手と手を繋ごうもう一度 (前編)

この世界は決別に満ちている。

この世界は嫌悪に満ちている。
お互いに嫌い合って、憎悪の連鎖が止まらない。
被害者が次の加害者になる。連鎖、悪循環。

この世界は嫉妬に満ちている。
他と違う、他に勝る、他に劣る、それら全て僻みの理由たる。
妬み合う世界が、悔しくて悔しくて仕方ないんだ。

この世界は悪意に満ちている。
陥れてやろう、貶めてやろう、やっつけてやろう。
悪意の世界は悪意で守らなくちゃいけない。

この世界は欠乏に満ちている。
食べるものの欠乏だけじゃない。
心が欠乏するから、ケンカ別れして、敵味方に分かれてしまう。


敵味方になってしまったら、もう一緒には戦えないのだろうか?



◆ ◆ ◆



「勘違いしないでよ! あんたたち人間が、どうしてもって言うから、この防具を着てあげてるんだから! 着たいとか思ってないないんだからね!」

死族の攻撃に対する耐性を高める、特殊装備。
四天王の中でも耐性の低いイヴィルヘイトに、優先的に強力な装備が与えられた。

「うわー、エッチぃ格好してるー。ボク興奮しそうー。」

「バッカじゃないの! 魔族は基本、裸なんだし、このくらいの露出なんて、むしろ着込んでる方で・・・・・・その・・・・・だから・・・あまり見ないで・・・・・・」

イヴィルマリスの強烈な視線に、イヴィルヘイトは怯え竦んだ。
弱気になって、涙ぐんでいる。

「きいい、悔しい! あざとい!」

四天王で最強の耐性と守備力を持つイヴィルジェラシーには、大した装備は割り振られていない。
むしろ素早さを活かす為に、軽装になっている。

「そう言わないでよー、ジェラシー。質素な格好してる方がー、いけない欲望を滾らせちゃったりするんだよー。」

いつの間にかイヴィルジェラシーの背後に移動したイヴィルマリスが、服の中に手を入れる。

「あ、やめ・・・・あ、う、悔しい! されるがままなんて! でも感じちゃう!」

魔界では見慣れた光景だったが、ここは王宮だ。
兵士たちは目のやり場に困っていたり、咳払いをしていたりと、困惑の様子であった。


「こぉれ、じゃれ合っとらんと、そろそろ行くべ。封印が完全に解ける前に、スーラさんに、もう一度・・・」

言い終わる前に、イヴィルパンプキンの垂れ目が、ギョロッと東を向いた。

「まさか・・・・早すぎる・・・・・!」

「え!」
「それって・・」
「・・・っ!」

そこへスーラが駆け込んできた。

「大変です、街に死族が・・・!」



◆ ◆ ◆



東だけではなかった。東西南北の四方向から、死族の軍団が城下町へ侵攻してきていた。

「まさか・・・もう冥王が復活したなんて・・・?」

恐ろしい考えを口にしながら、イヴィルヘイトは涙ぐんでいた。
さっきとは違う。本気で恐怖に震えている。

「いえ、冥王が復活すれば、わかります。既に封印は壊れかけてるようですが、まだ完全復活には至っていません。」

スーラが恐ろしい考えを否定し、しかし額には汗が垂れていた。
逆に言えば、完全復活に至っていなくて今の事態である。もしも完全復活すれば、どうなるというのか。

「スーラ! ここは、あたしたちに任せて!」
「そうです、先へ行ってください。魔王様と、勇者のもとへ。」
「こっちはボクらで何とかするよー。」
「うむ、それが最善だべ。」

