孤独の王者は死を統べる (至)

◆ ◆ ◆



「これは・・・どういう状況ですか。」

すんでのところで、スーラの相殺が間に合った。
冥王の放った暗黒の禁呪は、イオグランデによって一部を吹き飛ばされ、勇者たちには及ばなかった。

「あ、あんた、第47導師の・・」

「はい、スーラ・ド・ルミです。どうやら説明されるまでもない状況のようですね。」

勇者に答えながら、スーラは先輩を、冥王となった先輩を睨みつけた。

「間に合いませんでしたか。」

「はははは、スーラちゃん、久しぶり。元気してた?」

「黙れ冥王! ハルカ先輩のフリをするな!」

「ははははは、そういうセリフは100年早い。ははは、わたしのことを理解してるつもり?」

からからと明るく笑う冥王。


ジゴスパーク


「ははははは、いい電撃だ! しばらく見ないうちに地獄の稲妻を呼べるようになったか。ははははは、しかし威力が全然まるで足りないな。ははははは!」

冥王が平気そうに笑っているので、スーラも技を停止した。

「そうでしょうか、本当にそうでしょうか。確かに今の技は通用しなかった。付け焼刃のジゴスパークは。けれどハルカ先輩だったら、それで余裕ぶるわけないんです。」

「ははは?」

冥王は、嘲るように鼻を鳴らす。

「鷹の眼やレミラーマなどを組み合わせた術で、戦いの様子は観察できていました。どうやら封印されている間に、力が弱まっていたようですね。」

「はははは、なるほど。どうりで計ったようなタイミングで助けに入れるわけだ。ちょっと急いだんじゃない?」

「想像はご自由に。けれど気付いていますか? 元が殆ど残り滓みたいなものなら、ピルトに、カースト、そしてハルカ先輩の力を足したところで、大体わたしと互角くらいなんですから!

スーラの目がカッと見開かれ、その両手に稲妻がほとばしる。

「嬉しい誤算ですよ、魔物使いが来てくれたのは・・・。」




ミナデイン




暗黒の禁呪ダークネスアトミックジェイルをも遥かに凌駕する、とてつもない威力の稲妻。
人間、魔物、竜、それらの頂点クラスであろう者たち、合わせて13体の魔力を結集した、かつてない雷撃魔法。

極北の大地は、稲妻を放った先から断崖になった。

つんざく轟音は、景色が晴れても、しばらくは耳に残って渦巻いていた。


だが、それが収まらないうちに、あの抑揚の無い不気味な笑い声が聞こえてくる。

「はははははははは、なるほど。確かに、大したものだよ、スーラちゃん。どんな生き物も、この技には勝てないだろうね。ははは、しかし、わたしは死んでるんだよ。はははははは、不死身の相手と戦えば、最後は必ず負けることは明白。君たちは何十時間でも戦えるかもしれないが、永遠には戦えない。生きてる者の悲しさ、いずれは生理的限界に至ってしまう。ははは、生きてるって、悲しいね。」

生まれたままの姿、傷ひとつ無い体で、冥王は浮かんでいた。

「・・・違うぜ、冥王。」

「ははは、何だ、勇者。」

「生きてることが悲しいんじゃない。生きてる中に、悲しいことがあるだけだ。悲しいことってのは、生きてるうちの、そのうちの一部なんだ! 決して全部じゃねえ! 生きることが悲しいなんて、俺は認めねえ! 生きることが悲しい奴がいたら、悲しみを振り払える世界を作って、それが出来ねえでも、近付けて、世界を変えていくんだよ!」

「ははははは、面白い。わたしが生きている頃に聞けば、少しは心を動かされたかもしれない。ははは、でも無駄なことなんだよ。だって死んでるんだもーん。ははははは。」

「いいぜ、死人は大人しく地獄へ帰ってもらう。死んだ奴が、生きてる奴の命を弄ぶなんざ、ぜってー許さねえ! お前がスーラさんと互角なら、そこに俺と、戦士、魔法使い、じーさん、魔物使いと魔物たち、そして竜王に妹さんに神竜が加われば、圧倒できる計算じゃねえか。そして・・・」



魔王が立っていた。

足で、大地を踏みしめて。



「嬉しい誤算だと言ったでしょう、冥王。この大陸の、近くの会話はすべて聞いていたのですよ。魔物使いが、魔王と竜王を全盛期に戻せる、そんな術を会得していたとは。この意味、わかりますよね?」

スーラが冥王を睨みつける。

「は、はは・・・」

参考までに、現在の戦力を数値化すると、以下のようになる。
勇者パーティーが各自10ずつとすると、合計40。
魔物使いと、付き従う魔物たちを合わせた力が、およそ30。
竜王の妹グレースと、神竜が、それぞれ20ずつ。
魔王と竜王は、全盛期の力に戻って100ずつ。
魔王の娘ハルが20で、彼女の持つもうひとつの“魔王の特性”は、親しい仲間の力を引き上げること。魔王直属の魔物が抜きん出た力を持つように、彼女に愛された者は並外れた強さを得る。
魔王を抜いても合計230の力が、ハルの補整によって345まで上昇し、これにスーラの500を加えると845となる。これは冥王の550を大きく上回る力だ。
戦いで圧倒している間に、魔王が封印の術式を組む。かつて大勢の仲間を犠牲にしなければ成しえなかったことが、今は誰を犠牲にすることなく可能となっている。人間と手を結んだことで!





