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zoom RSS 決闘祭!   番外編 ペンシルバニアの銀の槍(後編)

<<   作成日時 : 2017/02/11 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



若者が嫌いだった。

能力も無いのに根拠の無い自信を持っている若者が嫌いだった。
そんな若者が子供を作り、自分のような境遇の人間を生み出す。
自分と異なる価値観を否定することしか知らない愚か者たちが。

生まれてこなければ良かった。あんな親のもとになど生まれてきたくなかった。
この体は嫌いだ。あの無責任な人間どもの血が流れている体は嫌いだ。
肉塊を織りなす二重螺旋も、髪の毛の一本たりとも残したくはない。



◆ ◆ ◆



狩枝紅葉:LP9、手札0
場:ダーク・リゾネーター(守33)
場:

タニア・パープルウォール:LP3750、手札0
場:否定ペンギン(攻2500)、ペンギン・ナイトメア(攻1800)
場:ペンギンランド(フィールド魔法)、うずまき(永続魔法)




『ぬふふふふ、次に適当なモンスターを引き当てれば、《ダーク・リゾネーター》も粉砕! 最後は私の直接攻撃で決めてあげますよ狩枝紅葉19歳!』

べろりと舌を出して、シルクハットのペンギンは卑しい目を見開く。

「1ターンの制限時間が経過したのでぇ、あたしのたぁん、どろぉかぁど。」

(・・・っ)

凍りついた状態で、紅葉は絶望で心が冷える。
祈りは前向きな絶望と何ら変わりない。

(お願い、モンスターじゃありませんように!)

「あはぁ、モンスターじゃないわぁ。だけど速攻魔法《月の書》!」

(――っ!!)


月の書 (速攻魔法)
フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。



「月光に照らされて怯えてしまう、可哀想な精霊さんは誰ぁれ?」

『しかし私は何度でも蘇る! 私がリバースした瞬間、相手フィールドのカード1枚をバウンスします! しかし《否定ペンギン》の効果で除外されます!』

(・・・そんな・・・・・・嫌・・・・・・)

『私と《否定ペンギン》の相性は、福神漬けを備えたカレー! 何杯でもおかわり出来ます! 高い買い物をせずとも人は幸せになれるのです!』


狩枝紅葉:LP9、手札0
場:
場:

タニア・パープルウォール:LP3750、手札0
場:否定ペンギン(攻2500)、ペンギン・ナイトメア(攻1800)
場:ペンギンランド(フィールド魔法)、うずまき(永続魔法)



「悪い悪い精霊さぁん? フィニッシュは譲ってあげるわぁ♪」

『ありがたき幸せ! 男・大瀧修三72歳! いかせていただきます、シュワッチ!』

コホンと咳払いし、ネクタイの位置を直し、シルクハットのペンギンは突撃を開始する。
卑しい目つきに欲望を携え、一直線に氷漬けの美女へ向かって。

(来ないで、来ないでーーー!!)

『ぬふっふふふぅ! 恥丘に優しいピチピチギャルの誕生ですー!』

(嫌ああああああっ!!!)





青白い槍がペンギンをアスファルトに縫いとめたのは、クチバシが恥丘へ達する直前だった。

『ぎゃああああああああああああああ!!??』

「・・・・・・デュエルの邪魔をする正義の味方は誰ぁれ?」

掴んでいた人形を噛み砕き、咀嚼し、呑み込んで、タニアは眼光を濁らせた。
そこへ降り立ったのは、十字架を背負い、眼鏡をかけた修道女だった。

「呉星十字19歳! 一身上の都合につき、正義を執行します!」

『何が正義ですか! おじさんの楽しみを邪魔したばかりか、槍で貫くなんてイケナイ子ですね! ぷんすか!』

「黙りなさい、下種なケダモノ! いたいけな婦女を氷漬けにするなど、この私が許しません!」

「公式レベル5能力者の1人かぁ。だけど今はデュエル中よぉ。乱入は歓迎しないわねぇ?」

「心配しなくても乱入はしませんよ。乱入ペナルティは初期ライフの半分。《うずまき》と合わせて一瞬でライフが尽きてしまう。《うずまき》を張っておけば乱入など恐るに足らずというわけですね!」

「あはぁ、冷静な人が来たよぉ。ペンギンさん、今時の若者も捨てたものではないわねぇ?」

『そんなことは君と出会ったときからわかっています。若者らしからぬ若者もまた、いつの時代も存在するものですからね。しかーし、おじさんの聖なる願いを妨げたのは、こっちこそ許しませんよ! ぷんぷん!』

