佐久間闇子と奇妙な世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 決闘祭!   インターバルまたは同窓会 (中編)

<<   作成日時 : 2017/01/21 00:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

◆ ◆ ◆



「マサキ君・・・」

うっとりとした顔で、狩枝紅葉(かりえ・もみじ)はウェーブした黒髪を揺らしていた。
真っ赤なドレスに身を包み、デュエルディスクと黒いバッグを持って、ホテルを訪れたところだ。

高校時代から美少女として名高い彼女だが、そこに大人の魅力が加わっている。
手間暇かけてアップした髪形に、淡い色の口紅、蛍光色のネイル。

これからマサキの泊まっている部屋を訪れるつもりだ。
それの意味するところを理解できないほど子供ではない。


「大河マサキの部屋を教えて。」

フロントで狩枝は、命令にも近い口調で告げた。

「申し訳ありませんが、お客様の個人情報はお教え出来ないことになっておりまして・・・。」
「個人的な付き合いよ。わたしを誰だと思ってるの?」
「しかし、竜堂様の指示で、たとえ知り合いであっても部屋を教えてはならないと・・・。」
「なんですって?」
「明日に向けて鋭気を養う決闘者に、雑念を与えてはならないということでして、はい。」
「だったら大丈夫よ。わたしが会えば鋭気は最高潮になるわ。」
「いえ、しかし・・・」
「話にならないわね。その竜堂ってやつを呼んできて。」

狩枝がテーブルを叩いたのと、後ろから声をかけられたのは、ほぼ同時だった。

「はい、何ですか?」

振り向くと、そこに10代前半の少年としか思えないような人物が立っていた。
華奢な体躯で、薄ら笑いを浮かべている。

「竜堂は僕ですが。」
「あんたが竜堂?」

狩枝は面食らった。
支配人というからには、もっと年季の入った中年だと思っていた。

「このホテルは“堂一族”(シュラインファミリー)の経営でして、そのトップは僕です。用件があれば聞きますよ。」
「だったら話は早いわ。わたしは狩枝紅葉。大河マサキに会いに来たの。彼の部屋を教えて。」
「僕にデュエルで勝てば教えます。」

竜堂はデュエルディスクを展開した。

「ただし、貴女が負けたときは、身につけているものを1つ、いただきましょうか。」
「なっ・・・! 何を言ってるの!?」
「デュエリストに会いたければ、デュエルするのが当然です。」
「・・・っ、いいわ。」

狩枝もディスクを広げ、デュエルが始まった。


「「デュエル!」」

狩枝:LP8000
竜堂:LP8000



「わたしの先攻、ドロー! カードを1枚伏せて、《不意打ち又佐》を召喚するわ。」


《不意打ち又佐》 (攻1300→2600)



「へぇ、それが君のデュエリスト能力ですか。」

「そうよ! わたしのレベル3能力“巨大紅葉”(ビッグパワード)! 攻撃力2倍!」


巨大紅葉(ビッグパワード) レベル3能力(所有者:狩枝紅葉)
自分フィールドに召喚・特殊召喚されたモンスターの攻撃力は2倍になる。



「更に、《デーモンの斧》を装備するわ!」

《不意打ち又佐》 (攻2600→3600)


「先攻1ターン目はバトルフェイズを行えない・・・だけど、速攻魔法《時の飛躍》!」

「・・・なるほど。」

「3ターンを経過したことで伏せカードを開けるわ! 《スキル・サクセサー》で400ポイントアップ!」

《不意打ち又佐》 (攻3600→4000)


しかも又佐は2回攻撃が可能なモンスターだ。
このターンで狩枝は、一気にライフを削り取ってしまうつもりなのだ。


竜堂:LP8000→4000



「手札から《冥府の使者ゴーズ》を、守備表示で特殊召喚。攻守4000のカイエントークンも出します。」

「だったら、又佐でゴーズを粉砕よ!」

《冥府の使者ゴーズ》 (破壊)


「まだよ、ターンを跨いだことで召喚権を得るわ! 《BF−疾風のゲイル》を召喚して、カイエンの攻守を半減!」

《BF−疾風のゲイル》 (攻1300→2600)
冥府の使者カイエントークン (攻・守4000→2000)


