孤独の王者は死を統べる (惨)

◆ ◆ ◆



「ここにもいないですって?」

竜族の里に到着した魔物使いは、いっそう青ざめた。
パーティーが揃って移動するなど、話を聞くまでもなく緊急事態だとわかる。

「は、つい先程、血相を変えて北の方へ。」

竜族の里を任された“神竜”が、人間に変身して出迎えていた。

「やばいんでないですか、ベスラおばさん。」
「やばいわよ。さっきの感じたでしょ?」

「よろしければ、送りましょうか。」

神竜の勧めに従って、魔物使いと仲間たちは背中に乗った。

そして防御魔法をかけながら飛行。
目指すは北。


だが、その途中で、先程の比ではない巨大な殺気が飛んできた。
触れただけで殺されるかと思った。まだ見えない距離なのに。

「ま、まさか・・・!」

蒼白になるベスラの視界に、やがて無惨な光景が浮かんできた。



◆ ◆ ◆



戦士は果敢に戦っていた。
仲間を、愛しい人を守る為、彼の剣技が冴え渡る。

ハルの“魔王の特性”は、ひとつは戦闘フィールドを区切ること。
それにより冥王の攻撃を幾許かでも防いでいた。

(ようやくコツを掴んできましたわ・・・!)

先程これが出来ていればと思ったが、そんな雑念を振り払い、目の前の戦いに集中する。
隙を見て収束ベギラゴンを放ち、冥王の体を射抜く。
それが自分の母親の肉体だとしても関係ない。

母親は死んだのだ。あれは死骸だ。

「今度は二度と蘇らぬよう、火葬して差し上げますわ!」

戦士の剣戟に合わせ、ベギラゴンとメラゾーマが炸裂する。
火焔と閃光の斬撃が、冥王を切り裂いた。


「ははははは、いい攻撃だ。」


冥王は笑っていた。
切り裂かれて笑っていた。
燃やされて笑っていた。

「ははは、しかし、もう飽きた。」

冥王は最初から遊んでいた。
魔王や竜王を相手にしていたときですら、まるで本気ではなかった。

「ははははは、もう波動砲で終わりにしようか。勿体無いか。ジゴスパークで十分か。ビッグバンを試そうか。ははははは、じゃあグランドクロス! ははは、ビッグバン!」

悲鳴も何も発する間もなく、戦士とハル、そして立ち上がってきた勇者と竜王、更には倒れている4名も巻き込んで吹っ飛ばした。


魔物使いが駆けつけたのは、丁度そのときだった。

血飛沫と肉片を撒き散らしながら吹き飛んでいく勇者たちを見て、声にならない叫びをあげた。
それが収まる頃には、冥王の前に到着していた。

魔物使い、コアトル、メタルキング、虹孔雀。ピルト・ダウン。神竜。
これだけの戦力でも、とても勝てる気がしない。

「ははははは、裏切ったのか、ピルト。」

「え、いや、ほら、ピルト忠誠心とか皆無だし。」

死族ゆえに汗は流れないが、ピルトは焦っていた。

「そ、それより、何か強くなってません? その姿と何か関係が・・・あ、いや、ピルトそういうの詮索しない主義だし。」

「はははは、教えてあげてもいい。封印の影響で、以前の肉体が劣化して、使い物にならなくなったから、この体に乗り換えたんだ。わたしは不死身だが、肉体まで不滅ではないからな。ははははは。」

とはいえ、その肉体も、人間の常識から言えば不滅に近い。
切り裂かれ、焼かれたはずの肉体は、何事も無かったかのように元通りに滑らかな裸身を晒していた。


「はははは・・・・・・・・は・・・・・」

初めて冥王の表情が変わった。
怪訝な顔、をしているのだろうか。首をかしげて、目の焦点が合ってない。

それだけのことが起きていた。

念の為に竜王の血を舐めていたのが幸いした。
勇者も、戦士も、魔法使いも、賢者も、魔王も、ハルも、竜王も、グレースも、かろうじて全員、ビッグバンに吹き飛ばされる寸前で竜の血が発動し、各自ありったけの防御技を展開して死を免れたのだ。

とはいえ、それだけ必死になっても全身ズタボロ。
血が噴き出し、手や足が千切れ、満身創痍だった。

「ははははは、そうか、竜王の血か。ははは、それで生命力を上げていたのか。」

しかし“死なない”死族に比べれば、雀の涙にも及ばない。
魔王や勇者でさえ、青息吐息だ。

「はははは、どうやら遊びは終わりのようだ。わたしの左手に戻れ、生き物嫌いのカーストよ。」

不気味な音を立てて、冥王の左腕が少し変化した。
やや大きくなり、白い毛や鱗が所々に現れた。

「そして、ピルト。お前も戻っておいで。」

「え、ちょっと待って。ピルトそういうの駄目。いや、待って、待って、戻るのは嫌。待って・・」

冥王は無表情で手をかざす。

「ピルト!」

魔物使いが叫ぶが、ピルトは冥王に吸い寄せられていく。
バラバラになり、冥王の右腕に取り込まれていく。

「や、やだあ・・・ピルトこういうの嫌・・・・・助けて、ベスラおばさ・・・・ん・・・・・・・・」

「ピルトっ・・・!」

冥王の右腕が長く伸び、肉が剥がれて骨だけになる。
それをくの字に折り曲げて、冥王は満足気に笑う。

「ははははは、さて、これで完全だ。はははは、集え、黒き光よ。冥王ハルカの名において命ずる。」


まずい、あの呪文は―――

全員の心に同じ絶望が浮かぶ。
そして止めることは出来ない。


「その偉大なる闇の力を戯れに解き放ち、我が眼前一切の景色を灰塵とせよ・・・ダークネスアトミックジェイル!!



漆黒が極北の大地を染めた。






つづく

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