明日も世界は笑ってる (前編)
◆ ◆ ◆
つまり要するに・・・笑いと、恐怖は、同じものだよ。
理解できないものに対しての反応という意味でも・・・同じだし、恐いときって、ほら、笑うしかない、じゃない?
いじめとか・・・嫌なことを、言われて、苦笑いでも、笑ってしまうのは、つまり要するに、恐いからだ。
恐さを紛らわす為に笑ってる・・・とも言えるし、笑うことで、恐怖を、楽しんでる、とも言える、かな?
けれどしかしそれはあまり健全な行為とは言えないようで・・・そういうこと、してると、笑顔が、壊れるみたい。
笑っていても笑ってないように見えるし・・・笑ってなくても、笑ってるように、見える。とか。
つまり要するに不健全な行為には然るべき代償が伴うわけで・・・だから、不健全、なんだけど、ね。
笑顔が壊れるというのは結構な代償で・・・人から、信用されないとか、愛されない、とか、色々ある。
例えば・・・好きな人に、最高の笑顔を、送りたいと思っても、壊れた笑顔に、なってしまう、のだ。
もう二度と好きな人に最高の笑顔を見せることが出来ない・・・という、のは、悲しい、こと、だ。
◆ ◆ ◆
「はにゃ~ん。」
4月の頃のボクと言えば・・・世界なんか、滅んでしまえ、と、大真面目に考えていた。
あれから3ヶ月ほど経った今では・・・世界が、酷く理不尽に、滅びたら、面白いなぁと、思ってる。
いやしかし実際だって世界とか・・・滅んでも、たかが、滅ぶだけじゃん?
この宇宙がどうやって誕生して今後どうなるのかって物理学者の間では熱心に議論されていてエントロピーとかブラックホールとか光の粒子だらけとか色々と言われているけれど・・・人間は、滅んでる、よね?
いや何で人間というか人類に限定するかというと・・・宇宙の誕生に、関する、議論で、人間を中心にした、考え方というのが、あって、つまり要するに、簡単に言うと、人間は特別だって、こと。
人間は特別。何か引っかかる言い回しに聞こえる・・・のは、逆に、人間が特別だって、ことの、証明っぽいけど。
とりあえず人間は特別で神様に選ばれた存在だというのは・・・少しの、違和感を、除けば、当たり前に、肯定できる、もの、だ。と思う。こともある。
どういう意味で特別かという話にもなってくると思うけれど・・・考えて、みると、恐い、よね。
宇宙の始まりとか終わりとか考えるとさ・・・すっごく、恐く、ならない?
物理学によれば完全な“無”というのは有り得なくて・・・エネルギーが完全に、ゼロの状態からでも、“場”としての存在があって、宇宙が生まれてくるとか、何とか。
きっと世界は1枚のカードを下敷きにして誕生したんだ・・・あ、カードってのは、比喩ね、比喩。
つまり要するにボクがデュエリストだからデュエルに関する比喩を使うわけで・・・たとえカードであっても、カードじゃない、何か、だよね。
そのカードをパタンと引っくり返したら世界も引っくり返ったりして・・・あ、そもそも裏表とか、ある、の、かな?
それにしてもボクは何故こんなにも世界を滅ぼしたいとか思ってるんだろう。?
それはまあ・・・世界を敵に回したら面白そう空想、という、やつか、な?
世界という大きなものを敵に回すと想像するとさ・・・お腹の、このへんが、ちょくちょくって、ざわつかない?
