佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 43 火車

<<   作成日時 : 2017/03/05 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



決闘祭、2日目の朝がやって来た。

「ふあ〜、よく寝たぜ。」

大河マサキは布団から体を起こして首を振った。
昨夜は深く眠り、頭は冴えわたっている。絶好調だ。

厚手の革ジャンに着替え、表情が締まる。
指貫グローブを嵌めて、黒いヘルメットを被り、朝焼けを網膜に焼き付ける。

「さァて、リベンジと行きますか!」

野生の虎が牙を剥くように、大河は歯を剥いて笑った。

勝てる確信など無いが、勝算はある。だからこそ武者震いが気持ちを掻き立てる。
負けるかもしれない恐怖と、勝ちたい思い、勝てる算段、それらの混ざった昂揚感。
これを味わう為に生きている。この昂揚感が充実感となるのは、勝利に他ならない。

「その永久凍土を、ドロッドロに溶かしてやるぜ・・・!」



◆ ◆ ◆



〜ライディング能力デュエル〜

◎1チームのメンバーは3名(多くても少なくてもいけない)
◎チームのメンバーは全員がデュエリスト能力者であること
◎チームの能力者は元々のレベルの合計が8以下であり、
現在のレベル合計も8以下でなくてはならない
◎この大会中、外部からデュエルに干渉してはならない




◆ ◆ ◆



《さぁーて、始まりました2日目のプログラムことライディング能力デュエル! 試合会場は早くも熱狂に包まれております! 解説の私も熱気でアチチだ! 恋の炎が芽生えてしまうのか! 33歳独身年収777万円! そんな私の嫁に来たい人は今すぐ電話だ続きはウェブで! とにもかくにもデュエルのはっじまっりだぁあああ!!》


「あの解説、殺しておかない・・・?」

ロングヘアの少女が、控え目な声で言った。

「物騒なこと言うなよ這原(はいばら)、これから俺たち試合なんだぜ。」

臨戦態勢の大河は、今すぐにでもDホイールに乗りたい気持ちを抑えきれない。
だが、這原と呼ばれた少女は、どこか覇気の欠けた顔で空を眺めている。

「大丈夫かなァ? 自分で連れてきておいて何だけどさ。」
「フフ・・・這原さんとは・・・なんとなく、親近感を覚えますね・・・・・・。」
「いや、お前とはだいぶタイプが違うと思うぞ、波佐間。」

入れ込みすぎていた緊張が解されて、大河は息を吐いた。
だが、落ち着き払っている3人とは対照的に、それを見ている観客たちは、ざわついている。

「おい・・・確か、大河も波佐間もレベル5だよな?」
「間違いねえ。昨日のエキシビションに出てた!」
「このライディング能力デュエルは、レベル合計8以下にならないと駄目なんだろ?」
「おかしいわよね?」
「レベル変更できる能力者がいるって噂は・・」
「いや、それもルールで禁止されている!」
「そうだ! 元々のレベル合計も、今のレベル合計も、8以下でなければならない!」
「不正か!?」
「まさか!」

だが、そこへ海馬瀬人が出てきてマイクを握った。

《よく聴け凡百の決闘者ども! チーム“ゾンビタイガー”はルール違反などしていない! 何故なら、そこにいる女はマイナスのレベルを持つ能力者だからだ!》

「あーあ、海馬さんバラしちまいやがんの。度胆を抜いてやろうと思ってたのによ。」
「フフ・・・反則を・・・疑われたままでも、一向に・・・・・構わなかったのですが・・・・。」
「だよなァ。李下の冠、瓜田の靴って言うが、結局反則してねえんだから同じだろ。」

どよめく観客たちを前に、大河と波佐間は肩を竦める。
いずれにしても第一走者は這原絶夜(はいばら・ぜつよ)である。


そして

相手は


「今度は、いい試合にしましょう。」

幽霊のような少女。寒々しい水色のショートヘアの死神。
ツンドラから来たレベル5能力者は、吸い込まれそうな瞳を輝かせていた。エキシビションのときよりも。

「あんたが第一走者か?」
「いえ、ワタシは最後です。よろしくお願いしますね、大河さん。」
「そうか、奇遇だな。俺も最後だ。・・・今度は勝つ。」



- - - - - -



◎チーム・ゾンビタイガー      ◎チーム・ツンデレ

第一走者:這原絶夜 ――――― 第一走者:川原静江
第二走者:波佐間京介        第二走者:真田杏奈
第三走者:大河柾           第三走者:リュドミラ




