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zoom RSS 【とある】 第一位・御坂美琴 (四四) 【パラレル】

<<   作成日時 : 2017/04/23 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



上条と親交を深めてからも、垣根の心は負の進行が止まらなかった。
際限なく膨れていた憎悪は、緩やかになっただけで、増殖を止めていなかった。
かけがえのない人たちを失った悲しみを呑み込めるほど、傷の舐め合いは万能ではない。

“幻想殺し”が質量を消せないように、“未元物質”が無尽蔵であっても無限ではないように。
心に傷を負った者同士の、運命的な出会いから始まる友情も、決して万能ではない。
既に閾値を超えていた闇は、どっぷりと溢れ出し、垣根の身も心も引き裂いた。

現れたのは、もうひとりの垣根。元の垣根の中にある、憎悪と暴力の顕現。理不尽の塊。
元祖の垣根に、勝ち目は無かった。分離したときに、力の大半を分身に持っていかれた。

体の何割かと、内臓の幾つかも奪われて、いびつで不格好。
これではどちらが本体だか、わかったものじゃないと、垣根は自嘲した。
自分が死ぬのがわかった。恋人の顔が浮かんできた。友人の顔が浮かんできた。

垣根帝督は人としての生涯を終えた。



- - - - - -



復活した自分が、元の自分と同じなのかは定かではない。
自分は人間とは別の生き物、いや、この世のものではない存在に、なってしまった。
しばらくの間、脳を分割された状態で、最新技術を用いて生存させられていたと聞いた。

彼を目覚めさせたのは、ひとりの少女。
脳内の電気信号に干渉し、垣根の意識を閉ざされた奥から引きずり出した。

『レベル5同士、仲良くしましょ?』

そう言って笑った少女は、自分とは別の意味で人ならざる存在のように思えた。
だが、ある意味では彼女は、そして自分も、人間らしい部分が残っていた。
大切な人を守りたいという意志だけは、あった。人でなしになっても。

『お願い、当麻を助けて―――』

言われるまでもない。



◆ ◆ ◆



垣根(冷蔵庫) 「俺の“未元物質”に常識は通用しねえ。」

それは奇妙な、なんとも珍妙な光景だった。
科学の街の家電から、天使の翼が生えている。

上条 「かき・・・ね・・・?」

垣根(冷蔵庫) 「体に違和感ねえか?」

垣根(冷蔵庫) 「“未元物質”で無理やり繋いだから」

上条 「いや、大丈夫だ・・・。」

上条 「・・・それより垣根、お前、何で冷蔵庫に?」

垣根(冷蔵庫) 「あー、かいつまんで話すと、しばらく死んでて、昨日復活したばかりなんだわ。」

上条 「・・・そっか。」

よくわからないが、上条は柔らかく笑った。
詳しいことは後で聞けばいい。今はこれで十分。

テッラ 「おかしいですねー。」

テッラ 「“幻想殺し”は、あらゆる異能を打ち消してしまう。」

テッラ 「欠損を補えるはずがないのですがねー。」

垣根(冷蔵庫) 「おいおいオッサン、調査不足だぜ。」

垣根(冷蔵庫) 「俺の能力は、この世に存在しない物質を現出し、操る。」

垣根(冷蔵庫) 「“操る”ってのがミソでな。」

垣根(冷蔵庫) 「補ったわけじゃなくて、繋いだんだ。」

垣根(冷蔵庫) 「“幻想殺し”は異能そのものを打ち消しても、結果までは打ち消せねえ。」

垣根(冷蔵庫) 「そしてムカついた。」

垣根(冷蔵庫) 「お前ら揃ってムカついた。」

垣根(冷蔵庫) 「行くぜ親友」

上条 「おう」

垣根(冷蔵庫) 「奴らの常識を」

上条 「ぶち殺す!」


アックア 「・・・」

アックア 「この後方のアックアを、そこらの“神の右席”如きと同列に見てくれるなよ。」

テッラ (酷い物言いですねー)