いやしかしだけど実際・・・本当に世界を、敵に回したら、身近な人の非難とかで、すっごい、へこむ、と思う。
例えばボクの場合なら・・・そこにいる、生徒会副会長の、畦地濃海(あぜち・のうみ)、あたりに、本気で、怒鳴られたりなんか、したら、後悔して夜とか昼とか、寝られない、と思う。
「生徒会の仕事って・・・何か、平凡、だよね?」
「・・・・・・。」
濃海は太った体躯に似合わずとか言ったら失礼なんだけれども仕事が早くて丁寧で字が綺麗だ。
彼自身は太ってることがコンプレックスらしいので体型の話はタブーなんだけどタブーといっても言おうと思えば言えるしボクそういうの平気で言えるし平気で人を傷つけられるから頃合を見て言おうかと思ってる。のだが。
「平凡。結構なことだろ。特殊を求めたがるのは悪くないにしても良くもない。いや、特殊でなく特別か。そういうのは何か不満があるからであって、不満があるということは、ある意味で特別とも言える。だから自分の不満について、よく考えてみるべきであって、現状変革も現状維持も、そこから生まれてくるものなんだ。」
あ・・・優等生の、回答。
嫌味じゃないところが・・・逆に、何か、嫌味だ。
「しかし、特別は特別の良さがあるとは思う。永遠(とわ)会長は、極めて驚異的な頭脳を持っていて、編入試験も満点だったと聞いてる。それは凡人には味わえない類の優越感だろう。」
いやまあボクの場合・・・単に、記憶力のリミッターが、壊れてる、というだけで、頭が良いわけじゃ、ない、のだけど。
けれどしかし確かに言われてみれば満点を取るというのは喜びではある・・・社会に出て、役に立たなくても、だ。
もちろん社会で役に立たないとか何の役に立つんですかとかいうのは極端な話であって・・・集中力とか、事務処理能力とか、そこそこ、役に立つ。と思う。
ちなみに生徒会長になれたのもボクの事務処理能力を買われてのことだと割とすぐに気付いた。
つまり要するに生徒会長というのは・・・パシリだ。
「生徒会長というのはさ・・・もっと、こう、華やかというか、授業中に、今すぐ生徒全員、校庭へ集まれって、放送かけて、人を集める的な、そういう、人望が、あると思ったんだけど、な?」
「永遠会長は生徒会を何だと思ってるんだ。マンガやアニメの観すぎだ。」
「あー・・・マンガや、アニメを、見下した、な。」
「見下したつもりはなかったが、永遠会長が見下されたと感じたなら、やっぱり見下したかもしれん。ただ、それはそれとして、現実と虚構の区別はつけるべきだろ。」
わーお・・・またしても、優等生の、回答。
「ま・・・それは、ともかく、ボクとしては、もっと、悪の生徒会、とか、悪の理事長、とか、地下室で秘密兵器、とか、そういうのと、戦いたい、の。」
「我々が生徒会だろ。」
「そうだよ・・・4月は、よかった、な。部活潰し、って、いかにも、悪の生徒会って、感じだった、よね?」
「人聞きの悪いことを。ろくに活動してなくて部費だけせしめる部活が無いか監査しに行っただけだ。」
「でも・・・実際に、潰した、よね、UFO研究会。UFOは、本当に、存在するのに。」
「未確認飛行物体が存在するかどうかはともかく、活動せずに部費を得てるのが問題だったはずだ。」
「活動内容なんて・・・他人が、決める、ものじゃ、ないよ。それを、勝手に、決めつけて、潰した、我ら、悪の生徒会。」
「学校から部費を得ずに、同好会を作ればいいだけだろ。」
またしても優等生の意見。
「でも・・・あの頃の、ボクは、ただ、部活を、潰したかった、だけなんだよ、ね。」
「そういうところは、大河(たいが)によって改善されたんだろ?」
「ま・・・そう、言える、よね。改善、というと、ニュアンスが違うかも、だけど。」
4月の頃のボクは荒れていて・・・言葉遣いが、でなく、乱暴、でもなく、近い言葉で、言えば、辛辣、だった。
学校のルールを守らない生徒に対して強権を発動して取り締まることに快感を覚えていて・・・歯止めが、きかなくなって、いて、まるで、独裁者だった。
そんなボクに対してデュエルを挑んできたのが大河柾(たいが・まさき)だった。
デュエリスト能力を持たない彼がレベル4能力者に勝つのは普通なら不可能だ。
けれど彼は普通ではない・・・いわゆる、メタゲーマー、というやつだ。
ボクのデュエリスト能力は攻撃力だけならレベル5級を自負しているけど・・・しかし実は、初見では、わかりにくいけれど、致命的な、弱点が、3つある。
マサキには・・・そのうちの、1つ、強制効果である点を、突かれたのだ。
普通なら致命的という形容をするほどの弱点でないのだけれども・・・メタゲーマーにとっては、強制効果というだけで、かなりな、弱点だ。ということ、らしい。
マサキは完全なメタゲーマー体質じゃないからボクに勝つには23回かかったけれど・・・ね。
メタゲーマーというのは面白くて・・・なまじっか、中途半端な、強さの相手、には勝てなくて、相手が強い、ほど、その実力を、発揮する。強い、ほど、弱点も、浮き彫りに、なるとか。
翔武学園には吉井康助というメタゲーマーがいて・・・かの“門番”(ゲートキーパー)天神美月、に、勝ったことが、あるとか、なんとか。
無能力者がレベル5に勝つというのは普通なら考えられない・・・だから、吉井康助も、異常者の側、なんだろう。
「ところで永遠会長、前から思ってたが、その喋り方どうにかならないか?」
「え・・・変、かな?」
「変だ。」
「濃海のドS。」
「何故いつもいつも人をサディストにしたがる。」
「だって・・・あ、いや、趣味。」
ベトナム戦争で活躍したウィリアム・ヤーボ大佐・・・彼が、とっても、好み、なのだ。
痩せてたときの彼も良いけれども・・・デブな彼が、チョー好き、だ。踏まれたい。
サディストのデブって・・・萌える、よね?
