佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 不思議な世界で遊戯王〜導かれし五人の勇者達〜 (後編)

<<   作成日時 : 2017/01/14 00:05   >>

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◆ ◆ ◆



<場面6、魔王と秘伝の妙薬>

猫魔神「モンスターの出没する山道を超え、一行はついにご隠居の住む山の山頂に到着しました。役目を終えた《降雷皇ハモン》と《皇帝神龍》はカードになり、デッキに戻っていきました。一行が辺りを見渡すと、前方500メートルほど先に一軒の木造の家がありました。」
龍明「あそこにご隠居がいるのか…。」
ゴドール「ここまで色々あったね〜。」
短い間だったが、とてつもなく濃密な時間だった。
振り返ってみれば、楽しかったかもしれない。

デスガイド「皆様、バスツアーにご参加頂き真にありがとうございました。終点のご隠居の住む山頂でございます。それでは気を付けていってらっしゃいませ!今後ともバスツアーをご贔屓に!こちらは次回のバスツアーの際に使える20%割引券です。」
マサキ「もう乗らねえよ!」

【割引券】を手に入れた。

猫魔神「一行が家に近付くと扉が開き、中からフードを被った老人が現われました。」
九郎「済みません、貴方が…。」
猫魔神「ところが九郎さんが老人に話しかけようとした時、その老人の姿は霧の如く消えてしまいました。」
九郎「!?」
ウロボロス「残像だネェ。」
猫魔神「気が付くと周囲には老人の残像が何人も現われていました。」
老人「フォフォフォ…。」
ウロボロス「見事だが、軍人の動体視力を舐めないでもらいたいネェ!本物はこいつだ!」
老人「ムンっ!」

猫魔神「ウロボロスさんの強烈な軍靴キックが炸裂!老人はそれを手の甲で受け止めながら側面に転がることで勢いと追撃を回避!構えと距離を取って一行を迎えます!これが遊戯王名物リアルファイト!」

老人「やるのう、若いの。ワシの首を狙いに来ただけのことはあるわい。」
九郎「誤解です。我々は魔王グルゴアステルに頼まれてご隠居の秘薬を分けてもらいに来たのです。」
老人「ひょ!?そうじゃったのかい。屈強な男五人が隠居したワシに何用かと思ったが、魔王親衛隊ならば納得じゃ。」
猫魔神「九郎さんの素早い一言で誤解が解けて、戦闘を回避しました。」
マサキ(俺達は魔王親衛隊じゃないんだけれど、それは言わなくてもいいな…。面倒だし。)
ゴドール「僕達は魔王親衛隊じゃなくて―――」
ウロボロス「お前は黙っていろ。」

老人「しかし、ワシの秘薬は引退時に城にくれてやって、もう予備もないのじゃ。足りない材料さえ持ってきてくれれば作れるんじゃがのう。」
九郎「材料ですか。何が足りないのですか?」
龍明「案外、ドロップアイテムの中に素材があったりしてな。」
一同は、今までに手に入れたアイテムを床に並べた。
老人「まずは、きのこマンのきのこじゃ。」
ゴドール「【焼ききのこ】になってるけど問題ないよね。」
老人「モーマンタイじゃ。それから魔界特産の魔術米。」
マサキ「米?あっ!俺の【お粥】がこんなところで役に立つとは。」
老人「うむ、良しじゃ。それから《クリッター》の毛を少々。」
ウロボロス「これでいいかネェ。意外としっかりしているから毟り取りにくかった。」
クリッター「くりぃ〜くりぃ〜…。」
老人「それから最後に《スマイル・ポーション》が必須じゃ。」
九郎「《スマイル・ポーション》…?そんなアイテムは持ってないな…。誰かデッキに《スマイル・ポーション》を入れている人は…?」
ゴドール「何それ?」
ウロボロス「入ってないな。」
マサキ「ない。」
龍明「同じく。」

全員「…。」

猫魔神「ポイントとカードを交換しますか?《スマイル・ポーション》は30絆ポイントになります。」
九郎「買った!」
老人「うむ!これで秘薬の材料は揃った!行くぞ、遊馬!四つの素材でオーバーレイじゃ!」

マサキ「誰に話しかけてるんだ?何か変なものが見えてるのか…?」
ウロボロス「怪しげなハーブとかも入れてるし、幻覚でも見てるのかもしれないネェ。」
龍明「秘薬が出来るまで離れていよう…。」
煙を吸って笑顔になった老人を見て、一同は家から退避した。

戦い続きで、のんびり景色を眺めている暇が無かったが、清々しい青空や、心落ち着く森林が広がっていて、クエストだけでなく来た価値があると思った。
九郎「グラフィック、綺麗だな…。」

猫魔神「一行が近くで適当に時間を潰していると、老人の声が響きました。」
老人「出来たぞい!ワシの秘薬じゃ!さ、持っていってくれ。代金は後で魔王の奴からガッポリともらうがのぅ。フォフォフォ…!」
九郎「ありがとうございます。よし、魔王城へ急ごう。」
老人「戻るなら《ワーム・ホール》…ではなくワープ・ホールを使っていくかい?魔王城近くの村まですぐにいける優れものじゃ。」
マサキ「え!?そんなもんがあったのかよ!」
龍明「今までの苦労は一体…。」
老人「言っとくが、これは一方通行じゃぞ。双方向のワープ・ホールなぞ入り口を巧妙に隠してもいつかはバレる。そんなものを自宅近くに設置するなんぞ寝首をかいてくれと言ってるようなもんじゃろう。そんな恐ろしいものを使うほどワシは強くないぞい。」
ウロボロス「ふっ、冗談を…。」
老人「フォフォフォ…。」

