佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   番外編 Are You Ready? (前編)

<<   作成日時 : 2017/11/05 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



例えば彼は 眼鏡をかけて

例えば彼女は しなだれかかり

例えば彼女は 傷だらけ


例えば彼女は 剣を振るい

例えば彼は ナイフを投げて

例えば彼女は 釘を刺し


例えば彼女は どこにでも

例えば彼は いつまでも

例えば彼女は 十倍に


例えば私は 彼女の前に



◆ ◆ ◆



「・・・・・・咲、ちゃん?」

少年が息を切らして駆け込んだときには、全てが遅かった。
幼馴染の少女は血を吐いて倒れ、いつもの強気な顔など微塵も無い。
胸を押さえた左手は、流れ出ていく鮮血に染まり、右手は肩から切断されて、少し離れた場所に落ちていた。
傷は深く、胸から女陰まで無造作に裂かれている。脚も骨が粉々に砕けている。

そして何より、彼女はデュエルディスクを身に着けていなかった。

「けっ、何だ・・・お前かよ。ククッ、よりによって・・・・・・くそ、だっせえとこ、見られちまったな・・・。」
「咲ちゃん! 喋っちゃダメだ! 今すぐ波佐間さんのところへ連れて行くから!」

瀕死の少女を抱きかかえて、少年はカードを掲げる。
しかし、それは何の前触れも無く漠然と消えた。

いや、正確に言えば前触れはあった。
高位の能力者は、能力の発動を感知できる。

「どこへ行こうというんだ、我が息子よ。」
「父さん・・・。父さんが、咲ちゃんを、こんな目に遭わせたのか!?」
「だったらどうする?」

40を過ぎて猶、20歳そこそこの若々しさを持つ父親は、美しい顔を醜く歪めて笑った。

「父さんを殺して、咲ちゃんを助ける。」
「無理だな。そいつは助からねえよ。」

少年の父親は、事も無げに言う。
それに少年が顔を歪めたとき、少女の口から言葉が漏れた。

「あいつの言う通りだぜ・・・。わたしは、もう駄目だ・・・。」
「そんなことない! 波佐間さんにライフを元通りにしてもらえば―――」

言った傍から、少年はドクンと心臓が鳴るのを感じた。
途轍もなく、途方も無く、嫌なものが閃いた。

さっき、カードを消去したのは・・・


「知らなかったのか、我が息子よ。俺のデュエリスト能力は3つある。」


寒気のするような事実を突きつけられた。
少年は父親のデュエリスト能力を知っている。
あらゆる事象を「1」にする、“無気力な荒野”(ヒースクリフ)。

その対策をしてきたのに、未知の能力が2つもあった。
確かに、そうした未知への脅威を感じたのも事実だ。

しかし少年が真に恐怖を感じたのは、残り2つの“性質”である。
その2つのうちの1つと、父親の言葉、少女の確信。
少年はネガティブな思考を加速させ、真実に辿り着いた。


「“無慈悲な光路”(トートアウト)は、あらゆる事象を消し飛ばす。」


父親が告げたのは、それと同時だった。
少年は自らの推測が正しかったことを知って、ぐにゃりと目が歪んだ。

「ライフポイントを0にしたのではない。ライフポイントという“概念”を消し飛ばした。ゆえに、ライフを回復する能力では元に戻せない。残念だったなァ、我が息子よ。幼馴染ひとり守れないなんてなァ!」

真紅の双眼が、笑う嗤う哂うワラウわらう。
剥き出しの強さと、酷薄な人格。
“カンサー”首領格は、邪神のように嘲笑う。

「恐いか? 恐いよなァ。そいつが助からねえのは、てめぇがここで死ぬからだよ! たとえ俺の知らない方法があるとしても、てめぇが死ねば何も出来やしないんだ。」

父親の声は、少年の耳には響いていなかった。
聞こえていたが、聴こえていない。

心に響くのは、幼馴染の声。

「くそっ・・・こんなことなら、お前に・・・さっさと・・・・・・す・・・・・・」

悲しげに微笑んだ少女は、漆黒の粒子になって消えていった。

少年は無言で立ちあがり、デュエルディスクを構える。
少女の無念を晴らすのではない。怒りでも憎悪でもない。
そんなものは後に取っておけ。今は目の前の敵を倒す。

「正気か?」

「父さんの能力が、本当に全てを消し飛ばせるなら、どうして僕は今ここにいる? デュエリスト能力はデュエルの為の能力だ。デュエルそのものが成立しないことは出来ない。」

「ククッ、少しは知恵を絞ったじゃねえか。確かに俺の“無慈悲な光路”は、絶対攻略不可能ってわけじゃない。お前も知っている“無気力な荒野”と、あらゆる事象を固定する“無意味な降雨”(ミークヌンク)、それらを最大限に発揮する伝家の宝刀【神紅眼】デッキを以ってしても、まだ100じゃない。100には足りない。99.5くらいか?」