いやまあそれはそれとして・・・口ごもった、理由は、わかったと、思う。
濃海は体型のことに触れられるのが嫌だから。
あ・・・しまった。今が、頃合、だった、のかな?
「人類なんて生きてるだけでドMでしょ? だからSが輝く・・・というのが、ボクの持論、なんだけど。」
「相変わらず壊れてるな。」
「壊れてない人間なんていないよ・・・まあ、この言い方も、仲間が欲しい、という、感情を、補整する、理屈、なんだけど、ね。」
「そうでもない。」
おや・・・優等生の濃海は、肯定すると思った、けど。
「壊れてるって理解できるのは、壊れてるからだろ。」
「そういうことも言えるんだ。」
「もちろん程度の差はあるさ。壊れてる部分が少ない人間が正常と呼ばれるんだ。それは正しいことで、どこかで正常と異常の区別はつけないといけない。基準が無いと無闇に混乱して、生活が破綻するからな。以前に桐坂が言っていたことだが、同性愛者やロリコンは、生物としての本来あるべき姿とは違うということに対して、もっと謙虚になるべきだと。無職の人間は、社会に生きる人間としての義務を果たしてないことに対して、もっと謙虚になるべきだと。そういうことを言っていた。俺も概ね同じ意見だ。謙虚になるべきとは思わないが、異常であることを自覚すべきだとは思う。」
「濃海語録の中でもトップクラスに冷たいセリフだなぁ。」
「そう聞こえたなら、まあ冷たいんだろう。ただ俺は、異常であることは悪いとは思わない。謙虚になる必要もないし、卑屈になる必要もないと思ってる。」
やっぱり優等生の意見だよね。
どこか上から目線なのは仕方ないとして・・・それよりも、まともじゃないから卑屈になるって、そういうことは、あ、いや、こういうことを言うと、それは卑怯な、気がする。かもしれない。
「それで・・・悪の生徒会、の、話なんだけど。」
「悪が好きなのか。」
「あ・・・いや、悪い奴は、嫌い。でも、悪党って、なんか、かっこいい。」
「ピカレスクってやつか。善悪の悪は嫌いでも、正義に対する悪は好きという。」
「あ・・・なるほど。わかりやすい。流石、優等生。」
「・・・永遠会長が言うと嫌味にしか聞こえない。」
まあ実際・・・嫌味を含んで、いるんだけど。
でも素直に感心してるのが9割だからね?
「善悪で捉えたらヒトラーは最低だけど戦勝国という正義に対する悪党として捉えたらヒトラーは英雄・・・みたいな、こと、だよね?」
「まあ俺はヒトラーは嫌いだけど。人殺しの独裁者ってだけでなく、生理的に嫌だな。」
おや・・・生理的に、と、きましたよ。
「あれこそ自覚なし異常者の最たるものだろ。」
「自覚が無かったと・・・断言、できるの?」
「ヒトラーの命令で殺された人間ひとりひとりの顔を、ヒトラーは知ってるのか?」
なるほど・・・これは優等生とか、関係なく、頷ける。
知らない人間を殺してたわけだ。それは・・・否定できない、事実、だ。
たとえヒトラーがボクのような異常記憶能力者だとしても・・・、あるいは、もっと上の、瞬間記憶能力者だとしても、殺した人間、全てを知ってた、わけじゃない。だろう。
顔だけでも少数だろうし・・・顔を知ってるからといって、その人を、知ってることには、ならない。
いやまあこんなことを言うと場合によっては殺人も正当化されるみたいに聞こえるし実際ボクは結構そういう思想を持っていたりする。正当化・・・というより、罪悪感なく、という言い方の方が、正確、かな?