猫魔神「こうして一行は無事に秘薬を手に入れ、ワープ・ホールで魔王城へと急ぎました。この秘薬を魔王グルゴアステルに届ければ長かった旅も終わり。エンディングまで後、一歩です。」

魔法陣は子供の落書きにしか見えなかった。
やや不安な一同だったが、足を載せると青い光に包まれ、景色が飛んだ。

猫魔神「一行は足取りも軽やかに魔王城までやってきました。」
マサキ「魔王、無事に秘薬を手に入れたぞ!ありがたく飲みやがれ!」
魔王グルゴアステル「おお!その瓶の印は間違いなくご隠居のもの!お前達、よくやった。」
猫魔神「魔王は大きな口で秘薬を一気に飲み干しました。」

魔王グルゴアステル「どろろんぱ!どろろんぱ!」

猫魔神「おや、どうしたことでしょう。魔王が苦しみだしました。」
ゴドール「よし!」
見たこともない笑顔でゴドールは親指を立てた。
マサキ「よしって何だよ!?っていうか何が起こっているんだ!?」
ゴドール「これって、《ご隠居の猛毒薬》だよね?」
マサキ「そりゃそうだろ。この世界は遊戯王テイストが盛り込まれてい…る…から…」
龍明「猛毒薬のダメージ効果…?」
猫魔神「どうやら“秘薬”は、治療薬ではなく毒薬だった模様です。」
ゴドール「ご名答。錬金術士の僕が見れば、どんな薬を作ってたかは大雑把に分かるのさ!」
マサキ「気付いてんなら先に言え!」
ゴドール「いやあ、どうなるのか面白そうだったから。」
マサキ「こういう奴だったよ…。」
ウロボロス「よくやった、ゴドール。これで魔王蹂躙の楽しみが増えた。」
マサキ「どんだけ戦いてえんだ……そりゃ俺も人のことは言えねえけどさ!」
龍明「《スマイル・ポーション》が入ってる時点でおかしいと思ってたが・・・」
マサキ「…そうだな。その段階で疑うべきだった…。」
九郎「言っても仕方がない。魔王を倒そう。」
マサキ「九郎さん、切り替え早え…。」
魔王「どろろんぱ!どろろんぱ!」
マサキ「ああ、《スマイル・ポーション》のドロー効果がセリフになっているのか?」
ゴドール「あ、そうだ。せっかくだから全部使っちゃえ。」

猫魔神「停刻の砂時計が発動し、全員は異世界を抜けてコタツの前へと戻ってきました。これで戻ってこれるのは最後になります。」

魔王の巨躯が消え、まったりした空間へ景色が移る。
窓から見える景色には、雪がチラついていた。
ゴドール「あ、新しいみかんうまうま。ジャムぺろぺろ。」
マサキ「相変わらずマイペースな奴…。」
九郎「さて、魔王を倒す方法を考えようか。」
ウロボロス「HPが約600000000ポイントで、約八割の自然回復能力あり。主な攻撃手段はデュエルと同様、だったか。」
龍明「最初の頃に猫魔神がそんなこと言ってたっけ。」
猫魔神「その通りです。」

ウロボロス「まともに戦っても削り切るのは難しいHP量に加えて、回復スキル持ち。これは搦め手を使えと言っているようなものだネェ。」
九郎「ふむ…。」
龍明「具体的にはどんなカードを?」
ウロボロス「《ライフチェンジャー》を使う。《大逆転クイズ》でもいいが。」
ゴドール「《神龍-エターナルフォースブリザードドラゴン》でもいいと思うよ。まさかあのカードをまた使うことになるとはね。」
マサキ「エクゾディアでもよさそうだな。ただ…」
ウロボロス「ただ?」
マサキ「それらで倒せるような作りになってねえ気がするんだ。」
ウロボロス「…一理ある。ここのGM猫魔神の性格を考えると特に。」
マサキ「もちろん、それで倒せるのならそれに越したことはねえんだが、それら特殊勝利やライフ交換が何らかの形で通用しない場合のことを考えとかねえと全滅しかねない。」
龍明「ここにはもう来られないから、なおさらか…。やはり、ここは全員のエースモンスターや高攻撃力のモンスターを並べて力押しで行くべきか。全員のモンスターを合わせれば合計25体になるから、団結の力とかで強化すればどうかな。」
マサキ「《エボリューション2》を使えば《団結の力》の効果を二倍に出来るし、《閃光の双剣−トライス》で二回攻撃も可能だぜ。」
ゴドール「モンスターだったら《黄金のホムンクルス》と《デステニー・ロード・ドラゴン》、それから、ソーガとの再戦に備えて手に入れたレアカードも出すよ。」
マサキ「レアカードとな?」
ゴドール「特別に見せてあげるよ。《カオス・ソルジャー-開闢の使者-》!」
マサキ「俺が出すならダムドと、最初から二回攻撃出来る又佐、それから……」
龍明「《皇帝神龍》は外せないとして、後は…。」

猫魔神「五人は知恵を絞り、今の自分達が持ちえる最高の戦術を相談し合いました。必ず勝てるように何度も作戦や動きを確認し合い、連携と信頼を高めていきました。そして、数時間が経過した頃についに全ての作戦が決まったのでした。」

マサキ「出来た…!」
龍明「これなら…。」
ゴドール「完璧だね!」
ウロボロス「これだけ作戦を想定しておけば、あの害獣も退治出来るだろう。」
九郎「…よし。皆、行こう。ラスト・バトルだ!」
視界が閃光に包まれ、焼きついたコタツが網膜から消えたときには、魔王の巨躯が景色を覆っていた。

猫魔神「一行は魔王グルゴアステルとの戦いの場に戻ってきました。ついに引き返すことの出来ない戦いの始まりです。」
魔王グルゴアステル「グゴゴゴゴ!!」
猫魔神「魔王が襲い掛かってきました!」

全員「「「「「「でゅえぽ!」」」」」」

結束力が800ポイントアップ!
シリアス度が2000ポイントダウン!

