神「次の瞬間、バスが大きく揺れました。大きめの石にでも乗り上げたのでしょう。その衝撃で最近、骨粗しょう症になっていたワイトさんは粉々になってしまいました…。」
デスガイド「…お客様の中に、運転手はいらっしゃいませんか?」
マサキ「おいいー!?」
九郎「仕方がない、運転しよう。」
崖から落ちそうになる前に、九郎がハンドルを回して事なきを得た。

だが、ここでデスガイドが《スマイル・ポーション》を飲んだかのような爽やかな笑顔で尋ねてきた。
デスガイド「免許の無い方は運転できませんが?」
それに対して、九郎は無言で免許を提示する。
マサキ「おおっ、ゴールド免許だ!」
ゴドール「え、ゴドール免許!?」
龍明「免許の更新をした時点で、過去5年間に優良運転をしてきたドライバーに交付される免許だ…!5年間一度も事故や違反で点数が付かないというのは凄いことなんだ!」
ゴドール「ふーん。」
マサキ「ゴールド免許ってカッコいいよなァ…!」
龍明「ああ。全運転者の憧れだ。」
マサキ「保険とかも安くなるんだっけな。」
龍明「講習の費用も節約できるぞ。」
この方面で即座に話が弾むのは、男子特有のコミュニケーション能力だろうか。
しかし、二人が盛り上がりかけていた矢先、デスガイドの口から衝撃の事実が飛び出した。

デスガイド「あ、言い忘れていましたが、ご隠居様の住まいまでのガイド料、5名様で5万円です♪」

マサキ「客に運転させといてカネ取るのかよ!」
ゴドール「《黄金のホムンクルス》じゃダメ?」
デスガイド「ダメです。」
龍明「お金なんか持ってないぞ…。」
デスガイド「絆ポイントでしたら5ポイントです♪」
九郎「絆ポイントならさっき全員に1ポイントずつ入ったはずだ。全員の絆を合わせれば支払える。」

猫魔神「一行は絆の力で危機を乗り越え、秘薬を持っているというご隠居の元へと向かうのでした。」








<場面4、モンスター襲来!>

猫魔神「バスに乗って順調に旅を続ける一行ですが、人生山あれば谷ありです。既に道路は山道で、隣は崖っぷち。九郎さんの運転技術が光ります。」
九郎「ガードレールがあるのが救いだな。」
マサキ「ん?ガードレールなんて、どこにも…。って!?」
龍明「ガードレールが現われた!?」
ウロボロス「なるほど、ゲームであることを逆手に取ったか。」
マサキ「…そうか。この世界は猫魔神の語りと俺達の行動で進行するから、王国ルールみたいに意外と言った者勝ちなところがあるんだ。流石、九郎さん。これで安全を確保したぜ。」
ゴドール「でも、ゲームだとモンスターとエンカウントするよね?」
ウロボロス「!」

猫魔神「ゴドールさんの心配が的中しました。なんとモンスターが集団で現われ、襲い掛かってきたのです。」
マサキ「おいいい!?無駄に戦闘になっちまったじゃねえか!」
ウロボロス「どの道このゲームマスターが何事もなく済ますはずはあるまい。」
モンスターと遭遇しなかったら、落石や崖崩れに遭遇していたかもしれない。
そう思えば、モンスターの方がマシだろう。

デスガイド「お客様、正面をご覧ください。山道名物のモンスター、《きのこマン》さん(攻800)、《ラ・ジーン》さん(攻1800)、《ルイーズソックス》さん(1400)が現れました。」
龍明「ソックス…!?って靴下履いてる《ルイーズ》がいる!?」
ゴドール「攻撃力が200アップしているね。」
猫魔神「三体の総攻撃を受けるとバスのライフポイント(4000)が0になってしまい、壊れてしまいます。この総攻撃はどうにかして防ぎたいところ。」
マサキ「だったら俺のデュエリスト能力が火を噴くぜ!焼き払え、“黒薔薇煉獄”!」
漆黒の炎が敵全員に2400のダメージを与える!
《きのこマン》は死んだ!《ラ・ジーン》は死んだ!《ルイーズソックス》は死んだ!

