手と手を繋ごうもう一度 (後編)

◆ ◆ ◆



究極の蘇生呪文“ザオリク”は、高度な魔法である。
ゆえに、死者を蘇らせるには、幾つかの条件がある。
まずは寿命による死亡ではないこと。
精霊の加護を受けていること。
そして、肉体の損傷が一定以上でないことだ。



◆ ◆ ◆



「くせえええええ!! また臭い臭い奴らが! やって来た! くせええええええええ!!」

早くも再生したカーストが、下卑た声をあげて四天王を睨みつける。

イヴィルヘイトも負けてはいない。
強い意思の籠もった瞳で、カーストを睨む。

「しんでしまえよ・・・かーすと・・・!」

イヴィルパンプキンのベホマズンで回復したとはいえ、まだ地獄の稲妻の激痛が残っている。
だが、そんな痛みさえ凌駕するほどに、イヴィルヘイトの憎悪と嫌悪は凄まじかった。

「よし、戦えるわね。悔しいけど、オイシイとこは譲ってあげるわ。」

守備力の高いイヴィルジェラシーが前に出る。
イオナズンであれば耐性があるし、ジゴスパークもイヴィルヘイトほど効かない。
そして再生する肉片はイヴィルマリスがメラゾーマで焼き尽くす。
回復はイヴィルパンプキンにお任せだ。


「くせえええええええ!! くせえええええええ!! くせええええええええ!! 集えええ、黒き光よおおお!!」


「ジゴスパークかっ!」

すぐさまイヴィルジェラシーが立ちはだかり、身を固めて備える。

だが、訪れた衝撃は彼女の想像を超えていた。


「冥王左端カーストの名において命ずる! その偉大なる闇の力を戯れに解き放ち、我が眼前一切の臭い下民どもを灰塵とせよ・・・ダークネスアトミックジェイル!!


黒い津波。そう形容するのが最も近い、暴虐の奔流が押し寄せた。
津波はすぐに爆裂に変化し、沸騰するかの如く荒れ狂う。

城下町の一角、西方のエリアは、跡形も無く消し飛んでクレーターになった。

「くせええええええええええええええええええええ!!!」

歓喜の声をあげて、カーストが中心に立っていた。


「う、ううう・・・・・・・」


生き残ったのはイヴィルパンプキンだけだった。
イヴィルヘイトも、イヴィルジェラシーも、イヴィルマリスも、無惨に屍を晒した。

「くせええええええ!! だけど死んだら臭くなーい!! だが、まだ臭い! あー、臭い!」

「まさか禁呪まで使ってくるとは・・・・オラを怒らせたな?」

尋常ならざる殺気を発し、四天王の大将イヴィルパンプキンは双眼を鋭くした。

「くせええええ! それがどうした!」

「よくも人間たちを粉々に・・・・。オラは食べ物を作るのが好きだべ。精魂込めて作った食べ物を、美味い美味いって食べてくれる笑顔が好きだべ。それで、すくすくと育って、大きくなって・・・・・・。そんな人間たちを、一瞬で、粉々にしたなあ? 死族は食べなくても活動できる・・・・だから、食べる喜びも、わかんなくなってしまうんだあああ!!!」


ザオリク
ザオリク
ザオリク


そう、人間たちを殺したこと。蘇生も出来ないように、粉々にしたこと。それに怒りを燃やして、なぜ仲間の四天王が殺されたことには触れてないのか?
簡単なことだ。四天王は屍を晒していた。それは肉体が残っているということで、“聖堂”で精霊の加護を受けていた四天王は皆、ザオリクで蘇生できるようになっていたのだ。


「くせえええええええええええ!! ならばならば、二度と蘇らぬように、このカースト様が、貴様らのハラワタを食らい尽くしてくれるわああああああ!!」


「その前に、お前が死ぬべ。」


見れば、そこらかしこにカボチャだらけ。


「オラの魔法は、あらゆるものをカボチャに変える。冥界から供給される、死のエナジーでも。」

「ぬ、ぬあああああ!?」

「お前はカボチャ魔法に耐性を持っていても、あらゆる意味で生物ならざるエネルギー自体が、耐性を持てるはずはないべやな・・・。それで、供給を絶たれた死族は、どうなるんだっけ?」

