手と手を繋ごうもう一度 (中編)

◆ ◆ ◆



「幾らでも来てくださいよ。私のグランドクロス で浄化して差し上げますから。」

北の戦場で四天王イヴィルジェラシーは、迫り来るゾンビたちを、祈りを込めた十字真空波で薙ぎ払っていた。
残骸は兵士たちが回収し、聖水の入った容器に封印。
少しずつだが、着実にゾンビたちの数を減らしていった。

(ふぅ、やはり完全復活していなければ、こんなものかしら・・・? この分だと、マリスもパンプキンも苦戦していまい。だけど・・・ヘイトは危ないかも・・・・。)



◆ ◆ ◆



「こなくそっ!」

巨大な骸骨を獣の爪牙で薙ぎ払うイヴィルヘイト。
しかし骸骨は何事も無かったかのように、組み立て復活する。

「くっ、こいつら!」

その称号に相応しい“嫌悪”の目つきで、イヴィルヘイトは骸骨を睨む。
彼女が苦戦している間にも、次から次へと大きな骸骨が歩いてくる。まるで余裕を楽しむかのように。

「あ、そうだ、グランドクロス!」

しかし骸骨兵士は、ひらりと身をかわしてイヴィルヘイトに剣を叩き込む!

「がふっ・・・!?」

「イヴィルヘイトさん!」

兵士の1人が助け起こす。
イヴィルヘイトの腹部は血まみれだ。

「へ、平気・・・。魔族は、生命力、強いから・・・。」

血を吐きながら立ち上がるイヴィルヘイト。

「か・・・かかってきやがれ骸骨ども! 魔王軍四天王、イヴィルヘイト様が相手になってやるぞ!」


すると、骸骨たちの後ろから、やや小柄な・・・といっても、民家を上回る大きさの、太ったゾンビが出てきた。
それは獣のようにも見えた。尖った口からは、鋭い牙を覗かせていた。

「臭ええええええ! 人間くせええええ! 生き物くせえええええ!」

そう言う本人が最も臭そうな息を発し、他とは雰囲気の違うゾンビは、たっぷり見下した。

「お前ら、下! すんごい下! 臭い! このカースト様が、蓋をしてあげますよ!」

「カースト・・・冥王の左腕・・・!」

イヴィルヘイトは青ざめた。
もしも本来の力関係であれば、とても敵う相手ではない。

冥王の復活が不完全とはいえ、それだけで覆る実力差かどうか。
部下レベルに苦戦していて、カーストに勝てるのか。

「あ~、くせえええええ! くせえええええ!」

「・・・・・・。」

イヴィルヘイトは、かつて似たようなセリフで人間たちを侮蔑していたことを思い出していた。
それを恥じる気持ちが、彼女の顔を赤くさせる。

「あんた・・・・・・きらい。」

闘気が収束する。散漫だった精神力が集中する。
イヴィルヘイトの爪牙が形を変えた。

「くせえええ・・・・・・え?」

それは一瞬のことだった。イヴィルヘイトのスピードは、目にも止まらなかった。
カーストの肉体は八つ以上に切り裂かれ、肉片を土に晒した。

人間の姿のままで、イヴィルヘイトの戦闘能力は本来の獣の姿に匹敵するようになっていた。


「やった・・・!」(けれど、まだ・・)

カーストが八つ裂きにされても、骸骨たちは怯むことなく剣を振るってくる。
それにイヴィルヘイトは応戦し、速さを増した爪牙で骨を砕く。バラバラにするのではない、粉々にするのだ。
破片は兵士たちが集め、聖水に浸ける。

(よし、勝てそ・・)

だが、そのときだった。1人の兵士がイヴィルヘイトを抱きかかえて転がった。

「な、何すんのよ! ・・・・え・・・・・・・」

兵士の下半身が吹き飛んでいた。
見れば、倒したはずのカーストの肉片が、再生しつつあるではないか。
そのうちの大きな肉片から、イオナズンを収束したレーザーが放たれていたのだ。