猫魔神「マサキさんの攻撃によって煉獄の炎に包まれて、モンスター達は全滅しました。ただし、火力が強過ぎてバスは500ポイントのダメージを受けてしまいました。」
マサキ「げっ…。使いどころを選ばないと駄目か…。」
猫魔神「【焼ききのこ】、【焼きランプ】、【焼き靴下】を手に入れました。全員の絆ポイントが1増えました。」
龍明「焼き靴下はいらないんじゃないのか……。」
九郎「いや、この世界はゲームだから一概にそうとも言えないだろう。どんなにくだらなく、どうでもよさそうなアイテムが重要なピースの時もある。」
猫魔神「一行は手に入れたアイテムをバスの後方に置いて旅を続けるのでした。」

しかし、そんな平穏も長くは続かなかった。
今の戦闘で、厄介なモンスターがバスに気付いてしまったのだ。

猫魔神「旅を続ける一行のバスの前に黒い影が立ち塞がりました。強力なモンスターに違いありません。」
デスガイド「皆様、正面をご覧ください。漫画、アニメでは一度もドラゴン族モンスターを殺せなかった竜破壊の剣士、《バスター・ブレイダー》さんです。」
龍明「おい、やめろ。」
デスガイド「なので、ドラゴンを求めて見境なく襲ってきますのでご注意を。」
ブレイダー「ドラゴンだ!ドラゴンだろう!お前ら!そうだろう!?置いてけ!ドラゴン置いてけぇ!!」
ゴドール「竜殺し戦士とは言うけど、相手がドラゴンじゃなきゃただの大型モンスターだね。戦士族の《ライトレイギア・フリード》を召喚!」
マサキ「攻撃力2800か、《バスター・ブレイダー》の攻撃力2600を上回った!」

しかし、それも束の間だった。デスガイドが笑顔で手を窓に向ける。
デスガイド「皆様、右手をご覧ください。チューナーモンスター、《破壊剣士の伴竜》さんのご登場でございまーす。」
ゴドール「わー。新手だー。」
伴竜「ブレイダー、騙されるな!奴らはドラゴンだ!その証拠を今見せてやる!」
デスガイド「それでは皆様、ご唱和ください。せーのっ、シンクロ召喚です!」
ピコンピコン……音を立てて、八つの星が幾何学模様を潜り抜ける。
そして、鳥のような翼を持つ巨大な黒竜が、長い尾をたなびかせて現れた!

猫魔神「レベル7の《バスター・ブレイダー》にレベル1の《破壊剣士の伴竜》がチューニングされ、シンクロモンスターである《破戒蛮竜−バスター・ドラゴン》が現われました。その効果で皆さんの種族ステータスがドラゴン族に書き換えられました。更に第二の効果でシンクロ素材となった《バスター・ブレイダー》が黄泉の国から帰ってきました。」

ブレイダー「ドラゴン殺すべし、慈悲はない!」
猫魔神「シンクロ召喚成功による余波でバスは500ポイントのダメージを受けてしまいました。」
デスガイド「今の攻撃でバスの屋根が吹き飛びました。お客様の中に大工さんはいらっしゃいませんか?」
マサキ「いねえよ!」
軍隊のサバイバル技術なら、あるいは……とは頭をよぎったが、戦闘中に大工仕事をトンカンやるような頓狂な真似など誰もしない。

