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zoom RSS 【とある】 第一位・御坂美琴 (三四) 【パラレル】

<<   作成日時 : 2017/04/13 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



麦野沈利が垣根帝督を敵視する理由は、些細な会話の中にあった。
それはレベル5が集まって訓練していたときのことである。

「どうでもいいけど浜面って誰?」
「よく名前出すけど」

「うちの下っ端よ。」

「どんなヤツなんだ?」

「どんなヤツって・・・こんな。」

何気なく写真を見せた。
それは“アイテム”で撮ったプリクラの1枚だった。

「・・・ふーん」
「冴えねえツラしてやがんな。」
「いかにも脇役って感じのチンピラだ。」

「・・・」
「・・・・・・」

あのとき何故、言い返せなかったのだろうかと、麦野は今でも後悔している。
咄嗟に「自分には言い返す資格が無い」と思ってしまったのが不覚だった。

いつも浜面に投げつけている言葉(しかも直接)に比べたら、何でもないはずの。
垣根とて何気なく言ったであろう、その言葉に、どうしてか深く傷ついて。
その傷を、気にしないようにしていたら、じくじくと膿んできていた。

いつものように自分を棚に上げて、粒機波形高速砲でも撃っていれば良かった。
そうしたら、わだかまりも無くなっていた。それでこそ“麦野沈利”だ。
だから麦野は、遅ればせながら垣根に“言い返す”機会を望んでいた。

恋愛感情などではないと、自分に言い聞かせる。
リーダーとして、仲間を“守れなかった”ことを悔やんでいるのだと。

いや、そんなことは最早どちらでもいい。
麦野沈利は、“麦野沈利”を取り戻す為に戦う。ただそれだけだ。



◆ ◆ ◆



麦野 (クソッ、先手を打たれた!)

どういう原理なのか具体的には知らないが、
“未元物質”で太陽光を殺人光線に変えたらしい。
護送車ごと大破させられ、麦野は大きく吹き飛ばされた。

“原子崩し”の応用で衝撃は殺したが、
スマートな着地にはならなかった。服はボロボロ。

麦野 (かぁきねぇ〜〜〜!!)

麦野 (ブチコロシカクテイネ)

もはや“ピンセット”は、さっきので破壊されたか
既に“スクール”に奪われたかの、どちらかだ。

護衛任務が失敗した今、手加減は要らない。
ただ相手を潰すことのみを考えて、麦野の枷は外れる。

とはいえ、怒り狂っていても馬鹿になっているわけではない。
自分ひとりで垣根に勝とうなどと思いあがってなどいない。

麦野 (今は仲間を気遣ってるときじゃない。)

麦野 (一秒でも早く垣根を殺す。)

アジトに用意しておいた“道具”を使えば、
序列二つの差を覆すことも出来るはずだ。

仲間に頼り、“道具”に頼ることこそ、“アイテム”の戦い方。
奇襲を受けた今、居もしない仲間に“縋る”ことはしない。



垣根 「・・・で、テメェが俺のダンスの相手ってことでいいのかな?」


麦野 「―――っ」

アジトへ向かう道中に、垣根が六枚の翼を広げて立っていた。

垣根 「“どうしてここに”ってツラしてんな。」

垣根 「簡単なことだ。」

垣根 「テメェの仲間、フレンダとか言ったガキが、洗いざらい情報を吐いてくれたよ。」

垣根 「よっぽどテメェが可愛いのか、指を切り落とした程度で、構成員からアジトの場所までな。」

麦野 「・・・そんなフカシ、私が信じると思ってるのかにゃーん?」

麦野 「冗談は顔だけにしろ、エセホスト。」

垣根 「信じる信じないは勝手だが、俺がここまで辿り着いたのが何よりの証だ。」

麦野 「だったら何で、それをベラベラと話したの?」

麦野 「黙ってる方がテメェに有利なはずだろうが。」

麦野 「大方フレンダと私と同士討ちさせようって魂胆だろうけど」

麦野 「そんな常識まみれの戦術、私には通用しねえよ。」

このとき麦野は、フレンダを疑わないわけではなかった。

正直に言えば、五分五分。
言われるまでもなく、垣根がここへ来れたのはおかしい。

麦野は、フレンダのことを、ある意味で信じているが、
しかし別な意味では信じていない。

彼女が暗部にいるのは、妹を守る為だ。
その為なら仲間を売りかねない、そういう女だ。
背後から仲間に刃を突き立てるような真似はしなくても、
命惜しさに仲間を売るくらいのことはするだろう。

