孤独の王者は死を統べる (似異)

◆ ◆ ◆



恥ずかしがっている時間も短く、程なくして封印の地へ辿り着いた。
普段は極寒の吹雪が荒れ狂う最果ての地も、今は不気味なほどに静まり返っている。

空気が痛い。

「ああ、これだけ死気が流れていれば、流石に見つかるわよね。」

第46導師・紫藤ハルカが、柔らかに微笑んでいた。
これから起こることを、楽しんでいるかのように。

「しかし諸君、もう遅い。冥王様の封印が完全に解けるまで、残すところ僅か・・・。どうやらスーラが、こっちへ向かっているようだけど、あれでは間に合うまい。」

クスッと笑うハルカに、7名はゾッとした。
程なくして到着した、竜王の妹も、ハルカを見るなり怯えの表情を浮かべた。

「ハルカ・・・・・・本当に、ハルカなのか・・・・・・?」

魔王が青ざめた顔で近付いていく。

「あら、あなた。首だけになっちゃって可哀想に。ジゴスパーク

「っぐあああああああああ!!?」

談笑しながらハルカは、地獄の稲妻を呼び寄せた。

「ムーアぁ!!」
「お父様ぁ!?」

竜王とハルが叫び、駆け寄る。
急いで稲妻から魔王の首を引き剥がし、竜王は同時にメラゾーマを放った。
ハルもベギラゴンを放つ。
火焔と閃光が融合して大爆発を起こす。

だが、その程度で導師を倒せるはずもない。
まして冥王が関わっているとなれば。

けろりとした顔で、ハルカは首をかしげる。

「ん~、首だけだと弱いね。わたしのジゴスパーク程度でグロッキーとは。」

「やめてくださいませ、お母様! お気を確かに!」

「あ、ハル。大きくなったわね。それに、いい人も出来たみたいで。とても嬉しいわ。」

ハルカは戦士を見ながら、イタズラっぽく微笑んだ。
それは確かに母親の仕草ではあったが、ハルは背筋が凍りそうだった。

「は、ハルカ・・・・」

電撃でボロボロになった魔王が、なおもハルカに近付いていく。
それを誰も制止できない。狂おしい愛が、痛いほど伝わってくる。

「・・・元に、戻ってくれ・・・・・」

こつん、と。
魔王は額を当てる。

するとハルカは、優しげな微笑みを浮かべて、魔王の首を手に取った。

「ごめんなさい、あなた・・・。わたしは既に、身も心も、冥王様のものなのです・・・。」


ジゴスパーク


電撃は、寂しげな微笑みと共に放たれた。

竜王が再び魔王の首を拾ったのと同時に、地面に鮮やかな赤い文字が浮かび上がった。
すぐに文字は粉々に飛散し、黒い煙が立ち昇る。
それらがハルカの中へ入っていき、彼女の顔が苦痛と恍惚で赤くなる。