「うおのれ、こうなれば、今一度ダークネスアトミック・・」

カーストが詠唱に入ろうとしたとき、既にイヴィルヘイトの爪牙が狙いを定めていた。


「させるものかよ、カースト。あんたは死んで、匂いも何も無い冥界へ・・・・・・帰れ!!」

「がああっ・・・・・・・・・・」

カーストは八つ裂きに、更に八つ裂きに、細かくなっていく。
嫌悪と憎悪を込めて、爪牙が肉塊を肉片へ変えていく。


「おのれおのれおのれえええええ!! 滅びてたまるものかあああああああ!! 貴様らの肉を食らい尽くしてくれるわあああああ!!」


肉片がイヴィルヘイトとイヴィルジェラシーを襲う。
お腹のあたりを執拗に狙って、侵蝕しようとしているのだ。

「嫌あああああ!!」

「く、悔しい・・・・こんな腐った肉片に・・・・!」


「め、メラゾー・・」

だが、イヴィルマリスにも肉片が絡みつき、自由を奪う。

「ん・・・むぐ・・・・」


「し、しっかりするべ!」

だが、イヴィルパンプキンがカボチャ魔法を解けば、それこそカーストは完全に再生してしまう。
カボチャ魔法は強力だが、非常な集中力を必要とする。先程は「エネルギーが耐性を持つわけがない」と言ったが、それこそ耐性でも持ってるのかというほどに、元に戻ろうとする圧力が強い。
しかも、死のエネルギーは後から後から押し寄せてくるのだ。

「ま、まずいべ・・・!」


だが、しかし!