ブレイダー「戦士に化けた邪悪なドラゴンめ、成敗してくれる!」
ゴドール「邪悪な感じのドラゴンなら君の隣にいるよね?」
ブレイダー「我が相棒をドラゴン呼ばわりとは許せん!喰らえ、破壊剣一閃!」
デスガイド「効果により《バスター・ブレイダー》の攻撃力が500アップ、3100になって《ライトレイギア・フリード》を破壊し、戦闘ダメージ300はバスに降り注ぎます!」
九郎「破戒蛮竜の効果は墓地には及ばないようだ、これで《バスター・ブレイダー》の攻撃力は元に戻る。」
ブレイダー「ギア・フリード殿!なんてことだ……。」
蛮竜「大きな刃物で切られたような傷跡、これはドラゴンの爪の攻撃で殺されたに違いない!」
ブレイダー「おのれドラゴン!!!」
ゴドール「君の手にしている剣に付いた血は……いや、言っても無駄だね。」

ウロボロス「話にならないネェ。やはり潰すのが手っ取り早そうだ。」
龍明「どうする!?俺と九郎さんはデッキの種族的に役立たずだぞ!」
マサキ「ならば《超融合》だ!」
説明しよう!マサキの時代には《超融合》は市販されているのだ!ただし闇の力などは薄まっているぞ!
猫魔神「ここで伝家の宝刀、《超融合》が発動しました。相手フィールド上のモンスター二体が融合され、新たなモンスターが召喚されます。」
破壊剣士バスブレ「は、私は一体!?」
九郎「うまいぞ!《バスター・ブレイダー》と《破戒蛮竜−バスター・ドラゴン》を融合して《竜破壊の剣士−バスター・ブレイダー》を融合召喚したのか!」
マサキ「おまけに俺の場に融合召喚したことになったから、味方にできたぜ!」

猫魔神「おめでとうございます。見事に強敵を退けたことで皆さんの絆が強まりました。全員に絆ポイントが三ポイント入ります。《竜破壊の剣士−バスター・ブレイダー》という心強い味方も得られ、一行は更に旅を続けていくのでした。」





<場面5、異世界の車窓から>

猫魔神「更に旅を続ける一行ですが、そろそろお腹が空いてきました。」
デスガイド「皆様、ハンバーガーセットはいかがですか?1セット5000円になっております。」
マサキ「高えよ!」
猫魔神「マサキさんはすっかりツッコミ役として定着しております。マサキさんのツッコミスキルがアップしました。」
デスガイド「おめでとうございます、マサキさん。」
マサキ「嬉しくねえ…!」
邪悪な親友との雑談でもツッコミに回ることが多いが、これも性分なのだろうか。
おかしなことに対しては、ついつい物申さずにはいられない勇者なのだ。

デスガイド「絆ポイントだと1セット1ポイントで交換可能です。ちなみに3ポイントでハンバーガー5セットと交換出来るBセットがお得となっています。」
龍明「こうやってポイントを使わせるのか…。」
九郎「絆ポイントは敵を倒したりイベントをこなせば手に入るから、必要に応じて使っていこう。腹ごしらえは大切だ。」
ウロボロス「賛成だネェ。腹が減っては何とやらだ。」
ゴドール「ハンバーガーだ!甘い味が続いていたから、ジューシーなお肉が欲しくなるよね。」

デスガイド「ご一緒にスマイルはいかがでしょうか?スマイル0円……じゃなくて0ポイントです!」
龍明「スマイルが何か分からないのが怖いな……。」
デスガイド「本来20絆ポイント必要な《スマイル・ワールド》を、試供品としてなんと1枚だけ0ポイントでプレゼントしちゃいます!」
九郎「……初めて見るが、凄いカードだな。色々と。」
先程からデスガイドが浮かべている笑顔は、カードに描かれている笑顔と、よく似ていた。デスガイドも《スマイル・ワールド》の影響下にあるのだろうか……。

猫魔神「ハンバーガーセットを食べて一行の満腹度が回復しました。」
ゴドール「ん?なんか、ハンバーガーが動いて…!?ってこれ、《ハングリーバーガー》!」
普通の大きさだったはずのハンバーガーが、みるみる大きくなって襲いかかってきた!
猫魔神「何と5セットあったハンバーガーの内、1セットだけ《ハングリーバーガー》が紛れ込んでいたようです。」
マサキ「…っ、《収縮》で縮んでいたのか!」
ゴドール「ぎゃー!噛み付かれたー!」
鋭い棘のような歯が、いたいけな少年の華奢な肢体に食い込む。
その痛苦は彼を走らせる。どんがらがっしゃーん!