「ハァ・・・アアッ・・・・・お待たせしました、冥王様・・・・・ん・・・んあああああっっっ!!!」

まるで噴火でも起こしたように、濃密な死のエネルギーが湧き上がった。
爆発するかのような勢いで、暗黒が景色を蹂躙していく。

賢者が張った結界の中で、8名は長い時間を過ごしていた。
それは実際には1分足らずの出来事だったが、途方もなく長く感じられた。


やがて死のエネルギーは逆向きへ流れ出し、収束する。

視界が晴れたとき、纏っていたローブが消滅した一糸纏わぬ姿で、亜麻色の髪の乙女が立っていた。
虚ろで壊れた双眼で、ぼんやりと周囲を眺めていた。

「は・・・は・・・は・・・・ははは・・・・ははは・・・・ははははははは。」

陰鬱なほどに抑揚の無い声で、乙女が笑い出した。
それは確かにハルカの声ではあったが、しかし絶対に彼女が出すことはない類の声だった。

「はははははははははははははははははははははははははははははははははははは波動砲!」

瞬間的に彼女の周囲に渦が発生し、瞬くうちに意味のわからない感覚が押し寄せてきた。
とんでもないダメージを受けたのだと気付いたときには、景色が逆さまになっていた。

「このっ!」
「やろっ!」
「イオグラン・・」

勇者、戦士、魔法使いが、それぞれ攻撃しようとする。
だが、ぬるりとした力で滑って、ひっくり返ってしまう。

「戦士様!」

駆け寄ろうとしたハルも、滑って転んだ。

「あぐっ・・」

「ははははははは、これが“波動砲”(アンジュレーションキャノン)だ。最大体力の半分を削り、相手をスリップさせる。ははははははは、ぬるぬるしてる?」

笑ってはいるものの、表情に変化が無く、抑揚も無い。
とても笑ってるようには見えなかった。
生きてる者の笑い方じゃない。

「貴様・・・冥王かぁ!!」

鋭い眼光を燃やし、竜王が叫んだ。

「ははははは、そうだよ竜王。わたしが冥王だ。久しぶりだね。お前たちに封印された、前の体は、劣化が酷くてね。はははは、こうして次の体に乗り換えたというわけだ。成功したね、やったね、ははははは。」

「ゲスが・・・!」

「ははは、それよりも、どうしたの。全盛期の4割くらいしか、力が感じられないけど。ははは、もしかして、わたしを封印するときに、無理したことが原因とか?」

「だったらどうだっていうの。」

「ははは、単純なことだよ。」

冥王の姿が消えた。

「っ!?」

次の瞬間には竜王は腹に一撃入れられて、更に後ろから首を抱えられていた。

「ごはっ!?」

「「竜王!」」
「お姉さま!」

「ははは、遅い・・・遅いよ、君たち。」

瞬く間に、勇者は剣を折られて顎に強烈な一撃をもらった。
賢者と魔法使いは、呪文を唱える前に背後から強打を受けた。
そして竜王の妹は、首をへし折られた。


「うそ・・・だろ・・・・!?」


電撃で黒焦げの魔王。
首をへし折られた竜王姉妹。
脳を揺らされて体が痙攣している勇者。
両肺を背後から強打されて、呼吸も苦しい賢者と魔法使い。

残るは戦士と、竜王の娘。
戦士には、相手の動きが見えていなかった。構えた剣先が虚しく宙を指す。


「ははははは、弱すぎる。いや、この体が強いのか。前の体より強いな。はははは、わたしの入れ物になる為に生まれてきたようなものだ。ははははははは。いい体だ。ははははは。」





つづく

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この記事へのコメント

2013年12月02日 17:27
ゴリーレッド「あの詩は凄い詩だ。生死観は本来、いちばん先に学ばねばならない哲学だが、皆死を忌み嫌い、目をそむける。年が若ければなおさらだ」
火剣「生死観によって生き方も変わるわけか」
ゴリーレッド「来世はある、というのと、来世はない、というのでは、今世の生き方も違ってくる」
コング「拝一刀やゴルゴ13のように、我に未来はなく、ただ今を生きるのみ、という生き方もあるぜい」
火剣「それがコングの生き方か?」
コング「♪女呼んで揉んで抱いていい気持ち!」
ゴリーレッド「呼ばれた女子が迷惑する」
コング「コングそういうの気にしないし」
ゴリーレッド「周りが気にする」
火剣「封印の地でいきなりバトルか」
コング「呼吸も許されない展開」
ゴリーレッド「ついに冥王が」
コング「ローブが消滅して一糸まとわぬ姿?」
火剣「そこしか目に止まらないのか」
ゴリーレッド「ハルカ。いや、冥王、強過ぎる」
コング「誰か消滅するローブをつくらないか」
火剣「ローブをまとってちょっと庭に出たら突如消滅するのか?」
コング「きゃあああ!」
ゴリーレッド「ハルカを見てるとそういう状況ではない」
コング「やや残念」
ゴリーレッド「黒焦げ希望か?」
コング「NO!」
火剣「戦士とハルでは勝ち目ないか」
コング「魔法使いがやられた今、ハルしかいないではないか!」
ゴリーレッド「黙れ」
2013年12月02日 22:30
カトレーア「何こいつ。何こいつ。何こいつ!何なの、この冥王とかいうの!すっごい腹立つ!すっごいムカつく!!ハデス、こいつを八つ裂きにしなさい!」
ハデス「めんどくさい。」
白龍「冥王対決ならず。」
プリスター「ティシヒヒヒヒヒヒ!まさに侵食!これこそ乗っ取りの醍醐味よねえええ。」
白龍「笑顔止めい。」
プリスター「可哀想なハルカちゃん。生まれた時から宿命背負い、魔物を殺せと教えられ!なりたくもない勇者にならされて!なりたくもない魔王の嫁にならされて!まさに空っぽ、エンプティ!満たされない心に悪魔が入る、至極当然の自然の摂理!ティシヒヒヒ!」
ルビデ「メーオー。メーオー!メーオー!!強い、強過ぎるぞ冥王!まさに一方的な虐殺だあ!もう勝てる可能性は残されていない!魔物使いの頑張りも無駄になったな!」
白龍「ここから始まる勇者伝説。」
ルビデ「止めろ、幕を下ろせ。完。」
白龍「そうは問屋が卸さない。戦士とハルのラブラブアタックが世界を救う。全ては、愛だ。」
DC・Ⅵ“愛”『そう…全て、愛!』