体を貫かれながらも、精霊は腰を振って怒りを表現する。
しかし呉星はフイッと首を向けて、紅葉を覆っていた氷を十字架で砕いた。

「・・・・・あっ・・・ありがとう・・・」

「大丈夫ですよ、狩枝さん?でしたっけ。私はYOUの味方です。これから可能な限り、相手の行動を封じますから、その間に逆転してください。」

『そうかわかりました! 君は呉星十字ではなく、タイプB、呉星百ノ字ですね!?』


そう言われたのと、呉星の顔が歪んだのとは、ほぼ同時だった。


「かぎゃははは、イマゴロ気付いたかよ!?」



罪業十戒(クライムローグ) レベル5@能力(所有者:呉星百ノ字)
相手の行動をターン終了まで1つ禁止できる。
この効果はデュエル中10回まで発動できる。




「既にタニアちゃんにもブットイのをブッ刺してるぜ! かぎゃははは! 初期ライフをミニマム設定にされたら、遡及して敗北しちゃうからなあ!? 善がれないのは残念だなっ!」

『なんと破廉恥な! やはり君は今時の、厚顔無恥な若者だ!』

脳天に青白い槍を差されているタニアは、固まったままピクリとも動かない。
それを好機と見た紅葉は、一気に自分のターンに移る。

「わたしのターン、ドロー! 《人造人間7号》を召喚よ!」


人造人間7号 レベル2 闇属性・機械族
攻撃力500 守備力400
このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する事ができる。



「かぎゃははは! いい調子じゃねえか! その調子で潰しちまえ!」

「わかってるわ! 直接攻撃よ!」


タニア・パープルウォール:LP3750→3695



「そしてタニアのドロー、思考に3本目と4本目! エロペンギンに5本目!」

『のわああああ!! おじさんをいたぶるなんてイケナイ子だ! いたぶるのは私の役目ですよ!?』

「死ね変態! わたしのターン、ドロー! ・・・来た、《心眼の鉾》を装備!」


心眼の鉾 (装備魔法)
装備モンスターが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与える場合、
そのダメージ数値は1000ポイントになる。



(これまで戦闘ダメージを変動してないから、10分の1にしてないはず!)

祈りを込めて紅葉は攻撃を開始する。
相手がこちらを舐めて、いたぶろうしているなら。
初期ライフを10分の1にせずに、いたぶっていたのなら。

「攻撃力が55しかなくても関係ないわ! 攻撃よ!」

戦闘ダメージの変更は、直接攻撃を受けるときにONにしようとしていたはずだ。


タニア・パープルウォール:LP3695→2695



「かぎゃははは! 勝利が見えてきたじゃねぇか! ドロー、思考、エロペンギンに、6,7,8本目!!」

『まずいいいいいい!! 恥丘に優しい女子大生になる私の夢があああああ!!』


「わたしの、ターン!! 《機械複製術》発動よ! 《心眼の鉾》を装備したまま、《人造人間7号》は3体になるわ!」

『ぎゃああああ!! スーパーエキスパートルールが裏目に出たああああ!!』



タニア・パープルウォール:LP2695→1695→695→0




『もう少しで若い肉体が手に入ったのにいいいいいい!!』

「これに懲りたら、マサキに手出しなんかしないことね!」



◆ ◆ ◆



悪夢の夜が明けて、朝が来る。

泥のように眠り果てた紅葉は、驚くほどに清々しい気分で目が覚めた。
昨日のことが、どこか遠い記憶のように感じられ、現実ではなく、ただの夢だったように感じられた。

「目が覚めたか、紅葉!」

傍に居たのは、目に隈を作った桐坂公則だった。
疲れ切った顔で、しかし喜びを湛(たた)えて彼は紅葉に抱きついた。

「きゃっ・・・」
「僕にしろよ。」

耳元でテノールが囁く。

「大河じゃないと駄目か? 僕では・・・釣り合わないか?」
「公則・・・」

情に絆(ほだ)されそうになったのは事実。
このまま身を委ねてもいいと思ったのは事実。

しかし紅葉は、黙ってデュエルディスクを構えた。

「公則、わたしとデュエルして。あなたが勝てば・・・わたしは公則のものよ。」

生気を取り戻した紅葉に、公則も眠気を吹き飛ばし、胸の前にディスクを持ってきた。

「死力を尽くすよ。生まれて初めて、僕は死ぬ気で勝ちたい。」


「「デュエル!」」



- - - - - -



病室の前には、レッドラムとエルスが立っていた。

「随分と優しいじゃねえかエルスちゃん。情に絆されたか?」
「あなたと違って、真面目そうなイケメンだからですよ。元々わたしのカードでもないですし。」

強引に肩を組むレッドラムから、身をよじるようにしてエルスは嘯く。

「わたしは準備を怠らない人間が好きです。デュエルになると予想して、自分の能力を最大限に活かすカードを探し求めた、その努力を評価します。」
「努力ねえ。そんなもんは勝てないと何の意味も無えけどな。」

