佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 41 受容

<<   作成日時 : 2017/01/27 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



信じていた世界は一瞬で

音も無く消える




◆ ◆ ◆



三次元における、あらゆる物体は、多くとも8つの基本構造に分解できる。
すなわち、その8つ以外の構造を内包していれば、三次元の外側に存在することになる。

形容しがたい造形が、侵食を始める。
天神美月だったものは、この宇宙を食べ始めた。

「・・・っ、くひっ、死んでたまるか・・・・・・よぉ・・・・・・」

闇のデュエルで敗北したとき、燈炉子は死を覚悟していた。
だが、生き残っただけでなく、意識もある。ならば逃げない理由は無い。

「げら逃れるとって思いのる?」

「・・・っ!」

だが、その言葉とは裏腹に、燈炉子は体を動かすことが出来た。
体が動かなくなるか何かあると思ったが、そうではなかった。

(ハッタリかァ・・・? いや・・・!)

燈炉子は直感した。
広がり続ける闇は、地球を、やがては全宇宙を呑み込んでしまうと。
そうなったら、誰も逃げられない。逃げようがない。

「闇のゲームからは、誰も逃げられねぇ・・・か・・・・・・」

なまじ頭が回るからこそ、先が読めてしまう。
この気配は、どこかで覚えがあると思った次の瞬間、記憶が繋がった。

(ゴーストフェイス。奴から感じた気配と同じだァ。)

燈炉子の瞳が、ドロッと闇を吐く。


「レベルマイナス・・・!」


全てを受け容れるように、魔王・天神美月は“手”を広げる。

世界の法則が崩れていく。
そこにはデュエルと、そうでないものの境界は存在しない。
全てがデュエルであり、デュエルは全てである。
あらゆる行為、事象、概念がデュエルとなり、デュエルでないものは無い。

食事はデュエルである。
睡眠はデュエルである。
呼吸はデュエルである。
排泄はデュエルである。

 歩行はデュエルである。
 思考はデュエルである。
 売買はデュエルである。
 料理はデュエルである。

  読書はデュエルである。
  歌唱はデュエルである。
  勉学はデュエルである。
  恋愛はデュエルである。

   栽培はデュエルである。
   性交はデュエルである。
   殺戮はデュエルである。
   判決はデュエルである。

    苦痛はデュエルである。
    電車はデュエルである。
    鋳造はデュエルである。
    鉛筆はデュエルである。

     青空はデュエルである。
     病気はデュエルである。
     簡単はデュエルである。
     箪笥はデュエルである。

      数学はデュエルである。
      死亡はデュエルである。
      安寧はデュエルである。
      平和はデュエルである。

       韜晦はデュエルである。
       脱落はデュエルである。
       光速はデュエルである。
       生誕はデュエルである。

        災害はデュエルである。
        暴力はデュエルである。
        財貨はデュエルである。
        司法はデュエルである。

         器量はデュエルである。
         爆発はデュエルである。
         矛盾はデュエルである。
         哲学はデュエルである。

          継続はデュエルである。
          神聖はデュエルである。
          加速はデュエルである。
          指先はデュエルである。

           惨劇はデュエルである。
           真実はデュエルである。
           宝石はデュエルである。
           情熱はデュエルである。

            夕暮はデュエルである。
            制覇はデュエルである。
            意識はデュエルである。
            性別はデュエルである。

             散髪はデュエルである。
             過信はデュエルである。
             成果はデュエルである。
             脅迫はデュエルである。

              暗黒はデュエルである。
              単色はデュエルである。
              沈黙はデュエルである。
              空白はデュエルである。

               瓦礫はデュエルである。
               隕石はデュエルである。
               乱雑はデュエルである。
               自白はデュエルである。

                特色はデュエルである。
                崩壊はデュエルである。
                掃除はデュエルである。
                青菜はデュエルである。

                 習慣はデュエルである。
                 新月はデュエルである。
                 心臓はデュエルである。
                 直立はデュエルである。

                  世代はデュエルである。
                  憎悪はデュエルである。
                  疾病はデュエルである。
                  自分はデュエルである。

