佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   番外編 電脳遊戯の交響曲 (3)

<<   作成日時 : 2017/05/07 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



たとえば

こんな人間がいるとして



◆ ◆ ◆



高見沢円:LP400、手札0
場:
場:DNA改造手術(永続罠)

膾有雨:LP7100、手札0
場:裁きを下す者−ボルテニス(攻2800)、堕天使マリー(攻1700)
場:コート・オブ・ジャスティス(永続魔法)、DNA改造手術(永続罠)



「かはっ、かはっ、かはっ・・・・・ああっ!」

わたしは咳き込むように呼吸して、がっくりと膝をついた。
頭が真っ白になるというのは、こういうことかな?
景色が、いつもの景色でないような、正常であるのに歪んでいるような、わからない。

「わかんないな。私からも質問いい?」
「・・・・・・。何・・・?」
「というか、お前もうサレンダーすれば。闇のデュエルといっても、負けたら死ぬレベルに設定してないし。」
「誰がっ! 誰がサレンダーなんかするもんですか!」
「それだよ、それが私わかんない。我が身を省みずに誰かを守るって、理解できても納得できない。」
「そうよね、あなたなんかにはわからないわよね! 人の体を、切り売りして平気な人には・・・。」

シィハの体、あなたたちのような人種に、くれてやるわけにはいかない・・・。
彼女の体は、彼女のものだ!

「あのさ、わからないから質問してるんだけど。人を守るって、どんな気持ち?」
「あなたこそ、人を守ろうって思ったことはないの? どこで慈しみの感情を失ってしまったの?」
「・・・・・・。」

沈黙は10秒ほどだっただろうか。

「・・・幼い頃の話だけど、私は事故で大怪我を負って入院したらしく、父親が借金して入院費を払った。大した額でなくても、借金は借金。次第に利息が膨らみ、父親は過労で倒れた。母親はパートタイムでは間に合わず、主婦売春やって、それでも利息が間に合わないから、地下デュエルに手を出して、人体解剖ショーの素材になったらしい。やがて父親が死んで、売春組織を幾つか渡り歩いた後、カンサーに拾われて、“運営派”の一員として裏方スタッフやってるの。」

・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
言葉も出なかった。
酷すぎる。
こんな現実があっていいのか。
嫌だ。
吐き気がする。
寒気がする。
嫌だ。
こんな人生を送ってきた相手に、何と言えばいいんだろう。

「何か同情してる? そういう話じゃないんだけど。このせいで歪んだとか絶望したとか、そういう評価は見当違いなんだけど。私は学んだだけ。この世界は、人間の肉が切り売りされる世界だということを。人体解剖ショーだって、カンサーのやってたことで、私それを承知でカンサーに入ってるんだし。」

違う。この世界は、そんな世界じゃない。
そう言いたかったけれど、声が出ない。

「臓器移植って、要するに人肉の切り売り。お高い生肉を売り買いして、腹ん中に収める。生体機能がストップすれば鮮度が落ちるから、生きてるうちから輸液をダブダブ入れて臓器を新鮮に保つんだ。ブクブク膨れた体は人間とは思えないというか、同一人物とは思えない。毎回そう。」

「げえっ・・・!」

思わず吐きそうになった。
気持ち悪くて涙が滲む。

「シィハは死んでないって言ったな? それ、正解。現代医学で確実な脳死判定なんか出来るわけないだろ。こちとら、生きてること承知で臓器かっぱらってんだ。私が特別に残酷ってわけでもない。カンサーに所属してるか否かに関わらず、みんな私みたいに平気で人を殺してる。残酷でもないし、特別でもない。こういう世界なんだと理解して、生きてる人間を切り刻むお手伝いを仕事にしているだけのこと。真剣に、真面目に、それなりに、働いてる。」

相容れない。さっきとは違う意味でそう思う。
この人とは生きてきた“世界”が違いすぎる。
わたしは今まで、何て恵まれた世界で生きてきたんだろう。
昨日と同じ今日が来ることを疑いもせず、闇雲に未来を信じていた。

わたしが恵まれていたのは、裕福な家に生まれたとかではない。
世界に蔓延する悲惨から、逃れ続けていたことなんだ。

「私わかんない。何故わかんないのかがわかんない。世界中で、戦争やってるとか、飢え死にしてるとか、事故死とか自殺とか、子供の頃から誰でも知ってる。世界のアレコレを何も知らないまま15を過ぎるってことは、まず無い。なのに、自分には降りかからないと思うどころか、この世界がそういう世界だってことも認めない。事故に遭って、脳死判定を下されて、生きたまま切り刻まれるってことが、今日中にでも起こるってことを、考えもしない。私らからすれば、当たり前のように起こっている現実なのに。」