「くだらん議論をしてる間に、今日の書類は片付いた。」
「くだらなくなんか・・・ない、よ。」
「ああ、言い方が悪かった。他愛無い、いつも通りの、くらいの意味で言ったんだ。」
そう言って濃海は帰っていった。
ボクも丁度・・・片付いた、ところだ。ったの、に。
しかしまあ同時に仕事が片付いたからといって一緒に下校できるわけもない。
何故なら帰る方向が逆だから・・・だ。
◆ ◆ ◆
非日常に憧れながらも実は日常が好きで日常にいながら非日常を語りたい・・・そんな気持ち、あると思う。
ニュースで戦争とか紛争とかやってるのを見て何か語るのは・・・つまり要するに、日常で非日常を、語る、快感を、満たしたい、というのが、何割か、あると、思う。こともある。
いやしかし実際ニュースを見てるときなんかは神妙な気持ちになるし・・・それは本物だと思う。
つまり要するに正確に言えば・・・日常から、非日常を眺めて、痛ましい気持ちに、なる、ことは、欺瞞ではないかと、分析とか、自己批判とか、してみたい、欲求、かな。
だから実は戦争の話を聞いて心が痛むのは欺瞞でも何でもないし・・・そこに欺瞞があると、しても、全部が欺瞞、ではない、し、むしろ、分析の方が、邪悪ってことに、なるのかな。
あ・・・でも、これも分析、だから、分析を、分析、することが、あー、あー、こんがらがってきたぞ。
いやまあこんがらがるのも無理ない状況なんだよ今しかし実際とんでもない状況。
7月の最後の日。ボクは神様に出会った。
「わたしの名前はリンネ。ねえ、トワさん、わたしとデュエルしない?」
つづく
つまり要するに・・・笑いと、恐怖は、同じものだよ。
理解できないものに対しての反応という意味でも・・・同じだし、恐いときって、ほら、笑うしかない、じゃない?
いじめとか・・・嫌なことを、言われて、苦笑いでも、笑ってしまうのは、つまり要するに、恐いからだ。
恐さを紛らわす為に笑ってる・・・とも言えるし、笑うことで、恐怖を、楽しんでる、とも言える、かな?
けれどしかしそれはあまり健全な行為とは言えないようで・・・そういうこと、してると、笑顔が、壊れるみたい。
笑っていても笑ってないように見えるし・・・笑ってなくても、笑ってるように、見える。とか。
つまり要するに不健全な行為には然るべき代償が伴うわけで・・・だから、不健全、なんだけど、ね。
笑顔が壊れるというのは結構な代償で・・・人から、信用されないとか、愛されない、とか、色々ある。
例えば・・・好きな人に、最高の笑顔を、送りたいと思っても、壊れた笑顔に、なってしまう、のだ。
もう二度と好きな人に最高の笑顔を見せることが出来ない・・・という、のは、悲しい、こと、だ。
◆ ◆ ◆
「はにゃ~ん。」
4月の頃のボクと言えば・・・世界なんか、滅んでしまえ、と、大真面目に考えていた。
あれから3ヶ月ほど経った今では・・・世界が、酷く理不尽に、滅びたら、面白いなぁと、思ってる。
いやしかし実際だって世界とか・・・滅んでも、たかが、滅ぶだけじゃん?
この宇宙がどうやって誕生して今後どうなるのかって物理学者の間では熱心に議論されていてエントロピーとかブラックホールとか光の粒子だらけとか色々と言われているけれど・・・人間は、滅んでる、よね?
いや何で人間というか人類に限定するかというと・・・宇宙の誕生に、関する、議論で、人間を中心にした、考え方というのが、あって、つまり要するに、簡単に言うと、人間は特別だって、こと。
人間は特別。何か引っかかる言い回しに聞こえる・・・のは、逆に、人間が特別だって、ことの、証明っぽいけど。
とりあえず人間は特別で神様に選ばれた存在だというのは・・・少しの、違和感を、除けば、当たり前に、肯定できる、もの、だ。と思う。こともある。
どういう意味で特別かという話にもなってくると思うけれど・・・考えて、みると、恐い、よね。
宇宙の始まりとか終わりとか考えるとさ・・・すっごく、恐く、ならない?
物理学によれば完全な“無”というのは有り得なくて・・・エネルギーが完全に、ゼロの状態からでも、“場”としての存在があって、宇宙が生まれてくるとか、何とか。
きっと世界は1枚のカードを下敷きにして誕生したんだ・・・あ、カードってのは、比喩ね、比喩。
つまり要するにボクがデュエリストだからデュエルに関する比喩を使うわけで・・・たとえカードであっても、カードじゃない、何か、だよね。
そのカードをパタンと引っくり返したら世界も引っくり返ったりして・・・あ、そもそも裏表とか、ある、の、かな?
それにしてもボクは何故こんなにも世界を滅ぼしたいとか思ってるんだろう。?
それはまあ・・・世界を敵に回したら面白そう空想、という、やつか、な?
