四十七番目の導師 (前編)

この世界は残酷だ。

奪い奪われるということを、私は知っていた。
ただ知っていただけだ。
知識として知っていただけだ。
ほんとのところは知らなかった。
感情が伴っていなかった。

家が没落して私は知った。
この世界は残酷だと。
遅い、遅すぎる。

そして私は、洞穴に引き籠もり、特製のローブを羽織り、世の中から目を背けている。
世界から乖離して何を気取っているのだろう。
偉くもないし立派でもない、ただの称号を手にしている。

この称号を目指して、どうやら魔族がやって来る。
しかも、話し合いに。
だったら導いてやらねばなるまい。
全力で、全身全霊で。


導師として私は最初に何を言うべきだろうか?



◆ ◆ ◆



「あたしは導師のことなんか全然好きじゃないんだからね!」

「そんなことわかってるよー。」

赤い顔で人差し指を向けるイヴィルヘイトに、飄々とした態度でイヴィルマリスが答える。

導師の住む地下迷宮の入口に、魔王軍の四天王は集まっていた。
獣魔将軍、“嫌悪”のイヴィルヘイト。
水魔将軍、“羨望”のイヴィルジェラシー。
人魔将軍、“悪意”のイヴィルマリス。
食料将軍、“草食”のイヴィルパンプキン。

「導師って女性ばっかりなんでしょー。ボクはねー、大人の女性と面と向かって話すのが苦手なんだー。」

「あ、あんた、あたしのことは子供だって言いたいの!?」

「悔しい! 子供扱いされて悔しい!」

イヴィルジェラシーも話しに混ざってきた。
するとイヴィルマリスはニヤリと笑って彼女の背後を取る。

「へー、オトナ扱いして欲しかったんだー。」

「やめ・・どこ触って・・・・悔しい、感じちゃう!」

そのままイヴィルマリスはイヴィルジェラシーを抱えて、イヴィルヘイトの背後へ回る。

「確かに体はオトナだねー。」

「きゃああああ!?」

「悔しい! オトナの体が羨ましい! ヘイトが羨ましい!」


「こぉら、じゃれ合ってないで入るべ。」

いつでも冷静なイヴィルパンプキンが制止する。
四天王の大将である彼女には、イヴィルマリスも逆らえない。

「そうだねー。ちなみに真面目に言うとー、大人の女性が苦手ってー、仲間は別だからねー。」

「そ、そんなこと言っても遅いんだから! あたしは怒ってるんだからね!」

「機嫌直してよー。おっぱい揉んであげるからさー。」

「ご機嫌取りなんか嫌い!」

「リア充ども爆発しろイオナズンイオナズンイオナズン!」

イヴィルジェラシーが3連続イオナズンを放ち、イヴィルヘイトとイヴィルマリスが上空へ舞い上がる。
そして迷宮の入口は木っ端微塵になった。


「ふ、ふん、よくやったとか言わないんだからね! べ、別に、あなたにイオナズンを使ってほしくて怒ってたわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよねジェラシー!」

べホイミで復活してきたイヴィルヘイトが、魔力で服を修復しながら真っ赤な顔で言い訳する。
どう考えても言い訳する必要性を感じないと、イヴィルマリスは思った。

「んだば、さくさく行くべ。冥王復活まで、あまり時間が無い。」

イヴィルパンプキンを先頭に、4人は迷宮を進んでいった。



◆ ◆ ◆



普段から迷宮のような魔王城に住んでいるだけあって、四天王は異様な速さで迷宮を進んでいった。
魔術障壁はイヴィルヘイトが解除し、分かれ道の探索はイヴィルジェラシー、罠を見つけるのはイヴィルマリス、そして食料はイヴィルパンプキンが魔法でカボチャを出して賄った。

程なくして、一向は開けた場所へ辿り着く。
そこが導師たちの暮らしている場所、“聖堂”である。
ここには様々な理由で世間と関わりを絶った女たちが集まってきており、導師のもとで慎ましく暮らしているのだ。

奥の方から、白いローブに身を包んだ女性が歩いてきた。
導師というからには年輩かと思いきや、見かけは若く、いっそ少女と言ってもいいくらいの風貌だった。
先が2つに割れた、とんがったフードを被り、栗色の髪の幼げな顔を覗かせている。