猫魔神「騒いで走り回ったゴドールさんが傷んだ床を踏み抜き、バスに500ポイントのダメージです。」
デスガイド「皆様、お気を付けください。バスには《落とし穴》が仕掛けられております。」
龍明「ボロいだけだろ!?」
マサキ「行け、バスター・ブレイダー!」
破壊剣士バスブレ「むん!」
猫魔神「《竜破壊の剣士−バスター・ブレイダー》さんが《ハングリーバーガー》を斬り裂いて車内のどたばたは収束しました。」

だが、車内には紙屑が散乱し、椅子は薙ぎ倒されていた。《落とし穴》も開いたままだ。
ウロボロス「無駄にバスのダメージが増えてしまったネェ。」
ゴドール「ハンバーガーうまうま。ところで、これ何?」
猫魔神「ゴドールさんは丸くて毛深い何かを掴み上げました。それは車内の隅っこに隠れていた《クリッター》でした。」
ウロボロス「これはラッキーだネェ。いざとなったら敵に投げて盾にしたり、サーチ能力を使って状況打破のカードを持ってこれる。」
クリッター「くりっ!?」
猫魔神「こうして一行はバスのダメージと引き換えに《クリッター》を仲間にしました。」

クリッター「くりった!くりった!」
ウロボロス「ああ?」
クリッター「くりたぁ…。」
蛇の目に睨まれて、憐れな毛玉は抗議の声も空しく縮こまった。

そして屋根の吹き飛んだバスは進行する…。
猫魔神「ご隠居さんの住む場所へと向かう一行。目的地まで、あと少しといった雰囲気が漂っています。」
龍明「ゴールは近いか…。」
デスガイド「皆様、左手をご覧ください。女湯でございます。」
龍明「!?」

漂う湯煙越しに、女の柔肌が垣間見える。
《恍惚の人魚》、《ダーク・エルフ》、《サキュバス・ナイト》、《音女》、《水の踊り子》、《アルラウネ》、《ヴァルキリー》、《ハーピィ・レディ》、《ハーピィ・クイーン》、《弓を弾くマーメイド》、《戦場の死装束》など、見知ったモンスターたちが湯船に身を浸らせていた。

デスガイド「この辺りは火山になっており温泉が湧き出していて広大な天然の露天風呂が形成されております。当然のことながら裸を見られた女性モンスター達は怒りのあまり襲い掛かってきます。皆様、お気を付けください。」
マサキ「そういう情報はもっと早くに欲しかったんだけど!?て言うかそもそもバスの通り道に風呂があるとか、ふざけんなよ!?」
九郎「文句を言っても始まらない。切り抜けるぞ!ん!?バスのエンジンの調子が!?」
デスガイド「皆様、エンストです。このバスは女湯前に10分ほど緊急停車いたします。」
マサキ「ふざけんなあ!」
だが、エンジンは無情にも停止した。デスガイドは笑顔だった。

そして怒りの女性モンスター達が、黄色い叫び声を轟かせて水飛沫をあげた。
龍明「戦いにくい・・・!」(必死で目を逸らしながら
九郎「これだけの数を相手にするのはマサキ君の能力でも厳しいし、バスも壊れる。覗く気はなかったと伝えれば戦いを回避出来るかもしれん。」
マサキ「それだ!」

