「千里」 第十八話 クレアのいない日々 5

「コムザイン、お前こそハンパな情報に振り回されてゴイツを誘拐してんじゃねえか。リックみたいな半端者の言うことを真に受けるのは、やっぱり半端者なんだぜ。」
レックスの鋭い目つきは、この場面で余計に鋭くなっていた。
「そこまで言ったからには死ぬ覚悟は出来てるんだろうな。」
「やってみろ。その瞬間にお前が半端者だってことが証明されるだけだ。」
圧倒的な暴力に脅された経験は何度もあった。どう足掻いても勝てないというだけならば、レックスにとっては慣れたシチュエーションだ。
「根性だけは据わってるな。殺されないとわかっていても、少しは怯えるもんだが。」
「脅しても誉めても何も出ないぜ?」
「くくく、お前は本当に、俺の若い頃と似ているな。だが、俺も老いてるつもりは無い。」
その言葉と目つきに、レックスはハッとして後ろを振り向いた。
5人の分隊長が自分たちを囲んでいた。
「貴様・・・!」
「それでは諸君、お引取り願おうか。」
帰れと言われて素直に帰るようなら、最初から来ていない。しかし、この状況では抵抗するだけ無駄だ。レックスは思わず下を向いた。
「アルフレッド、ラプソディア、アージェ、ハービス、リリーベル! お客さんがお帰りだ、送って差し上げろ!」


- - - - - -


「Shit!」
月組の執務室へ戻って、レックスは悪態をついて壁を殴った。
「あのヤローめ・・・!」
「コムザインと正面からやり合っても勝てないわ。策を考えましょ。」
ルナがレックスの肩を叩く。
「そうだな・・。どうする、サム。」
「とりあえずは情報を共有しておこう。どうやらリック・ビッグマンがゴイツ氏を訴えたのは、彼の妹のことでのようだ。」
サムはコンピューターを操作して、引き出した情報を言った。
「あいつに妹がいたのか。」
「ラルフィナと同じく18歳だそうだ。私も初耳だ。」
「おらと同い年・・・。」
ラルフィナは嫌な予感がした。
そのとき扉がノックされ、1人の青年が入ってきた。
「久しぶり。」
「ジョナル!」
レックスは明るい顔で友人を出迎えた。
白組隊長X・Q・ジョナル。去年の始め頃に知り合ってから、何度か会っている。
「来ると思ってたよ。吸血鬼事件のことだろ?」
「ちえっ、お見通しかよ。助かるぜ。」
「君から話を聞いた方がいいみたいだね。」
サムがコンピューターから手を離してジョナルの方を向いた。
「はい。リックの妹ケイトは、いわゆる不良少女というやつです。夜な夜な男をとっかえひっかえするような。吸血鬼化していたゴイツ氏に襲われたのも、夜遊びの帰りでした。リックは、ケイトのバージンが奪われたと主張して訴えたんです。もちろんレイプの事実はありませんが、たとえ事実でなくても世間は非処女と見ると言って、責任を取るよう要求しています。つまり・・・」
ジョナルはラルフィナを見て、言うのを少し躊躇った。
「・・・妹ケイトをゴイツ氏と結婚させろと言うのです。」

ラルフィナの顔が真っ青になった。

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この記事へのコメント

2013年07月24日 08:26
チュルーリ「お客さんがお帰りだぞ!かかっ。」
ツヲ「お帰りはあちらで。」
白龍「なんで楽しそうなの?君達。」
チュルーリ「いい作戦だった。素直に認めよう。」
ツヲ「結果は強制退去。ところが情報は手に入った。これは大きいですよ、閣下。」
チュルーリ「うむ。レックスの次の一手が楽しみだ。人間にはこういう部分があるから、いいんだよなぁ。」
白龍「認めてる…のか?」
ツヲ「閣下。ここは結婚&愛人作戦でしょう。」
白龍「お前さんは何を言い出してるんです?」
ツヲ「誰もが幸せになる道を考えた。ケイトちゃんに結婚する気がないなら形だけでいいし、あるんだとしてもゴイツ君とラルフィナちゃんの愛が消える訳じゃない。結婚しても離婚もOK。やり方は色々ある。結婚を認める代わりにラルフィナちゃんとの同居も認めてもらおう。」
白龍「頭が痛い…。」
ツヲ「別に僕がケイトちゃんをもらってもいいんだよ?いや、むしろその方がいいのか!?おお、素晴らしい作戦だ!どうせ、リックはケイトちゃんが結婚するんだったら誰でもいいんでしょ?よし、円満過ぎる解決法だ!」
白龍「却下ー!!!」
2013年07月24日 17:26
火剣「そこまで言ったからには死ぬ覚悟は出来てるんだろうな。コムザインにこのセリフを言われたら普通はビビるぜ」
コング「ビビル大木?」
ゴリーレッド「生い立ちが役に立ったか。コムザインは893じゃないが、暴力に慣れていない庶民は、極道に凄まれたら、どうしても引いてしまう」
火剣「誰も痛い思いはしたくないし、死にたくないからな」
ゴリーレッド「それにしてもまさかここで五人が登場するとは」
火剣「アルフレッド、アージェ、リリーベル・・・」
コング「ラプソディア、ハービス!」
ゴリーレッド「強制退去か」
コング「不満か?」
火剣「コムザインの若いときに似てるのか? クレアが認めるくらいだから、レックスは何かを持っているのか?」
ゴリーレッド「少し全貌が見えてきた。そういうことか」
コング「ケイト18歳? 不良少女、いいねえ」
火剣「でも結婚って、いつの時代だ? 理解に苦しむし、何の解決にもなってねえ。それよりケイトの気持ちはそんなもん望んでいないと思うが」
コング「不良少女だから初じゃないだろう」
ゴリーレッド「あともう一回偏見を口にしたらニーパットだ」
火剣「厳しいな」
ゴリーレッド「厳しくない。コングは教育し直す必要がある。幼稚園中退だからな」
火剣「コングも凄い生い立ちだな」
コング「知らん。僕は年齢・国籍・半生不詳」
ゴリーレッド「ジョナルも出てきたか」
火剣「内部同士の争いだが、やはりアルカディアは広い。いろいろあるんだな」