もう何も言えない。
何も言う気力が無い。
この人の言うことを認めたくない。
けれど、反論が思いつかない。

「あー、長く話しすぎた。ぼやぼやしてて泣笠葉継とか来たら対処できないから、早くデュエル進めよ。ターンエンド。」

「わたしのターン、ドロー・・・。」

力なくドローしたカードは、《貪欲な壺》だった。


高見沢円:LP400、手札1
場:
場:DNA改造手術(永続罠)

膾有雨:LP7100、手札0
場:裁きを下す者−ボルテニス(攻2800)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)
場:コート・オブ・ジャスティス(永続魔法)、DNA改造手術(永続罠)



そのとき。

シィハの指が、僅かに動いた。

いや、そう見えただけかもしれない。
けれども、それで十分だった。
わたしは正気を取り戻した。

そうだ、シィハを守りたい。わたしは、その為にデュエルしてるんだ。
世界が残酷だろうと知ったことか。
シィハを守る為に他人の命を盾にした。
そんなわたしが何を恐れる?

気色悪さは消えない。
吐き気は一向に治まらない。
寒気は消えない。
だけど、闘志は漲ってきた。

「墓地のモンスター5枚を戻し、シャッフルして2枚ドロー。」

「そっちも《貪欲な壺》を引いたかぁ。」

「カードを2枚伏せて、ターンエンド・・・。」


高見沢円:LP400、手札0
場:
場:DNA改造手術(永続罠)、伏せ×2

膾有雨:LP7100、手札0
場:裁きを下す者−ボルテニス(攻2800)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)
場:コート・オブ・ジャスティス(永続魔法)、DNA改造手術(永続罠)



「私のターン、ドロー。よし、マリーで攻撃してみるか。」

「永続罠発動、2枚目の《DNA改造手術》よ・・・。」

息が切れる。
闇のゲームによるダメージは、厳然としてわたしを蝕んでいる。

「大した引きの良さだけど、速攻魔法《サイクロン》で破壊させてもらう。」

「くっ・・・!」

なんて、ね。



3枚目の《DNA改造手術》発動。フィールド上のモンスターを機械族にするわ。



ようやくデュエリスト能力を機能させられた。
わたしの能力はメタを張るのが簡単だから、レベル4としては弱い部類に入る。
やっぱり、天神さんみたいにはいかないな。

「終わり、かしら?」

「そーだよ。ターンエンド。」


高見沢円:LP400、手札0
場:
場:DNA改造手術(永続罠)、DNA改造手術(永続罠)

膾有雨:LP7100、手札0
場:裁きを下す者−ボルテニス(攻2800)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)、堕天使マリー(攻1700)
場:コート・オブ・ジャスティス(永続魔法)、DNA改造手術(永続罠)



駄目・・・もう限界・・・・!
このターンで決着をつけないと、体がもたない・・・。

「わたしの、ターン・・・あ、ドロー、あ・・・。」

引いたカードは、《マジック・プランター》だった。
これで1枚目の《DNA改造手術》を墓地へ送ることで、2枚ドローできる。

あのカードを引けば、勝てる。

来い!

「2枚、ドロー・・・・あ、はぁ、はぁ・・・。」

少し呼吸を整える。
わたしは、引いたカードのうち1枚をモンスターカードゾーンに置いた。


サイバー・ドラゴン レベル5 光属性・機械族
攻撃力2100 守備力1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。



「なっ・・・!? な、何でそんなカード・・・!」

「いつから、あ、わたしのデッキが、天使族デッキだと思ってました・・・?」

「・・・っ!」

「強制能力が、仇になった、かな? 《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》、特殊召喚よ・・・。」


キメラテック・フォートレス・ドラゴン レベル8 闇属性・機械族
攻撃力0 守備力0 〔「サイバー・ドラゴン」+機械族モンスター1体以上〕
このカードは融合素材モンスターとして使用する事はできない。
自分・相手フィールド上の上記のカードを墓地へ送った場合のみ、
エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。
このカードの元々の攻撃力は、このカードの融合素材としたモンスターの数×1000ポイントになる。



「そして最後に、《死者蘇生》で、《サイバー・ドラゴン》を、復活させる・・・。」


高見沢円:LP400、手札0
場:キメラテック・フォートレス・ドラゴン(攻5000)、サイバー・ドラゴン(攻2100)
場:DNA改造手術(永続罠)

膾有雨:LP7100、手札0
場:
場:コート・オブ・ジャスティス(永続魔法)、DNA改造手術(永続罠)



「迂闊・・・! 機械族を選択した意味を、きちんと考えていれば・・・!」

「2体のモンスターで、あ、攻撃、よ。」


膾有雨:LP7100→5000→0





つづく

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