「千里」 第十一話 レックス・ブースター 7

レックスは眉間に皺を寄せて朝食を食べていた。
なかなか食が進まないのは胃がむかつくからだが、その原因は徹夜したせいばかりではなかった。昆虫のような気味の悪い目つきをした女に付き纏われているのが気に障るのだ。
(だいたい、事務所ってったって、何やってるかわかりゃしねえ。世の中うまい話なんてそうそう転がってるワケねえ。戦争行くのとどっちがヤバいか・・・。)
食べ終わって、レックスは自室で横になった。少々吐き気がするが、そこは何とか気合で堪えて過ごした。
(待てよ・・・そう言えばあの女、幾つだ? どう見ても10代だよな。こりゃ、ますます胡散臭えぞ。)

昼過ぎになって、院にクレアが訪ねてきた。
「こんにちは、院長さん。レックス君に会いに来ました。」
「ああ、クレッセントさん。案内しますわ。」
2階のレックスの部屋に案内されて、クレアは扉をノックした。
しかし返事は無い。
「いないのかしらねえ。・・あ、きっとカフェですよ。あの子がよく行くカフェがあるんです。そこで品の無い連中と・・」
「いえ、きっと中で寝てるんですよ。」
院長の言葉を遮り、クレアはさっきより強く扉をノックした。
すると中から呻き声が聞こえてきた。
「ほら。」
「あらホント。どうしておわかりに?」
「カフェにいなかったから。ただそれだけですよ。」
そう言ってからクレアは部屋の中に呼びかけた。
「レックス君、クレアです。」
すると不機嫌な声が返ってきた。
「ああ゛!? てめーかよ・・・! 人の眠ってんのを邪魔しやがって・・・。お前と話をする気は無い! 帰れ!」
「・・・今日は話をしに来たんじゃないわ。すぐ帰るわよ。この街の、私の事務所の住所を教えにきたの。」
言いながらクレアは扉の隙間から紙を中に入れた。
「誰が行くか!」
「まあまあ、そう言わずに。今日はこれで帰るから。」
去り際に、クレアは足を止めて言った。
「あ、そうだ。私の年齢は28歳だから。」
「・・・それがどうした!」
レックスは心を見透かされた感じがして、内心ギョッとしていた。
「別に。ただ、私はあなたのことをよく知ってるのに、あなたは私のことをよく知らないということが、不公平だなと思っただけよ。」
「・・・・・・・・・。」
クレアの去っていく足音を聞きながら、レックスは不愉快な気分でごろりと横になった。

「それにしても、クレッセントさんがあの子なんかにこだわるのは、どういうわけですの?」
院長は不思議そうに訊いた。そこにはレックスに対する侮蔑がハッキリと見て取れた。
「能力の相性がいいんですよ。」
「能力の相性・・・?」
院長は更に怪訝な顔をしたが、クレアはそれ以上何も言わなかった。

クレアが事務所に戻ると、電話が鳴った。1回目のコールが鳴り終わるまでに受話器を取って、クレアは話しかけた。
「もしもし、ルナ。」
「クレア、元気?」
可愛らしい少女の声が聞こえてきた。
「そこそこ元気よ。」
「ヘッドシーフはどうなった?」
「まだよ。」
「その割には嬉しそう。声が弾んでるよ。何かいいことでもあったの?」
「わかる? レックスと会えたのよ。」
「レックス見つけたの!?」
「ええ。」
「やったね、おめでとう。」
「予定通りよ。」
「そんなこと言っちゃってー。クレアは嬉しいとか楽しいとかいう感情を隠す癖があるからねー。それで損してるよ。レックスにも嫌われてるんじゃないの?」
「ご名答。」
「それも予定通りなの?」
「最初から仲良くなんて出来ないさ。特に私の本質を見抜いてる人間はな。」
「ふーん、そうかなあ。・・それじゃあ、また来週。」
「ええ。」

