これが最後の戦いか (前編)

勇者が来る。

人間の勇者が私を殺しに来る。
魔王として私は最初に何を言うべきなのだろう。

人間の勇者が私を殺しに来る。
どうしようか。どうしたいのか。

既に答は出ているはずだ。

人間の勇者が私を殺しに来る。
これが最後の戦いになるのだろうか。
今度こそ最後の戦いになるのだろうか。

私には、どうしてもそうは思えないのだ。



◆ ◆ ◆



魔王城の前に、1人の少女が現れた。
亜麻色のショートヘアは無造作な髪型、よれよれのシャツにボロボロのショートパンツ。質素で簡素な軽装だ。
しかも剣の1本っきゃ持っていない。鎧兜など無いのは先述の通りだ。
手ぶらで、丸腰で、彼女は魔王城の前へ来た。

魔王を殺す為に。

「はぁ~~~」

彼女は魔力を高め、術式を展開した。

「イオグランデ! メラガイアー! ギガデインギガデインギガデインギガデインギガデインギガデイン・・・・・・・・・・」


永遠に続くかのような稲妻の嵐が、数分後には魔王城を跡形も無く吹き飛ばしていた。
トラップも、回廊も、財宝も、アイテムも、魔王配下の魔物も、全て粉々になった。

「はあっ、はあっ、はあっ!」

彼女は肩で息をして膝をついた。


「酷いことするなぁ。」

「っ!?」


少女の背後に、やはり簡素な服装の青年が立っていた。
簡素といっても入店を断られない程度のもので、精悍な顔立ちには気品を感じる。育ちが良さそうだ。

「しかし魔族も人間に酷いことしてきたから、お互い様か。」

「貴様は何者だ!?」

「私は魔王だ。お前は勇者だな。」

「貴様がっ・・・!」

勇者は距離を取った。
そして問答無用とばかりにギガデインを放つ。

「あぐっ!」

しかしダメージを受けたのは勇者の方だった。
それも、自分の放ったギガデインで。

「おいおい、やめとけって。魔王たるもの、魔法攻撃への対抗手段くらい持っているさ。」

「くっ!?」

後ろに回られて両腕を掴まれた。
速さが違う。

「それにマホカンタが間に合わなくても、そのくらいの攻撃なら大したダメージは受けない。」

「放せっ!」

「やだね・・・。女の子が独りで、こんなとこまで来ちゃ駄目だよ。あーあ、こんな傷だらけになってまあ。」

「馬鹿にするなっ! マ・・」

余裕ぶっていた魔王も、“それ”を聞いた瞬間だけは戦慄した。
久しく忘れていた死の恐怖を思い出した。



マダンテ



全ての魔力を解放し、全ての敵を打ち砕く。
防御不可能、回避不可能、対抗手段は是非も無し。
あらゆる技の中で最大の破壊力を有し、完璧な習得は不可能とさえ言われた最終魔法。魔法を超えた魔法。

完璧に極めたマダンテには、魔法封じも、魔法返しも、何もかも通用しない。
最強にして究極。完全にして無敵。


だからこそ、それを使った後は、あらゆる技を使えなくなる。


「今度は逃げられないよ。」

「くっ・・・!?」

巨大なクレーターの底で、魔王が勇者を組み伏せていた。

「馬鹿・・・な・・・・!」

「確かにマダンテは最大最強の技だ。防御も回避も不可能・・・けれど決して、絶命を保証するものではない。与えたダメージよりも私の体力が高ければ、耐えられる。単純に、そういうことなんだよ。」

「か・・・・・・あ・・・・・・・?」

驚いて殆ど声も出ない勇者。
それほど魔王とは力の差があったというのか。

「勇者、勇者よ。私は君が来るのを心待ちにしていた。ずっと待っていた。強力な魔族ほど人間に近いというのは、姿だけでなく心も同じことでね・・・。不謹慎なことだが、魔族を蹴散らし勇ましく戦う君に、私は惚れてしまった。」