だが、テッラは口に出さない。
相容れない思想を持つ間柄だが、その力に対する信頼は
ヒーローと呼ばれる者たちと何ら変わらない。

5000トンを超える水が、天空を覆っていた。

上条 「・・・ッ」

学園都市で最もレベル5に近いレベル4と言われる結標淡希でさえ
操作できる質量は5トン程度が限度である。

だが、アックアは水限定とはいえ、その1000倍の質量を操作する。
しかも容易に状態変化を可能とする。

垣根(冷蔵庫) 「それがどうした?」

アックア 「・・・」

垣根(冷蔵庫) 「言ったはずだぜ」

垣根(冷蔵庫) 「俺の“未元物質”に常識は通用しねえ。」

アックア 「その言葉が口先だけの大言壮語でないことを」

アックア 「証明してみるがいい。」

すぐさま5000トンもの水量が、垣根と上条を襲った。

分身と麦野の戦いで示されている通り、
物量を消すには相応の“未元物質”を必要とする。

そして質量であるがゆえに、“幻想殺し”でも打ち消せない。
操作は打ち消せても、迫り来る水に飲まれてしまう。


しかし今の垣根は、喜劇のヒーローである。


垣根(冷蔵庫) 「証明?」

テッラ 「・・・ッ」

アックア 「・・・」

垣根(冷蔵庫) 「誰に向かって偉そうな口きいてんだボケ」

垣根(冷蔵庫) 「たった5000トンで“未元物質”をどうにか出来るとでも思ったかよ。」

アックア 「・・・」

無言で殴りかかるアックア。
しかし嘲笑うかのように通らない。

薄い膜のようなものが張ってあり、
それは恐らく“未元物質”であった。

垣根(冷蔵庫) 「テメエのパワーは確かに凄えよ。」

垣根(冷蔵庫) 「学園都市にはレールガンを喰らっても無事な根性馬鹿がいるが」

垣根(冷蔵庫) 「テメエと勝負したら瞬殺されるだろうぜ。」

垣根(冷蔵庫) 「この俺でさえ、力比べでは絶対に勝てない。分身でもしねえ限りはな。」

二度と分身はしないと決めている。
その分身が、災厄を振り撒く理不尽とならない保証は無い。

垣根(冷蔵庫) 「だがな、この俺と“力比べ”の領域に持って行けるのは」

垣根(冷蔵庫) 「レベル5の中でさえ3人しかいねえんだよ。」

垣根(冷蔵庫) 「テメエが今の万倍の力を持っていても、“未元物質”には通用しねえ。」


垣根(冷蔵庫) 「“ヒッグス障壁”。」


垣根(冷蔵庫) 「現出した“未元物質”を操作して、ヒッグス場そのものを障壁として用いる。」

垣根(冷蔵庫) 「ヒッグス場の質量は、対応する粒子の千兆倍―――」

垣根(冷蔵庫) 「―――の、そのまた千兆倍の、千兆倍の、千兆倍だ。」

垣根(冷蔵庫) 「わかりやすく言うと、この1グラムにも満たない“未元物質”の膜は」

垣根(冷蔵庫) 「この宇宙の質量を凌駕するヒッグス場を背景にしている。」

垣根(冷蔵庫) 「たとえテメエが地球を真っ二つに砕くことが出来ようと」

垣根(冷蔵庫) 「この“ヒッグス障壁”はビクともしねえってことだ。」

垣根(冷蔵庫) 「絶望したか?」

アックア 「・・・」

テッラ 「ぺらぺらと自分の能力を人に解説して」

テッラ 「弱点を晒すことになりますよー。」

テッラ 「優先する。“未元物質”を下位に、アスカロンを上位に。」

アックア 「なのである。」

垣根(冷蔵庫) 「心配ありがとう、自覚はある。」

砕けるはずだった“未元物質”の膜は、
アスカロンの一撃を以ってしても震えもしなかった。

上条 「言ったはずだぜテッラ。」

上条 「お前の“光の処刑”は、お前が認識できるものしか順位を変更できない。」

上条 「“未元物質”は、質量、電荷、スピン、位置、運動量を持ってるが」

上条 「それ以外の要素を持たないって、誰も言っちゃいねえぜ?」

上条 「今挙げたのは、“この世界に影響を及ぼす為に必要な条件”であって」

上条 「この世界に影響を及ぼさない要素を適当に設定すれば」

上条 「それらをひっくるめて認識するのは不可能だ。」

上条 (鈴科なら出来るかもしれないけど)