世界という大きなものを敵に回すと想像するとさ・・・お腹の、このへんが、ちょくちょくって、ざわつかない?
いやしかしだけど実際・・・本当に世界を、敵に回したら、身近な人の非難とかで、すっごい、へこむ、と思う。
例えばボクの場合なら・・・そこにいる、生徒会副会長の、畦地濃海(あぜち・のうみ)、あたりに、本気で、怒鳴られたりなんか、したら、後悔して夜とか昼とか、寝られない、と思う。
「生徒会の仕事って・・・何か、平凡、だよね?」
「・・・・・・。」
濃海は太った体躯に似合わずとか言ったら失礼なんだけれども仕事が早くて丁寧で字が綺麗だ。
彼自身は太ってることがコンプレックスらしいので体型の話はタブーなんだけどタブーといっても言おうと思えば言えるしボクそういうの平気で言えるし平気で人を傷つけられるから頃合を見て言おうかと思ってる。のだが。
「平凡。結構なことだろ。特殊を求めたがるのは悪くないにしても良くもない。いや、特殊でなく特別か。そういうのは何か不満があるからであって、不満があるということは、ある意味で特別とも言える。だから自分の不満について、よく考えてみるべきであって、現状変革も現状維持も、そこから生まれてくるものなんだ。」
あ・・・優等生の、回答。
嫌味じゃないところが・・・逆に、何か、嫌味だ。
「しかし、特別は特別の良さがあるとは思う。永遠(とわ)会長は、極めて驚異的な頭脳を持っていて、編入試験も満点だったと聞いてる。それは凡人には味わえない類の優越感だろう。」
いやまあボクの場合・・・単に、記憶力のリミッターが、壊れてる、というだけで、頭が良いわけじゃ、ない、のだけど。
けれどしかし確かに言われてみれば満点を取るというのは喜びではある・・・社会に出て、役に立たなくても、だ。
もちろん社会で役に立たないとか何の役に立つんですかとかいうのは極端な話であって・・・集中力とか、事務処理能力とか、そこそこ、役に立つ。と思う。
ちなみに生徒会長になれたのもボクの事務処理能力を買われてのことだと割とすぐに気付いた。
つまり要するに生徒会長というのは・・・パシリだ。
「生徒会長というのはさ・・・もっと、こう、華やかというか、授業中に、今すぐ生徒全員、校庭へ集まれって、放送かけて、人を集める的な、そういう、人望が、あると思ったんだけど、な?」
「永遠会長は生徒会を何だと思ってるんだ。マンガやアニメの観すぎだ。」
「あー・・・マンガや、アニメを、見下した、な。」
「見下したつもりはなかったが、永遠会長が見下されたと感じたなら、やっぱり見下したかもしれん。ただ、それはそれとして、現実と虚構の区別はつけるべきだろ。」
わーお・・・またしても、優等生の、回答。
「ま・・・それは、ともかく、ボクとしては、もっと、悪の生徒会、とか、悪の理事長、とか、地下室で秘密兵器、とか、そういうのと、戦いたい、の。」
「我々が生徒会だろ。」
「そうだよ・・・4月は、よかった、な。部活潰し、って、いかにも、悪の生徒会って、感じだった、よね?」
「人聞きの悪いことを。ろくに活動してなくて部費だけせしめる部活が無いか監査しに行っただけだ。」
「でも・・・実際に、潰した、よね、UFO研究会。UFOは、本当に、存在するのに。」
「未確認飛行物体が存在するかどうかはともかく、活動せずに部費を得てるのが問題だったはずだ。」
「活動内容なんて・・・他人が、決める、ものじゃ、ないよ。それを、勝手に、決めつけて、潰した、我ら、悪の生徒会。」
「学校から部費を得ずに、同好会を作ればいいだけだろ。」
またしても優等生の意見。
「でも・・・あの頃の、ボクは、ただ、部活を、潰したかった、だけなんだよ、ね。」
「そういうところは、大河(たいが)によって改善されたんだろ?」
「ま・・・そう、言える、よね。改善、というと、ニュアンスが違うかも、だけど。」
4月の頃のボクは荒れていて・・・言葉遣いが、でなく、乱暴、でもなく、近い言葉で、言えば、辛辣、だった。
学校のルールを守らない生徒に対して強権を発動して取り締まることに快感を覚えていて・・・歯止めが、きかなくなって、いて、まるで、独裁者だった。
