佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 56 最悪

<<   作成日時 : 2017/03/18 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



「シンヤ君! ここにいた!」

レッドラムと入れ違いに、息せき切って現れたのは、アタッシュケースを携えた美女だった。
揺れるポニーテールは地面を擦り、スレンダーな肢体と、豊かな胸が躍動する。
垂れ目だが、意志の強い眼光。

「・・・どちら様ですか?」

「“ブック・オブ・ザ・ワールド”で見ているくせに、いけず。」

口を尖らせるが、不愉快な様子ではない。
しな垂れかかるような口調だ。

「何か勘違いがあるみたいだけど、“ブック・オブ・ザ・ワールド”は世界の全てが読めるわけじゃない。今はデュエル中なんだから、話は後にしようじゃないか。」

「は、はい。どんな状況ですか?」


竜堂神邪:LP16002
デスティ:LP8000



「ご覧の通り、初期ライフをシフトする戦術は、“黒い霧”によって阻まれている。僕の魔法・罠・モンスター効果は全て封じられていて、デジタルシフトさえも“黒い霧”で戻される。」

「だったらデジタルシフトを続ければ、“黒い霧”は尽きますね!」

「その遥か前に僕の精神力(バー)が尽きるよ。」

「そ、そこは何とか気合いと根性で・・」

彼女は拳を握って、縋るような目で竜堂を見つめる。

「僕が気合いとか根性に頼る人間だと思う? そういう要素は、武器にするべきであっても頼るべきじゃない。」

「だけど、それ以外に方法は・・」

「それはどうかな。“黒い霧”は、あらゆるライフロスを元に戻すが、無限に存在するわけじゃない。戻した分に応じて消費される。これを試す価値はありそうだ。」

竜堂の肉体から闇が溢れ出し、寄り集まって球体になる。
カードではない、精霊の《邪神アバター》だ。

「さて準備は整った。絶対能力でライフを虚数の方向にシフトする。


デスティ:LP8000→8000− i



「“黒い霧”の効果で元に戻ります。」

デスティの声は落ち着き払っていた。
しかし竜堂は、自分の推測が正しいことを確信していた。


デスティ:LP8000− i →8000
竜堂神邪:LP16002→16002− i



「複素数は実数と違って大小が定義できない―――つまり・・・」


デスティ:LP8000→8000− i
竜堂神邪:LP16002− i →16002



「あっ・・・!」

「気付いたかい。実数からしてみれば、虚数変動は正の方向も負の方向も等しく直行している。すなわち振り子のようにライフは揺れ続け、“黒い霧”を消費する。これが虚数を用いた無限ループだ。」

「正解です、竜堂神邪。潔くサレンダーしましょう。約束通り、わたしは君に仕えます。」

デスティの姿が崩れ、高笑いと共に精霊アバターに吸い込まれていく。
それを見ながら竜堂は、満足そうに頷いていた。

「これほど強力な精霊を得られるとは、危険を冒した甲斐はあったかな。・・・ええと、それで君は誰だっけ?」

「神月緋鶴(こうづき・ひづる)よ。緋鶴って呼んで。」

熱っぽい目を向けて、神月はアタッシュケースを開いた。

「・・・っ、そのカードは・・・。」



◆ ◆ ◆



白い巨躯、肩と腹に水色の瞳、胸に大きな赤色巨星、人類の未来を摘み取る絶望。
リアルワールドへ解き放たれたマシニクルは、破壊光線を撒き散らして焦土を広げる。
観客たちは阿鼻叫喚、避難誘導も無視して手前勝手に走り回る。

「あははははは! 解き放たれた絶望を止めることなど、もはや誰にも叶わないゾ!! 絶望なさいませ? お絶望なさいませ! 揺るぎなきDespairの前に進むべき道を見失っちゃえ! きゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

大型Dホイールに、全裸で逆さ吊りで固定されながら、リアライズ・アポトーシスは子供のように燥ぐ。
その姿かたちは実際、13,4歳の愛らしい少女だ。たとえそれが、得体の知れない化物であるとしても。

大方Dホイールからマシンアームが伸びて、クラッシュしたDホイールを持ち上げた。
そこから気絶した風堂を取り出して、覆面を破く。

「・・・・・・、・・・っ!?」

顔に風が当たって意識を取り戻した風堂は、慌てて顔を隠そうとするが、両手がマシンアームに掴まれている。
力を込めて逃れようとするが、バイサー・デスに挟まれたように、びくともしない。