ウロボロス「先行は我々が頂く!ドロー!まずはカードを2枚伏せて、《手札抹殺》を発動!この効果で墓地に送られた《コカローチ・ナイト》をデッキトップへ!そして、伏せていたカードの1枚は《大逆転クイズ》!手札とフィールドのカード全て捨てて効果発動!デッキトップは当然モンスターカード!」
マサキ(ここまで打ち合わせ通り…。大逆転クイズは自分フィールド上に送るカードがないと使えないカードだから罠カードを伏せてコストに。だが、これも布石の一つ!墓地に送られたのは《スキル・サクセサー》だ!)
ウロボロス「これで害獣のライフは4000になる!」

猫魔神「ところが魔王はライフポイント(LP)ではなくヒットポイント(HP)なので、単位違いにより交換不可能だったのです。大逆転、ならず…。」

ウロボロス「ち…これでは、《ライフチェンジャー》も使えないか…。ふんっ!これで終わっていたら返って拍子抜けだ。倒し甲斐があるというものだネェ!ターンエンド!」

ゴドール「今度は僕のターン!ドロー!さあ、行くよ!《神龍-エターナルフォースブリザードドラゴン》を召喚!効果、相手は死ぬ!」

猫魔神「《神龍−エターナルフォースブリザードドラゴン》の効果により魔王グルゴアステルは氷漬けになってしまいました。このまま凍えて死んでしまうのかと思いきや、氷が砕かれ、クシャミと共に魔王が飛び出して来たのです!」
魔王グルゴアステル「でゅえっくしょん!でゅえっくしょん!」
飛んでくる唾を、五人は紙一重で回避した。
猫魔神「魔王らしく即死耐性もしっかりありました。魔王、生還!」

ゴドール「そう簡単には倒せないか。じゃあ《二重召喚》を発動して《黄金のホムンクルス》を召喚、リリースは無しさ。2体のモンスターで攻撃!」
魔王グルゴアステル「でゅえっくしゅん!」
猫魔神「魔王のクシャミ!《エターナルフォースブリザードドラゴン》と《黄金のホムンクルス》の攻撃は無効化されました!氷漬けにしたことで風邪が悪化し、常にクシャミをしてくる危険性が増えました。皆さん、お気を付けて。」
ゴドール「ええ〜…。ソーガない。じゃなくてしょうがない。更にカードを2枚伏せてターン終了!」
猫魔神「ゴドールさんの駄洒落によって更に周囲の温度が下がりました。」
魔王グルゴアステル「ごほん、ごほん…!」
猫魔神「魔王、苦しそうです!」
マサキ「効いてんのかよ!?」

龍明「俺のターン、ドロー!《神龍−ハリケーン・ドラゴン》を召喚し、手札調整!そして《神龍儀式》を発動し、《皇帝神龍》を特殊召喚!2体のモンスターで攻撃だ!」
猫魔神「2体の龍が魔王に向けてブレスを放つ!コンボ攻撃炸裂!更にクリティカルヒットで2倍、2万2400ポイントのダメージです!」
龍明「よし、思った以上にダメージを与えたぞ。カードを2枚セットし、ターンエンド!」

マサキ「そうか、コンボ攻撃がありなんだな。25体のコンボ攻撃で倒せるかもしれねえ…!俺のターン、ドロー!行くぜ!ダムド召喚!更に《団結の力》を装備!仲間のフィールドは当然、共有されている、よって、攻撃力4000アップ!更に《エボリューション2》を発動、これから装備魔法の効果が2倍だ!攻撃力1万飛んで800になったダムドで攻撃!」
猫魔神「《ダーク・アームド・ドラゴン》の攻撃が魔王グルゴアステルに向かいます。更に《団結の力》で協力してくれている《エターナルフォースブリザードドラゴン》、《黄金のホムンクルス》、《神龍−ハリケーン・ドラゴン》、《皇帝神龍》が支援攻撃に参加!5体のコンボ攻撃が炸裂し、7万6750ポイントのダメージです!」
魔王「どろろんぱああああ!!」
マサキ「コンボ攻撃の法則が見えてきたぜ!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

九郎「俺のターン、ドロー。生贄なしで召喚出来るのなら今が大型モンスターの活躍の時!来い、ハモン!更に《団結の力》を装備して攻撃!!」
魔王グルゴアステル「でゅえっくしょん!でゅえっくしょん!」
猫魔神「ここで魔王グルゴアステルのクシャミ二連発!《降雷皇ハモン》を先頭とした連携攻撃の威力が大幅に削られてしまいました。3万5325ポイントのダメージです。」
九郎「くっ…。カードを2枚伏せてターンエンドだ。」
ウロボロス「なるほどネェ、あのクシャミはダメージ半減か。」