人類は愚かではない。
人類は愚かではないのだ。
この惨状を見て、何事も無いと思う人間はいない。

すぐさま魔導師の部隊が、危険地帯へ向かっていた。
そして今、到着した魔導師たちが火焔呪文を放って、カーストの肉片を焼き尽くしていくところだった。

「くせええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」

断末魔の悲鳴をあげながら、カーストは消し炭になっていった。



◆ ◆ ◆



「あ、ありがとうなんて言わないんだからね! あんたたちに助けてもらわなくても、勝てたんだから!」

「はいはい、わかってますよ。」

顔を真っ赤にして叫ぶイヴィルヘイトに、魔導師が笑いながら答える。


「悔しい・・・。人間に助けられるなんて、四天王の名折れだわ・・・。」

「あははー、でも、悪くないね。人間に助けられるのって。」


隠れている肉片も、イヴィルマリスが見逃さない。
彼の悪意は、冥王の側近をも凌駕する。

そして、かつての敵同士は、人間と魔族は、共に勝ち取った勝利を称えて握手をした。

「すまなかったべ・・・・街の人たちを助けられなかったべ・・・・。」

「パンプキンさん、その言葉だけで嬉しいです。元は敵同士なのに、そんなこと・・・。」


だが、喜びも悲しみも、それに浸っている時間は無い。
スーラの後を追って、魔の大陸へ向かわねばならない。

最悪の事態を想定すれば、戦力は多いに越したことはないのだから。


繋いだ手を再び離し、四天王は死地へ赴いていく。






   手と手を繋ごうもう一度   完

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この記事へのコメント

2013年12月01日 15:24
火剣「タイトルは手と手を繋ごうもう一度か」
コング「♪ゆーびを、繋いだらohフレーンズ!」
ゴリーレッド「カーストが再生したか」
火剣「しんでしまえよ。嫌悪と憎悪が込められている」
コング「強力な技だ、パンプキンのボヘミアン」
ゴリーレッド「ベホマズン。全然違う」
コング「♪ボヘミアーン!」
ゴリーレッド「稲妻レッグラリアット!」
コング「どおおお!」
火剣「まさか、ヘイト、ジェラシー、マリスがやられたか?」
ゴリーレッド「ザオリク。仲間を蘇生させて、ついにカーストを倒した」
火剣「魔導師に礼を言えないヘイト」
ゴリーレッド「ヘイトにとっては、ありがとうと同じ言葉だ」
火剣「人間と魔物が手を繋いだ」
ゴリーレッド「しかし向かうのは死地か」
コング「あれ、ヒロピンがないうちに完?」
ゴリーレッド「アトミックドロップ!」
コング「NO!」
火剣「狼と羊以上に団結するのは難しいかもしれねえ」
ゴリーレッド「山犬と村人が手を繋ぐほどの奇跡か」
コング「奈落とかごめが手を結ぶほどの奇跡?」
ゴリーレッド「・・・一旦泣かす」
コング「ダッシュ! 四十八手逃げるか勝ち」
火剣「まだまだ旅は続くな」
2013年12月01日 15:53
ついに名言(?)、ハラワタを喰らい尽くすを吐いたカースト。まさにバラモス。
ドラクエの世界ってザオリクがあるから死なない世界かと思いきや、死んでいる人もたくさんいる。思えばバラモスが二度と生き返らぬようそなたのハラワタを喰らい尽くしてくれるわ、って言ってたので、保存状態のいい死体がないと生き返らないんでしょうね。ことによると、くさったしたいで蘇るのかも…。
カボチャ魔法も飛び出して、最後には人間と協力し勝利!しかし、被害は大きい…。
一度繋いだ手を離しても、心は繋がっている。そろそろ四天王と勇者が合流しそうですね。
2013年12月01日 23:13
>火剣さん
かつては敵同士だった、人間と魔族。しかし再び手を繋いで、強敵に打ち勝つことが出来ました。
冥王の右腕はベスラの部下となり、左腕は消滅。残るは冥王。四天王たちは、いよいよ魔王のもとへ馳せ参じます。

八武「肉片に襲われるシーンが短すぎる!」
山田「だからヒロピン物語ではないと。」
佐久間「そうだったっけ。」
山田「お前の頭は鳥か?」
佐久間「冗談はボヘミアン・ラプソディー。団結の力でカーストに勝利だ。犠牲は大きかったがな。」
山田「素直に喜べないか・・。だが、まだ戦いは終わっていない。」
八武「つまりヒロピンの機会も。」
佐久間「あったっけ?」
八武「鳥頭の佐久間は信用ならん。」
佐久間「ち・・・チキン。チキン・ジョージはケンブリッジ。」
山田「何が言いたい・・。」
佐久間「チキン・ジョージも奈落も、歪んだ社会の吹き溜まりのような存在だ。単独の絶対悪など、そうそう存在しないな。」
山田「奈落とは間違っても手を結びたくないが。」
八武「じゃあ、違うとこを結ぼう。」
山田「ラリアット!」
八武「かわす!」
山田「正拳!」
八武「ぐげっ!」
佐久間「次回から、ついに最終幕。」
八武「膜?」
山田「まだ暴力が足りないようだ。」
八武「待て、我々は人間だ。話し合おう。」
2013年12月01日 23:20
>千花白龍さん
このシーン、よっぽど「そなたらのハナミズを飲み尽くしてくれるわ!」にしようかとギリギリまで迷っていましたが、何とか思い留まりました。
蘇生させるには最低限、肉体が残ってないと駄目ですし、あまりにも損傷が酷かったり腐ってたら無理そうですね。死体には回復呪文も効きませんし・・・。

佐久間「何故アッキーはカセギゴールドをリスペクトしなかったんだろう。わけがわからないよ。」
山田「しなくて正解だ。シリアスな場面が一気に台無しになる。」
佐久間「それがいいんじゃないか。」
山田「よくねえよ。」
八武「女子のハラワタって、やらしい響きがあるよねぃ。」
山田「グロい。」
八武「何だと貴様。私なんか、美人の外科手術をするときは、常に興奮してるんだぞ。」
山田「最低な医者だな・・・。」
佐久間「むしろ最高だろ。」
山田「俺たちの心はバラバラだ。」
佐久間「だから面白いんじゃないか。」

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