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この記事へのコメント

2013年01月08日 18:05
コング「八武院長は慧眼の持ち主だ」
ゴリーレッド「慧眼?」
コング「生意気の絶対条件はかわいいこと」
ゴリーレッド「そこから入るか」
コング「かわいくない生意気なんか見向きもされないし絵にならない」
ゴリーレッド「それ以上暴言を吐くとパイルドライバーだぞ」
火剣「やはりクレアのウキウキの原因はレックスだったか」
コング「ウッキー!」
ゴリーレッド「・・・能力の相性かあ」
火剣「世の中に上手い話は転がっていないというのは黄金律だ」
コング「ところでルナは少女というけど何歳だ?」
火剣「少女は幅広いから困るぜ。19歳も9歳も少女だからな」
コング「ご名刀とはあのことか?」
ゴリーレッド「字が違う。ご名答だ」
コング「名刀の切れ味!」
ゴリーレッド「治安の悪い街や環境で生まれ育つと、どうしても心が歪むな」
コング「治安は良くしたい。若い女の子がパジャマでコンビニに行けるような街づくりを」
火剣「あるかっ」
コング「夏は水着で出勤OK」
火剣「誰でもOKか?」
コング「水準より下の女が水着で電車に乗った場合はリンt・・・」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「だあああああ!」
火剣「レックスはクレアの術中にハマりそうな自分が怖くて乱暴になってるんだろう」
ゴリーレッド「なるほりろ」
火剣「でも謎だな。なぜクレアはレックスにこだわる。院長じゃなくても不思議に思う」
ゴリーレッド「そこは千里眼にしかわからない領域か?」
コング「ルナは知ってる」
ゴリーレッド「生きてたか」
火剣「あれ、ルナって留奈じゃないよな?」
コング「奈留。留奈。どっちだっけ?」


2013年01月08日 21:48
ルナ…初代ムーンシューターか!?あそこらへんは世界が全部繋がっているから出てきててもおかしくない!はず…。
そして付きまとわれるレックス…。まあ、それは前から何ですが…。
2013年01月08日 22:25
>火剣さん
レックスに会えて浮かれているクレア。元が暗いので、あまり浮かれているように見えないのですが、かなりハイテンションです。気が逸っています。
レックスが荒れているのは、その通りですね。治安の悪い街で屈辱を味わいながら生きてきた彼にとって、誰かの掌に納まるというのは不安と恐怖が大きいようです。
さて、クレアがレックスにこだわる謎とは・・・?

八武「レックスが荒れている原因は、男としてのプライドもあるだろう。」
佐久間「女に頼るのを嫌う男は多いからな。」
山田「わからんでもないが、ちょっと頑なすぎると思う。」
佐久間「お前が言うな。」
山田「?」
八武「この現状から脱するには、クレアの提案を受けた方が賢いのは明白だが、そう割り切れないのが男というもの。」
佐久間「可愛いなぁ・・・。」
山田「そうか・・?」
八武「男にとって生意気な美少女が可愛いのと、同じことだろう。」
山田「なるほど。」
佐久間「しかし、水着で出勤とは面白い。」
山田「待て、ちょっと待て。」
八武「ということは、下着姿やバスタオル1枚もOK。ましてパジャマなど完璧OK。」
山田「だから前提がおかしい。」
八武「前から犯したい?」
山田「耳ほじってこい。」
ルナ「ところで奈留って誰~?」
八武「美少女。」
山田「殆ど説明になってない・・。」
佐久間「このときが68年だから、もう生まれてはいるが、まだ9歳にもなってない。」
ルナ「わたしよりは年下かぁ。」
2013年01月08日 23:07
>千花白龍さん
確かに出てきてもおかしくないんです、ムーン・シューター。クレアとは互いに知らない仲でもありません。

黒月「1968年というと、わたしにとって転機となった年ね。」
佐久間「アッキーはいつになったら『ムーン・シューター』の続きを書き上げるのだろうか。」
アッキー「ひぃいい。」

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