「何の用ですか、魔王軍の四天王・・・・・・とでも言えば、よろしいのでしょうかね?」

途中まで険しい顔だったのが、朗らかな笑顔になる。

「第47導師のスーラと申します。あなた方がここに来た用件はわかっています。冥王復活の報せを受け、冥王封印の秘術を求めて訪れたのでしょう。」

「そ、そうよ、話が早くて助かるなんて思っていないんだからね!」

真っ赤なイヴィルヘイトは左手を腰に当てて、右手で導師スーラを指差した。





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月17日 10:05
白龍「全く、ヘイトさんは毎回毎回素直じゃないんですから。べ、別に可愛いとか思ってないですよ?」
パルナ「はくりゅーがツンデレに!?」
白龍「べ、別にあざといとか思ってないんだからね!勘違いしないでよね!」
パルナ「テンプレ過ぎる…。」
白龍「さて、スーラさんが導く未来とは一体どんな未来でしょうねえ。べ、別に気になる訳じゃないんだからね!」
パルナ「もういいってば。」
ツヲ「そうだ、スーラちゃんに転職させてもらおう。」
白龍「彼女はフォズ大神官じゃないですよ。」
2013年11月17日 16:09
コング「奪う。残酷。ローブ。ロマンを感じる言葉が並ぶ」
ゴリーレッド「いよいよ危ないな」
火剣「前からだ」
ゴリーレッド「嫌悪のイヴィルへイトか。いきなり嫌われたら初対面の者は普通驚く」
コング「何! 導師は若いのか。しかも見た目少女だと。スーラ。ヒロピン候補発見」
火剣「それしかないのか?」
コング「なーい!」
ゴリーレッド「悪意のマリス。英雄の称号を狙っているのか?」
コング「悪戯のレベルではダメだ」
火剣「ジェラシーも本気で激怒して撃ってヘイトとマリスも普通によけてる。ほとんどマンガのノリだ」
コング「四人それぞれ役目があるのか。ガッチャマンや009を思い出す」
ゴリーレッド「まともな意見」
コング「あとはスーパースリーだ」
火剣「アニメに詳しい人間がスーパースリーを知らなかったぞ」
コング「♪ラリホーラリホーラリルレロ! ラリホ・・・」
ゴリーレッド「文字数がもったいない」
火剣「ところで特殊なローブなのか?」
コング「ローブの下は何も身につけてないとか?」
ゴリーレッド「さあ」
火剣「スーラは全力で導く用意があるみたいだが、どうなるか」
コング「マリス。スーラにも痴漢しろい」
ゴリーレッド「あり得ない」
2013年11月17日 22:39
>千花白龍さん
毎度テンプレのセリフが恒例となっているヘイトさん、今回もコンセプトに忠実です。今後もあざとく行きます!
ちなみにこの世界では、勇者や戦士というのは正式な職業ではなく、正式には兵士(特殊戦闘兵)となっています。感覚としては傭兵と農兵と足して2で割ったようなものです。マキャベリではないですが、国王が恐れたことにも関わっているようです。

佐久間「ハクリューはツンデレも可愛いな。」
山田「ギャグじゃないのか?」
八武「スーラのところで転職か。医者が天職だが、エロエロ催眠術師とかにも転職できるなら・・」
山田「そんな職業は無え!」
佐久間「転職は基本的にこっちの世界と変わらん。だが、ドラクエ的な意味で言うなら、“聖堂”は技を習得する場所でもある。それも、通常では覚えないような技とか。」
八武「ぱふぱふとか・・?」
山田「真面目な顔して何言ってんだ。」
2013年11月17日 23:08
>火剣さん
四天王編はコミカルなので、書いていて楽しい場面です。わかりやすいキャラのおかげでテンポが速い。マリスは英雄の称号を得られるかどうか?
そして迎えるは導師スーラ。早くもヒロピン候補として目を付けられていますが、はてさて・・。

八武「纏うはローブのみ! それでこそ同士だ!」
山田「漢字が違う・・・いや、コングとのことか。」
八武「ローブは萌えアイテム。ドラクエの常識です。」
山田「常識かどうかはともかく、特製というのは意味ありげだな。」
佐久間「魔法や呪いに対する耐性を高め、治癒効果もある優れものだ。」
八武「困ったな。ラリホーが効かないではないか。」
佐久間「スーラには元から効かない。」
山田「スーパースリーのタイトルは知らなくても、ラリホー♪は広く知られている気がするな。」
佐久間「デスサーティーンや小野田の兄も口ずさんでいた。人気の高さが窺える。」
八武「重要なことを言い忘れるところだった。ローブに催淫効果は?」
山田「忘れたままでよかった。」
佐久間「エッチ系統の効果は特に無い。そういうのから女を守る為の場所でもあるしな。基本的に男子禁制だ。」
八武「何だと・・・。ますます欲望が刺激される。」
山田「マリスはいいのか?」
佐久間「あまり良くはない。下手なことをしたら導師の見習いも駆けつけて粉々にされるだろう。」
八武「だが、男にはやらねばならないときがある。あとは勇気だけだ。科学妊法だ。」
山田「・・よし、病院へ送ってやる。まずは歯を食いしばれ。」

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