佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   螺旋の夢

<<   作成日時 : 2017/05/15 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



あたしは囚われていた。

暗い牢獄のような場所で、あたしは男たちの慰みものになっていた。
いつからだったのか覚えていない。物心つく前からか、後なのか、そんなことは些細なことだ。
ここは地獄で、そのときのあたしは、それすらもわかっていなかった。
最初の記憶は醜い男の顔で、性器を貫かれる苦痛で、自我と共に芽生えた恥辱だった。
性器にも尻にも、口にも、男の性器や指や手を入れられた。それ以外のものも入れられた。
道具や物体は、鼻や尿道にも入れられた。男たちは面白がっていた。
きもちわるい。きもちわるかった。
行為そのものも、それ以上に、男たちが軽々しいのが気持ち悪かった。
まるで便所で用を足すときに面白がって飛沫を飛ばす程度に、あたしを苛んだ。
何よりも、そのときのあたしが、何もわかっていなかったことが、今となっては気持ち悪い。最低に。
わからないまま始まって、わからないまま続く。それこそが何よりも最低で、取り返しが付かない。
生まれたままの心で、生の、裸の、無垢な心で、世界の暴虐に晒された。
未だに自分自身の傷の深さすら、あたしは知らない。
予想だにしていなかったことで、思いもよらぬことで、深く傷ついて叫び蹲る。
跪き立ち上がるまでの間、あたしは混沌の渦の中にいる。
心は渦巻く。めまぐるしい。
世界はそっとしておいてくれない。
男たちは思い出したくもない下卑た言葉で嘲笑し、あたしの心を虐殺する。
鼻に動物の血を流し込まれ、咳き込んだら鼻水と血が口からも出た。
男の精液を次から次へと口の中へ流し込まれ、飲むように強要された。吐き出そうとすると殴られた。
腹が下り、汚物が尻から溢れ出す。男たちの嘲りが聞こえる。
きもちわるい。くさい。
吐きそうな気分で頭を垂れると、引っ掴まれて汚物の中に突っ込まれた。
いやだ、やめろ、いやだ、やめろ、きもちわるい。
どれほど懇願しようが、どれほど拒絶しようが、嵐は止まない。
彼らにとっては懇願でも拒絶でもない。何でもない。
真冬の川に落とされて、汚れを落とされた。
よごれている。心が汚れている。
無垢な心ほど、忙しない暴虐で滅茶苦茶に汚れてしまう。
あたしは気付いていなかった。自分が汚れていることも、汚されていることも。
子宮に精液を注がれて、妊娠して、堕胎して、妊娠して、堕胎して、繰り返すと子供が産めなくなっていた。
土に埋めた子供の数は、どれほどだったか覚えていない。死んだ死んだ、いなくなった。
男たちは、妊娠の心配が無くなると言って、良かったな、と笑った。
それが良いとか悪いとか、屈辱だとか独善だとか、それ以前に男たちが言ったことすら理解してなかった。
あたしは何も知らなかったのだ。掛け値なしに物知らずで、白痴の愚鈍、家畜の身分だったのだ。
人間以下、人間未満、人間より下の、家畜。けだもの。畜生。
あたしは畜生として生まれた。