せせら笑うレッドラムだったが、そこには自嘲を含んでいるように見えた。

「だが、オレも桐坂の勝利は信じている―――」

単なるシンパシーなどではなく、れっきとした根拠がある。
そう、『モンスターが召喚されたとき、その攻撃力分のダメージを相手に与える』桐坂公則の能力。それゆえに。

「―――《うずまき》はフィールド魔法と永続魔法、両方の性質を持っている。それに加えてエルスが渡した、あのカードさえあれば、1ターンキルが成立する。」

カードプールの変遷によって、金田幸治の能力と同じくエラッタを受け、レベル4になっている。
その強烈な火力は、以前からレベル3としては相当に強いと評価されていた。

「これで勝てねえようなら、釣り合う相手じゃなかった。それだけの話だろ。」
「・・・あなたでも不安を感じるのですね。」
「あん?」

図星を刺されて、怒るのではなくレッドラムは、意外そうな顔でエルスを見た。

「いつでも自信満々に見えるようなら、まだまだオレを理解できてねえってことだな。オレは、葉継と釣り合わないかもしれねえと怯えている、ただのガキさ。」

泣笠葉継にデュエルで勝ったことが無い、それゆえにレッドラムは恐れている。
今の自分は、彼女から情けをかけられているような状態ではないかと、怯えている。
しみったれた“男のプライド”は、いつか捨てられる恐怖を頭に染み付かせて、離れない。

「・・・・・・あなたが女に好かれる理由が何となく理解できました。」
「何だ、オレ様の名推理に惚れ直したのか?」
「最初から惚れてません。わたしは嫌々あなたに従っているのですから。」

しかしエルスは、もう身をよじろうとしない。

「まァ、嫌々だろうと今日いっぱいは協力してもらうぜ。ライディング能力デュエルの、チームメイトとしてな。」

夜が明けて、朝が来た。
2日目のプログラムが、もうすぐ始まる。



◆ ◆ ◆



それより数時間前、東の空が少しずつ白み始めていた頃。
タニアは海馬コーポレーション直轄の病院で目を覚ましていた。

「あはぁ・・・マサキさん、お人形にし損ねちゃったぁ・・・。でもマサキさんって誰ぁれ? 誰ぁれかなぁ? 悪い子のペンギンさんは知ってるかなぁ?」
『もちろん知ってます。大河柾19歳、公式レベル5能力者の1人です。』
「あたしの失った記憶の中に、たぁいせつなモノがあった気がするのよぉ。マサキさんを人形にすればぁ、それが取り戻せるのかなぁ? 会いたいよ、マサキさん・・・会いたいよぅ・・・」

切なく甘い息を漏らして、タニアは病院着をぐしゃりと掴む。
これで敗北は4度目だが、それで折れる魂ではない。
恋心にも似た執着心は、狂気の月を満ちさせていく。

「ところでぇ・・・」

ぐしゃりと果実を潰すように笑って、タニアは首を動かした。


「さっきから病室にいる貴女は誰ぁれ?」


黒髪をポニーテールに結った、豊かな胸と腰の括れの美女が、窓辺に肘を預けていた。
フリルのついた白いブラウスに、黒いスリットスカート。腕にはデュエルディスク。

『・・・っ、竜堂眸44歳!? 何故ここに! 君は死んだはずではなかったのかね!?』

すると彼女はデュエルディスクを展開して、くるくると首を動かした。
その様子は、裏社会でカリスマとして知られる竜堂眸とは雰囲気が違っていた。

決定的だったのは、発した言葉。

「きりかろひれらるむわとせつやもれにはちゃちゃゆれむあみいたらふろわらおあしまちゆしたやすこそまひつ。」

まるで意味を成してない、清音の羅列。
少なくともタニアもペンギンも、こんな言語は聞いたことがない。

ただ、ひとつだけ聞き取れた言葉がある。


「デュエル」


タニア・パープルウォール:LP8000
???:LP8000



「れきやたむそぴあろぷ《集中する闇の世界》さかろぷあれにわとふだ。」


意味不明な言葉の中に、カード名だけがハッキリと聞こえる。
彼女のデッキから闇が迸り、形を成す。

「あはぁ・・・この感じ、懐かしい闇の香りぃ・・・?」


集中する闇の世界 (フィールド魔法)
このカードはデュエル開始時に、デッキまたは手札から発動する。
このカードはフィールドから離れない。
自分の初期手札は0枚になり、ドローも出来ない。
ターン開始時にデッキからカード1枚を選択して手札に加える。



「りこるはぴおふたおつくしは《サンダー・ドラゴン》こさみちあぷしそ《サンダー・ドラゴン》ぺるきせおりぬはぷ《サンダー・ドラゴン》にちはそむか。」


???:手札1→2→4



『な、何が起こっているのですか!?』

「・・・正体不明のデュエリスト能力を使ってる貴女は誰ぁれ?」

その問いに彼女は、気のふれた笑顔になり、デュエルを続ける。
だが、もはや決着までに時間は必要としない。

「ねきつぱとくぴ、デッキワンサーチシステムけさちも。」


???:手札4→5




そしてデュエルは終了した。

昇る陽を待たずして、タニアと精霊は、病院から姿を消していた。






   ペンシルバニアの銀の槍   完

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