「・・・・・・なんて計算してるんじゃないだろうね!? ははははははは、甘いよ!」





冥王の周囲に、黒い渦が巻き起こる。

渦は真っ黒なローブとなり、冥王の肢体を包み込み隠す。

一つ目模様のウサミミフード、髑髏を模したペンダント。
顔と両手と爪先だけ出した、黒ずくめのローブ。

これぞ冥王の服・・・“闇の衣”である。



「ははははははははははは、死ね。」



ブラッディクロックエンド
スピリットメガデスフレイム
エターナルペインカラミティ



一瞬のうちに体内の血液を極限まで老化させ、果ては腐食崩壊させてしまう、“鮮血の終焉時刻”!
死に至らしめる地獄の業火が四方八方から襲いかかる回避不能の即死攻撃、“魂魄死滅火焔極”!
あらゆる苦痛が未来永劫、世界が終わっても繰り返される神域の閉鎖空間、“劫々極苦疫病神”!

ダークネスアトミックジェイルなど及びもつかない、おぞましい禁呪が放たれた。

そのときの冥王の笑い方は、本当に、本当に、楽しそうだった。





つづく

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この記事へのコメント

2013年12月03日 17:10
火剣「殺気。無残な光景」
ゴリーレッド「ビッグバン?」
コング「ビッグバンベイダー」
火剣「戦士の剣技とハルの魔法では太刀打ちできねえか」
ゴリーレッド「ピルトはここで終わりか?」
コング「とにかく冥王は強過ぎる」
ゴリーレッド「スーラが間に合った」
コング「生まれたままの姿で頑張るハルカのことも称えよう」
火剣「黒いローブを着たぞ。闇の衣?」
コング「羽衣美人姉妹といえば?」
ゴリーレッド「喜怒哀楽。生きるにはこの全部が含まれている」
火剣「それが人生か。怒も哀もあってこそ人生だ」
コング「♪きみーのためーに翼にーなーる君を愛しつづける」
ゴリーレッド「魔王が復活したか」
火剣「めまぐるしい壮絶バトルだ」
コング「冥王はまだ余裕の笑顔だ。どうする?」
ゴリーレッド「最後まで諦めてはいけない」
2013年12月03日 22:32
>火剣さん
あまりにも強い冥王の前に、混成連合軍も成す術がない!?
次々と駆けつける味方ですが、それを嘲笑うように冥王はパワーアップ。ついに闇の衣を身に纏い、完全体となりました。

佐久間「これで完成、冥・王!」
山田「どこまで強いんだ・・・。底無しか?」
八武「読者サービスタイムは終わりかね。」
佐久間「そもそも読者サービスではない。闇の衣の伏線だ。」
山田「肉体美で勝負とか言ってなかったか?」
佐久間「コンセプトが1つとは限らない。」
八武「まあ、今の格好も可愛くてグッドだが。しかし脚は出してほしいね、脚は!」
佐久間「闇の衣は死のエネルギーの集合体だから、露出の多いセクシー版もあるけどな。」
八武「どうしたんだ冥王、早くセクシーお色直しを!」
山田「ウェディングピーチかっ。」
佐久間「セクシー路線は竜王と被るからなぁ。」
八武「ふむ、喜怒哀楽あってこその人生であるように、様々な萌えスタイルあってこその女の子というわけか。」
山田「その理解でいいと思ってるのか?」
八武「いいと思ってる。」
2013年12月03日 23:15
えー!もう駄目だー!これだけ大人数でかかっても、最大戦力になっても、それでも冥王の方が強いだなんて!禁呪もバンバン使ってくるし、どうすればいいんだってばよ!頼みの綱は、四天王と冬未さんぐらいか。光の玉はどこですか?

ルビデ「ブヒャヒャヒャヒャ!人間ってよっうぇ~な~!」
白龍「殴るぜ、その笑顔。」
ルビデ「ゲフッ!」
プリスター「あれ?ハルや竜王へのくすぐりの刑は?」
白龍「あなたは何をほざいているんです?」
2013年12月03日 23:42
>千花白龍さん
おそらく人・魔・竜の最高戦力を揃えていますが、それを易々と超えてくる冥王!
禁呪まで発動してしまい、果たしてみんなの運命は? 四天王と冬未は間に合うのか?
そして、この世界に光の玉は存在するのかどうか・・・?

佐久間「“これだけの戦力に、もはや太刀打ちできまい!”は敗北フラグ。みんな知ってるね?」
山田「ポケスペかよ。確かにあれに匹敵する絶望感があるが・・。」
八武「そうだ、くすぐりを忘れていた。何たるちあサンタルチア。」
山田「お前は黙ってろよ。」
佐久間「人間は弱いけど強くなれるんだ!」
山田「おいやめろ。今言うと死亡フラグだ。わざと言ってるだろ。」

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