それでもギリギリのところでフレンダを信じたのは、
かつて一方通行と戦ったときに、
きっちり指示を守って足止めに徹していたことが浮かんだからだ。

フレンダ=セイヴェルンは、仕事に関して手を抜かない。
そんな彼女のプロ意識を、思い出したからだ。

ほんの僅かな、それ自体は最後の一滴である決め手。
しかし、そうでなかった世界では、麦野はフレンダを殺害している。
垣根の思惑通りに、フレンダを真っ二つにしてしまっていた。

そんなことは、この世界の麦野は与り知らぬことだが、
フレンダを殺した麦野の後悔が、世界を越えて伝わったと、
やや感傷じみた解釈も、あるいは可能かもしれなかった。


麦野 「だいたい何よ、その背中の翼。すっげえ笑えるんだけど。」

麦野 「もしかしてお子様ウケ狙ってんの?」

垣根 「・・・ムカついた。テメェは今ここで殺す。」

麦野 「ハッ、笑わせんなよ。なーにが第二位だ。」

麦野 「能力研究の応用が生み出す利益が基準なせいで」

麦野 「テメェが二位で私が四位?」

麦野 「ここでテメェをブチ殺せば、そんなのカンケイねえって証明できんのかねェ?」

垣根 「ほざけ」

再び殺人光線が麦野へ放たれる。
その正体は、“未元物質”を通過したことで
波長が極端に縮まったガンマ線―――

―――“のようなもの”だ。

麦野 「・・・っ」

“原子崩し”の放射と身体能力で、
麦野は垣根の攻撃を回避し続ける。

だが、じわじわと追い詰められ、
衣服は破れ、血が滲む。

走りながら粒機波形高速砲を連射するが、
それらは垣根に届く寸前で打ち消される。

麦野 (っ・・・!)

“原子崩し”は遮蔽物という概念が存在しない“最強の矛”だが、
それでも決して“無敵の矛”ではない。

“最強”(レベル5)であって、“無敵”(レベル6)ではない。

仮に麦野が1マイクログラムほどの電子を撃ち出したとすれば、
その電荷はマイナス10^21強となる。

これは、およそ二百クーロンに相当し、落雷の二百倍となる。
(フルパワーを出せば“超電磁砲”すら瞬殺できるというのは
この計算に基づいている)
斯様に“原子崩し”は、軽く見積もっても途方もない威力を誇る。

だが、どれほどの威力を持っていても、所詮は電子の塊である。
御坂がやったように、磁場を作れば、容易く曲げられる。

そして―――・・・


垣根 「どうした第四位」

垣根 「追われて震えるだけの子牛で終わってるつもりか?」

未だに垣根は一歩も動いていない。
一歩も動かずに、直立姿勢で飛んでくる。
航空力学の常識が通用しない。
何しろ彼の力は、そんな次元ではない。


“未元物質”は、この世に存在しない物質を現出させて操る。
それでも、質量、電荷、スピンの要素が無ければ、
いかなる物質を作ったところで、この世界に影響は及ぼせない。

だが、そんなものは何の安心材料にもならない。

“未元物質”は、理論上にすら存在しない粒子でも、
彼のスペックの範囲内で、任意の質量、電荷、スピンを
設定することが出来てしまう。

その自由度は果てしなく、有限であっても数え切れない。
垣根が表面的に現出させている物理現象など、
氷山の一角ですらない、溶け出した水滴の一粒未満だ。


“原子崩し”は、どれほど威力が高くとも電子しか操れず、
それすなわち、電磁気力への間接的な干渉こそ出来ても
電荷そのものを変更することが出来ないし、
反物質に属する陽電子を生み出すことも出来ない。

ならば垣根は、同じだけの負電荷を用意すれば事足りる。
麦野の粒機波形高速砲は、なまじ威力が高いからこそ
負電荷による斥力も尋常ではなく、容易く捻じ曲げられてしまう。

それ以外にも、電子と陽子その他で中性子になるような、
電子を吸収して別物に変えてしまう粒子を“設定”して現出すれば、
それだけで粒機波形高速砲は、
丸めた小麦粉にも満たない、ふざけた投擲に成り下がる。

麦野 (クソッタレ)

麦野 (“読めている”が)

麦野 (“追いつけない”)

全く理解不能な力の方が、まだマシだった。
それは垣根自身にとってもオーバースペックであり、
何を出せば何が起こるかを垣根自身も理解できない。
できたとしても、相応の時間や負担を強いる。