そんなボクに対してデュエルを挑んできたのが大河柾(たいが・まさき)だった。
デュエリスト能力を持たない彼がレベル4能力者に勝つのは普通なら不可能だ。
けれど彼は普通ではない・・・いわゆる、メタゲーマー、というやつだ。
ボクのデュエリスト能力は攻撃力だけならレベル5級を自負しているけど・・・しかし実は、初見では、わかりにくいけれど、致命的な、弱点が、3つある。
マサキには・・・そのうちの、1つ、強制効果である点を、突かれたのだ。
普通なら致命的という形容をするほどの弱点でないのだけれども・・・メタゲーマーにとっては、強制効果というだけで、かなりな、弱点だ。ということ、らしい。
マサキは完全なメタゲーマー体質じゃないからボクに勝つには23回かかったけれど・・・ね。
メタゲーマーというのは面白くて・・・なまじっか、中途半端な、強さの相手、には勝てなくて、相手が強い、ほど、その実力を、発揮する。強い、ほど、弱点も、浮き彫りに、なるとか。
翔武学園には吉井康助というメタゲーマーがいて・・・かの“門番”(ゲートキーパー)天神美月、に、勝ったことが、あるとか、なんとか。
無能力者がレベル5に勝つというのは普通なら考えられない・・・だから、吉井康助も、異常者の側、なんだろう。
「ところで永遠会長、前から思ってたが、その喋り方どうにかならないか?」
「え・・・変、かな?」
「変だ。」
「濃海のドS。」
「何故いつもいつも人をサディストにしたがる。」
「だって・・・あ、いや、趣味。」
ベトナム戦争で活躍したウィリアム・ヤーボ大佐・・・彼が、とっても、好み、なのだ。
痩せてたときの彼も良いけれども・・・デブな彼が、チョー好き、だ。踏まれたい。
サディストのデブって・・・萌える、よね?
いやまあそれはそれとして・・・口ごもった、理由は、わかったと、思う。
濃海は体型のことに触れられるのが嫌だから。
あ・・・しまった。今が、頃合、だった、のかな?
「人類なんて生きてるだけでドMでしょ? だからSが輝く・・・というのが、ボクの持論、なんだけど。」
「相変わらず壊れてるな。」
「壊れてない人間なんていないよ・・・まあ、この言い方も、仲間が欲しい、という、感情を、補整する、理屈、なんだけど、ね。」
「そうでもない。」
おや・・・優等生の濃海は、肯定すると思った、けど。
「壊れてるって理解できるのは、壊れてるからだろ。」
「そういうことも言えるんだ。」
「もちろん程度の差はあるさ。壊れてる部分が少ない人間が正常と呼ばれるんだ。それは正しいことで、どこかで正常と異常の区別はつけないといけない。基準が無いと無闇に混乱して、生活が破綻するからな。以前に桐坂が言っていたことだが、同性愛者やロリコンは、生物としての本来あるべき姿とは違うということに対して、もっと謙虚になるべきだと。無職の人間は、社会に生きる人間としての義務を果たしてないことに対して、もっと謙虚になるべきだと。そういうことを言っていた。俺も概ね同じ意見だ。謙虚になるべきとは思わないが、異常であることを自覚すべきだとは思う。」
「濃海語録の中でもトップクラスに冷たいセリフだなぁ。」
「そう聞こえたなら、まあ冷たいんだろう。ただ俺は、異常であることは悪いとは思わない。謙虚になる必要もないし、卑屈になる必要もないと思ってる。」
やっぱり優等生の意見だよね。
どこか上から目線なのは仕方ないとして・・・それよりも、まともじゃないから卑屈になるって、そういうことは、あ、いや、こういうことを言うと、それは卑怯な、気がする。かもしれない。
「それで・・・悪の生徒会、の、話なんだけど。」
「悪が好きなのか。」
「あ・・・いや、悪い奴は、嫌い。でも、悪党って、なんか、かっこいい。」
「ピカレスクってやつか。善悪の悪は嫌いでも、正義に対する悪は好きという。」
「あ・・・なるほど。わかりやすい。流石、優等生。」
「・・・永遠会長が言うと嫌味にしか聞こえない。」
まあ実際・・・嫌味を含んで、いるんだけど。
でも素直に感心してるのが9割だからね?
