「千里」 第十六話 アルカディア幹部会 13

ヴェネシン、ネイル、レンファは、途中経過発表を見て、揃って顔をしかめていた。
「目標には10点及ばず・・。」
ヴェネシンが細い首を振って唇を噛む。本気で悔しそうだ。
「ホーネットさんは、受かるかどうかよりも自分との戦いですもんね。」
一回り年下の青年、ネイル・グレイは、意味ありげな顔で言った。
「ネイル、お前は受かりたいか?」
「もちろん・・。俺はね、なんとしても受かりたいですよ。」
「ほう。お前にも人並みに出世欲があったか。意外だな。」
ヴェネシンは馬鹿にするでも見損なうでもなく、素朴に驚いていた。ネイルは人と競うことが好きな男で、出馬を知ったときも腕試しが目的だと思っていたのだ。
「意外?」
引っかかったのか、ネイルが目を細めた。
「“自分との戦い”が似合うのは、むしろお前の方だろう。」
「ああ、そういう意味か・・。」
「レンファ、お前は?」
「そうですねん、100キリに1点足りないというのは不吉ですね。7000点に1点でも足りなければ落とされるわけですし。」
「お前なら50点くらい足りなくてもボーナスで何とかなりそうなもんだが・・。」
「そうですか?」
「7000点を得ても4位以内に入らなければ準星にはなれない・・・が、7000点に達する者が4人も出るかどうかも怪しいものだ。ハービスが4人目になると思ったが。」
「カミーユも出ないですからねん。ま、3人仲良く合格しましょ。」
レンファはニコッと笑った。
しかしネイルは肩を竦めて笑う。
「でも、ぶつかったら敵ですからね、アータスティーさん。」
「ネイル、お前なあ・・」
「ホーネットさんでもですよ。我々は仲間であると同時にライバルでもあるんですから。」
「まあな。」
ヴェネシンも目を細め、笑みを消した。


アトラトは中間結果発表を見て、すぐにその場を立ち去ろうとした。
しかしそこへラドルがやって来て声をかけたので、彼は足を止めた。
「よーう、アトラト。どうだよ?」
「どうということもなく。」
アトラトは表情を変えない。
「少しは嬉しいとか悔しいとか無いか?」
「そういう感情が無いわけでもないですが、この試験に落ちたからといって人生が終わるわけでもありませんから。」
「それじゃあ何で受けたのさ。」
「準星には、なるべき人がなるものでしょう。私の実力がそれに相応しければなれますし、そうでなければ落ちる。それを判定するには試験を受けなければならないのです。」
「おー、模範的回答。出世欲とか腕試しとか、そういうのは無いのか?」
「これも一種の腕試しと言えなくもないと思います。」
「んー、なんかオレの思ってんのと違うんだよな。」
ラドルは頭をポリポリ掻いた。
「お前さあ、人生の楽しみとか目標とか無いわけ?」
「ありますよ。この世で最も難しいことです。あなたの言う楽しみとは意味が違うかもしれませんが、普通に生きて普通に死ぬことです。」
「・・・オレには、出来ないな。」
「まだ、あのときのことを引きずっているんですか?」
「おいおい、何でその話になるんだよ。」
ラドルは慌てたように顔を歪めた。
「私はあなたの思ってるほど無感動な人間でもないのです。あなたが今、何を思ったかくらいわかりますよ。」
「敵わねえな、あんたには。分隊最年長は伊達じゃねえや。」
「そうなってから結構経ちますね・・。」
アトラトは昔を懐かしむように空を見上げた。

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この記事へのコメント

2013年05月06日 19:43
火剣「GWも終わりか」
コング「アウトローにGWも正月もない」
ゴリーレッド「そこだけ聞けばカッコイイが」
火剣「コングにも出世欲はないな」
コング「欲望はある。私の夢はデカイ」
ゴリーレッド「語らなくていい」
火剣「ヴェネシンとネイルとレンファはエリート意識が強いのか?」
コング「レンファは合格するが、あとの二人は落ちる」
ゴリーレッド「自分の推理しか頭にないんだな」
火剣「アトラトとラドルの過去が気になる」
ゴリーレッド「コングにとって人生の楽しみは何だ?」
コング「愚問。魅力的なヒロインの困り果てる姿を見ること」
ゴリーレッド「聞いた私が間違っていた」
コング「間違っていない。人生の目標は、かごめ、ジャスミン、ヨーコと賭けバトル」
火剣「賭けバトル?」
コング「負けたほうは、勝ったほうの言うことを何でも聞くというデスマッチスール」
ゴリーレッド「人生の目標と楽しみを聞いたら、まさに百人百色の答えが聞けるだろう」
火剣「普通に生きて普通に死ぬ。哲学的な回答だ」
ゴリーレッド「エスパーとして生まれた人間にとっては不可能に近い目標だ」
コング「エスパーとして生まれるのは偶然ではないのか?」
ゴリーレッド「偶然ではない。宿命だろう」
火剣「ハカイダーのように宿命と使命が同じという生き方は覚悟があって迷いがねえ」
コング「♪おれーの名はー、おれーの名はー」
ゴリーレッド「あと一小節歌ったら泣かす」
火剣「普通に生きたくても普通に生きられないで、もがいている人間は多いだろう、この世の中」
ゴリーレッド「人生はなかなか思うように行かない」
コング「でもヒロインのもがく姿は良い」
火剣「普通じゃねえな」
コング「佐久間んと比べれば普通。普普普」

2013年05月06日 21:51
色んなところで繰り広げられる人間模様。何だかドラマチックですね。仲間、ライバル、先輩後輩…。さあ、誰が合格するのやら。意外に7000点取れる者は四人しか出なかったりして…。
次の試験も楽しみですね。
2013年05月06日 22:48
>火剣さん
終わってから、そう言えばGWだったと気付いた私・・。子供の頃は、あんなに楽しみにしていたのに、いつの間にか変わっているんですねー。レンファも番外編から7年、ラドルは「雨と雲の姉妹」から5年、それぞれ微妙に変化しています。

山田「アトラトの言う“普通”も、人から見れば普通じゃないかもしれない。“普通”の基準だって百人百色だ。」
八武「普通の人生を歩むことと、普通の人生を望むことは、似てるようで全く別物だねぃ。」
山田「そうなんだよな。」
佐久間「ヴェネシン、ネイル、レンファは、それぞれに異なるエリート意識を持っている。それ自体は悪いことでもないが、裏目に出ることはあるかもね。」
山田「ネイルはカリカリしてるように見えるな。」
八武「レンファは番外編の通り、それが自分の役割だという意識と関わっているか。」
山田「電脳計画の推進も意識してるのかな。」
佐久間「それも少しある。」
ラドル「偶然ではなく宿命か。そう考えた方が、しっくり来るなぁ。」
アトラト「宿命は受け入れることです。その中で生き方を模索することになります。」
山田「宿命は枷じゃないってことだな。」
アトラト「そうですね。時に枷となるが、本質は枷ではない・・・そう思っています。」
2013年05月06日 23:17
>千花白龍さん
ゾロゾロと出てきて、ちょっと作者も混乱しかけていますが(←おい)、合格するのは誰なのか・・・。次回も有力候補が登場します。
そして次の試験は、戦闘の項目です。

山田「7000オーバーは、そんなに難しいのか?」
シュシュ「ギリギリ、4人を、見込んでいる。多くても、8人は超えないだろう。」

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