だが、エンジンを点検しながらウロボロスは暗い顔で呟いた。
ウロボロス「いや、駄目だ。」
マサキ「何でだ!?」
ウロボロス「ゴドールが既に戦いを始めている。」
隣にいたはずのゴドールが、いつの間にかいなくなっていた。

ゴドール「僕達のバスを守るんだー!」
デスガイド「皆様、バスの外をご覧ください。あれが《キャッツ・フェアリー》さん、《響女》さん、《ミリス・レディエント》さんと勇敢に戦うゴドールさんです。」
猫魔神「ゴドールさんは叫びながら女性型モンスターの群れへ突っ込んでいきました。強制的に戦闘開始です。」
マサキ「あああああ!?」
九郎「これでは交渉の余地がない!」
ウロボロス「蹂躙タイムの始まりだネェ!」
マサキ「い、いや!モンスターとはいえ女に手を上げるのは…!」
龍明「戦わず穏便に済ませたいが……そうだ!笑顔だ!」
マサキ「《スマイル・ワールド》か!敵味方問わず影響を与えるあのカードなら、皆を笑顔にして戦いを止められるかもしれねえ!」
龍明「よし、《スマイル・ワールド》を発動!」
周囲にイラストに描かれた笑顔が漂い、女性モンスター達は笑顔になる。デスガイドと同じ笑顔に。
マサキ「よしこれで!」
九郎「……いや、失敗だ。」
張り付いたような笑顔のまま襲い掛かってくる女性モンスター達。水や魔法、剣、弓矢、爪や牙が、どこか呑気な笑い声と共に凶暴化される。
龍明「むしろ攻撃力が上がってまずい!」
ゴドール「ハハハハ行け、《デステニー・スマイル・ドラゴン》!絶対なる笑顔で全てを滅ぼせ!アハハハハハ!」
マサキ「ゴドールも悪化している!」
九郎「停刻の砂時計を使おう!」
龍明「賛成!」

猫魔神「停刻の砂時計が発動し、全員は異世界を抜けてコタツの前へと戻ってきました。これで戻ってこれる回数は残り一回です。」

コタツの部屋に戻ってきて、喧騒が消えた。
熱いお茶が用意されており、静けさが耳を打つ。
ゴドール「アハハハハ、笑顔を!もっと笑顔を!…あれ?敵は?」
マサキ「まずは作戦会議しようぜ。」
龍明「戦うのは気が進まないんだが…。」
ウロボロス「何を甘いことを言っているのかね。」
マサキ「そこは俺も野口と同意見だ。モンスターとはいえ、女に攻撃するのはな…。」
ゴドール「性別なんて関係ないよ!」
ウロボロス「むしろ蹂躙するのが楽しくなるネェ!」
マサキ「いや、罪悪感が半端ねえだろ・・・」
龍明「直視するのも難しいのに…」(裸だから)

ウロボロス「やれやれ、まったく。大河くんも野口くんも、このTRPGの楽しみ方を分かっていない。こういうプレイヤーへの心理攻撃はだね、想定される攻略法が何であろうと、最大限悪辣に行動して、背徳的なプレイを楽しむものなんだよ!相手が女だから、なんて発言は無粋そのものだネェ!これまで猫魔神がどんなイベントを仕掛けてきたのか忘れたのか?ああやって心配そうな顔をしながら、裏ではキミたちが躊躇しているのを見て、ほくそ笑んでるに違いないんだ。そう考えると、ほら!罪悪感が嗜虐心へ変質していく気がしないかい!そうだよぉ!その仄暗い快楽こそが、君の闇を味わう素質なんだよ!さあ、ワタシと一緒に、この世界を存分に皮肉り尽くそうではないか!」

九郎「う〜む、中々道に入ったダーティプレイだなぁ。」
マサキ「くっ…俺の中の悪魔が目覚めようとしている…!駄目だ…蹂躙するのが楽しそうなんて考えちゃ駄目だ…!」
龍明「しっかりしろ大河!」
猫魔神「おめでとうございます。マサキさんと龍明さんの絆が5ポイント深まりました。」