「善悪で捉えたらヒトラーは最低だけど戦勝国という正義に対する悪党として捉えたらヒトラーは英雄・・・みたいな、こと、だよね?」
「まあ俺はヒトラーは嫌いだけど。人殺しの独裁者ってだけでなく、生理的に嫌だな。」
おや・・・生理的に、と、きましたよ。
「あれこそ自覚なし異常者の最たるものだろ。」
「自覚が無かったと・・・断言、できるの?」
「ヒトラーの命令で殺された人間ひとりひとりの顔を、ヒトラーは知ってるのか?」
なるほど・・・これは優等生とか、関係なく、頷ける。
知らない人間を殺してたわけだ。それは・・・否定できない、事実、だ。
たとえヒトラーがボクのような異常記憶能力者だとしても・・・、あるいは、もっと上の、瞬間記憶能力者だとしても、殺した人間、全てを知ってた、わけじゃない。だろう。
顔だけでも少数だろうし・・・顔を知ってるからといって、その人を、知ってることには、ならない。
いやまあこんなことを言うと場合によっては殺人も正当化されるみたいに聞こえるし実際ボクは結構そういう思想を持っていたりする。正当化・・・というより、罪悪感なく、という言い方の方が、正確、かな?
「くだらん議論をしてる間に、今日の書類は片付いた。」
「くだらなくなんか・・・ない、よ。」
「ああ、言い方が悪かった。他愛無い、いつも通りの、くらいの意味で言ったんだ。」
そう言って濃海は帰っていった。
ボクも丁度・・・片付いた、ところだ。ったの、に。
しかしまあ同時に仕事が片付いたからといって一緒に下校できるわけもない。
何故なら帰る方向が逆だから・・・だ。
◆ ◆ ◆
非日常に憧れながらも実は日常が好きで日常にいながら非日常を語りたい・・・そんな気持ち、あると思う。
ニュースで戦争とか紛争とかやってるのを見て何か語るのは・・・つまり要するに、日常で非日常を、語る、快感を、満たしたい、というのが、何割か、あると、思う。こともある。
いやしかし実際ニュースを見てるときなんかは神妙な気持ちになるし・・・それは本物だと思う。
つまり要するに正確に言えば・・・日常から、非日常を眺めて、痛ましい気持ちに、なる、ことは、欺瞞ではないかと、分析とか、自己批判とか、してみたい、欲求、かな。
だから実は戦争の話を聞いて心が痛むのは欺瞞でも何でもないし・・・そこに欺瞞があると、しても、全部が欺瞞、ではない、し、むしろ、分析の方が、邪悪ってことに、なるのかな。
あ・・・でも、これも分析、だから、分析を、分析、することが、あー、あー、こんがらがってきたぞ。
いやまあこんがらがるのも無理ない状況なんだよ今しかし実際とんでもない状況。
7月の最後の日。ボクは神様に出会った。
「わたしの名前はリンネ。ねえ、トワさん、わたしとデュエルしない?」
つづく

この記事へのコメント
火剣「深い会話を不快会話に変えるのが賢吾の得意技だ」
賢吾「誰がバルタン星人や」
火剣「言ってねえ」
コング「笑いと恐怖か。確かに笑顔は恐怖を与える。殺意の目よりも不気味な笑顔で迫られるほうが怖い」
賢吾「壊れてると思うと怖いな」
火剣「素敵な笑顔は暴走する戦車をも止める」
コング「暴走するヒロピンファンは止められない。魅力は危険しか生まないという寸法よ」
賢吾「そしてスッポンポン」
火剣「黙れ」
コング「世界を滅ぼしたいとは思わない」
賢吾「コングのように悩みのない人間はそうやろ」
火剣「人間は特別か?」
賢吾「人間だけが他の動物と比較にならんほど知能が発達した。これは偶然ではない思うがな」
火剣「人間よりも知能が発達した生物が出現したら危ないな」
賢吾「そういう警鐘を鳴らすSM映画はたくさんあるやろ」
火剣「SFだ」
コング「平凡と特殊か。僕は言葉も行動も普通に振る舞っている。それが世間から見て普通じゃないというのが、非凡ってことでは?」
賢吾「なるほど一理あるな」
火剣「界隈はみんな非凡か。人間じゃないゴリーレッドと佐久間んは除くとして」
賢吾「佐久間んを入れるか」
コング「栞んの部屋も覗く」
賢吾「きょうも第2ラウンド突入や」
コング「突っ込め農海!」
コング「畦地農海。畦道を歩んで来た青春か?」
賢吾「サディストのデブ」
火剣「コングか」
賢吾「コングはもう永遠アルドに嫌われてるからダメや」
コング「好かれてる嫌われてるは関係ないの。逆エビ固めでたいがいの女子は降参するから」