猫魔神「そしてターンは魔王へと移ります。この瞬間、魔王のHP自動回復の効果が発動し13万4475ポイント回復しました。」
マサキ「さっきの攻撃の意味がねえ!」

マサキ(なんてな。これも、予定通り!それよりも、魔王のHP自動回復が効果だと猫魔神は言い切った!つまり無効化出来るということだ。大ダメージを与えた後、《禁じられた聖杯》で回復効果を封じる作戦、上手く行きそうだぜ…。)
内心の喜びを隠し、マサキは唇を噛む。

魔王グルゴアステル「どぉ〜ろろんぱあ!」
猫魔神「魔王グルゴアステルは勢いよくカードを引きました。一体、何を引いたのでしょうか。」
マサキ「ドロー…した、だと!?しかもカードがデカい!」
ウロボロス「その可能性があったか…。奴もまたデュエリスト…!」
魔王グルゴアステル「でゅえぽ!でゅえぽ!」
ゴドール「喜んでる…?いいカードが来たの?」
猫魔神「魔王グルゴアステルは《サイクロン》を発動しました。ここで魔王効果により《サイクロン》が雨のように降り注ぎます!」

サイクロン・オール (速攻魔法)
(1):フィールドの魔法・罠カードを任意の枚数だけ選択して発動できる。選択したカードを破壊する。
このカードの発動に対して他のカードは発動できない。


魔王の口から盛大なゲップが轟き、胃液が渦を巻いて上昇。霧状になった胃液がミニサイズの台風となり、それは竜巻にも等しい災害だった。
龍明「っ!?」
ゴドール「汚っ!それに伏せカードが全滅だね、厄介だ。」
魔王グルゴアステル「でゅええ!!」
猫魔神「更に魔王は《ブラック・ホール》を発動しました。フィールドのモンスターは全て破壊されます!」
マサキ「くそっ、流石は魔王!容赦ねえ!」
猫魔神「フィールドのカードを一掃した魔王はウロボロスさんに標的を定めて突進して来ました!」
魔王グルゴアステル「でゅえええええ!」
九郎「まずい!手札の無いウロボロスが狙われた!」
マサキ「危ねえ!」
ウロボロス「うろたえるな。出番だぞ、《クリッター》!」
龍明「えっ!?」

クリッター「くりった!くりった!」
猫魔神「ああっ!あれに見えるは守備表示の《クリッター》!バスの中で発見された《クリッター》をウロボロスさんはずっとアイテムとして忍ばせていたのです!」
マサキ「気が付いたらいなかったから、てっきり逃げ出したのかと思っていたが…。」
ウロボロス「この私が逃がすとでも思うか?」
マサキ「ああ、逃げ切れる気がしねえ!」
蛇に呑まれた獲物が逃げられないのは、自然界においてもデュエルにおいても当然の摂理だった。憐れ《クリッター》は、むんずと掴まれ、サッカーボールのように蹴り飛ばされた。
猫魔神「ウロボロスさんは迫り来る魔王に対して《クリッター》をぶつけました!」
クリッター「くりったあああああ!」
猫魔神「《クリッター》は破壊され、墓地へと落ちていきました…。」
ウロボロス「よくやった。デッキから1枚サーチだ。」
猫魔神「持ち主のデュエリストのために体を張った《クリッター》。そして、感謝の言葉を呟くウロボロスさん。出会ってから1日も経っていなかった2人ですが、そこには奇妙な友情がありました…。絆とは出会った時間とは関係ない。見えるけど見えないもの、そこには確かに、それがあったのです…。」
マサキ「ねえよ!良い話っぽく言っても駄目だからな!」

猫魔神「攻撃を終えた魔王はターンエンドを宣言し、ターンは再び、ウロボロスさんへと回ってきました。」
ウロボロス「ククク…。害獣よ、まんまと罠に掛かったナァ。」
魔王グルゴアステル「でゅえぽぉ…?」
ウロボロス「多対一の戦いで一の側が一番重きを置くのは如何にして相手の数を減らすか、だ。一撃で倒せる相手が居ればそいつを狙うのが定石。事実、手札を使い切った私は《クリボー》などで攻撃を阻害される心配もない、大層甘い蜜に見えただろう…。それが毒入りとも気が付かず…。ククク…クリッターでサーチしたのはこいつだ。《ホールディング・アームズ》召喚!」
魔王グルゴアステル「どろろんぱぁ!?」
二つの輪っかが付いたウジャト眼のモンスターに、魔王は目を見開いて叫んだ。
ウロボロス「その驚きよう、風邪っぴきとはいえデュエリスト…。分かっているようだな、これから起こることが!《ホールディング・アームズ》は召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として効果発動だ。対象にするのはお前だ!魔王グルゴアステル!」
九郎「魔王グルゴアステルはHPを回復させる効果を持つ効果モンスター。当然、対象に出来る。」
ウロボロス「これにより害獣の攻撃と効果を無効化する!更に、お前がフィールドに存在し続ける限り、《ホールディング・アームズ》は戦闘・効果では破壊されない!」
マサキ「更に手札からカードを出すことも魔王としての特殊能力と言える。つまり、お前はカードのプレイをも封じられたんだよ!」
龍明「上手い!言った者勝ちな部分を利用してグルゴアステルの全行動を封じたか!」
ゴドール「これは詰んだね。」

ウロボロス「《ホールディング・アームズ》で攻撃!」
無機質な金属が、魔王に向かう。それは魔王の両腕を拘束し、強制的に万歳のポーズを取らせる。誇り高い魔王にとっては屈辱的だ。赤くなっているのは風邪の熱だけでなく、アリえないほどの羞恥による紅潮だった。
猫魔神「魔王グルゴアステルに500ポイントのダメージを与えました。」