九郎「しかし、モンスターの群れをどうにかしてもバスのエンストは直らない。頂上までは近そうだが、バスを降りるのは危険な気がする。」
龍明「バスごとワープとか出来たらなあ…。無理か…。」
九郎「ん?バスごと…?それだ!」
龍明「え?」
九郎「俺と野口が《降雷皇ハモン》と《皇帝神龍》でバスを持ち上げて、一気に目的地のご隠居の住む山の頂上へ運べばいい。」
龍明「なるほど、そりゃあいい」
九郎「大河は追ってくる飛行モンスターをデュエリスト能力で牽制。初動さえ抑えれば、性能の勝る《降雷皇ハモン》と《皇帝神龍》に追い付けるモンスターはいない。」
マサキ「了解。」
九郎「ウロボロスさんは厄介なモンスターの対処を。あの群れの中に《月光舞獅子姫》がいた。効果でハモンと《皇帝神龍》が破壊されないようにピンポイントで倒してくれ。」
ウロボロス「任されよう。」
九郎「ゴドールは高速でバスの中に戻って待機。それ以降、何もするな。」
ゴドール「ひどくない!?」

作戦会議を終えて、五人は再び戦場へ舞い戻る。
九郎「出でよ、《降雷皇ハモン》!!」
龍明「行け、《皇帝神龍》!!」
巨大な金色の翼と、巨大な体躯が、共に雷を迸らせる。
稲妻の障壁がモンスターたちからバスを守る!
ふわりと浮きあがるバスに、いち早く狙いを定めたのは《月光舞獅子姫》。
この攻撃を通せば、バスを運んでいる2体は破壊されてしまう。

ウロボロス「“ダスト・エクスプロージョン”!」
通さない。《月光舞獅子姫》の前に、白髪の赤鬼が立ち塞がった。
最低限の装備に包まれた獅子姫の肢体を、ざらついた砂で蹂躙する!
獅子姫「ォアアアアッ!?」
彼女は反撃の爪を立てるが、《砂塵の悪霊》は捕捉不能。
すぐさま砂となってウロボロスの影に戻る。

ウロボロス「出でよ、《アタナシア・ウロボロス》……“ディアボリカル・ヴェイパー”!!」
《砂塵の悪霊》の攻撃で弱った獅子姫に、影より出でし毒牙が黒い瘴気を吐く。
麗しく白い鬣も、紫色に熟れた肉体も、漆黒に汚され塗り潰された。
獅子姫「ァ……オオ………ッ………」
焼け爛れるような苦痛の中で、獅子姫は毒に沈んだ。

マサキ「凄え…!精霊を意のままに操っている…!」
ウロボロス「フハハ、操っているのではない。従えているのだ。」
そう、悪霊たちは、あくまで自らの意思でウロボロスの味方をしている。
あの無垢な少年少女たちが、意志を貫いて恐らく天国へ行くように、悪霊は悪の矜持を以って、意志を貫き地獄へ行く。

九郎「これ、レーディング的に大丈夫なのか?」
猫魔神「ご安心ください。R15でございます。」

マサキ「…っと、見惚れてる場合じゃねえ。ハーピィの群れが来やがった。あんまり気は進まねえが……“黒薔薇煉獄”!!」
飛行ユニット達が、燃えながら落ちていく。
その叫び声を聞きながら、マサキは自分の中の悪魔が滾るのを感じた。

猫魔神「こうして作戦会議を終えた一行は打ち合わせ通りの行動で女性モンスターの群れ約200体から逃れ、ご隠居さんの住む山の頂上へと到着することが出来ました。全員の絆ポイントが5ポイント上がりました。」



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デュエル小説 (短編集目録)
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佐久間闇子と奇妙な世界
2017/01/15 00:03

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