「なっ・・・・・はあ・・・!?」

「私の子供を産んでくれ。」

そう言うと魔王は、目を見開いて勇者の服を剥がしにかかった。

「嫌ああああっ!!?」





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月20日 21:06
コング「オオオオオ!」
ゴリーレッド「喋らなくていい」
コング「魔王君! おそらく次回君は英雄の称号を受けるであろう」
ゴリーレッド「あろうじゃない」
火剣「魔王ともなると、コングから英雄の称号をもらっても嬉しくない気がするが」
コング「何を優子りん。ヒロピンファンは全国に星の数ほどいる。その大勢のファンに興奮と興奮を与える者を英雄と呼ばずして、何と呼ぶのか?」
ゴリーレッド「鬼畜」
コング「どわあああ・・・欲望の湖!」
火剣「でも善良な魔王だな。ゴリゴとは大違いだ」
コング「ショートヘアにショートパンツ。良い良い」
ゴリーレッド「マダンテを食らいたいか?」
火剣「しかし少女も突如全部を吹き飛ばして激しいな」
コング「組み伏せるという言葉にロマンを感じる」
ゴリーレッド「絶対におかしい」
コング「おかしい、おかし、なるほど、次回はきっと魔王が少女を犯すであろう」
ゴリーレッド「デビルアロー!」
コング「ぎゃあああああ!」
火剣「死んだな」
2013年11月20日 22:30
>火剣さん
始まりましたヒロピン編、もとい過去編。いきなり全てを吹き飛ばし、早くも大ピンチの女勇者。軽装なのは読者サービス・・・と見せかけて伏線です。
善良(?)な魔王、次回は英雄となるか? やはり賢者こんぐーは魔王軍と相性が良さそうな気がします。

山田「俺には、どうしても善良だとは思えないのだ。」
佐久間「ゴリーゴーが? そりゃそうだ。善良では困る。」
山田「わかってて言ってるだろ。」
八武「マ・・と聞いて、違う単語を思い浮かべたのは私だけではあるまい。」
山田「マヒャドか。それともマヌーサか。」
八武「違う。2文字目はン。」
山田「マンドラゴラか。マンイーターか。」
八武「わかってて言ってるだろ。」
佐久間「マダンテの不思議なところは、着ている服が吹き飛ばないということだ。というわけで魔王には服を剥がしてもらうことにした。」
山田「お前の発想が不思議だ。」
八武「素晴らしい発想だ。自ら服を吹き飛ばすよりも、男に剥がされて組み伏せられる方が、見ていて興奮する。」
山田「鬼畜としか思えない。」
佐久間「勇者を家畜にするなら鬼畜かもな。」
山田「おいやめろ。」
2013年11月20日 23:59
突然始まった戦い。この少女は?この魔王は?過去編ということで、今までのキャラの中で再登場している者がいるはず。まあ単純に考えたら、首だけ魔王に娘のハルさんが生まれる話かな?
ふと、昔に少年魔王が女勇者に恋をする話を考えたことを思い出した。(ネタ帳のどこかにあらすじぐらいは書いているかな?)
さて、魔王の熱烈アタックですが、ビンタを百万回以上浴びそうな予感。もう恋は成立しない?それとも大逆転劇があるのか?

ツヲ「こら、魔王!紳士になれないのなら僕と代われ!」
白龍「あなたは引っ込んでいてください。」
2013年11月21日 00:28
>千花白龍さん
そうです、この魔王が後の首だけ魔王です。ツヲさんからも非難を浴びる蛮行。暴走しているのは若さゆえか・・・と考えましたが、今でもベクトルが違うだけで、あまり変わってないですね。
しかしショタ魔王・・・その手があったか・・・!

佐久間「それも読みたい。」
山田「リクエストか。」
八武「そろそろ私の出番が来たようだねぃ。」
山田「お前はゴミ箱で寝てろ。」
八武「眠るときは女子の側と決めている!」
佐久間「ちなみに、この女勇者の正体は・・」

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