ルビデは逃げ出した。プリスターは逃げ出した。
2013年12月02日 23:11
>火剣さん
ラスボスに余計な装飾は不要、肉体美のみで勝負!
・・・というコンセプトがあったかどうかは忘れましたが、ついに冥王の復活です。モノローグは元ネタのゾーマに、「アンパンマン」や「手のひらを太陽に」、「おろち」や「魔人」など色々と詰め込んでみました。

佐久間「今を懸命に生きる者にこそ未来は訪れるという思考も出来る。」
山田「また佐久間は変なものでも食ったみたいだ。」
佐久間「お前、いつもは真面目に話せとツッコミ入れてくるくせにさぁ。」
山田「ああ、俺も天邪鬼なんでな。」
佐久間「そうだったっけ?」
八武「重要なことはローブを吹き飛ばして全裸であるということだ。男のラスボスが肉体美を誇る作品は多い。ならば女が肉体美を誇ってもおかしくない。冥王はハルカを乗っ取って正解だった。」
山田「何もかもおかしい。」
佐久間「犯したい?」
山田「そんなレベルの話じゃねえ。何だこの酷い状況! 死根也、早く治療するんだ。」
八武「魔法で回復した方が早い。」
佐久間「ハルカ、魔法封じを使うんだ。」
山田「お前は誰の味方だ!」
佐久間「面白い方。」
八武「やはり佐久間は刹那的か。私はもう少し安穏。」
山田「そりゃまあ、佐久間に比べればな。」
佐久間「戦士とハルでは勝ち目は無いが、時間稼ぎにはなるかもしれない。そこがポイント。」
2013年12月02日 23:41
>千花白龍さん
むしろカトレーアさんがご立腹? ピルトやカーストの上司だけあって、なかなかイイ性格しています、冥王。
そして悪魔勢は当然の如く冥王の応援をしていますが、Ⅵ試作機キター!? 狂った愛は戦いを終わらせることが出来るのでしょうか。

八武「そう! 乗っ取りは素晴らしい! ティシヒヒヒ!」
山田「というか、プリスターはやられたはずじゃ・・」
佐久間「細かいことは気にするな。復活フラグかもしれんぞ。」
山田「うーむ。」
八武「冥王の花嫁となって我が身に夫を受け入れる・・・ウヒヒヒヒ。これぞ侵食。」
山田「お前も悪魔に侵食されてないか?」
佐久間「魔王との生活でも、心の空虚は埋め尽くせなかった。娘が生まれても。そう、乾いて罅割れた心を埋めるには、湧き出る水のような愛情だけじゃ足りねえ。欠けた部分にピタリと嵌まるような、暴力的・背徳的なピースが必要なンだ。魔王も暴力的な側面は見せたが、ハルカの心を埋めるには足りない足りない足りない! もっと暴力を! もっと残酷を! 荒んだ心に必要なのは、荒んだ物語だァ!」
山田「佐久間は元に戻りつつあるな・・・。」
佐久間「さて、戦士とハルに期待が寄せられているようだが、どうなるかな?」
維澄「魔物使いも向かっているはずだが、間に合うかどうか。」

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