「い、嫌・・・見ないで、見ないで・・・!」

ろくに手入れのされていない、ソバカスだらけの顔。
こんなモノを人前に晒したくない。晒されたくない。

「あはははははは、マスクマンが負けたら覆面を脱ぐものだよ、きゅ〜〜〜!」

マシンアームは服も破りにかかる。

「嫌あああっ!! 許して、ゆるしてぇっ!!」

みすぼらしい痩せぎすの体を見られたくない。がっかりされたくない。
応援してくれたファンに失望されたら、恥ずかしくて生きていけない。

だが、リアは容赦なくマシンアームで服を破り捨て、風堂は一糸まとわぬ姿で風を肌に浴びる。

「きゅ〜〜〜、楽しいのはコレからだよお! オペレーション開始ィ!」

マシンアームが変形し、風堂の頭蓋に装着される。
そしてギコギコと嫌な音がして、風に鉄の匂いが混じる。

「ひぎぃいいいい!!??」

「あ、大丈夫だよ、生きたまま脳髄を取り出すだけだから! 生きたまま脳髄を取り出すだけだから! 意識はハッキリしたまま、苦しんでイってね!」

「いぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!?」


べちゃっ


「きゅ〜〜〜、この脳髄を素肌に纏う感覚、サイッコーに絶頂しちゃうう〜〜〜〜〜!!!」

「嫌ぁ・・・・・・見ないで・・・・見ないで・・・・・・」

全裸で脳髄を摘出された状態で、風堂は泣き咽ぶ。

Dホイールの速度が増した。
リアは手当たり次第に少女を捕まえては、ライフを0にして脳髄を摘出していく。

べちゃっ べちゃっ べちゃっ べちゃっ べちゃっ
べちゃっ べちゃっ べちゃっ べちゃっ べちゃっ

「きゅ〜〜〜、今回の脳髄服も良い出来だぁ! 素晴らしい! 美しいよ! その苦しみに歪んだ顔!」

全裸の少女たちを磔にし、その脳髄を纏い、リアは紅潮した顔で愛液を撒き散らす。
最低最悪のファンサービスが宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。



会場の外ではマシニクルが、なおも暴れ続けている。

「焼き払え、虚数・“黒薔薇煉獄”(ブラックローズガーデン)!!」

天まで届くかのような紅蓮の炎が、白き巨体を丸々焼き尽くす。
その中で絶望は音を立てて崩れ落ちていく。

だが、消えきらぬ炎の中から白い手が、ぬっと出てきて大河めがけて放たれる。

「“インフィニティ・キュービック”!!」

「チッ!!」

大河はDホイールを操作し、飛翔して逃れた。
だが、攻撃が掠っていたようで、後部から煙が出る。

「ブッ倒しても! ブッ倒しても! ゾンビみてぇに再生しやがる・・・ッ! この変態がッ!!」

「最上位の褒め言葉だよ、きゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


“詰ましにくる機皇神”(インフィニティ・キュービック) レベル3+4 i 能力(所有者:リアライズ・アポトーシス)
自分が敗北したとき、手札・デッキ・墓地・除外ゾーンから「機皇神マシニクル∞^3」を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚した「機皇神マシニクル∞^3」は攻撃力と守備力が∞になる。
自分フィールドに「機皇神マシニクル∞^3」が存在する限り、自分の敗北は無効になる。



既にリアのライフは0であり、マシニクルが破壊されれば敗北する。
だが、その瞬間“詰ましにくる機皇神”が発動し、マシニクルが出現。敗北は無効になる。

(どうすりゃいいんだ・・・)

聳え立つ巨体が、気持ちにも影を落とす。

たとえ融合やシンクロの素材にしようとも、どこからでもマシニクルは復活する。
焦土にされた場所で、どれだけの悲劇が起こっているかなど、想像も出来ない。

(いや、どうすりゃいいかなんてわかってる。だが、俺のデッキにその手段は無ぇ・・・クソッ、こういうとき“掌握の力”があればって思っちまうよな―――)

焦る大河の目の前に、マシニクルの豪腕が迫ってくる。
影と共に死が、絶望が来る。

「“インフィニティ・キュービック”!」

「・・・っ!」



魔神の逞しい腕がマシニクルの一撃を受け止めたのは、そのときだった。



「待たせたな。神(しん)のデュエリストである私が相手だ。」

爬虫類のような顔立ちの男が、Dホイールで疾走してきた。
彼の手札にはエクゾディアパーツが全て揃っており、完全体エクゾディアが出現していたのである。

「あはははははは! だけどマシニクルがいる限り、リアちゃんの辞書に敗北の二文字は掲載されない! そして私にはドーレの引いた手札が2枚ある! こ・れ・で・も・く・ら・え、きゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


キューブ・オブ・ディスペア (速攻魔法)
「機皇神マシニクル∞^3」が自分フィールドに存在するとき、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●相手フィールドの全てのカードを破壊する。
●相手の手札を全て破壊する。
●相手のデッキを全て破壊する。



「おまいは助かっても手札は粉々だァーーーーー!! きゅ〜〜〜〜〜!!」

効果自体も凶悪だが、リアが狙っているのはソリッドビジョン。
闇のゲームにおいて、ソリッドビジョンは幻影ではなく現実。

凄まじい爆発が巻き起こり、珍札は空高く吹き飛んだ。

「・・・っ、珍札さん、すまねえ!」

爆炎に紛れて大河は逃走する。
会場の通路まで走ってきたとき、聴き慣れた声が響いた。

「間に合わなかったか。」

影を落とした顔で、竜堂が駆けつけていた。

「シンヤ!」

「相変わらず無茶をするね、マサキ。」

「無茶はお互い様だ。それより奴は何者だ?」

「奴は“カンサー”A級戦力のうち、“最悪の五人”(ノット―リアスファイブ)と呼ばれる員数外(ロストメンバー)の1人・・・“機械都市”の支配者、リアライズ・アポトーシスだ。」