                   能力はデュエルである。
                   名前はデュエルである。
                   本日はデュエルである。
                   世界はデュエルである。



- - - - - -            - - - - - -



それは、“なんでもあり”の世界だった。
あらゆるものが肯定され、また、否定された。
全てを否定するレベルマイナス“受容の力”は、否定すらも否定し、全てを肯定した。

あの世界に入ったら、二度と出られない。


「こいつはバツグンに危険な状況ですね。」

燈炉子の横に、黒フードの人物が現れていた。

「ゴーストフェイス? てめぇでも、ありゃ無理だぜぇ・・・・・・」

「わかってますよ・・・。わたしのバツグンなレベルマイナス“神隠し”(トポロギカ)でも、どうしようもない。あの空間の中では、全てが否定され、肯定される。ですから・・・」

ゴーストフェイスは、か細い声を張り上げた。

「吉井くん! 吉井康助! いつまで寝ているつもりですか!?」

レベルマイナス“神隠し”(トポロギカ)は、“存在の否定”だ。
なんでもありのマイナス空間を突っ切り、吉井に声が届く。


だが吉井は、虚ろな目で天神に抱かれていた。
身に纏う一切を脱ぎ去り、生まれたままの姿で魔王に身を任せていた。



◆ ◆ ◆



ゴーストフェイスの本名は、ダークピース・ドワーフロッドという。
人口の大半がマイナス能力者である世界に生まれ、精霊に育てられた。

だが、その精霊は、ある目的の為にダークピースを虐待していた。
罵詈雑言を浴びせ続け、ろくに食事も与えなかった。

ある日、小さな女の子が現れて、ダークピースは精霊から助け出される。
少女からデッキを与えられ、全世界のデュエリスト同士が戦う大会に参加するよう、頼まれた。
ダークピースは承諾し、ダークシンクロモンスターを駆使して大会を勝ち抜いていった。

だが、その大会には裏があった。

精霊の目的は、数値レベルではない、真マイナス能力の作成だった。
大会の目的は、真マイナス能力者を探し当てて、“永劫の砦”に封印することだった。

精霊の目論みは成功していた。
ダークピースは、真マイナス能力、通称“レベルマイナス”を顕現した。
そして、きゃははと笑う少女と、みゃははと笑う少女に、闇のデュエルで敗北し、封印された。

だが、死に際に放った魔力が、異世界から魔王を召喚してしまう。

ある世界の支配者。魔王・天神美月。
レベルプラス“拒絶の力”を所持するデュエリスト。
マイナスの世界は、瞬く間に制圧され、ダークピースは封印された状態で、己の所業を嘆いた。

ああ、なんてことを。なんてことを。
わたしは、なんてことをしてしまったんだ。

封印されたダークピースには、どうすることも出来ない。
たとえ戦えたとしても、手も足も出ない。

自分のせいで世界は滅びるのか。ああ、畜生、滅びてしまえ。
バツグンに歪んだマイナスの考え方が、心を優しく侵蝕する。


だが、マイナス世界の吉井康助が―――



◆ ◆ ◆



そして舞台は今に戻る。


「吉井康助!!」


呼びかけではなく、感嘆。
かつて魔王に立ち向かった姿と、今の彼の姿が重なった。


「すいません、遅れました。」


照れ笑いをする吉井は、服を着てからデュエルディスクを構えた。
きちんとボタンを留めている暇は無いので、けだるい恰好になっている。


「天神さん、デュエルです!」

「し楽いデュエルにしねましょう?」

元の天神美月とは似ても似つかぬ姿、存在になっているが、吉井は普段通りにディスクを展開する。
どんな姿になろうが、天神さんは天神さんだと、そんな綺麗事を現実に顕現する。

