四十七番目の導師 (後編)

◆ ◆ ◆



「8分36秒・・・地上へ太陽の光が届くまでは、もちましたか。」

無傷で立ち尽くす導師スーラは、息ひとつ乱さずに感想を述べる。
いや、感想というよりは単なる事実だ。

「つ、強い・・・!」

「悔しい! 勝てない!」

「桁が違う・・・・」

「オラも限界だべ・・・。」

四天王全員、イヴィルヘイトも、イヴィルジェラシーも、イヴィルマリスも、イヴィルパンプキンも、体力も魔力も使い果たして倒れていた。

1対1ではなく、4体1で。
しかも人間の姿ではなく、本来の魔物の姿に戻って戦ったのだ。

イヴィルヘイトは体力も攻撃力も優れた大きな獣の姿で。
イヴィルジェラシーは防御も耐性も高いスライムの姿で。
イヴィルマリスは姿こそ大して変わらないものの、大幅に高い魔力で。
イヴィルパンプキンは、巨大なカボチャの姿で。

「まるで話にならないです。参考までに、あなた方の力量を各自10ずつとしましょうか。勇者パーティーの4名も、同じく10ずつというところでしょう。魔王と竜王が40ずつ、魔王の娘と竜王の妹が20ずつ、単純な足し算で200というところですね。冥王の力は500です。不死身でなくても勝てない。わかっているはずですよね、少なくとも冥王を押さえ込めるだけの力が無ければ、封印などおぼつかない。」

「ううっ、悔しい! 悔しい! どうして勝てないの!?」

イヴィルジェラシーが立ち上がってきた。
魔力が尽きて回復魔法も唱えられないので、ただ気力で立ったに過ぎない。


「連携ミス。」


スーラの発した言葉は、単純なものだった。

「あなた方、連携が出来てない。10ずつの力を足して40にしかなってない。200の力で500を抑え込むには、連携で力を増さなければならない。それがわからず、無闇に闇雲に戦う者に、私の命を預ける気にはなれない。」

すると他の3体も立ち上がってきた。

「・・・・悪かったべ。」

言葉を発したのはイヴィルパンプキンだった。

「だがさ、オラたちだけの実力で判断しないでけろ。魔王様、ハル様、竜王様、グレース様(竜王の妹)、それに勇者パーティー。みんなで力を合わせて、いやさ、連携が駄目なら、これから練習すればいいべ。オラたちを信じてくれろ。オラたちの、未来を。連携がなってないなら、教えてくれろ!」

「・・・・・・。」

「あたしからも、お願い! あたしは人間が、ホントは、大好き! いつも嫌いだ、大嫌いだって言ってるけど、ホントは仲良くしたいって思ってるの! 冥王が復活しちゃったら、みんな滅んじゃうんだよ? ここにいれば安全かもしれないけど、外は死の世界になっちゃうんだよ!」

「・・・・・・。」

「ボクも人間が好きだ。好きかもしれないってレベルだけど、滅んでほしくないくらいには好きだ。スーラは人間社会について色々あると思うけど、魔族のボクらには想像つかない感情もあると思うけど、人間社会なんか救っても嫌な思いを繰り返すと思うかもしれないけど、それは正しいかもしれないけど・・・何か嫌なんだー!」

「・・・・・・。」

「私は悔しいですよ。私は仲間を大量に人間に殺されてますからね、人間社会なんかメチャクチャになってしまえばいいとか思ってますよ。でもそれは、世界ごとおじゃんにするってことじゃないんです。世界という一冊の小説があったとして、気に入らない箇所があったら全部捨てるんでなく、そこだけ書き換えるだけにしたいんです。」

「・・・・・・。」

スーラは四天王の話を黙って聞いていた。
心動かされた様子はあったけれど、それで協力に至るほどでもなさそうだ。

もう駄目かと思いかけた、そのとき。



「お行きなさい、スーラ。」



腰まで伸びた銀の髪をたなびかせ、細身ながら威厳のある女が現れた。
童顔のスーラと違って大人の女性の顔立ちをしており、慈愛に溢れた微笑みを浮かべている。

聖母というよりは聖女の美しさであるが、いずれにしても只者ではない。スーラと同じく白いローブに身を包んでいるところからして、導師の1人なのだろうか。

「大導師様・・・。」

「スーラ、あなたの心の指し示すままに行動しなさい。それは罪ではありません。裏切りでもありません。我々は導く者。この世界が壮大な物語であるならば、生きとし生ける者たちに、続きを演じさせることが使命です。」