ウロボロス「そして、私は魔法カード、《天よりの宝札》原作版効果を発動!全員はカードを6枚になるまでドローする。」
ゴドール「ドロー。」
龍明「ドロー。」
マサキ「ドロー。」
九郎「ドロー。」
ウロボロス「私はカードを2枚伏せてターンエンド。さあ、総攻撃(リンチ)の時間だ!」

ゴドール「さあて、運命の前に沈んでもらおうか。《封印の黄金櫃》を発動、デッキの《ネクロフェイス》を除外!その効果により、合計31枚が除外されるよ。更に2枚の黄金櫃で同じことを2回繰り返し、合計93枚除外!そして、《戦士の生還》で墓地の《黄金のホムンクルス》を回収し、召喚!自分――すなわち、僕ら5人の除外カード78枚、攻撃力24900!さらに墓地の光と闇を除外して《カオス・ソルジャー-開闢の使者-》特殊召喚!これで黄金のホムンクルスの攻撃力は25500ポイントだ!」
小さかったホムンクルスは、除外という刺激を与えるほどに大きくなり、黄金の輝きを増しながら脈打った。

ゴドール「…ま、攻撃するまでも無く、開闢の使者の効果でグルゴアステルを消し飛ばせば僕らの勝ちじゃないかな?」
龍明「!?」
ウロボロス「!!」
九郎「!!」
マサキ「そ、その通りだ!今までグルゴアステルを相手プレイヤー的に考えていたけれど、さっきカードとして扱う体裁となった!しかも効果は無効化されているからタダのバニラ同然!」
ゴドール「開闢の使者でグルゴアステルを除外!開闢次元斬!」

猫魔神「カオス・ソルジャーは除外の呪文を唱えます。あわや魔王も年貢の納め時かと思われましたが『魔王は除外されませんでした』。」

ゴドール「!?」
猫魔神「魔王が一枚のモンスターカードであることはウロボロスさんが言ったように疑いようのない事実。では先ほどの《ブラック・ホール》で『魔王は何故、破壊されなかったのでしょうか?』」
マサキ「まさか!?」
猫魔神「魔王グルゴアステルには『他の効果を受け付けない効果』が備わっていたのです。《エターナルフォースブリザードドラゴン》に対する即死耐性もこの効果を言い換えたに過ぎません。繰り返しになりますが、魔王グルゴアステルに対する皆さんの攻撃手段は『デュエルモンスターのカードを召喚し、攻撃することが基本』になります。」
淡々と事実を告げる猫魔神の瞳は、世界を悪平等に睥睨する神のようだった。
九郎「まずい…!魔王は効果を無効化されていないぞ!」
魔王グルゴアステル「でゅえぽぉ〜。」
ゴドール「図に乗るなよ。《黄金のホムンクルス》で攻撃、ゴールデン・ハーヴェスト!」
猫魔神「黄金のホムンクルスの強烈な一撃が魔王のみぞおちにクリーンヒット!45000ポイントのダメージです。」
ゴドール「カードを1枚伏せて、ターンエンド…。」

龍明(まずいな…。効果が無効化出来ないんじゃ《禁じられた聖杯》も駄目だ。どうすれば…。)
猫魔神「どうすれば魔王を倒せるのか。野口さんの表情にも不安の色が見え隠れしています。」
マサキ「迷うな、野口!」
九郎「カードを信じるんだ!」
龍明「カードを…。」
ゴドール「信じたカードなら、きっと君の運命を導いてくれるさ。」
ウロボロス「戦い方などいくらでもある。引いてから悩めばよかろう。」
龍明「…そりゃあ、そうだよな。」

猫魔神「皆さんの声援を受けて、野口さんが目を瞑りながら力強くカードを引きます!引いたのは!?」

龍明「…。…。…。《究極神龍》?間違えてエクストラデッキから引いてしまった!?」
猫魔神「はい。昔は融合モンスターの《砂の魔女》さんも通常モンスターとしてデッキに入っていましたし、エクストラデッキドロー有効です。このターンの通常デッキからのドローは出来なくなりますが。」
マサキ「マジか!だったら俺もダイム・ティーグレを…いや、あれは多分…」
孤独の象徴たるダイム・ティーグレは、連携攻撃できない可能性がある。曖昧であっても無秩序ではない世界だけに、迂闊なことはしたくない。

龍明「と、とにかく召喚だ!《究極神龍》!!」
皇帝と並ぶ龍明のエースが、その嘶きをフィールドに轟かせた。
猫魔神「皆さん、召喚の大変難しい《究極神龍》の登場です。拍手でお迎えください。」

龍明「こうなりゃ勢い任せだ!死者蘇生を発動し、《皇帝神龍》を蘇生!そして《団結の力》を装備して連携攻撃を行う!どうもこのゲームシステム的にいい感じに連携出来たらダメージが高い気がする!皇帝と究極の連携攻撃だ!!」
猫魔神「野口さんの叫び声と共に皇帝神龍と究極神龍の連携攻撃が炸裂!2体のドラゴンが放つブレスが螺旋の如く合わさって、魔王グルゴアステルに命中!14万8750ポイントのダメージです!」
魔王グルゴアステル「うぶるあああああああああ!!!」
マサキ「いいぞ!初めてダメージが10万を超えた!」
魔王の唾液を回避しながら、マサキは好戦的な笑顔を見せる。
龍明「だが、これ以上は…。カードを1枚伏せてターンエンド。」

