遥かなる昏き闇の中 (前編)

この世界は暗い。

世界が出来たのは気の遠くなるほど昔。
誰かが漆黒の夢を見た。
広くて暗く、何も無い世界。
漆黒の夢は果てしない。

いつの頃か、冥王がいた。
二千年前に竜王が生まれた。
千年前に魔王が生まれた。
三百年前に勇者が魔王と戦った。

わたしは勇者。
この世界は暗い。

わたしが死んだのは百五十年ほど前。
邪竜と戦い、力を使い果たし、5年後に死んだ。
あの日から、わたしは冥王の花嫁となった。
そして冥王が復活する。


果たして、わたしは何者だったんだろうか?



◆ ◆ ◆



果てしない闇。はしたない闇。
どこまで行っても、前後左右上下、大地が無い。天井も壁も床も無い。
誰かに作られたような、出来の悪い空間で、紫藤ハルカは漂っていた。
どれほどの時間を漂っていただろうか。
何も見えず、何も聞こえず、ひたすら夫と娘と仲間たちを求めていた。
そうしないと狂ってしまいそうだった。
そうしていても狂ってしまいそうだった。
感覚の遮断は思考を狂わせ、やがてハルカは、昔のことを思い出すようになった。
独りだったときのこと。人間界で、孤独だったときのこと。
忘れていた辛辣な言葉が、蘇ってくる。

(嫌だ、やめて)
(助けて)

そうなってから、どれだけの時間が経っただろう。
誰にも彼女の心を推し量れなくなった頃、ぬるりとした感触が彼女の首筋に触れた。

「ひゃっ!?」

それと同時に、重苦しい声が体を締めつけた。


「我は“冥王”・・・。」


反射的に逃げようとしたが、ぬるりとした何かに首を掴まれる。
それが何なのかわからない。

ぬるりとした感触は、首筋から胸へ広がる。
谷間を潜り抜けて、臍まで到達し、そこから下腹部へ流れていく。
気が付けば両手も、そして脚も、全身が拘束されていた。
もがいても叫んでも容赦ない。

そして感触は体の中にまで入り込んできた。

(―――っ!!?)

冷たいのか熱いのか、それすらわからない。
死んでいるのだから。

けれど感触はわかる。
奇妙で、気持ち悪くて、だけど反応してしまう。

「・・・んあっ、くっ・・・・・離れろ・・・・・・・イオグランデ!」

大爆発が、ぬるっとした感触を吹き飛ばす。
開放感で体が震える。

「はあっ、はあっ・・」


「やるではないか。流石は元勇者といったところか。」

その声には、たっぷりと余裕が含ませてあった。
まるで今の攻撃など痛くも痒くもないというように。

そして、それを証明するかの如く、一瞬のうちに再びハルカは拘束された。
亜麻色の髪をグイッと掴まれて、彼女は仰け反らされる。

「このっ・・・・・・・」

鋭い目で闇を照らしながら、ハルカは封印していた禁術を解き放った。
全ての魔力を破壊のエネルギーに変える最終魔法。



マダンテ



凄まじい魔力の奔流が、闇を昼間よりも明るく照らし出す。
轟音と共に光の洪水が、しばらくハルカを覆っていた。




つづく

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この記事へのコメント

2013年11月23日 13:35
火剣「遥かな昏き闇の中」
コング「ハルカと遥かを掛けたな」
ゴリーレッド「いきなり大ピンチか」
火剣「死んでいるのに?」
ゴリーレッド「本来人間の生命は永遠。死んでも意識はそのまま残っている」
コング「死んだその日に冥王と出会ったというのはそういうことか」
火剣「あの世とこの世の堺。いや、あの世か」
コング「果てしない闇。はしたない闇。名言だ」
火剣「ハルカは全裸なのか?」
コング「そのよう、ぎひひひ。全身が拘束されている! しかも冥王の愛撫。もがいても叫んでも容赦ない。それが男ぞ」
ゴリーレッド「マダンテで対抗。勇者はそう簡単には屈しない」
コング「粘るねセニョリーター。でも次回に冥王が英雄の称号を手にするのは火を見るよりも明らかだ」
ゴリーレッド「阻止する」
火剣「魔法が使えるということは意識だけとも言えない。もしかして完全なあの世ではなくあの世とこの世の堺か?」
コング「☆三つです!」

2013年11月23日 22:53
白龍「マダンテ!それは敗北フラグ!」
ツヲ「大防御!」
チュルーリ「魔力を使い果たしたのに相手を倒せなかったら魔法使いとしては敗北必至だからな。」
ツヲ「まっかせなさい。ハルカちゃんにマホイミ!」
ルビデ「おっと、マホカンタだ。」
ツヲ「凍てつく波動!」
ルビデ「ひゃはー!黒い霧!」
白龍「エルフの薬を使うか。」
ルビデ「何いー!?」
2013年11月23日 23:00
>火剣さん
それは死に際の夢か、境界線の現か・・・冥府へ流れ着いた魂。勇者は死んでからも大変です。
イマジネーションの世界なので、現実で出来ることはここでも出来ますが、服をイメージしない限りは全裸ですね。

佐久間「体が冷たくなり、意識が遠のいていく“死”の中で、果たして服をイメージできたかどうか。想像に任せよう。」
山田「そんな前置きをしたら、イメージできない方に票が集中するじゃねえか。」
八武「だから、いいんじゃあ、ないか・・・。」
山田「イマジネーションの世界ってことは、現実で出来ないことも出来るのか?」
佐久間「理屈ではそうだが、かなり難しいぞ。日頃からディティールの詳しい空想や妄想をしていても、なお簡単ではない。」
八武「どうしても冥王の方が有利ってことだね。」
山田「口元が笑ってるのは気のせいか?」
八武「おっと失礼。拘束された女子を見て笑みを漏らすなど無礼千万、それはわかっているのだが、次回を思うと、どうしても・・・な。」
佐久間「まあ、ハルカの心が強い限りは屈しないけど。それもイマジネーションの世界のルール。」
八武「ここは冥王の腕の見せ所だな。」
山田「イマジネーションなら、再びマダンテは使えないか?」
佐久間「確かに周囲から魔力を吸収すれば可能だが、ハルカは魔王との戦いで、マダンテを使った後の無力さを噛み締めているからな。イマジネーションが妨害される。」
2013年11月23日 23:13
>千花白龍さん
ミレーユの虹孔雀もマダンテを使った後は脅威ではなかったですが、通信対戦などでもマダンテを大防御で耐えられた日にゃあ・・・。
ゲームでも種類によって扱いの違うマダンテですが、この世界では、極めるほどに大防御やアストロンも通用しなくなっていくという設定になっています。

山田「エルフの飲み薬! その手があったか!」
佐久間「イマジネーションの世界だから、それも可能だ。」
山田「よし。1回のマダンテで冥王を倒せるとは思えない。だが、10回100回のマダンテなら?」
八武「や、やめろーーーーーーーー!!」
佐久間「まあ、それで倒せるかどうかは・・。」

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