「千里」 第十三話 吸血鬼の舞う夜 2
その翌日、クレアはレックスとルナを連れて、トランシルバニアまでやって来ていた。
「ったく、何だってルーマニアくんだりまで・・・。本来ならアリョーシャの管轄なのに。」
クレアは口を尖らせていた。
月組には隊長“月神”クレア直属の第一隊と、副隊長“月帝”アリョーシャの指揮する第二隊がある。ヨーロッパは本来は第二隊の管轄なのだ。
「な~にがバカンスだ。あの野郎、厄介な任務を押し付けられるのを察して、逃げやがったんだよ。」
クレアは苦々しく言い放った。
「それを予知できなかったのか?」
「何でもかんでも予知してるわけじゃない。私の能力はアルカディアの法律で制限されているし、私自身の意思で、日常的には更に制限している。アリョーシャはアルカディアで私に次ぐ予知能力者でね、2つの制限下にある私よりは強い。」
「おい、まさかそいつのせいで予知が狂ったなんてことはないだろうな・・・・・あ・・・。」
言ってからレックスは口を押さえた。
クレアは少し暗い顔をしたが、首を振った。
「制限された私が予知できることは、アリョーシャも予知できる。だからアリョーシャのせいというならば、アリョーシャが意図的に何かしたということになる。」
「・・・悪かった。」
苦い記憶を思い出させてしまったという意味でも、仲間を疑ったという意味でも、レックスは反省した。
「お前は悪くない。それよりも、これは貸しにするわよ、アリョーシャ。」
「本人のいないところで言ってどうする。」
「アリョーシャの能力は予知だけじゃない。聞こえてる。」
「この距離でか・・・。まったく、エスパーってのはオレの想像の範疇を幾らでも超えてやがる。」
レックスは肩を竦めた。
「心配しなくても、アリョーシャくらい強いのは稀だ。何億人に1人ってとこだな。怠け癖さえ無ければ、私の代わりに最高幹部にもなれていた男だ・・・。私に最高幹部は重い。いち部隊の長が分相応だ。」
「・・・・・・。」
「ねー、さっきから2人だけで会話して、ずーるーいー。わたしも仲間に入れてよー。」
ルナが膨れっ面で2人の間に割って入った。
「ああ、そうね。今回の任務が回ってきたことで、良いこともあった。くだらないメンテナンスからルナを解放できた。」
「おいおい、メンテナンスって重要じゃねえのか? もしも超能力が暴走したりしたら・・」
レックスの脳裏に、再び苦い記憶がよぎる。
「私とサムが付いている以上、そんな心配は無用だ。少なくとも、本部の学者連中よりは信頼してもらいたい。定期メンテナンスなんて名ばかりで、実際は本部の学者どものモルモットにされるだけ。苦痛や羞恥を伴う、人権蹂躙も甚だしいものだ。」
「わたしやリュウの能力って、かなり珍しいらしいからねー。月齢に関するエスパーって、アルカディアでも10人いないから。」
「私は最高幹部の特権で免れているが、ルナとリュウに関しては、そうもいかなくてね。」
「・・・組織の理屈ってやつか。オレは、そういうのは嫌いだな。」
「私もだよ。だが、私はアルカディアを離れて生きていくことは出来ないんでね。私の能力は、他人と連携してこそ真価を発揮する。こうして組織にいなくては何も出来ない奴だよ。たとえアルカディアを抜けたとしても、獣のように徘徊するか、死ぬか、別の組織で同じようなことをするか・・。今より良いことはない。」
「・・・・そうか。」
「もー、クレアもレックスも暗くならないの。今が良い状態ってことはなくても、昔よりは遥かに良くなってきてるんだからー。」
「そうね。今は任務のことを考えましょう。」
「そうだな。」
レックスは苦笑いして、頭を掻いた。
「しっかし、この二十世紀に吸血鬼とはな。」
「ったく、何だってルーマニアくんだりまで・・・。本来ならアリョーシャの管轄なのに。」
クレアは口を尖らせていた。
月組には隊長“月神”クレア直属の第一隊と、副隊長“月帝”アリョーシャの指揮する第二隊がある。ヨーロッパは本来は第二隊の管轄なのだ。
「な~にがバカンスだ。あの野郎、厄介な任務を押し付けられるのを察して、逃げやがったんだよ。」
クレアは苦々しく言い放った。
「それを予知できなかったのか?」
「何でもかんでも予知してるわけじゃない。私の能力はアルカディアの法律で制限されているし、私自身の意思で、日常的には更に制限している。アリョーシャはアルカディアで私に次ぐ予知能力者でね、2つの制限下にある私よりは強い。」
「おい、まさかそいつのせいで予知が狂ったなんてことはないだろうな・・・・・あ・・・。」
言ってからレックスは口を押さえた。
クレアは少し暗い顔をしたが、首を振った。
「制限された私が予知できることは、アリョーシャも予知できる。だからアリョーシャのせいというならば、アリョーシャが意図的に何かしたということになる。」
「・・・悪かった。」
苦い記憶を思い出させてしまったという意味でも、仲間を疑ったという意味でも、レックスは反省した。
「お前は悪くない。それよりも、これは貸しにするわよ、アリョーシャ。」
「本人のいないところで言ってどうする。」
「アリョーシャの能力は予知だけじゃない。聞こえてる。」
「この距離でか・・・。まったく、エスパーってのはオレの想像の範疇を幾らでも超えてやがる。」
レックスは肩を竦めた。
「心配しなくても、アリョーシャくらい強いのは稀だ。何億人に1人ってとこだな。怠け癖さえ無ければ、私の代わりに最高幹部にもなれていた男だ・・・。私に最高幹部は重い。いち部隊の長が分相応だ。」