マサキ「任せろ。俺も試してみたいことがあったんだ。燃えろ、俺のデッキ!“黒薔薇煉獄”!」
黒い薔薇は煉獄となり、マサキのデッキは激しい炎に包まれた。
ゴドール「おお!?」
マサキ「思った通りだ、この色々と曖昧な世界なら、俺の能力はデッキのカードも破壊できる!」
猫魔神「マサキさんのデッキのカードが自らの炎で焼き尽くされ墓地へと落ちていきます。過ぎたる炎は我が身を焼くということでしょうか。一見、自殺行為のように思えますがマサキさんの目は逆に輝いています。ここから起死回生の一手があるのでしょうか。」
マサキ「当然だぜ。俺も死者蘇生でダムドを蘇生!」
猫魔神「マサキさんの象徴とも言うべきエースモンスター、《ダーク・アームド・ドラゴン》の登場です。皆様、拍手でお迎えください。」
マサキ「この曖昧な世界ならダムドの効果をダメージ攻撃に変換することが出来るはずだ!墓地の闇属性モンスター10体を除外して効果攻撃する!“ダーク・ジェノサイド・カッター”10連撃!」
闇の刃がグルゴアステルの柔肌を切り刻む!
猫魔神「はい。その攻撃、有効です!魔王グルゴアステルに合計28000ポイントのダメージを与えました。」
魔王グルゴアステル「ぐぼおおおおおおおおお!!!」
ゴドール「いいね、僕のホムンクルスの力が高まるよ。」
マサキ「更に墓地の《クリッター》も使わせてもらうぜ!」
クリッター「くりっ!?」
マサキ「フフフ、《クリッター》は闇属性なんだぜ・・・!」
龍明「さっきウロボロスさんのプレイングにツッコミ入れてなかったか!?」
マサキ「気にするな!ガンガン行くぜ!“ダーク・ジェノサイド・カッター”!」
猫魔神「更に追加攻撃で2800ポイントのダメージを魔王に与えました。」
クリッター「くりたあぁぁぁあ…!」

マサキ「それだけじゃねえ。出番だぜ、竜破壊の剣士!」
竜破壊の剣士「遅くなったが助太刀するぞ。」
龍明「色々と曖昧な世界だから、てっきり曖昧なうちにパーティから外れたと思ってたけど…。」
マサキ「竜破壊の剣士は装備カードを取りに行っていたのさ!」
竜破壊の剣士「《団結の力》と《魔導師の力》を持ってきたぞ。」
九郎「言った者勝ちという、この曖昧な世界ならではの上手い戦い方だ!」
マサキ「《団結の力》はその名の通り、団結して戦うカード!よって、フィールド上のモンスター全員で総攻撃をかけられる!いっけえええ!!!」
猫魔神「皆さんのモンスターの総攻撃!魔王グルゴアステルに217万8400ポイントのダメージを与えました!」
龍明「ついにダメージが100万を超えた!」
ウロボロス「後、二桁か。だが、笹来のターンでどうにかしないと害獣のHPは八割回復してしまう。」

九郎「私のターン。ドロー。」
猫魔神「フィールドは先ほどの魔王の攻撃によってがら空きにされましたが手札は7枚と潤沢です。さあ、どうするのでしょうか。皆さんの注目が集まります。」

九郎「まずは次元融合を発動!」(LP4000→2000)
現世と異次元の一部が融合し、その境界が崩れる。ここぞとばかりに、ひしめていたモンスターたちが溢れ出してきた。
九郎「ゴドールが大量に除外してくれて助かった。帰還せよ!《マグナ・スラッシュドラゴン》!《グラビ・クラッシュドラゴン》!《仮面竜》!《ドル・ドラ》!《ブリザード・ドラゴン》!」
ウロボロス「《アタナシア・ウロボロス》、《ハマルタノ・ウロヴォケイオズ》、《ダーク・クリエイター》、《ダーク・ホルス・ドラゴン》、《茫漠の死者》を特殊召喚!…ふうむ、《茫漠の死者》の攻撃力は0か…。やはりLPとHPの違いか…。」
ゴドール「上手く行ってれば攻撃力3億だったんだけどね…。よし、僕は《デステニー・ロード・ドラゴン》、《ライトニング・ウォリアー》、《放浪の勇者フリード》を帰還だ!」
龍明「《神龍−フラッシュ・ドラゴン》と《神龍−テンペスター・ドラゴン》と《神龍−バーサーカー・ドラゴン》を特殊召喚する!皇帝と究極に並び立て!」
マサキ「俺は又佐、ザルーグ、《キラー・トマト》、《レジェンド・デビル》を出すぜ!竜破壊の剣士は助っ人だから俺のモンスターゾーンを圧迫しない!」

九郎「そして、魔王グルゴアステルはモンスターを召喚出来ない。何故なら、魔王1体で5体分のモンスターゾーンを使っているからだ!」
マサキ「そうか!でか過ぎるから、ドラマ版の機皇帝みたいにフィールドを圧迫しているんだ!」
猫魔神「魔王、配下を呼べませんでした!」
マサキ「いい感じにモンスターの数も揃った!だが、届くか…?」
龍明「6億だからな…。」
ウロボロス「心配するな。九郎の目を見ろ。まだ切り札があるようだぞ。」