だが、質量、スピン、電荷を認識していれば、
自分の望む物理現象を引き起こす為に
どのような物質を作ればいいか逆算できることになる。

それが出来るから第二位。
それが出来るから垣根帝督。

物理学的には全く意味不明だが、
数学的には何ひとつおかしなことはない。

そして“演算”を用いる“能力”は、
物理学ではなく数学の領域である。

垣根 「これが本家本元だ。」

垣根 「これが“未元物質”だ。」

垣根 「つけ上がってんじゃねえぞ第四位。テメェごとき指一本動かさなくても100回殺せるんだよ。」

麦野 (クソが・・・)

言うまでもなく、麦野の操る電子はフェルミ粒子であり、
パウリの排他原理に抵触する。
ゆえに麦野の電子防壁は、同じくフェルミ粒子から成る
あらゆる攻撃に対して、ほぼ無敵の防御力を誇っている。

盾と矛は表裏一体。
“最強の盾”である“一方通行”が甚大な破壊力を持っているように、
“最強の矛”である麦野も、能力の応用で絶大な防御力を得ている。

しかしフェルミ粒子がパウリの排他原理に抵触するのは
スピンが半整数だからであり、スピンが整数のボース粒子は
パウリの排他原理に従わない。

垣根が生み出したのは、フォトンと同じく整数のスピンを持つ粒子。
それこそが六枚の翼から発せられる殺人光線の正体だ。
(太陽光を利用しているのは、演算を省略する為)

フェルミ粒子に対しては比類なき防御力を誇る電子の盾も、
ボース粒子と同じく整数スピン攻撃には悲しいほどに脆弱。
左手に盾を構えているなら、右手を攻撃すればいい。


だが


麦野 「カンケイねえんだよ」


垣根 「―――!?」


“未元物質”が消えた。


麦野 「逆算完了だ、メルヘン野郎。」


左手の盾が役に立たない程度で、
右手の矛が通じない程度で、
“麦野沈利”が収まるわけがない。

逆立ちしても垣根に勝てなかったのは、昔の話。
右手がどうした、左手がどうした。
んなもん無くたって、噛みついてでも喉笛をチギッてやる。

“0次元の極点”という牙が、垣根をバリバリと噛み砕いた。

垣根 「・・・っ」マニアワナイ

麦野 「おはよう垣根」ニコッ

麦野 「そして」

麦野 「オヤスミ」ブゥン

垣根 「 」

“未元物質”のヴェールから取り出された生身の肉体は、
“原子崩し”の前では遮蔽物よりも容易く真っ二つになった。



◆ ◆ ◆



やや時間を前後して、移動中の車。
“猟犬部隊”に守られながら、打ち止めが護送されている。

打ち止め 「あ、絵本があるよってミサカはミサカは目ざとく見つけてみる!」

一方 「そンなもン読んでるときじゃねェぞ。」

木原 「いいじゃねえかアクセラちゃーん。緊張してばっかだと“身が持たない”ぜ?」

一方 「・・・・・・」ソウイウコトカ

これから行うのは、“戦闘”ではない。
それは本来の目的を果たす為に付随してくるであろう、
ただの“とてつもなく厄介な一要素”に過ぎない。

“実験”を前にして、打ち止めの精神状態を少しでも
良好にしておこうという、木原の計らいであった。

もっとも、活きが良い方が実験に好都合という意味であり、
決して木原は、優しさや温情で絵本を用意したわけではない。

一方 「・・・何かと思えば『醜いアヒルの子』かァ。」

打ち止め 「あ、実験漬けだったアナタでも知ってるのねって」

打ち止め 「ミサカはミサカはちょっと意外に思ったり。」

一方 「くっだらねェ。」

一方 「生まれたときから白鳥の勝ちは決まってましたァっつう」

一方 「“素養格付”と同じ、物事を一面的にしか見ねェ馬鹿げた話だ。」

打ち止め 「うーん、『醜いアヒルの子』は、そういう話じゃないと思うよ?」

一方 「あァ?」

打ち止め 「アヒルさんたちと仲良くなりたかった白鳥さんは」

打ち止め 「自分が絶対、彼らの輪には加われない事実を突きつけられて」

打ち止め 「本当に幸せだったのかな?」

一方 「・・・・・・」


木原 「あーあーあーあー」

打ち止め 「!?」

一方 「なァーンなンでーすかァ? 急に間の抜けた声・・」

一方 「 」

木原 「あーあーあーあーっ! アレだアレぇ、アレェ持って来い!!」

部下が用意した“アレ”を持って、木原は楽しげに
いかにも怪しい黄色ずくめの女に狙いを定めた。


爆音が轟き、

そして無傷の女が立っていた。


ヴェント 「良い街ね。」



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