「・・・・・・。」
「ねー、さっきから2人だけで会話して、ずーるーいー。わたしも仲間に入れてよー。」
ルナが膨れっ面で2人の間に割って入った。
「ああ、そうね。今回の任務が回ってきたことで、良いこともあった。くだらないメンテナンスからルナを解放できた。」
「おいおい、メンテナンスって重要じゃねえのか? もしも超能力が暴走したりしたら・・」
レックスの脳裏に、再び苦い記憶がよぎる。
「私とサムが付いている以上、そんな心配は無用だ。少なくとも、本部の学者連中よりは信頼してもらいたい。定期メンテナンスなんて名ばかりで、実際は本部の学者どものモルモットにされるだけ。苦痛や羞恥を伴う、人権蹂躙も甚だしいものだ。」
「わたしやリュウの能力って、かなり珍しいらしいからねー。月齢に関するエスパーって、アルカディアでも10人いないから。」
「私は最高幹部の特権で免れているが、ルナとリュウに関しては、そうもいかなくてね。」
「・・・組織の理屈ってやつか。オレは、そういうのは嫌いだな。」
「私もだよ。だが、私はアルカディアを離れて生きていくことは出来ないんでね。私の能力は、他人と連携してこそ真価を発揮する。こうして組織にいなくては何も出来ない奴だよ。たとえアルカディアを抜けたとしても、獣のように徘徊するか、死ぬか、別の組織で同じようなことをするか・・。今より良いことはない。」
「・・・・そうか。」
「もー、クレアもレックスも暗くならないの。今が良い状態ってことはなくても、昔よりは遥かに良くなってきてるんだからー。」
「そうね。今は任務のことを考えましょう。」
「そうだな。」
レックスは苦笑いして、頭を掻いた。
「しっかし、この二十世紀に吸血鬼とはな。」

この記事へのコメント
白龍「さて、吸血鬼が出たようですが、もちろんエスパーですね。二十世紀にもなって『吸血鬼』なんて『居』ませんよ、漫画やお伽話じゃないんですから。」
パルナ「じゃあエスパーの存在はどうなるの?」
白龍「え?それはちゃんと存在してますよ、ね。」
パルナ「…。」
コング「まだだろ」
ゴリーレッド「コングの基準はヒロピンか?」
コング「愚問」
火剣「クレアは制限をかけているのか」
コング「制限は大事」
ゴリーレッド「コングも制限をかけたほうがいい」
コング「組織というのはめんどいね」
ゴリーレッド「それぞれが勝手なことをしたら大変だ。組織は必要なんだ」
火剣「昨夜のアンフェアに感動的な場面があったな」
コング「レイプシーンか?」
火剣「待て。人命を軽視する発言をする上司を偽物と罵倒する女刑事・望月陽」
コング「バトルしたい」
火剣「上の命令を無視して突っ走るからついに捜査から外される。そのときに同じアウトローデカの山路哲夫の出番だ」
コング「上司を殴ったのか?」
ゴリーレッド「解雇になったら捜査することもできない。だから山路哲夫は望月陽を連れて独断で捜査をする」
火剣「そのときに言ったセリフがカッコイイ。『ルールというもんはなあ。ここぞという時に破るもんだ』」
ゴリーレッド「レックスにこれを伝えたい。クレアはこの辺がわかっている」
コング「今夜もアンフェアあるな。それより定期メンテナンスを見学したい」
ゴリーレッド「アホか」
コング「八武院長が学者として潜入。僕は助士」
火剣「クレアに簡単に見抜かれる」
アリョーシャはマルチと同じくオールラウンダーで、基本的な超能力は全て備えています。他にも特殊な合成能力を使えたり、かなり多彩な多才能力者。現時点で月組最強の戦闘能力を持つ人物です。しかし子供の頃に輪をかけて面倒くさがりになってしまっています(笑)。
佐久間「まあ、エスパー奇譚だからな。」
山田「エスパーと魔物の対決ってのも面白いが。」
佐久間「それは我々の世界だな。魔物もいれば超能力者もいる。」
山田「お前は何に分類されるんだ?」
佐久間「私は私であるだけで素晴らしいんだよ。分類など必要ない。」
山田「“変態”でいいんじゃないかな。」
佐久間「殴るぞ。」
早くも月組クレア隊が動き出しました。今度の相手は吸血鬼。次回で名前も出てきます。
能力制限がかかっているクレアですが、ここぞというときには破るでしょうか。破らなくても大抵のことは予知してしまいますが・・・。
佐久間「ルールも処女膜も、ここぞというときに破るか・・。」
山田「お前はもう喋らなくていい。」
佐久間「いきなりNGかよ!」
山田「いきなり下品なジョークをほざいたのは誰だ?」
八武「佐久間も制限がかかってないねぃ。」
佐久間「お前はかかってるのか?」
八武「いつでも破れるようにスタンバイしてるけどな。」
佐久間「いつでも貫けるように?」
八武「そうとも言う。」
山田「こいつら殴ったろか。」
佐久間「まあ、ルール破りに限らず、ここぞというときに決めるというのはカッコイイものだ。」
山田「ようやく真面目な発言を・・・。」
八武「ところで、メンテナンスという単語に興奮を覚えるのは私だけかね?」
山田「そんなにメンテナンスが見たいのか?」
八武「見るだけでなく参加したい。」
佐久間「最大の問題は、アルカディアのセキュリティをどうやって掻い潜るかだな。」
八武「千里眼は厄介だ。しかし制限がかかってるなら・・・。」
佐久間「制限がかかってるのは、クレアが月組の仕事やプライベートで使う分だ。」
山田「制限がかかってるのは、セキュリティに力を裂く為なのか。」
佐久間「それもある。」