「カードを1枚伏せて、ターンエンドよ!」


「強力な効果の下級闇属性を強化し、《時の飛躍》で攻めるスタイル・・・。」

「そうよ! マサキのスタイルは研究しているわ!」

「・・・僕のターン、ドロー。カイエントークンを生贄に、サイコ・ショッカー召喚。」

「・・・!」

「これで君の伏せた罠は封じられました。ショッカーに《巨大化》を装備して、攻撃力2ばーい。」

「・・・っ」


《人造人間−サイコ・ショッカー》 (攻2400→4800)



「更に《黒いペンダント》を装備し、とどめに《リミッター解除》発動。」


《人造人間−サイコ・ショッカー》 (攻4800→5300→10600)



「そ・・・そんな馬鹿なっ!」

「攻撃力2600のゲイルに攻撃。」


狩枝:LP8000→0



ジャストキル。
デュエルは終了した。



「それでは約束通り、バッグをいただきます。」

バッグが瞬間移動して、竜堂の手に収まった。

「・・・っ! まだよ! もう一度デュエルを申し込むわ!」

「そうですか。では、貴女が勝てばバッグは返しますし、マサキの部屋へ案内します。ですが負ければ、次はその真っ赤なドレスでも貰いましょうか。」

「このっ・・・! ・・・いいわよ、やってやるわ!」


「「デュエル!」」



- - - - - -



その1分後には、狩枝は下着姿を晒していた。
大河に見せることを想定した、青色の勝負下着だ。

「次はブラでも賭けますか? それともハイヒールにしますか?」
「このっ・・・変態! ケダモノ!」
「やらないのなら、どうぞお帰りください。」
「帰るわけないでしょ!」

下着姿のまま、狩枝は竜堂を睨む。
泣きそうになりながら、堪えている。

「では条件は同じです。貴女が勝てば全てを返し、マサキの部屋へ案内する。負ければハイヒールを貰います。」


「「デュエル!」」



- - - - - -



「では、《邪帝ガイウス》でダイレクトアタックです。」


狩枝:LP2400→0




- - - - - -



「罠カード《魔法の筒》発動。」


狩枝:LP4200→0




- - - - - -



「エンドフェイズに《光神機−桜花》は自壊し、装備していた《黒いペンダント》で500ダメージです。」


狩枝:LP500→0




- - - - - -



「もう賭けるものがありませんね。」

「・・・っ、こんなの・・・こんなの嘘よ・・・・・・」

デュエルディスク以外は何ひとつ身につけていない狩枝は、羞恥と屈辱で狼狽していた。

5回のデュエルで、特に変わったことはない。
自分は最善のプレイングをしたはずだし、相手の戦術も平凡だ。
なのに何故か毎回、ライフジャストで敗北する。悪夢としか思えなかった。

「それでは、お帰りください。」
「こんな格好で帰れるわけないでしょ! 何考えてんのよっ!?」

ロビーには他の客たちもいる。
狩枝は羞恥で気が狂いそうだった。

「それではラストチャンスです。このデュエルに、貴女の”1時間”を賭けてもらいます。」
「・・・どういう意味?」
「言葉通り、貴女が負けたときから1時間、僕に絶対服従ということです。」

薄ら笑いを浮かべる竜堂から、闇の瘴気が吹き出していた。

「どうします・・・? 今なら引き返してもいいですよ・・・?」
「引き返すわけないでしょ! わたしのマサキへの思いを甘く見ないで!」


人生には引き際というものがある。
狩枝は、それを見誤った。


「「デュエル!」」


狩枝:LP8000
竜堂:LP8000



「僕の先攻、ドロー。《切り込み隊長》を召喚し、効果で《不意打ち又佐》を特殊召喚します。」

竜堂は淡々とプレイする。
自分が勝つのがわかりきっているように。

「《不意打ち又佐》に《団結の力》と《黒いペンダント》を装備します。速攻魔法《時の飛躍》。」

「―――っ!!」

攻撃力3400になった《不意打ち又佐》が、2回攻撃で6800ダメージ。
それに《切り込み隊長》の1200を合わせて、丁度8000のライフが削り取られた。


狩枝:LP8000→4600→1200→0



《クリボー》や《バトルフェーダー》さえ手札にあれば、防げていた。
《冥府の使者ゴーズ》や《トラゴエディア》でも良かった。

だが、狩枝の手札に発動できるカードは無かった。


「・・・・そんな・・・・・・何で・・・・・どうして・・・・・・こんなの違う、ぜったい納得いかない・・・!」
「僕のデュエリスト能力を知っていれば、納得できると思います。それでは1時間、いただきます。」
「・・・っ、イヤっ・・・!」
「嫌でも従っていただきます。」