「あ・・・バカ・・・・あたしなら、こんなんで死なない、のに・・・・!」

ぽろぽろと涙を流しながら、イヴィルヘイトは思わず兵士の手を握った。
兵士は最後に嬉しそうに笑って、息を引き取った。

「ば、バカあ! 死ぬなあ!」


そこへ復活したカーストの、ねじくれた声が聞こえてきた。

「くせえええええええ!! 三文芝居くせええええええ!! 人間くせえええええええええ!! だーかーらー、お前ら生き物は、下なんだな! あー、臭くてたまらねえ! 殺してあげるよ、くさくなーい!」


「バカにするなああっ!」

涙を飛ばしながら、イヴィルヘイトが切りかかる。

「あたしだって、人間を臭いって罵ったことあった! 人間を食べたことだって数え切れない! だけど、わかった! お前みたいな奴と同じになりたくない! あたしは、もう人間を食べたりしない!」

「ぐわあああ! くせええええ!」

カーストは押されていた。
死んでいるがゆえに汗はかかないが、焦っている様子がわかる。

「下僕ども、何をしているかああ! この臭い奴らを片付けろおおお!」

だが、人間とて無力ではない。
先程までの攻防で数を減らした死族軍団は、兵士たちや魔導師たちが食い止めていた。

「きらいだ、カースト・・・・・お前なんか、死んでしまえ!」

カーストは百の肉片になって宙を舞った。

「死族に、死ねっていうのも、おかしな話だけどね・・・・・。」


だが。



ジゴスパーク



「きゃああああああああああああ!!?」

地獄の稲妻がイヴィルヘイトの体を芯から撃ち抜いた。
そしてカーストの肉片は一箇所に集まり、せせら笑いから復元された。

「くせえええええ! 四天王ふぜいが、このカースト様に逆らうなんて、くせええええええ! 冥王の復活までには時間があるが、そなたらを殲滅できるだけの力はあるんだよおおお! 冥界から流れ込んでくる死のエナジーが、我らを何度でも、蘇らせてくれるのだああああ! くせえええええええええええええ!!」


「か・・・・はっ・・・・・・」

全身を電撃で嬲られ、イヴィルヘイトは地面に落ちた。
もはや指一本も動かせない。

「あー、くせええええ! 今から殺して、臭くなくしてあげようねええ! 収束イオナズン発射準備完了!」

「う・・・・ううう・・・・・悔しい・・・・・・あたしが、こんな奴に・・・・・・」

「死ねえええええええええええええええええええ!!!」




グランドクロス

メラゾーマ

ビッグバン




カーストの放ったイオナズンは、突然の3攻撃によって打ち消され、更にはカースト自身をも吹き飛ばしていた。


「悔しいなんて、私のセリフですよ。お株を奪われて悔しいです。」
「あははー、間に合って良かったー。すっごいエッチぃねー。」
「オラたちが来たからには、もう安心だべ!」

「み・・・みんなあ!!」


イヴィルヘイトは四天王最弱である。
それは裏返せば、他の四天王はイヴィルヘイトより早く死族軍団を片付けることが出来るということでもある。
ましてカーストのような強敵がいないなら猶更。駆けつけたのは奇跡でも何でもない、必然だった。