ローブから細い手首を覗かせて、大導師は一箇所を指差した。
それは多分、魔の大陸の方角だった。

「・・・・・・こんなとき、何て言ったらいいんでしょうね。やっぱり、ありがとうございますと言えばいいですか?」

「いえ、ここは・・・」

大導師は悪戯っぽく首をかしげた。

「また、会いましょう。」






   四十七番目の導師   完

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この記事へのコメント

2013年11月19日 12:56
火剣「今見えている太陽は8分36秒前の太陽か。大宇宙のロマンを感じる」
コング「それよりもローブのロマンの話をしよう」
ゴリーレッド「パンプキンもダメだったか」
火剣「カボチャはあまり強そうな名前じゃねえが」
ゴリーレッド「全部あわせて200か。冥王が500・・・厳しい」
コング「足し算ではなく掛け算。連携が苦手そうな四人。無理かも。ぐひひひ」
火剣「でもスーラが冥王に遭遇すればスーラも危険と隣り合わせだ」
コング「そうか! 頑張れ四天王!」
ゴリーレッド「イヴィルヘイトは本当は人間が好き。憎めないキャラだ」
火剣「ジェラシーも褒めてやれ。ジェラシーの前でえこひいきは禁物だぞ」
コング「大導師? ついにスーラは危地へ赴くか。輝けスーラ!」
ゴリーレッド「詩的な言葉だ。この世界が壮大な物語であるならば、生きとし生ける者たちに、続きを演じさせることが使命です」
コング「勝つ方法を教えよう。ジェラシーもヘイトもローブを身に纏うのだ。もちろんローブの下は何も身につけない。裸の自分を曝け出して初めて能力が二倍! 二倍!」
ゴリーレッド「そのカボチャ頭を吹っ飛ばそうか?」
コング「ピストルをしまえ。チャールズブロンソンか」

2013年11月19日 22:33
ジェラシーさんの正体がスライム!どうやらはぐれメタルキングの亜種っぽい?しかし、主要メンバーの戦闘能力を全部足すと200で相手が500。この数値だけ見ると、勝てない戦いじゃない気がするのは私だけ?そしてやっぱり連携が重要。足し算ではなく掛け算。一人で1倍、二人で2倍、コンピプレーで300倍…は言い過ぎか。でも、レックスさんの能力のように絆というのは掛け算なのかも。
今はまだバラバラですが、これから掛け合わせられるという可能性がある。それは大きく、明るく、未来という名の可能性。…ん?そう言えば、未来の可能性は残酷な言葉って誰か言ってたような…。
とにかく大導師の口添えもありスーラさんが仲間になったぞ!戦力では不利でも勢いはこちら側にある気がします。
2013年11月19日 23:15
>火剣さん
封印術を使っている間は戦えないので、上手く連携できないとピンチになりますね。特製ローブを装備すれば能力は倍近くになるかもしれませんが、残念ながら導師の分だけで予備が無いのです。

八武「だったら全裸で戦うしかないなっ!」
山田「やかましい。」
八武「そうか、いきなり全裸は駄目か。それなら通常のローブでいいんじゃないか。」
佐久間「全滅覚悟か?」
八武「エロスはロマン。太陽の熱で旅人は服を脱ぐ。あの話は美女であるべきだと思わないかね?」
佐久間「そういうパロディは結構あるな。」
八武「北風にローブをギュッと掴む仕草も良いものだが。」
山田「何の話になっている?」
佐久間「まあ、それなりに装備は整える。人間界でな。」
八武「えっちぃ衣装を頼む。」
山田「ドラクエの衣装は、優秀でも露出度は高かったりするが・・・。」
八武「そうだ。ドラクエ準拠なら、そこは忠実に!」
佐久間「さあて、どうなるかな。」
八武「大導師も応援している!」
山田「曲解だ。」
八武「イヴィルヘイトも薄着を着たいと期待している。」
佐久間「まあ、獣は全裸だしな。」
2013年11月19日 23:40
>千花白龍さん
戦力が200と500というだけなら、連携が上手くいけば勝てない戦いでもないです。しかし冥王は強さが500+不死身なので、やはり厳しい戦いになるのは間違いないでしょう。
ジェラシーは仰るとおり、メタル族を想定しています。メタルキング+ゴールデンスライムなイメージ。そしてHPも結構あるという。

佐久間「胸も結構あるという。」
山田「だからバストサイズ=HPという方程式は無いと・・。」
八武「HPだとヒップだしな。」
山田「ええい、黙れ黙れ!」
八武「で、実際どうなのかね。」
佐久間「ギリギリBカップある。どこかの革命家とは違う。」
維澄「何か言ったか?」
山田「真面目な話をしようぜ。スーラの言ってた戦力解析は、自身を入れてないし、連携も考えてない。楽観は出来ないが、展望は見えたんじゃないか?」
佐久間「そして絶望に叩き落すのがアッキーのやり口なんだよ。」
アッキー「え、いや、そんなことは。」

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