- - - - - -



《ライディングデュエル、アクセラレーション!!》


這原絶夜:LP8000
川原静江:LP8000



《さーて、始まりましたライディング能力デュエル! 見栄えの良い女の子同士のスタートとは幸先が良い! 首相の山本山太さん、この試合どうなると思いますか?》

《え〜、そんなこと俺に訊かないでくれよ。長々と説明したくなっちゃうよ? 観客の皆さんも、俺みたいなオッサンの話とか聞きたくないでしょう?》

剽軽なセリフに、観客たちが湧く。
それと同時に、2人のドライバーが第1コーナーへ差し掛かった。

《さてさてさて、第1コーナーを先に回った方が先攻だ! 果たしてどちらが先に曲がるのか? おっと、這原さんが強引にドリフトをかましている! これは反則スレスレだ!》

《いいねえ美少女の生脚!》

《どこ見てんですか首相! ワイフに告げ口しちゃいますよ?》

《ヒィィィィィィィィ〜! ヒ・・・助けて・・・来る来る来る助けて・・・来るああああ! 来る・・・来る・・・・・・来る・・・来る・・・俺の嫁が・・・・・・》

爽やかに錯乱する首相をよそに、這原が先に第1コーナーを回った。


「・・・あたしの先攻、ドロー。」


這原絶夜:SC0→1
川原静江:SC0→1



スピード・ワールド・決闘祭仕様 (特殊フィールド魔法)
「スピード・ワールド」カードは無効化されない。
(1):互いのスタンバイフェイズごとに、
互いのプレイヤーにスピードカウンターを1つ置く。(最大12個まで)
(2):プレイヤーは自分のターンのメインフェイズの起動効果として、
自分のスピードカウンターを取り除くことで以下の効果を発動できる。
●4個:自分の手札の魔法カードの枚数×800ダメージを相手に与える。
●7個:デッキからカードを1枚選択して手札に加える。
●10個:フィールド上のカードを任意選択して破壊する。



這原絶夜:LP8000→7900→7800→7700→7600→7500→7400



《おおっと、這原さんのライフが減っているぞ! これがマイナス能力の効果なのか!?》


這原のデュエリスト能力は、レベル−4だけあって、そのデメリットは大きい。
特にライディングデュエルにおいて、それは顕著だ。


“火の車”(デットバーン) レベル−4能力(所有者:這原絶夜)
プレイヤーを問わず行動1回につき自分は100ダメージを受ける。



Dホイールの発進、アクセルを踏むこと、強引なドリフト、第1コーナーを曲がること。
先攻ターン開始の宣言、ドローフェイズのドロー。
デュエルに関係する行動、それら全てがダメージとなって襲ってくる。

しかもそれは自分の行動だけではない。

這原絶夜:LP7400→7300→7200→7100→7000


当然ながら川原もDホイールを発進させている。
アクセルを踏んでおり、コーナーを曲がるのも同じ。
また、強引なコース取りで失速したのを立て直すために、ハンドルを回した。


「おいおい、何だそれ!」
「数合わせなんて可哀想だろ!」


観客たちから野次が飛ぶが、大河は笑う。

「やれやれ、誰が数合わせだって? 這原の恐ろしさを、何もわかっちゃいねえな。」

それに呼応するように、Dホイールを運転する這原も言う。

「まったくよ・・・・・・永続魔法《痛み移し》発動。」


痛み移し (永続魔法)
自分がダメージを受ける度に、相手ライフに300ポイントダメージを与える。
「痛み移し」の効果では、このカードの効果は適用されない。



這原絶夜:LP7000→6900
川原静江:LP8000→7700



永続魔法を発動したという行動により、這原は100ダメージ。
だが、《痛み移し》が反射するダメージは300だ。


「あたしは“デッキの枚数を確認する”わ。」


這原絶夜:LP6900→6800
川原静江:LP7700→7400



「・・・そして再び“デッキの枚数を確認する”わよ。」


這原絶夜:LP6800→6700
川原静江:LP7400→7100



「こ・・・これは・・・!」
「そういうことか!」
「なんつー戦術だ!」

こうなってしまえば、誰もが気付く。
デッキ枚数を確認することは、れっきとしたデュエル中の“行為”であり、何回でも行うことが出来る。
遅延行為は反則を取られることもあるが、ダメージが蓄積している以上、これは遅延行為ではない。