あたしは世界から、意識しきれない暴虐を受けた。
あたしは世界に何も出来ない。
あたしと世界は一方通行の関係。
世界はあたしに関係してくるけど、あたしは世界に何ら影響を与えない。
そういうものだとさえ、あの頃は思っていなかった。
世界とは、こういうものだと、そんな思考さえ抱かなかった。家畜は世界を認識しない。
今でも畜生のままで、人間でない。
あたしは人間だと主張しても、世界が畜生だと突きつける。時に有言に、時に無言に。
あたしは人間だ。あたしは人間だ。あたしは人間だ。あたしは人間だ。
ああ虚しい。あたしは畜生だ。こん畜生め。
いつでも渦巻いている気分だ。頭の中で渦が回っている。ひっきりなしに。やかましい。
心臓が痛いのは、心臓の近くが痛いのかもしれない。臓器でなく、心が。
痛みにも種類がある。この痛みを何と表現すればいいんだろう?
この息苦しさを何と表現すればいいんだろうか?
息苦しいのは生き苦しい。生きてるだけで苦しい。死ぬのは恐い。恐い?
死ぬのは恐いのだろうか。死ぬのは恐くない。
本当に恐いことは、あたしが死んでも世界は何ともないということだ。
あたしが死んでも、世界は掛け値なしに揺らぐことなく回り続ける。そんなのは嫌だ。
恐いのではない。不安でもない。嫌悪であり、拒否であり、怒りであり、憎悪なのだ。
嫌悪を束ねて拒絶して、怒りを束ねて憎悪を純化させる。感情の収束。そういう作業。
無知蒙昧な畜生が、高尚で小難しいことを考えると、極端だ。
けれども愚かしく極端であることは、振り返って初めてわかる。
誰もその場では気付けない。後からでは何とも言えるし、傍からでも何とも言える。野次馬なんか死んじまえ。
わかったときには、もう遅い。愚かしく極端であることが、平常で恒常になっている。
そういう風に自分を組み立ててきたのだから、そういう風にしか生きられない。
人間でも人間でなくても、組み立てた風にしか生きられない。
組み立てたものを崩すということは、すなわち死を意味する。
壊れてしまえ。くだらないものなら。
世界に省みられず、世界に潰される程度のものなら、歪んで軋んで壊れてしまえ。
けれどそれは、世界についても同じことなのだなぁ。
世界について知ってしまったら、世界を壊すことも考えるんだ。
生きていても苦しいだけなら、死んでしまえ。
死ぬのが恐いなら、誰かを道連れにすればいい。命でも、感情でも。子供でも、悲しみでも。あるいは別のでも。
自分が死んでも世界が滞りなく回り続けるのが恐いなら、悔しいなら?
そのときは世界を道連れにする。
自分の死と、世界の死は、平等で等価だ。
あたしが死ぬときは、世界も滅ぼしてしまえ。



『みゃはっ♪ みーっつけたー♪』

そのとき確かに空間が裂けたように思ったのだ。
後から記憶を振り返って、そう形容するだけで、実際どう感じて何を思ったのか、正確には表現できない。
そういうものだろう。感覚を言葉で表現すると、何かしらズレるものだ。
ただ、少なくとも彼女の声が、かつてない新しいものに聞こえたのは確かで、確かに新しかったのだ。

『ナッキーみーっけ。ほぉら、言った通りでしょ間山くん?』

その女は百姓姿をしていたが、垢抜けた外観は百姓のものではなかった。
説明するまでもないか。あたしの姉、月島禍音だ。つきしま、かのん。あるいはメアリー。あるいは別の。
つぎはぎの服に身を包みながらも隠せない凹凸の体型、童顔。金糸の織り成す髪。
不気味なほど華奢で、子供のままの笑顔。しかし決して子供じゃない笑顔。

『・・・・・・。』

隣の男は精悍な顔立ちと逞しい体つきの青年で、あたしを虐げた男たちとは違って見えた。
男だから共通するところもあるだろう、本質は違わないのかもしれない。
しかし、あたしは、共通部分を以って全てのように言うのが許せないほど嫌いなのだ。
許せないことが多いと、生きるのが苦しい。世界は許せないことが多すぎる。死に近くなるほどに。

『・・・とにかく、安全な場所へ運ぼう。俺が運んでいいのか?』

男は憮然とした表情で黙っていたが、ややすると口を開いて打診した。
それは男が女を労わるというよりは、兄の妹に対する態度であり、実際あたしの兄なのだ。
間山月人。まやま、つきひと。あるいはベール・ヘニルド。あるいは放浪者。ゲリルの住民。


