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zoom RSS 【とある】 第一位・御坂美琴 (四三) 【パラレル】

<<   作成日時 : 2017/04/22 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



大切な人を奪われた少年は、うらぶれた目をして街を歩いていた。
自分の中で、ドス黒い感情が増大していくのがわかる。
その感情を押し留めようとする気すら、次第に失せてくる。

解き放ってやろうか。
悪意を。暴力を。理不尽を。

そんなとき彼は、ひとりの少年に出会った。
自分と同じく、大切な人を守れなかった、ありふれた悲劇の持ち主。
うらぶれた目をした少年同士が交差するとき、柔らかい友情が生まれる。

この力は何の為にある。
守れないなら意味が無い。
ただの疫病神だ。

互いに傷を舐め合い、心情を吐露し、急速に心の距離を縮めた。
思えば今まで、互いに友達というものがいなかった。
そのせいもあってか、夜が明けるころには親しい口調で話すようになっていた。
本質的には二人とも、人懐っこい性格で、それも幸いした。


だが、程なくして二人は会えなくなった。

待ち合わせのメールを最後に、少年は音信不通になった。
もうひとりの少年は、このとき心底、自分を疫病神だと呪った。
わかった気になって、共感できた気になっていた、とんだ偽善者。

察しが良すぎた少年は、嫌われたのではなく、何かあったのだと、想像できてしまった。
何かあった、というのは控え目な表現で、もう二度と会えない事態が起きたのだと。

また自分の不幸に他人を巻き込んでしまった。自分は平穏な世界に垂らされた一滴の異物だ。
自分が不幸な目に遭うだけなら耐えられるが、他人が巻き込まれるのは耐えられない。
耐えられない。耐えられない。耐えられない。死んだ方がマシだ。

人を助けられないなら、死んだ方がマシだ。

少年は献身的で破滅的な性質を深めていく。
会ったばかりの少女の為に、地獄へ行く覚悟を決めるほどに。
それから後の人生も、平然と修羅場へ足を踏み入れるほどに。



◆ ◆ ◆



五和 「上条・・・さん・・・・・・」

吹き飛ばされた上条を見て、五和の中で何かが切れた。
頭の中でジャリッと不快な、しかし小気味良い音が鳴り響く。

五和 「・・・・・・敵が何であれ」

五和 「私達のやるべきことは同じはずでしたね。」

テッラ 「・・・」ゾッ

アックア 「・・・」

アックア 「念の為に繰り返しておく。私は聖人である。」

背筋に寒いものを覚えたテッラとは対照的に、
流石に傭兵たる貫録、アックアは落ち着き払っていた。

五和 「・・・」

アックア 「そして“神の右席”としての力も有している。」

五和 「・・・」

アックア 「それを正しく理解した上で、なお守るべき者の為に命を賭して戦うというのならば」

アックア 「私は期待するのである。」

五和 「・・・」

アックア 「その上で、勝つ。」

五和 「・・・」

アックア 「勝負とは善悪ではなく強弱によって決定するものだということを、私は証明するのである。」

アックア 「願わくば、せめて私の―――」

五和 「死ね」

電光一閃、彼女の槍は一直線にアックアめがけて放たれ、
組まれた魔術式によって起爆、容赦ない爆撃をもたらした。

アックア 「人の話は最後まで聞くものではないかね?」

だが、無傷。
当然のように無傷。

彼の傲慢な物言いは、その実力を鑑みれば、遜っているとさえ評価できる。
それほどまでに強いから。圧倒的に強いから。それが“聖人”だから。

たとえ天草十字凄教の総力を以ってしても、アックアには及ばない。
一組織の全体が束になっても敵わない相手に、その一員が挑んで勝てる道理など無い。

そんなの知ったことか。

五和 「・・・・・・話なら、後で聞いてあげますよ。」

五和 「さんざんさんざんさんざんさんざんさんざんグチャグチャのグチャにブチのめした後に!」

五和 「まだ顎が砕けていなかったらの話ですけどね!!」

アックア 「・・・・・・」

アックア 「そこをどけ。私の一撃は威力が大きすぎるのである。」

五和 「くだらない能書きはもういいって言ってるんですよ。」

五和 「かかってきやがれ、傭兵崩れのゴロツキ野郎。」ゾン

アックア 「・・・」

無言でアックアは拳を振るう。
その動きは五和の眼では捉えきれない。

それでも半歩遅れて防御が間に合う。
複数の術式を重ねがけした霊装は、
たとえ二重聖人の一撃であろうとも防ぎきる。


―――はずだった。


五和 「かはっ・・・・・・?」

本来ならば、止められていなければおかしいのに。
たとえ相手が聖人で、神の右席だろうと、
ここまで無抵抗に砕かれるはずがない。

吹っ飛んでいく五和の眼に、その理由が映った。

テッラ 「私を忘れてもらっては困りますねー。」

優先順位が変更されていた。
おそらくは、アックアの拳を上位に、五和の槍を下位に。

衣服の術式でダメージは削ったが、
それでも吹き飛ばされ、背中を強打した。
骨が折れているかもしれない。

五和 「・・・この程度」

たとえ肉片となってでも、上条を守り、敵を殺す。
その覚悟が五和を奮い立たせる。

五和 「メキャメキャのメキャにブチのめして―――」


そこへ無慈悲な小麦粉の弾丸が放たれた。


五和 「かぐっ・・・」

テッラ 「私の“光の処刑”は未完成ですが」

テッラ 「“幻想殺し”でもない限りは、私の小麦粉は防げませんよー。」

上条に圧されていたテッラが、その本領を発揮し始める。
彼の得意とする間合いは、中距離にこそ。

どこへ逃げようとも“追尾して”貫通する、
その絶対性では、“原子崩し”による電子光線すら凌駕する。

延髄を破壊された五和は、そのまま崩れ落ちた。

アックア 「・・・」

無言のまま、アックアは上条を絶命させるべく歩き出す。

アックア 「・・・む?」

信じがたい光景をアックアは目にしていた。
聖人の力で殴り飛ばしたはずの上条が、起き上ってこちらを見ている。
揺るぎない意志を眼光に秘めて、こちらへ向かってくる。

テッラ 「頑丈ですねー。」ヤレヤレ

アックア 「苦しみが長引いただけである。」

次の瞬間にも、アックアは上条までの距離を縮め、
豪腕による一撃を繰り出していた。

右手は再生しているものの、
もはや上条にアックアの攻撃を防ぐことは不可能。
逃れきれぬ死が迫っていた。



しかしこれは、ありふれた悲劇の物語ではない。



??? 「人のダチに何してやがるクソボケ」



三流の悪党ではいられない。
二度と悲劇は繰り返させない。

一流のヒーローになって、喜劇を滑らかに歌い上げてやる。



??? 「俺の“未元物質”に常識は通用しねえ。」



そこにあったのは、巨大な冷蔵庫だった。

アックアの拳は冷蔵庫の扉に阻まれ、上条に届かなかった。



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