九郎「…猫魔神、絆ポイントでカードを買いたい。」
マサキ「!?」
猫魔神「ワイトさんは1枚で1絆ポイント、デスガイドさんなら3絆ポイント、《スマイル・ワールド》なら20絆ポイントになっています。現在の絆ポイント残高は何だかんだで684絆ポイントです。」
龍明「684!?」
ウロボロス「薬を作る時に《スマイル・ポーション》を購入していたから問題ないネェ!」
九郎「《スマイル・ワールド》を34枚購入!」
ゴドール「これが大人買いする大人!」
九郎「魔王グルゴアステルは『他の効果を受け付けない効果』が備わっていたんだったかな、猫魔神。」
猫魔神「その通りです。」
九郎「フィールド上のモンスターは魔王と竜破壊の剣士を含めて27体。よってスマイル・ワールド1枚に付き、魔王を除く26体の攻撃力が2700ポイントアップする。そして、《スマイル・ワールド》は34枚。」

凄まじい笑顔が《スマイル・ワールド》から溢れ出して、モンスターたちに取りついていく。厳めしい顔が引き攣ったかと思えば、すぐさまデスガイドと同じ表情になり、口元も楽しそうに開かれた。
ゴドール「ああっ、見ているだけで幸せな気持ちになってくるよ!」(笑顔)
龍明「顔の筋肉が強制的に操作される…!これも《スマイル・ワールド》の効果か…!」
マサキ「うっ…俺の顔面も、笑顔に支配さ…れ……」

笑顔は次から次へと溢れ出し、モンスターに張り付いていく。その度にモンスターたちは体を震わせ、そして笑顔の目玉がボコボコと音を立てて顔面から出芽する。笑顔が続々と溢れ、眼球も続々と出現。
笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔……
マサキ「何かすっげえ禍々しいんだけど!?」(笑顔)
26体のモンスターたちは、顔面に数十もの目玉(笑顔)を張り付けている。これが“夢の中”だというなら、今すぐ醒めてほしい光景だった。
ウロボロス「夢は悪夢であるほど素晴らしい。」(笑顔)
九郎「上昇する攻撃力の総合計は238万6800ポイントだ!」(笑顔)

猫魔神「攻撃力の総合計が百万の大台に!しかし、魔王グルゴアステルのHPは約6億ポイント!『削りきれるはずがない』!」

ウロボロス&ゴドール&龍明&マサキ&九郎「「「「「それはどうかな!?」」」」」(笑顔)

ウロボロス「フハハハハ、墓地のトラップカード、《スキル・サクセサー》を全て除外し、攻撃力を追加上昇!」(笑顔)
ゴドール「ハハハハハー、除外カードが増えたことで《黄金のホムンクルス》と《デステニー・ロード・ドラゴン》の攻撃力がアップ!」(笑顔)
龍明「ははははは!更には《団結の力》や《魔導師の力》などの装備カードでもパワーアップしている!」(笑顔)
マサキ「コンボ攻撃の強さは《皇帝神龍》と《究極神龍》で見た通りだ!ヒャハハハハ、メチャクチャ楽しくなってきたぜ!!」(笑顔)
九郎「ククク・・・26体によるコンボ攻撃のダメージはどうなると思う?」(笑顔)
魔王「ど!どろろんぱ!!」
九郎「総攻撃!」(笑顔)
ウロボロス「これが…!」(笑顔)
ゴドール「僕達の…!」(笑顔)
龍明「友情の…!」(笑顔)
マサキ「力だああ!!」(笑顔)

攻撃力の合計値は、258万6300ポイント!!
26体のモンスターが、《団結の力》による連携を取ったとき、威力は351倍!!
このとき世界は、笑顔に包まれた―――!!

魔王グルゴアステル「どろろんぱ!!うおおおおおお、かつてない笑顔が向かってくるーーーーー!!!!!」

猫魔神「各人のエースモンスターによる奇跡の競演!魔王グルゴアステルに総合ダメージ9億0779万1300ポイントを与えた!魔王グルゴアステルはその場に倒れ込みました。見事、魔王を倒しました!!!」

魔王グルゴアステル「でゅえぽおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

倒れた魔王は、とても薬物感あふれる笑顔だった…。
笑って死ねるとは、まさに一片の悔いも見当たらない。
魔王の名に相応しい、壮絶な最期だった。





<エンディング>

猫魔神「こうして一行は見事に魔王を倒しました!」
マサキ「やったぜ!」
ゴドール「ま、これが運命ってヤツだね。」
ウロボロス「ふむ、本当に息の根は止まっているな。脈もなし。」
倒れ伏した巨体に、容赦なく測定器を突き刺して確認。

龍明「…。あのさ…。」
九郎「ん?どうかしたかい?」
龍明「このゲームって魔王を倒すことが目的じゃなくて、治すことが目的だったんじゃ…?」

マサキ「あ……」
ゴドール「お!?」
ウロボロス「ん?」
九郎「…。」
五人の間に微妙な空気が流れる。

だが、すかさずウロボロスが言った。
ウロボロス「いや、害獣を退治出来そうになかったから治療することにしただけだったから、倒せるならそれでいい。このゲームの根本の目的は猫魔神が言っていた通りクエストクリアだ。魔王を倒すクエストが発生したから、それをクリアした。何の問題もない。」

猫魔神「誰もが魔王を倒した…。その瞬間まで、誰もがそう思っていました…。しかし、魔王はリザオラルの能力を持っていたのです!」

マサキ「なにい!?」
魔王グルゴアステル「ぐおお!死ぬかと思ったあ!実際、死んだのだが。」
むっくりと体を起こした魔王は、大欠伸をして腕を伸ばした。
猫魔神「復活!魔王復活!復活!魔王復活!」