おとこたちはあたしをなぐりりりりけ

っっかくうああああ
あく

lllllllll


きーちちちちちちち


どうも記憶が混濁する。つつーつつつつつっつくくくくつつつつつつつ
つつつつつつくくくあたしの意識に過去と現在の区別が無いからだろう。失われているのだ。
もしかすると未来との区別すら感じていないかもしれない。
今が、いつで、もちろん何年の何月ということはつつつつつつつ
過去の出来事も現在の出来事も、混ぜこぜに再生されて臨場感あふれる体感。
あたしの世界とは、およそ脳内だけで完結しているのかもしれない。傲慢ではなく能力の欠落だ。
くくくくくくくつつつくく過去と現在を区別する能力が欠けている。明日の次に今日がある。
今が、いつで、もちろん何年の何月ということはああああああああ
今日の次に明日があり、明日の次に明後日がある。
一昨日の次に昨日があり、昨日の次に今日がある。
1日は1日、1年は1年。巡り巡っていく。
そんな不確かなことを、どうして誰もが疑いようもなく信じていられるのだろうか?
1日が2日だったり35時間だったり1時間だったり1年も前にあったことが明日にくくくくくくくくくつくくくくくく
今が、いつで、もちろん何年の何月ということはllきききききききききlllllllll
おにいさんおにいさん
きるるるるる
ねえさんが
時間の連続性というものは、あたしにとっては不確かなものだ。
今日の次に昨日が来たり、来年の次に10年前が来たりするのだから。
助けられた後で、助けられる前になるし、カノンと喋った翌朝に男たちに犯されている。
本当は連続性など無い。客観的な時間は断続的でも連続性を持っているが、人間の認識は別だ。
あたしは人間だ。あたしは人間だ。あたしは人間だ?
獣は時間の感覚が乏しいというが、あたしは畜生だから人間のような時間感覚が無いのだろうか。
それが先天的なものか後天的なものかという議論は、あたしの状況を変えるかどうかという点では無意味だ。
せいぜい学者の溜飲を下げる分析というものに終始し、あたしとは無関係だ。
時間感覚が欠落してると恐いものだろうか。
それが当たり前だから、それが恐いと思っているのかわからない。恐いのかもしれない。平気かもしれない。
あたしは知らない。わからないのだ。大部分が混沌に渦巻く闇の中だ。自分のことさえも。
あたしは時間がわからない。そんなはずはない。あたしは人間だ。
今が、いつで、もちろん何年の何月ということはははははははははははははわわわわわ
今が、いつで、もちろん何年の何月ということはああああああ
今が、いつで、もちろん何年の何月何日何時何分何秒コンマ何何何何何何何何何何何阿阿阿あああ

つぴーーーーーーーーーー
きいいいいいいいいーーーーーー




ぐーーーーーーー
ぎょうぎょうぎょうぎょう


『私はカノン♪』

『俺はベール。』

『あたしは・・・』


思えば名前とは何なのだろう。多くは自我が芽生える前に名付けられるそうだが、何の意味があるのだろう。
これはつつつつ単なる疑問で貶してるわけではないつつつくくくく
名前に違和感がある。
あたしの名前は、あたしにとって違和感がある。
無いのか?
これを違和感と呼ぶのかも、わからないのだから。
わからない。わからなかった。今でも殆ど。

つぴーーーーーーーーー
きぃいいーーーーーーーー

かかかかか

くくくちちちちちちちちllll

いーーーーーーき


が、ぐえっと、あ、えええええええーーーきぃーーーーーーー


『私はカノン♪』

『俺はベール。』

『あたしは・・・』


きいいいいいーーーーーーーぃい



が、くあっは、かllllいいいいいいいいいい

もー、ぴいいい



何も知らなかった。
自分が何も知らなかったことさえ知らなかった。
あたしの名前は渦宮夏生。うずみや、なつき、だ。
あたしは知った。あたしは知らなかった。
あたしは、知らなかったことを知った。
世界は広いってこと。
こんなにも世界は広いってこと。

知ってしまったら怒りが湧いた。
知ってしまったら憎しみが止まらない。
あたしは世界を滅ぼす為に生まれてきたのだと思った。



おとこたちがllllくくくつつつつつつつっつつううつつつつつ

ーーーーーちぃーーーーーーーー


あ、まめめめめめきぃーーーーいーー



どうもノイズが酷い。



『私はカノン。あるいはゾーク。この世界を創った神様の、最初の子供だよ。神様の娘で、長女なの。神様の娘で妹で息子で弟で他人で兄で母親で恋人で友達で父親でイトコでハトコで叔父で叔母で、永劫回帰の敵対者♪』