「御託はいいから、デュエルしろよ。幾らでも強力なデッキを、幾らでも凶悪な異能を、せいぜい並べ立てろ。僕のデッキは強力より強く、僕の異能は凶悪より禍々しく、僕のデュエルは、壊れている―――」



◆ ◆ ◆



「ごめん・・・もう、私、戦えない。」

少女の言葉は、少年の頭を打ち据えた。

「恐いの。」

少年が口を開く前に、少女は静かに告げた。

「次は私の番じゃないかって、いっつもビクビクしてるの。私は君とは違う。私はロボットかもしれないけど、恐いって思わない君こそ、ロボットみたいだよ。君は異常だ。」

その言葉が、少年を嘲る意味でないことは明らかだった。
申し訳なさそうに目を逸らしながら、泣いている彼女に、少年はハンカチを放った。

「ごめん・・・。」

少女は顔を拭って、また拭わなければならなくなった。

「君を愛したのは、私ではないから。」

「わかってる。謝るべきは僕の方だ。僕は空を見てるだけで、現実を見ていなかった。・・・さよなら。」

裸の少女と別れを告げて、少年は歩き出した。
これで、どれほどの仲間を失っただろう。

それでも生きていてくれるだけでいい。
仲間が死ぬくらいなら、孤独な戦いの方がいい。
あの化物じみた父親にだって、結局は勝てたじゃないか。
同じことを再度やれば勝てる自信は無いが、同じことは二度と無い。

残るは、蒼と、輝色と、白・・・。

ひとりでだって戦ってやる。
ひとりでだって勝ってやる。



◆ ◆ ◆



あおいめのにんぎょう

蒼忌眼乃人形

次元獣


“死敗者の幽兵”(ドミナントブレイド)
この世界でデュエルに敗北して死んだ者と同じ数まで発動できる。
任意のタイミングでフィールドに、「幽兵トークン」(攻?守?)を特殊召喚できる。
「幽兵トークン」の攻撃力と守備力は、その者が生前に行ったデュエル回数と同じになる。
「幽兵トークン」のテキストは、その者が所持していたカードまたは能力から選択する。




「あはっ、ほら、どんな数値が役に立つかわからないじゃない?」

青い目の女は、片目を瞑って笑った。

「だから、捕まえた女の子たちに子供を産ませてぇ、1回、2回、3回・・・ってデュエルさせてから殺した。君のスライスだかスライドだかいう能力も、これで大幅に抑え込んだよね。」

「ふざけるな。」

少年は尽きた手札で怒気を吐く。

「あれ、怒った? ごめんごめん、能力名を間違われたら怒るよね。」

「それもある。でも、それだけじゃない。僕もヒトゴロシだから、お前の殺人や強姦も糾弾しない。だが、デュエルのルールも覚えさせないで、ただ一方的に嬲るのは、ゲームじゃない。」

「だぁってえ、君の能力おっかないんだもん。あによう、『あらかじめ決めた数字1つを自在に移動する』って。」

少年は理性では認めている。
この世界に生まれ落ちた時点で、決闘法則に従い、決闘者たるべきだと。
青い目の女は、デュエルのルールを破ってなどいない。

それでも少年は、強制参加させられたスポーツで、散々に罵倒された体験を思い出して、つい声を荒げていた。
あのとき幼馴染の少女は、他と一緒になって少年を嘲っていた。

きっと最期に、彼女は謝ろうとしていたと思う。「スポーツできないの馬鹿にして、ごめん」と。
口調から表情まで、容易に想像できる。意地っ張りで鈍感な、幼馴染のことなんて。

「みー君の“無気力な荒野”の天敵みたいな能力・・・・・・なに笑ってるの?」

青い目の女は、今しがた怒っていた相手が笑うのを見て、逆に笑顔が消えた。

「いや、別に・・・お前の言う通りだと思ってさ。この馬鹿げた世界で、“デュエルに参加しない”なんてことが、出来るわけがないのに、つい頭に血がのぼって、くだらないことを言った。・・・けど、おかげで頭が冷えたぜ。」

少年は父親譲りの酷薄な笑みで、青い目の女を見つめた。
視線こそ斜め上を向いているが、支配者のように見下していた。

「お前の“死敗者の幽兵”は、なかなかイカした能力だ。でもな、デュエルの敗者しかゾンビ化できないなら、攻守0のトークンは作れねえだろ。美せて殺るよ、僕の禍々しき“緋翼の白鳥”(スライスワン)を。」

その途端に、青い目の女はハッとして目を見開いた。

「流石だね。もう僕のやったことがわかったんだ。だけど遅い。お前は既にライフを少し失ったことがあって、それは既知の情報なんだから、それはもう僕の、射程範囲内(おりのなか)だ。

見えない「0」が切り刻まれ、少し過去へ向かって送られる。

「デュエリスト能力は本人しか使えない。本人を模しただけのゾンビや、操られている奴には使えない。だから能力を使ってくれて感謝するよ。おかげで本物だと確定できた。お前の殺した子供たちの霊(ゼロ)に、切り刻まれろ。」



◆ ◆ ◆



残りは輝色と

白い顔の虚無




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