「こ、これは《ハネワタ》を使うしかなさそうですね!」

這原絶夜:LP6700→6600


「・・・っ!」

途端に這原の顔が歪む。
ヘルメットの下で、彼女は身が竦む。

「えーと、じゃあ私もデッキ枚数を確認します・・・を66回、繰り返しますね!」

「・・・あ・・・・・・所詮、あたし、マイナスなのね・・・・・・。」


這原絶夜:LP6600→6500→6400→・・・



「波佐間さん、後は頼みます・・・。」


這原絶夜:LP500→400→300→200→100→0



Dホイールが失速し、ピットインした。



◆ ◆ ◆



這原絶夜は、こことは異なる世界で生まれた。
そこは人類の99.7パーセントがマイナス能力を持っている、マイナスの世界。


這文学園は、プラス世界の翔武学園と対を成す、マイナスの学園だった。
あらゆるデュエリストを社会の落伍者と見なす、異常極まりない校風。
偏差値を度外視した独自の勉強方針は、恫喝や性暴力を伴う。

そんな学校で、まともな生徒が育つわけもない。
校内暴力が恒常化しており、レイプ事件も何度か起こっていた。
ある生徒は、妊娠が発覚して退学となり、遠くの病院で堕胎したという。

絶夜は生徒会長として、生徒会メンバーを率いて校内暴力に立ち向かうが、敗北の連続。
罰ゲームとして学校に運営資金を支払わされ、彼女は億を超える借金を背負うことになった。

耐え難いほどの苦境で、絶夜は心が壊れた。元から乏しかった覇気が、殊更に落ちた。
どうせ狂った世界だもの。真剣に生きるに値しない、マイナスの世界。
生まれたときから、この世界は駄目だ。スタートラインにすら立っていない。


しかし、ある少年が生徒会に入ってから、諦念は情念に侵食されていく。

マイナス能力を持たない、無能力者。
傍若無人で二重人格の、喩えるならば吉井康助と正反対な性格。
だが、メタゲーマーという共通点があった。

マイナス能力は普通に考えればデメリットでしかない。
ゆえに絶夜の【強制キュアロジック】は、ライフ回復に主眼を置いたコントロールデッキだ。
だが、少年はデッキ枚数確認で1キルし、それは同時に絶夜に新たな戦術を閃かせた。

勝利しながらも、相手を強化する。それこそが少年の、もうひとつの資質だった。
彼は生徒会を立て直し、教職員をデュエルで支配下に置いた。
そして素行の悪い生徒を次々とデュエルで粛清していった。

やがて這文学園は、有数の決闘進学校となっていった。


だが、幸せな時間は長くない。

異世界から来た“魔王”と、彼女が率いるレベルプラス能力者たちが現れ、そして―――



◆ ◆ ◆



(・・・過去を振り返るなんて、らしくないわね。)

Dホイールから降りて、這原はヘルメットを取り、ロングヘアを外気に晒した。
髪の毛が濡れているのは、汗だけではない。

「あはっ・・・・・・ダメだなあ、あたし。」
「悔しい気持ちがあるなら、デュエリストは大丈夫だぜ。」

今まさにリベンジに燃えている大河の言葉が、這原を慰めた。
そして波佐間が、のんびりとすら感じるほどの緩慢な動作で、Dホイールに乗り込む。

「フフ・・・・・・仇は、取りますよ・・・・・。」




◎チーム・ゾンビタイガー      ◎チーム・ツンデレ

第二走者:波佐間京介 ―――― 第一走者:川原静江
第三走者:大河柾           第二走者:真田杏奈
                      第三走者:リュドミラ




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