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月30日 09:28
カースト、うぜえええええええ!(←褒めてる)冥王の左腕なだけはありますね。こう、なんというか、こいつだったら全力で倒したくなる敵っていうか、ある意味戦いやすいっていうか。ハルカさん相手だと躊躇するかもしれない魔王でもこいつは遠慮なくぶっ飛ばせる感じ。
四天王がそろい踏みで、これで勝てる。でも、タイトル的には冥王の左腕とも手を繋ぐのか?え?どうやって?それともこいつは新世界に必要ないと消し去るのか?う~ん、敵キャラ的には美味しいけど、仲間にすると常に臭ええええええって叫んでそうだから嫌だな…。
2013年11月30日 15:31
火剣「イヴィルヘイト危うし!」
コング「太ったゾンビ?」
ゴリーレッド「ついにカースト。冥王の左腕が現れたか」
コング「さあ、かわいいヘイトのヒロピン劇場だ!」
火剣「臭いって言葉は最低の侮辱だな」
ゴリーレッド「ウザイ、キモイ、キョドッテル以上にくせえは侮辱の言葉だ」
コング「美人に対してメス豚と罵るのはまだ官能的な響きがあるから良いが」
ゴリーレッド「良くない」
コング「臭いと罵られて死ぬほど悔しい。悪党の共通は神経を逆撫でする言葉責めが巧みなことだ」
火剣「嫌悪はヘイトにとって集中力と闘争心を湧かす力になるのか」
ゴリーレッド「なるほりろ」
コング「半裸のヘイトに電撃で全身を嬲るなんて、やはりドエスアクマンやモヒカンは紳士だ」
火剣「やはり殺し合いはレベルが違うな」
コング「ジャスミンやかごめは常に殺し合いの場に身を置いている」
火剣「木っ端微塵にされても死なないとは奈落のようだ」
ゴリーレッド「三人の助っ人で助かったか。ホッとした」
コング「ヘイトは人間らしい感情が芽生えたな」
火剣「自分を犠牲にしてヘイトを護った兵士。忘れることができないだろう」
ゴリーレッド「敵は強い」
コング「強敵が物語を盛り上げるのです」
火剣「戦いの旅はつづく」
コング「キザ」
火剣「うるせえ」
2013年11月30日 22:38
>千花白龍さん
書いていて楽しいけれど腹立たしい、左腕カースト。元ネタはバラモスとムドーですが、敵として思った以上にキャラが立ちまくり。
死族と手を繋げる可能性はあっても、カーストと繋ぐ手は無さそう・・・。人間同士でも手を繋げない相手は多いですから。
アスペルガー症候群の話で、子供の頃は周りが常に異臭に満ちていたという人の話を聞いたことがあり、それの影響も受けています。

佐久間「カーストが仲間にしてやろうと、こちらを見下している!」
山田「焼き殺す。」
佐久間「四天王が揃っても、まだ勝てるかどうかはわからない。」
山田「ムードは勝利フラグなんだが・・。」
佐久間「そう甘くはない。カーストは冥界きっての魔導師だ。」
2013年11月30日 22:56
>火剣さん
口の悪さはピルトを凌駕する、冥王の左腕。やはりバラバラになっても復活してきます。強敵です。
対するイヴィルヘイトは嫌悪感を怒りに変えてフルパワーを発揮していますが、やはりカーストは強い。神経を逆撫でする口の悪さも脅威ですね。

佐久間「臭くて強い! それがカースト。」
山田「嫌でない要素が何ひとつ無い・・! 奈落も早くくたばれと何度思ったか。」
八武「だからこそヒロインが輝くのだ。嫌悪に身を震わせるイヴィルヘイト、イイ!」
山田「無名の兵士の輝きを忘れてはならない。」
八武「うむ、命を懸けて美少女を守るのは男のロマンだな。男として理想の死に方のひとつ。」
山田「そうかもしれない。」
佐久間「死を想うことが女を強くする。イヴィルヘイトの成長率は高い。」
山田「人間の姿で本来の力が出せるようになっただけでなく、人間の心も獲得したか。」
八武「メスライオンも捨てがたいが。」
山田「おい。」
八武「虎だっけ?」
佐久間「まあ確かに火は噴くけど。ヘルゴラゴは・・・やっぱライオンかな。」
八武「ヘルゴラゴ・・・ふむ、電気拷問には弱いようだ。ウヒヒ。」
山田「お前は悪魔系か?」
八武「エロリストだ。」
佐久間「さて次回、決着!」

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