「わ、わかりました・・・。ご武運を。」


スーラは魔の大陸へ。

四天王は四方へ。

獣魔将軍イヴィルヘイトは西へ。
水魔将軍イヴィルジェラシーは北へ。
人魔将軍イヴィルマリスは東へ。
食料将軍イヴィルパンプキンは南へ。


駆けつけたイヴィルヘイトの目に飛び込んできた光景は、巨大な骸骨。
2階建て、3階建ての住居が、膝くらいまでしか届いていない。

「う・・・・」

しかし敵の大きさに気後れしたのも一瞬のことで、イヴィルヘイトは両手足を獣に変えて跳躍した。





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月29日 20:56
火剣「人気者の四人が再び登場だ」
コング「嫌悪に満ちているという言葉でイヴィルヘイトを思い出した」
ゴリーレッド「冥王は復活寸前?」
火剣「決別、憎悪、嫉妬、悪意に満ちた世界。今も昔も唐辛子だな」
コング「嫉妬、憎悪、悪意。僕には無縁の言葉だ。ぐひひひ。嫌悪はたまにある」
ゴリーレッド「コングはドクター八武と違って許容範囲が狭いからな」
火剣「マリスは相変わらずだ」
コング「何、露出? ぬーげ、ぬーげ」
火剣「全裸よりもチラリズムがいいんだ」
ゴリーレッド「スーラの額に汗。事態は切迫しているのか」
コング「四天王が東南西北に分かれた」
ゴリーレッド「東西南北だろ?」
火剣「東南西北白発中」
コング「おっと、ヘイト、変身したら露出度の意味がないではないか」
ゴリーレッド「シャラップ」
火剣「魔獣将軍だからな」
ゴリーレッド「建物が膝って、エレキングやウーの大きさか」
火剣「つまりウルトラマンだろ」
コング「♪ウールートーラの父がいる! ウー」
ゴリーレッド「るさい」
火剣「ヘイトと巨大骸骨か」
コング「待てよ。ヒロピンシーンならヘイト、人間の格好じゃないと。それがエンタというものよ」
ゴリーレッド「口が減らないな」
2013年11月29日 23:00
>火剣さん
再び四天王のターン! 対するは死族の軍団、しかも冥王が復活しかかっているので通常より強力になっています。
格好も含めて危ないイヴィルヘイトですが、獣になったのは手足だけなので、顔から胴体は人間です。

八武「獣っ娘キター! 顔と美ボディは人間。これだよ!」
佐久間「最初から全力を出すと敵に底を見られるし、装備もゲームと違って人間の胴体のサイズに合わせてある。何より人間たちと戦うのに獣の姿ではまずいからな。読者サービスと見せかけて、ちゃんと理由があるのだよ。」
山田「読者サービスの理由付けを必死で考えてるように見えるが。別にいいけど。」
八武「出来れば脚は人間部分が多いと助かる。」
山田「何が助かるんだ。」
八武「そりゃあ逞しい脚も悪くないが、やっぱり細い脚が好き。」
山田「しかし相手、でかすぎねえか?」
佐久間「地獄の軍団だからな。」
八武「迫るショッカー!」
佐久間「ちなみに脱衣麻雀をすると、だいたいヘイトが負ける。」
山田「それは言う必要があったのか?」
八武「たいへん重要な情報だ。」
佐久間「でかい役を狙って失敗するのがヘイト、1位を攻撃するのがジェラシー、嵌めるのがマリス、アガリ優先がパンプキン。」
山田「性格が出るな。」
八武「戦闘に当てはめると、ヘイトは敵を一撃で倒そうとして失敗すると。」
佐久間「だいたい合ってる。」
2013年11月30日 09:07
帰って来た…じゃなくて、ところ変わって四天王のターン。いいタイトルですね。最終的には冥王に納得してもらって、死者は死者の領域で暮らしてもらうとか、そんな世界になる気がしてきました。今まで冥王を戦うこと、倒すこと、封印することばかり考えていましたが、ピルトが仲間に加わったように、冥王とも分かり合える?100人に聞けば99人はこう答える、それは無理だと。
しかし。しかしですよ、この物語の全体のテーマを象徴しているのがこのタイトルだとしたら。99%無理でも、99.9999%無理でも、可能性は0ではない。そして今、手を繋ぎ始めている。魔王さんもハルさんもハルカさんと戦うのは気が引けるし、スーラさんも同じく。だったら、魔王が人間と和睦を結ぶ提案をしたように、冥王も、勇者も、魔王も、竜王も、人間も、魔族も、竜族も、皆が幸せに暮らせる道があるかもしれない。
頑張れ、四天王。応援してます。
2013年11月30日 22:26
>千花白龍さん
ウルトラマンよりは怪獣の側な四天王ですが、今回は人間の味方。そして人間と魔族が手を繋げたように、まさか死族とも手を繋げるというのか・・・!?
やはり鋭いところを突いてきますね。果たして100人の中の1人は、誰になるのでしょうか?

山田「まさか、そんなことが出来るのか? 確かにピルトは仲間になったが・・。」
八武「冥王の人格によるかな。」
山田「だったら無理じゃね。」
八武「死者は調教するかもしれないが、生き物には優しかったりして。」
佐久間「やらしかったり。」
山田「おい。」
佐久間「未来は無限の可能性で満ち溢れている。それは時として絶望の言葉であるが、時として希望の言葉である。」
山田「いいセリフを吐いて誤魔化そうとしても無駄だぞ。」
八武「みんな仲良く闇堕ちしよう。そうしよう。」
山田「お前から闇に落ちろ。」
八武「フハハハハ、既に落ちている。」

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