のつぃーーーーーー
きぃーーーーー


『私は敵なの〜♪ 味方だけどね?』


『あたしは? あたしは渦巻く女。体が渦を巻いている。』

比喩表現ではない。カノンも間山月人も、あたしの手足や唇や胸や脚や周りが、渦を巻いてるように見えると。
あたしは渦巻く女。あたしは人間。あたしは畜生。
カノンはガキで、月人にいさんは人間。その下に地獄。あたしが続いて畜生。地獄の姿が見えない。

『あー、彼なら1200年くらい前に、ちょっと地獄へ還っちゃったの。早く戻ってこないかなー。』

『戻ってきてほしいですね。俺にとっては大事な弟で、大事な・・・いや、どんな言葉でも顕すことが出来ないな。この世の言葉では、これから未来に誕生する、ありとあらゆる言語や表現でも、どうやったって顕すことが出来ないんだろう。言葉では無理だ。間接的にしか。ったく、ままならねえな。だから面白いんだが。』

絶対能力者ならぬ絶対決闘者は、激しい人類愛を持つ男は、そうして笑みを浮かべた。
それは理解できない。したくない。
ままならないことが、どうして面白いのか。これは侮蔑だ。怒りだ。悲鳴だ。
どうしようもない世界。その認識は月人も同じだ。けれど評価が正反対。
どうしようもない世界だから、革命し甲斐があると、冗談か悪夢みたいなことを、真面目に考えていた。
どうしようもない世界の、どこが面白いのだろう。
どうしようもない世界の、何に価値を見出したのだろう。わからない。わからないんだ。
どうしようもない世界の、何が。
面白くて、どうにかなるというのなら、どうしようもない世界という言葉の意味から違っているんだ。
きっと本気で世界を憎んでいない。憎悪の種類が根本的に違う。相容れない。

『みゃはっ♪』

相容れない。
そう言ったら、カノンは笑った。

『そう、相容れないことが重要なんだよ。みゅふふ、これは秘密にしとこっかな。それとも教えちゃおうかな。過去現在未来が渦巻く混沌に首っ丈のナッキーには、言っても言わなくても同じことかもしれないけれどね。』


あ、くくくくくくlllll

『人類は世界の癌細胞でしかないって論を聞いたことは・・・あれ、無かった? あー、私も過去が多いからなー。まあいいや、その癌細胞なんだけど、ごくい


きぃーーーーーーーー

きぃいいーーー


だ、ええええええええええええかかかかかきぃ



『私はカノン♪ あるいは・・・』



『あたしは世界を滅ぼす為に



きぃーーーーーーーーーー
llllllllllll



あたしは囚われていた。

解放されたとき、胸いっぱいに吸った空気の感触を、あたしは忘れない。
世界が目まぐるしく変わっていった。変わったのは認識だ。
構築した。
あたしは構築された。
どれほど世界は広いんだろう。
世界の広さをわかった気になっても、隣人の人生すら追うことが出来ない。
宇宙の果てを眺めても、頭の中に宇宙を飼っていても、世の中の何かはわかっていない。
わかっていない。わかっちゃいない。あたしは何も知らないし、何も知らないことも知らなかった。
知ってしまえば想像が膨らむ。凄い勢いで世界を想う。
現実は想像より常に、のっぺりしている。

きぃーーーーーーーー

渦が巻いている。渦巻く。螺旋。

ああ嫌だ、ざわざわする、きもちわるい、くさい、さむい、きしょくわるい、はきそうだ、はきそうだ。
自分が愚かで極端だと知っていても、止まらない。
自分が自分の思い通りになるものか。なると思っているのか。
頭で考えたように自分を動かせるなら、こんな世界になっているのか? 性悪説か?
どれほど愚かで身勝手で、傲慢で救いようがない幼稚な戯言だとしても。
この心が叫ぶ確かな思いは、誰にも邪魔などさせるものか。
邪魔する奴はくたばれ。一寸先の闇で死ね。
嫌悪も憎悪も叩き売り、程よく巡ったところで買う。
反吐を散らして腐ったところを啜り上げる、阿呆の行為だ。馬鹿だ、馬鹿だ、馬鹿だ。
それが未だ老いてない証明でもあるのだなぁーーーーーーーーー

あはははははは!


歌え、自殺の聖歌を。
謳え、高らかに欺瞞を。

世界を渦巻く混沌に沈める、螺旋の夢を見よう。

きっと、楽しいよ。




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