「ふはは、実行力を伴った綺麗事は、バツグンに美しいですね。」

もはや流す涙も無い肉体だが、ゴーストフェイスは泣いていた。



「「デュエル!」」


吉井康助:LP8000
天神美月:LP9Hk?ッg




「私のターン、ドロー。」



天神が先攻を取る。



そしてデュエルは終了した。



◆ ◆ ◆



「・・・ゴースト?」

竜堂神邪の近くには、いつもゴーストフェイスがいる。
だが、今は見当たらない。

酷い迫害を受けて、虚空の闇の瘴気を濃くした神邪は、些細な偶然から“永劫の砦”に迷い込んだ。
そこには、人の形をしたものは何も無かった。自分の知っている、どんな生き物もいなかった。
現実に存在する生物は勿論、空想上の生き物であろうとも、神邪の範疇を超えていた。
常人なら1日も経たずに気が狂いそうな環境で、神邪は好奇心に任せて進んだ。
とっくに狂っていた神邪は、別の狂気に身を浸すこともなく、突き進んだ。
どこまで行っても、まだ先があった。恐怖と好奇を足して冒険心。
現世に帰ってきてからも、なかなか興奮は醒めなかった。

「ゴースト? どこにいる?」

“永劫の砦”の深奥に、真マイナス能力者たちの封印された場所がある。
そこは無限に広がる闇の空間。寂しい虚空。ゴーストフェイスは、そこにいた。
“虚空の闇の瘴気”に誘われ、神邪はダンジョンの深奥で奇跡的な出会いをした。

「どこだ・・・?」

あれから、ずっと傍にいたマイナス能力者が、今はいない。

「・・・“ブック・オブ・ザ・ワールド”。」

“虚空の闇の瘴気”で作り出された、世界を小説のように読める本。

「・・・っ、天神さんが!? まずい・・・!」


だが。


「・・・・・・・・・あ。」


すぐに安堵した。



◆ ◆ ◆



「吉井くん、また助けてもらったわね。」

申し訳なさそうな顔で、透き通るような声が心地よく響く。
この声を聞くと、疲れも何もかも吹き飛んでいく。

「天神さんがデッキを変えてなくて、助かりました。」

膨れ上がったデッキから、天神のカードを抜きながら、吉井は照れくさそうに笑った。
“掌握の力”で天神のデッキを丸ごと自分のデッキに加えていなければ、勝ち目は無かっただろう。

「くひひ、流石じゃねぇか。」
「バツグンの絆ですね。」

吉井康助の“掌握の力”で自分のデッキに加えられるカードには、いくつかの制約がある。

1つ目は、何かしらのデッキに入っているカードしか選択できないということ。
2つ目は、デュエルに使われている最中のデッキに入っているカードは選択できないということ。
3つ目は、康助が「そこに目的のカードが存在していること」を正しく認識している必要があること。
4つ目は、デュエル開始時にデッキに入っていたカードと、《掌握の力》でデッキに加えたカードを合わせたときに、
同名カードが4枚以上であったり、禁止・制限・準制限カードの制約が満たされていないようにすることはできない。

1つ目に関しては問題ない。
2つ目が微妙だったが、そこは“受容の力”が追い風になった。
なんでもありの世界では、デッキ枚数が0でデュエルを始めることも出来た。
そして、デッキアウトの状態でドローフェイズを迎え、敗北したというわけだ。

だが当然、天神のデッキを隅々まで把握していなければ、こんなことは出来ない。
しかし吉井はメタゲーマーとして、相手のデッキを研究することに余念が無い。
何度もデュエルをすれば、どんなカードが入っているかは把握できる。
ゆえに3つ目の条件もクリアできたのだった。

そして、この戦術は危機的状況で閃いたわけではなく、以前から考えていたことである。
そうなると4つ目がネックになることはわかっていたので、吉井はマイナーカードをデッキに多く入れている。
流行遅れと揶揄されることも多い吉井だが、それは“掌握の力”を最大限に活かせる資質でもあるのだ。




「ちょっと写真を撮っちゃおうかしら。」

デュエルディスクの写真機能が使われる音声がした。

「ひくっ、竜堂!?」
「バツグンに遅いですね竜堂神邪。全て吉井さんが解決しましたよ。」

「そうみたいだね。素晴らしい、美しいよ。」

黒い手袋とブーツ、ミニスカート、白いフリル。左胸に限定した胸パッド。
魔法少女となった竜堂神邪、もとい竜堂真夜が、立っていた。


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