火剣「デュエリストは闘技者とは違うぞ。暴力をふるうのか?」
賢吾「マサキはアルドの三つあるうちの一つの弱点を突いたんか」
火剣「勝手に話題を変えるな」
コング「三つの弱点? じゃあ胸を責めたのか」
火剣「ゴリーレッドならここで延髄斬りだが」
賢吾「正常と異常か。線は難しいな」
コング「自覚は必要なのか」
火剣「これは力説できるぜ。犯罪を犯して捕まった著名人はそれを武器に儲けてるんだ。無名人なら前科は致命傷だ。なぜ有名人はそれが金のネタになる? ふざけるなよバカヤロー! だから言うんだ。卑屈になる必要なんかねえ。犯罪犯して威張ってるバカがいるんだから、胸張って道のど真ん中闊歩しろってな」
賢吾「火剣が帰って来た!」
コング「戦士が帰って来た!」
火剣「うるせえ」
賢吾「小説や映画は非日常を体感できるから面白いな」
コング「ヒトラーまで行くと話が尽きないからやめよう」
火剣「リンネが出てきたか。上には上がいる」
>火剣さん
デュエル小説というよりも、私小説になってる気がしないでもない前編ですが、思えば全編にわたって文字数の多さ。(≒デュエルの少なさ)
思えば、これが私にとっての普通、あるいは自然体なのかもしれません。エッセイ風味でしょうか。
佐久間「笑顔は本来、肉食獣が得物を見るときの表情だ・・・とも言われている。」
山田「本当か? まあ、お前やコングはそうか。」
八武「ふはははは、私を忘れてはいけない。素敵な女子の笑顔を恐怖で彩り、苦痛と快楽で歪ませたいと思っているのは私だけではあるまい!」
山田「クリーン・・」
維澄「いっぺん佐久間が恐がるところを見てみたいな。」
佐久間「それが既に恐いわっ!」
アルド「みんなは世界を滅ぼしたいと思わない?」
山田「物凄く気分が沈んでるときに、そういう感覚になることはあるが。」
維澄「積極的な意味でなら、あまり思ったことはない。」
八武「たまに思う。」
佐久間「普通に思ってる。」
山田「危ないやつら。」
佐久間「うる星やつら?」
山田「しかし確かに、普通に振舞っていて文句言われることはある。真面目ぶるなとか。」
アルド「だけどしかし非難されることが非凡の証じゃないのにね。非凡だと非難されるのは当たってるけれど。」
山田「それはそうだが、自分が間違ってるのか、それとも自分が非凡なのか、どうやって見分ければいい? 見当違いの非難を受けて潰れていった天才は枚挙に暇が無い。たとえ勘違いを含んでいても、前向きに生きるのが正しいと思う。」
アルド「まるで濃海みたいなことを言うんだね。」
佐久間「取るなよ。」
山田「俺は佐久間の所有物じゃない。」
なるほど、畦道を歩んできた青春。このフレーズ、いただきです!
次の話でも触れますが、女性から好かれない男性(また、男性から好かれない女性)というテーマは、何度でも扱いたいと思っています。私の関心であると共に、社会的な重大問題ではないかと感じています。
佐久間「まあ、世の中には、アッキーや竜堂神邪のように、男からも女からも嫌われる奴もいるわけだが。救いようがないな。」
山田「救いようがないのは佐久間の毒舌だと思うが。」
アルド「そうやって罵り合える関係ってイイね。深い信頼を感じるよ。」
山田「やめてくれ。」
佐久間「アルドはコングの外見は好きなんだよな?」
アルド「しょっぱなから一人称にケチつけててきた時点で終わりだよ。ブスは禁句なのに一人称にケチつける理屈がわからないな。狭いのは好みじゃなくて認識じゃないの?」
佐久間「まあ、名前をからかわれるのと同じようなものだからな。自分のアイデンティティーに文句つけられたわけだし。納得&共感。」
維澄「文句つけられるのは非凡さの証だと、ここでその理屈を使うというのは?」
佐久間「アルドはそれ嫌いだからな。」
山田「濃海なら、女子でボクと言うのは普通と違うんだから謙虚さを持てと言うところなんだろうが・・。」
アルド「言うだろうね。喋り方うんぬんに暗に込められていただろうね。親しくなってからだったらボクも心の狭いことは言わないよ。」
八武「ちなみに私はボクっ娘は好きだ。おぢさんに胸を責められてみる気はないかね?」
山田「延髄!」
八武「NOてん!」
佐久間「暴力皇帝が帰ってきた!」
山田「やかましい。・・まあ確かに、この拳は、大手を振って歩いている犯罪者どもに向けるべきなのかもしれないけどな。言われたからでなく、普段から思うことは多い。」