「“ノット―リアスファイブ”・・・?」

大河の知識に、ビッグファイブやモリンファイブという五人組は存在する。
だが、ノット―リアスファイブなどという名称は初耳だった。

「母さんが飼っていた化物どもさ。僕らは“混沌派”20都市のうち15都市を落としたが、残り5つの都市は、この世界には存在しない・・・・・・奴らは、別次元からやって来た。」

「“最悪”というより“最低”だな・・・。」

げんなりした顔で大河は嘆息する。

(シンヤも頭おかしい変態野郎だが、リアライズも悪い意味で負けていねえ。こんな酷い変態が、あと3人もいるのか・・・確かに絶望したくなるぜ・・・。)

「天神さんかエウレカさんなら・・・いや、特殊召喚とバウンスを繰り返せば、結局やられるかなァ。天神さんを魔王にするわけにもいかないし、やはり僕が出るか。」

「そんな血色の悪りぃ顔して何言ってやがる。」

「血色が悪いのは元からさ。何しろインドアなものでね。」


「だったら何で、リアライズのデュエリスト能力をシフトして封じてねえんだ?」


「・・・っ」

「任意効果のデュエリスト能力は、認識できるものしか干渉できねえ。“デュエリスト能力発射ぶくろ”の中にあるものを認識するのは、簡単じゃねえはずだ。」

「それは・・・」

「お前の体調が万全なら、能力シフトどころか、デジタル操作で勝敗決定まで出来るはずだ。それをしないのは、出来ないか・・・出来たとしても気絶は免れないかだ。」

強大な敵を前にすれば団結できるというのは、ある意味では正しく、しかし数学的には偽である。
気絶した竜堂を、この機会に亡き者にしてやろうと考える者が、どれほど存在するかなど数えたくもない。

竜堂神邪の、致命的な弱点。

デュエリスト能力は絶対であっても、人望が無い。体力が無い。現実の前に手も足も出ない。
“シフトワン”は完全無欠のデュエリスト能力だが、それを扱う竜堂神邪は悲しいほどに脆弱だ。

邪悪な精霊を従えるべく、リスキーな闇のゲームに臨んだのも、弱点克服の為の、ささやかな足掻きだった。
だが、そのせいで今、深刻な疲労と眠気に襲われている。吐き気と眩暈で景色が歪んで見える。

「多分その状態でも、リアライズに勝つことは出来るんだろうよ。だが、攻めてきている“カンサー”は、奴だけってわけじゃねえんだろ?」

「・・・・・・。」


大河の言葉を証明するかのように、青空が歪み、軋んでいた。

真っ白で巨大な球体と、神々しい神殿のような要塞と、メカニックな剥き出しの要塞が、空を覆った。

“混沌派”20都市のうち、異世界に拠点を置く例外の化物たち。
トロット・スロットの亜空都市、竜堂星目(りゅうどう・のなめ)の天空都市、リアライズ・アポトーシスの機械都市。

《わぁい、A級喜席“跳躍”のトロット・スロットだよ♪ 恋愛対象10歳未満! 賞味期限切れのオッサン・ジジイ・化石どもに興味はありませ〜ん! 幼児最高! 赤ちゃんペロペロ! 胎児ハァハァ!》

《トロットちゃん、またそんなこと言って! 大学生とか最高じゃないですか! 成長しきった21歳が一番オイシイ時期なんですよ! あ、私はハットー! A級米席、“奈落”のダークネス・ハットーです! その、よろしく!》

《ろぷれつにくちA級白席“虚心”ろ竜堂星目つきてもみまやおせいさかろたふえましわゆくむあぴれるそまたい》

「あはは! みんな来たんだ! ついでに私も自己紹介! A級百席、“未来”のリアライズ・アポトーシスでっす!」


黄色い声が、交差しながら木霊した。


“刻の跳躍”(セティルゴーヴン) レベル5 i 能力(所有者:トロット・スロット)
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“無の代償”(アスレチックマスト) レベル5 i 能力(所有者:ダークネス・ハットー)
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“名無し闇”(ネームレスネーム) レベル5 i 能力(所有者:竜堂星目)
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“詰ましにくる機皇神”(インフィニティ・キュービック) レベル3+4 i 能力(所有者:リアライズ・アポトーシス)
自分が敗北したとき、手札・デッキ・墓地・除外ゾーンから「機皇神マシニクル∞^3」を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚した「機皇神マシニクル∞^3」は攻撃力と守備力が∞になる。
自分フィールドに「機皇神マシニクル∞^3」が存在する限り、自分の敗北は無効になる。



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