2013年07月24日 20:43
>千花白龍さん
というわけで部下を潜ませていました。他にも伏兵がいる可能性を警戒したコムザインは、抜かりなく人員を待機させています。このやり合いは私も書いていてボルテージが上がりますね。
しかしツヲさん、突飛なようで鋭いですね。確かにリックは真面目な男なら誰でもいいと思っています。離婚するなら慰謝料を搾り取るというのも、今から考えていたりします。

山田「俺も頭痛が・・・。」
佐久間「これもリックの兄心というやつだな。」
山田「どこがだよ。」
佐久間「夜な夜な遊びまわっている妹を、落ち着かせたいと思う気持ちは本物だ。そこに他者への思いやりが欠けているだけだ。」
山田「重大な欠陥じゃねえか。」
八武「そうか、今こそツヲの出番・・・!」
佐久間「変態という名の紳士だが、真摯だしな。」
山田「それが言いたいだけだろ貴様。」
八武「またツヲハーレムが拡大するな。」
山田「ハーレム?」
八武「ところでコムザインがリックに肩入れするのは何故かね?」
佐久間「それは単純に仕事だから。砕組の副隊長として、部下からの訴えを拾い上げたのだ。」
レックス「人の気持ちを踏み躙る仕事などオレは認めねえ。」
コムザイン「言いたいことがあれば裁判で言うんだな。ゴイツを連れ出そうとしたことは不問にしておくが。」
佐久間「まあ、力ずくで連行してる以上、奪還しようとする権利はあるわな。」
コムザイン「それを防ぐだけの力量が、砕組には求められる。」
2013年07月24日 21:20
>火剣さん
やはりコムザインの迫力は段違い。レックス以外は沈黙しています。それはコムザインの実力を知っているからでもありますが。
レックスとコムザインはキザ(?)なところなど共通点が多いですが、それを意識しているのはコムザインの側だけだったりします。レックスが食ってかかるのは、同族嫌悪も含んでいたりするのかもしれません。
そしてリックとケイトは何を考えているのか・・・?

佐久間「同族嫌悪か。確かにSとSは衝突する。」
八武「Sなのかね?」
佐久間「修羅と修羅。どちらも怒りに満ちている。性格というより性質が似てるんだよなァ。殺人を嫌うコングも別の意味で似通った性質を持っているが。」
山田「やけに食ってかかるのは同族嫌悪だったのか。」
佐久間「同族嫌悪は人間の性だ。アッキーの嫌いな奴はアッキーに似ていることが多い。」
アッキー「え?」
佐久間「アッキーは人生を中退してるしな。」
アッキー「してません。変な張り合い方をしないでください。」
佐久間「ちなみにケイトはヴァージンではない。よくぞ見抜いた。褒美にケイトに腹パンチをする権利を与えよう。」
リック「なに勝手にとんでもねえことほざいてんだテメー!?」
佐久間「あ、ジョナル。」
リック「ひっ!?」(逃走)
山田「・・・何かリックが可哀想になってきたな。」
ジョナル「彼も社会に馴染めない人ですからね。」
山田「ホントに来てるし。」
佐久間「見ろ、私は常に正しい。」
山田「やかましい。」
八武「それよりもハービスとラプソディアの出番、まさかこれだけってことはないだろうね?」
アッキー「だ、大丈夫です。まだ出番あります・・・。」

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