ウロボロス「ちっ、面倒なことになった。こんなことなら焼くか溶かすかしておくべきだったな。」
魔王グルゴアステル「うおお!痛い!体の節々が痛い!だが体が軽い!治った…!風邪が治ったぞおおお!!お前達、よくやってくれた!」
魔王は奇怪な造形をした顔で、爽やかな笑顔を浮かべた。
マサキ「お?戦いって雰囲気じゃねえな…。」
魔王グルゴアステル「風邪をひいた時には薬を飲んで、体を温めて寝るに限るな!がははははは!」
龍明(その薬は毒薬だったし、体を温めたのはバトルだし、寝たっていうか気絶?もうツッコミどころしかないが…。)
魔王グルゴアステル「さあ、お前達。約束のレアカードをやろう。速攻魔法《サイクロン》だ。ほとんどのデッキに入る汎用性に優れているぞ。」
マサキ「レアカードって《サイクロン》かよ!?」
龍明「《サイクロン》はたくさん持ってるが……」
ゴドール「準制限だからいっぱい持っててもいいでしょ。」
九郎「準制限!?」
ウロボロス「《サイクロン》は制限!」
猫魔神「未来では《サイクロン》は3積みできますよ。」

そして猫魔神は、《スマイル・ポーション》を三杯も飲んだかのような、とびっきりの笑顔で締めに入った。
猫魔神「こうして皆さんは感謝とレアカードを受け取りました。しかし、よくよく考えれば魔王の願いを叶えても皆さんが元の世界に戻れる保障はどこにもなかったのです。」

魔王グルゴアステル「む?ひょっとしてお前達、【秘伝の妙薬】を持ってくるのに疲れ切って一歩も動けないのか?よかろう、ワシの魔法でお前達を家まで届けてやろう。遠慮するな、頭の中に自分の家を思い浮かべるだけでいい。行くぞ!」
魔王は巨体で軽妙なステップを踏み、かかとを地面にガンガンと叩きつけながら回転し始めた。さながらモーメントのような回転は、風の渦を巻き起こし、五人を吹き飛ばした。
マサキ「今更ながら女子がいねえのが悔やまれるぜ!」



目が覚めると、しんしんと降り積もる雪景色と、やかんで湯を沸かす音があった。
どてらを着て、目の前にはみかんとジャムが―――

マサキ「って、コタツの部屋じゃねえか!?」
猫魔神「その通りです。『魔王の願いを叶えても皆さんが元の世界に戻れる保障はどこにもなかったのです』。」
九郎「元の世界に戻る方法は後で考えるとして、みんな、お疲れ様。」
ウロボロス「地獄へ旅立つ前の座興としては、なかなか楽しめたネェ。」
九郎(地獄?軍人だと言っていたから、戦場へ戻るという意味か…?)
ブレイダー「今回もギリギリの戦いだった。よく勝てたものだと思う。」
龍明「九郎さんが咄嗟に機転を利かせてくれたおかげで助かったな。」
ゴドール「僕の活躍も忘れないでよ!」
マサキ「アクシデントも多かったが、そのおかげで面白かったぜ。」
猫魔神「女湯も覗けましたし、ラッキーでしたね。」
マサキ「そうそう、あられもねえ女子たちの……って違えよ!」
ウロボロス「この期に及んで自分を偽らなくともよかろう。」
九郎「いつ頃に発売する予定なんだ?」
猫魔神「それはヒミツです♪」
ゴドール「発売したらソーガを誘ってプレイしてみるよ。」
九郎「ウィラーなら、どう対処するかな…。」

龍明「お、ここから庭に出られるのか。」
ふすまを開けると、程よい広さの庭に雪が薄く積もっていた。
マサキ「おー、綺麗だな。」
ブレイダー「なかなか風情がありますな。」
ゴドール「雪だるま作ろう!」
みかんの汁とジャムが口に付いたまま、ゴドールは外に飛び出し、1分も経たずに精巧な彫像を作り上げた。
龍明「巧い…!」
ウロボロス「流石はホムンクルスだネェ。」
九郎「これがソーガ君かい?」
ゴドール「その通り! 僕の運命の相手、ソーガ・ダイモンさ!」
ブレイダー「どことなく親近感を覚えますな。」
猫魔神「破壊剣士だけに、壊し屋さんにはシンパシーを感じるようですね。」

マサキ「……で、何で竜破壊の剣士がいるんだ?」
ブレイダー「お戯れを。私はマサキ殿に従う忠実なしもべではありませんか。」
マサキ(まさか《超融合》のせいで…!?)

ひとしきり和んだところで、家の壁を触っていたウロボロスが言った。
ウロボロス「フム、どうやらこの空間はフィールド魔法のようだネェ。」
マサキ「…ってことは、《サイクロン》で破壊できる!?」
九郎「なるほど、その為の《サイクロン》か。よく出来ているな。」
龍明「レアカードというのはそういう意味か…。」
ゴドール「それじゃ、皆で発動しようか。せーのっ!」

サイクロン (速攻魔法)
(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。


猫魔神「その日、世界のどこから見上げても見えるぐらい巨大な風の柱が立ち上りました。晴れ渡る空にどこまでも伸び行く竜巻。上がる、上がる、上がる!一体、どこまで飛ばされるのでしょうか。答えは、夢が覚める時間まで…。皆さん、お疲れ様でした。ご協力ありがとうございました。これでTRPGは終わりとなります。ささやかではありますが、プレゼントとして《サイクロン》はお持ち帰り頂けます。それでは、また会える日まで。」







おしまい。

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佐久間闇子と奇妙な世界
2017/01/15 00:03

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