テッラ 「・・・ッ、異教徒が・・・ッ!」

アックア 「落ち着くのである、テッラ。」

垣根(冷蔵庫) 「さてと、そろそろ攻撃に移るぜ。」

上条 「ピッチャー上条、背番号13、“その幻想をぶち殺す”」

上条 「大きく振りかぶってぇ、投げましたあ!」

投げられたのは、野球ボール大の“何か”。

アックア 「―――っ」

それは瞬間的に膨れ上がり、大爆発を引き起こした。
さしものアックアも自分を庇うだけで精一杯。
視界の隅で、テッラが上半身だけになっているのが見えた。

テッラ 「・・・っ、どう・・・して・・・」

垣根(冷蔵庫) 「お得意の“光の処刑”で咄嗟にダメージを削ったのか。」

垣根(冷蔵庫) 「褒めてやる。だが足りねえな。」

垣根(冷蔵庫) 「上条が投げたのは、二重構造の“未元物質”だ。」

外側に質量の小さな“未元物質”を使い、
内側に沸点の低い“未元物質”を大量に詰め込む。
それを上条が右手で投げると何が起こるか。

“幻想殺し”は異能なら何でも消すことが出来るが、
かつて“ヨハネのペン”と戦ったときなどに示される通り、
威力が高ければ打ち消すのに時間を要する。

それは“未元物質”を打ち消すにも
質量に比例した時間がかかるということであり、
右手で投げれば外側の部分だけが先に消える。

すると内側に圧縮されていたガスが解き放たれ、大爆発を起こす。
アックアが水を操作し、状態変化を用いて
爆発を起こすことが出来るのと、同じ理屈である。

垣根(冷蔵庫) 「これが“幻想殺し”だ。」

垣根(冷蔵庫) 「あらゆる異能を打ち消すから、能力とコンボできないと思ったか?」

垣根(冷蔵庫) 「悪いが」

垣根(冷蔵庫) 「俺の“未元物質”に、そんな常識は通用しねえ。」

垣根(冷蔵庫) 「“この垣根帝督を、そこらの能力者ごときと同列に見てくれるなよ”。」クカカ

腕試しだとか、気に食わないとかで、
突っかかってくる程度の能力者とは違うと、
このコンボで証明してやった。

・・・気分が良い。

垣根(冷蔵庫) 「たかが十字教の常識ごときに縛られてるテメエらには、上条は悪魔にしか見えねえか?」

垣根(冷蔵庫) 「聖なる加護を打ち消し、世界を不幸に巻き込む、疫病神にしか見えてねえのか?」

垣根(冷蔵庫) 「ふざけんな。」

垣根(冷蔵庫) 「テメエらの大層な“救い”から零れ落ちたヤツを」

垣根(冷蔵庫) 「上条は右手ひとつで救ったんだ。」

意識を取り戻したとき、御坂から聞いた。
夏休みに、闇咲逢魔の大切な人を呪いから解放したことを。

それは上条当麻の、華々しい活躍の数々からすれば
埋もれてしまいそうな地味なエピソード。

しかし垣根は、その話が他の何よりも嬉しかった。
きっとそれは、上条が自分の能力を好きになれた瞬間だと思ったから。
ただ“役に立つ”と思うだけでなく、好きになれたと思うから。

垣根(冷蔵庫) 「人を救うことに酔ってんじゃねえぞチンピラ。」

垣根(冷蔵庫) 「地上の住人を天国に連れて行くことしか出来ねえ奴が」

垣根(冷蔵庫) 「地獄の底から“罪人”を引っ張り上げた上条を」

垣根(冷蔵庫) 「上から目線で見下してんじゃねえよ。」

アックア 「その少年は――」

垣根(冷蔵庫) 「御託は聞き飽きたって言ってんだよ。」

アックア 「・・・」


垣根(冷蔵庫) 「「死ね」」


それは二重の声だった。


五和 「“聖人崩し”―――」

アックア 「ッ!?」

それは天草十字凄教が独自に編み出した、聖人専用の術式。
聖人に対してのみ絶大な威力を発揮する、ピーキーな魔術。

そしてアックアは単なる聖人ではない、二重聖人。
並みの聖人を凌駕する力を持つ反面、聖人の弱点も何倍にもなる。

アックア 「が―――」

アックア 「あ―――」

吹き飛ばされたアックアは、体内で魔力が暴走し、
アビニョン市街の大半を粉微塵にするほどの大爆発を引き起こした。

アックア (―――――)

瓦礫と共に空中を漂うアックアには、もはや戦う力は残されていなかった。
それに向かって垣根は、勝者の笑みを浮かべながら告げる。

垣根(冷蔵庫) 「俺も上条と同じだ。」

垣根(冷蔵庫) 「自分の能力が、真っ白な世界に黒い滴を落とす異物だと」

垣根(冷蔵庫) 「あってはいけない能力だと、悩んでいた頃があった。」

垣根(冷蔵庫) 「だが、俺の能力を医学に使いたいって奴らが現れて」

垣根(冷蔵庫) 「俺の能力は異物であると同時に、人を救えるんだって自覚した。」

垣根(冷蔵庫) 「その五和とかいう女を治療したのが俺なのは言うまでもねえ。」

垣根(冷蔵庫) 「上条に投げさせた“未元物質”は、気化すると迷彩の役目になる。」

五和 「ちなみに」

五和 「砕かれた槍では“聖人崩し”を使えないなんて、言った覚えはありませんよ。」

槍は砕かれても、術式は砕かれていない。
そのことに気付けたのは、テッラの“光の処刑”が
一度につき一つずつしか順位変更できないことを
上条の説明で聞いていたからであった。

すなわち術式は維持されながら、槍だけが砕けている。
実に奇妙な現象だが、それこそが“神の右席”たる所以。
そのピーキーな特性ゆえに、アックアの敗北に繋がった。


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