竜堂の左手から瘴気が噴き出し、狩枝を捕まえた。
そのまま狩枝は運ばれていった。


狩枝が連れてこられた部屋には、柄の悪い男が3人、裸で待っていた。

「へぇ〜、イイ女じゃねえか。」
「やっべ!」
「いいの? やっちゃっていいの?」

「そうだよ。あと57分、この子を好きにしていいから。」

その言葉に狩枝は蒼白になる。

「イヤぁ――っ!! わたしの初めてはマサキにあげるの! こんな奴らイヤぁ!」

「おいおい、こんな奴らだってよ。」
「失礼な女だ!」
「やっちゃう?」

「まァ、哀願に応えるかどうかは自由だ。僕は用事があるから、もう行くね。」

「待って・・・待ってぇ!!」

だが、狩枝の前で扉は閉じられた。
そして背後から3人の手が彼女を掴んだ。

「んぐ――・・・」



◆ ◆ ◆



「ただいま、マサキ。」

部屋に戻ると、テーブルも布団も床も、カードだらけだった。

そこにマサキが倒れている。

「マサキっ!」

「・・・・・・おう、シンヤ。・・・あァ、いつの間にか寝ちまってたのか。すまねえな、足場なくて。」
「ハハハ、精が出るね。」

どうやら不審者に襲われたわけではないらしい。
散らばってるカードも、よく見れば整然とカテゴリ別に分けられていた。

「デッキの整理中に寝ちまうなんて、らしくねえなァ。疲れが溜まってたのか。」
「あれ、《サイクロン》じゃないか。マサキには必要ないカードだろ?」
「ん? どっかから紛れ込んだか・・・・・・いや、そうだ、確か夢の中、もとい『ユメノナカ』で・・・」
「この《サイクロン》、ちょっと借りていいかい?」
「ああ、構わねえぜ。」

「・・・っと。」

何とかカードを踏まないように移動して、竜堂は椅子まで辿り着いた。
大河の前でしか見せない笑顔で、彼は尋ねる。

「新デッキの方向性は見えてきた?」
「なんとかな。眠ったおかげで頭がスッキリしたし、夢でヒントも掴んだぜ。」
「へぇ? ベンゼン環も夢の中で閃いたらしいし、やはりマサキには素質があるね。」
「素質なァ。」

「あとはアレだね、女の子が訪ねてきて体のシャッフルに興じるとか。」
「どこのエロゲーだよ。」

言いながら大河は、備え付けの緑茶パックをコップに入れて、お湯を注ぐ。
竜堂は話を続けた。

「いやいや、無いとは言い切れないじゃないか。僕らは常に夢を見続けて生きるんだ。」
「そりゃま、好みのシチュエーションではあるが、今夜は駄目だ。今は明日のデュエルのことしか考えられねえ。」

大河の顔は屈辱で険しくなっている。
昼間のことを思い出しているのだ。

「ライディング能力デュエルで、“ツンドラの死神”・・・リュドミラに、リベンジだ。エキシビションで無様な負けを喫した分を、倍にして返してやる。」

しかし大河とは対照的に、竜堂は嬉しそうに微笑んでいた。
それこそ見た目に相応しい、少年の笑顔で。

「やっぱり僕は、間違っていなかった。マサキは僕の思った通りのデュエリストだよ。」
「何だ、もしかしてホントに俺を訪ねて誰か来てたのか?」
「そうなんだよ。マサキの撒き散らすフェロモンに吸い寄せられたみたいでさ。」
「追い払ってくれたんだな。ありがとよ。」

その言葉だけで、徒労も努力に変わる。
竜堂は微笑みながら言った。

「僕は悪い奴だが、僕は常に正しい。」


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
決闘祭!   目録
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ...続きを見る
佐久間闇子と奇妙な世界
2017/01/21 00:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
決闘祭!   インターバルまたは同窓会 (中編) 佐久間闇子と奇妙な世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる