佐久間闇子と奇妙な世界

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zoom RSS 決闘祭!   Act 126 闇の旋風(T)

<<   作成日時 : 2018/04/16 00:00   >>

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◆ ◆ ◆



“冥府皇帝”マグナム・モリン!
“調律仙女”ミクロ・モリン!
“荒廃君臨”ムーア・モリン!
“退廃死想”メメント・モリン!
“無尽神法”モリン・モリン!



◆ ◆ ◆



「そうそう、忘れるところでした。僕も人を探しています。メメント・モリンという人を。」

本当は忘れてなかったけど、言いそびれていた。

「メメント・モリン、ですか・・・。わたくしは存じておりませんわ。お父様の知人ですの?」
「そのはずです。この屋敷に勤めていましたから。」
「この屋敷に?」

一美さんは首をかしげて腕を組んだ。色っぽい。

「わたくしが、短期間でも務めていた人を忘れるはずはありません。その方は、いつ頃お勤めに?」
「ええと・・・10年ほど前に、六角家を出たはずです。」

途端に一美さんは顔色を変えた。思い当たる節があったようだ。
けれど彼女が口を開く前に、飛白さんの方から意外な言葉が飛び出してきた。

「そいつなら知ってる。今すぐにでも会わせてやろうか?」
「え? どうして飛白さんが知ってるんですか・・・」

しかし乗らない手はない。僕は思わず飛白さんの手を取った。

「・・・いえ、お願いします!」
「わ、わかったから手を離せ。焦らなくても逃げやしないから。」
「あああ、すいません!」

しまった、うら若き女性の手を、みだりに掴むなんて!
みだらな自分の色欲を戒めるべく、僕はテーブルで三点倒立をした。
危うく床でやるところだったけど、飛白さんがスカートを穿いていたのでテーブルにした。
まさか紳士の僕が、女性のスカートを下から覗くわけにはいかない。

「では、一美さん、これにて失礼します。」
「お待ちになって!」

何故か一美さんが縋りついてきた! ややや柔らかい! 僕は混乱している!

「あの・・・その・・・」

近くに寄られるとシャンプーの香りが漂ってくる。やっぱり入浴中だったのか。
そりゃあそうだ。ゲームに敬意を払うことは、ファラオの閨に入るのとは違う。全裸になる必要は無い。
やはり僕の心に、一美さんの裸を見たいという、よこしまな欲望があったと確信した。恥ずかしい!

「また来ていただけますわよね!?」
「あ、はい、それは勿論。」

マインドスキャンを持っているはずもない一美さんは、僕の下卑た欲望に勘付くこともなかった。
ひと安心したのは僕だけではなかったようで、一美さんも安堵の息を吐いていた。

「今度いらしたときは、社会情勢の話なども致しましょうね。」
「いいですよ。」

きっと寂しいんだろうな。
最初からあった違和感、父親が出かけているだけでなく、他の家族や使用人も見かけない。
まるで井守さんの家みたいに、しんと静まり返った森の中。防犯とか大丈夫だろうか?


それはさておき、また来ると言ったのは社交辞令でも何でもない。
ここへ来た時点では、そんな気は無かったけど、理由は3つある。

ひとつは言うまでもなく、《モリンフェン》様がフィールドパワーソースを得られになられた理由を探ること。
僕の推測では、メメント・モリンが何かしていたのではと思うけど、そうではないのかもしれない。

というのも、ついさっき竜堂眸の記憶が一部、這い出てきたせいで。
一美さんの母親、切敷綾音(きりふ・あやね)・・・僕は多分、彼女に会わなければならない。



◆ ◆ ◆



「ああ、肩が凝った。金持ちの家は、どうも落ち着かないな。」

歩きながら飛白さんは、まさに僕が思っていたことを口にした。
なにしろ庶民だ。良し悪しとかではなくて、慣れない。

「ああいう家に住んでも、部屋の隅っこで暮らしそうですよね。」
「ハハハハハ! いいなあ、その皮肉。」

皮肉ではなくて、委縮なんだけど、まあいいか。

「人を探してることなんて、最初から私に言ってくれりゃ・・・いや、そいつは無理か。」
「お互いに警戒してましたからね。」
「ふん、今も警戒を解いた覚えはないぞ。」

猫のようにツンとする飛白さんだった。猫でなく虎か。

「飛白さんは、一美さんのことを以前から知ってたんですか?」
「・・・どうしてそう思う。」
「フィールドパワーソースにあまり驚いてなかったので。」
「ふん、平和そうなツラして大した観察眼だな。」

偉そうな態度の飛白さんは、しかし律義に答えてくれた。

「会ったことはなかったが、以前から知ってはいた。六角家といえば、ベトナム反戦で有名だろう。このあたりで知らない奴はいない。」

話しているうちに、幽堂の屋敷が見えてきた。
出迎えてくれたのは、長い髪で右目を隠した、線の細い女性だった。


「メメント・モリン・・・!」


“退廃死想”メメント・モリンその人が目の前に立っていた。

「ひひひ、意外と早かったわね。これもモリンフェン様の御導きってやつかしらん?」
「あなたは“誰”ですか?」
「自分で言ってるじゃない。ひひひ、それとも冥堂超弦(めいどう・ちょうげん)で名乗ればいい?」

ひとつ疑問が氷解した。
メメント・モリンの名前は、僕と同じでモリンファイブとしてのもの。
六角の屋敷で働いていた頃は、違う名前だったからこそ、一美さんも首をかしげていたわけだ。

「冥堂超弦・・・」
「あひひ、チョーさんでいいよ。」

けれど僕は多分、そう呼ぶわけにはいかないのだろう。

「騙されんなよ、無有。こいつ若く見えても30過ぎだから。」
「ひひひ、年齢なんて記号に過ぎないよぉ。」

並ぶと確かに、飛白さんよりも年下にすら見える。
飛白さんが老けて見えるとかではない。むしろ逆だ。

飛白さんは発育の悪さか、闇の番人ゆえか(たぶん後者だろう)実年齢より若く見える。
19歳か20歳のはずだけど、17,8歳で通用すると思う。

「それより、“むう”? ひひっ、なるほどねぇ。」
「あ、無堂無有です。よろしく、メメント・モリン。」
「あは、そっちで呼ぶんだ? じゃあ、わたひも“無尽神法”モリン・モリンと呼ぶべきね?」

胡乱な目つきで、メメント・モリンは僕を見据えた。
憎悪か、悲痛か、隠そうともしない苦悩に、思わず目を背けそうになる。
やはり彼女は・・・。

「お前ら、知り合いか?」
「ひひひ、どうかねぇ。知り合いだとしても17年も会ってないし。」
「あん? 無有が生まれたときに立ち会ったってことか?」

飛白さんが首をかしげるのも無理はない。
この時代、僕は生まれてすらいない。僕の本体すら赤子だ。


「飛白おねえちゃん、その人だぁれ?」
「なーんか、弱そうなやつだぜ。」

ひょこっと子供2人が顔を出した。
花飾りをつけた女の子と、挑発的な男の子。小学生か、せいぜい中学生くらい。

「ゼット君、失礼だよ。あ、おりは闇坂折春。ほら、ゼット君も名乗って。」
「おれに勝ったら教えてやるよ。」

推測は確信に変わった。闇坂。
やみさか・おりはる。
ゼットは・・・

「・・・闇坂絶命?」

何気なく言ったが、“ゼット君”はギョッとして息を呑んだ。

「なんで知ってんだよ。」

しまったな。闇坂絶人が闇坂家を牛耳り“絶命”を名乗るのは、もっと後のことだ。
もしかしたら今現在は、彼の心の中にしか存在しない名前なのかもしれない。

これで歴史が変わるのは避けたい。

「そうだね、僕にデュエルで勝ったら教えてあげる。ただしゼット君が負けたら、ちゃんと“絶命”を名乗るんだ。」
「へっ、よゆーぶって後悔すんなよ!」


「「デュエル!」」


無堂無有:LP2000
闇坂絶人:LP2000



「おれの先攻はもらった! 《モリンフェン》だ!」


《モリンフェン》 (攻1550・守1300→攻1750・守1500)



これで確信は100パーセント。もう間違いない。

「メメント・モリン、あなたは・・・」

「ひひっ、今はゲームに集中してようよ。後で幾らでも話してあげるからぁ?」

ごもっともだ。目の前の相手に向かい合ってこそ決闘者。

「僕のカードは《砦を守る翼竜》です。守備表示! カードを伏せておきます。」

「そんな貧弱なカードは《モリンフェン》様の敵じゃないぜ! 攻撃だ!」

「守備表示なので無傷です。そして《モリンフェン》様がデッキに鎮座ましましあそばされておられるのは、何もゼット君だけではありませんよ。」

「チン・・・まんまん・・・あそび、おま、なに言って?」

《モリンフェン》様の神々しい姿を前にして、ゼット君は喜びのあまり真っ赤になっていた。
わかるよ、その気持ち。《モリンフェン》様を前にしたときの当然な反応だ。

《モリンフェン》 (破壊)
闇坂絶人:LP2000→1950


「ええっ、なんでおれの方が負けるんだ!?」
「《砦を守る翼竜》は囮だったのですよ。魔法カード《右手に盾を左手に剣を》で攻守が入れ替わりました。」
「そんなカード、ずるいぞ!」

ずるいと言われても。

「ハハハ、ずるくはないだろう絶人。M&Wは強いカードを持ってる奴が勝つ。」
「飛白ねえちゃん・・・。くそっ、《コザッキー》を守備表示だ!」
「《守備封じ》と《ホーリー・エルフ》です。」


《モリンフェン》 (攻1550→2350)
《コザッキー》 (守400→攻400)
闇坂絶人:LP1950→0



「うわああああ負けたあああああ!! ちっくしょー、飛白ねえちゃんの前で恥かかせやがって! おまえなんか、今にボコボコにしてやるからな! おぼえてろ!」

半泣きになりながら、ゼット君は屋敷の中へ走り去っていった。
中年か老人の闇坂絶命しか知らない身としては、すごく新鮮だ。

「ひひひ、流石は“無尽神法”モリン・モリン。絶人では相手にならないか。」
「メメント・モリンが相手をすると?」
「そうねぇ。その前に絶人に勝った褒美よ。お察しの通り、わたひは六角狩人の愛人だった。折春と絶人は、彼との間に生まれた。続きが聞きたい?」

ほぼ予想通りの答えで、そして僕にとって胸が痛い答えだった。


「聞きたいし、聞かなくてはならないと思います。闇坂紐里(やみさか・ひもり)さん。」


「ひひっ、合格よぉ。“何故わかった”なんて野暮な質問は端折っておこうかな。モリン・モリンが知りたいのは、六角狩人の人となりだよねーーー?」

ようやく嬉しそうな顔で、メメント・モリン・・・闇坂紐里は、髪を掻き揚げた。
右目には、忘れようもない魚眼レンズが埋まっていた。



◆ ◆ ◆



切敷綾音――――――――六角狩人―――――――冥堂超弦
            |                |
      ―――――――        ―――――
      |          |        |        |
    一美(16)   圭二(13)  折春(12)  絶人(11)   



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