決闘迷宮 4 アメリカ・アカデミアにて
◆ ◆ ◆
デュエル・アカデミアは、日本近海の某所に本校を構えるが、その他にも様々な分校がある。
そのうちの1つが、アメリカ分校。優秀なデュエリストを輩出している為に、数年前からは“アメリカ・アカデミア”として本校に比肩する地位に上り詰めていた。
制度は本校と似たようなものだが、高等部のクラスは現在4つに分かれている。
まずは、下位のランドクラス。社会的にも下層の出身者が7割を占める。ろくにカードも買えない人間は腕を磨く機会にも恵まれないという現実を反映した状況である。学生寮は男女混合で、あまりプライバシーが守られていない。ここから脱出したいという意欲を持つ者は多い。
中位は男女別で、サンダークラスとスノウクラスに分かれている。
デュエルの腕を寄付金で補って入った者も多く、実力に結構なバラつきがある。中流、上流階級の出身者が多く、肩書き目当てで向上心の乏しい者が過半数を占める。
学生寮は2人か3人でルームシェアすることになっており、設備もしっかりしている。
上位のカイザークラスは別格で、現在は3名しかいない。
ここに入るにはデュエルの実力しかなく、実社会での地位や財力などは大して役に立たない。カードパワー頼みでは、超えられない壁。それがカイザークラスの壁と言っていい。
学生寮は個室であり、その設備は高級ホテル並みである。
このうち、下位のランドクラスで1人の少年が、うだつの上がらない日々を送っていた。
入学して5ヶ月。彼は一度もデュエルで勝ったことがなかった。
「はぁ・・・また負けた・・・。」
ダークネスの悪夢から4年。
エドモンド・ホワイトは16歳になっていた。
相変わらずの天然パーマに、この数年で落ちた視力を補う為に分厚い眼鏡をかけていた。
(どうして負けるんだろう。)
(わかってる。)
(あのときの。)
デュエルに臨むとき、常にダークネスの悪夢が蘇る。
恐怖が思考を鈍らせ、引きを弱くする。
デッキは決して強くはない。
それで勝てるはずもない。
「エディ、あんた、また負けたのー? 情けないわね。」
廊下ですれ違った金髪の少女が絡んできた。
彼女はキャサリン・チェック。スノウクラスのトップだ。
「いっつもウジウジして、それでも男? あんたみたいなの、すっごくイライラするのよ。」
「・・・・・・。」
エドモンドは言い返せなかった。
言い返す言葉が出てこない。
強弁まくし立てられると言語中枢に障害でも出るのか、口を空気だけが出入りしていく。
「おい、キャサリン。そんな“土くれ”なんかに構ってやんなよ。カワイソーだろ?」
周囲の生徒の1人が、せせら笑いながら言う。
彼はエドモンドの心の傷を一生知らずに生きていく。
これがエドモンド・ホワイトの日常。デュエルで負け続け、貶される日々。
上のクラスからは侮蔑の言葉を吐かれることが多いが、同じクラスの人間からは暴力を振るわれることが多かった。
エドモンドは下層の出身ではなく、ありふれた中流階級の子供である。遠い大金持ちよりも身近な小金持ちという心理なのか、彼は下層の人間から暴力の捌け口にされた。
それはエスカレートし、最近は死の恐怖まで覚えたこともあった。
このままの日々が続けば、彼の一生は惨めで虚しいものになっていたに違いない。
◆ ◆ ◆
「ボクのターン、ドロー。」
エドモンドは怖気づきながらカードを引いた。
左右で、サンダークラスやスノウクラスの面々がニヤニヤ笑いながら見ている。
後ろからは、同じランドクラスの生徒たちが野次を飛ばしている。
「やれやれー、エディ!」
「スノウの女なんかブッ飛ばしちまえ!」
言う方は楽だが、当のエドモンドは汗で眼鏡が曇るほどに苦しかった。
キャサリンに特訓してやるからと無理やり連れてこられ、心の準備も整わないままデュエルを始めていた。
「だ、《ダーク・ヒーローゾンバイア》召喚。カードを、えと、1枚伏せて、ターンエンド。」
ダーク・ヒーローゾンバイア レベル4 闇属性・戦士族
攻撃力2100 守備力500
このカードが戦闘によってモンスターを破壊する度に、このカードの攻撃力は200ポイントダウンする。
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできない。
「あー、もう、そんな自信なさげにしてたら相手に失礼でしょ? わたしのターン、ドロー! 《スナイプストーカー》を召喚して、効果発動よ。」
スナイプストーカー レベル4 闇属性・悪魔族
攻撃力1500 守備力600
手札を1枚捨て、フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
サイコロを1回振り、1・6以外が出た場合、選択したカードを破壊する。
《炸裂装甲》 (破壊)
「あう・・・」
「更に効果発動。」
《ダーク・ヒーローゾンバイア》 (破壊)
「ボクのゾンバイアが!」
「たかがモンスター1体やられたくらいで情けない声出してんじゃないわよ、キモいわね。ダイレクトアタック!」
エドモンド:LP8000→6500
「カードを1枚伏せてターンエンドよ。」
エドモンド:LP6500、手札4
場:
場:
キャサリン:LP8000、手札2
場:スナイプストーカー(攻1500)
場:伏せ×1
「ぼ、ボクのターン、ドロー。」
「はい、どもらない。ちゃんとハキハキ声を出す。マナーを守れないならデュエルする資格は無いわよ。」
「・・・魔法カード《戦士の生還》でゾンバイアを手札に戻して、召喚。攻撃!」
「伏せカード、ちゃんと見なさいよ。《モンスターBOX》発動!」
モンスターBOX (永続罠)
相手モンスターの攻撃宣言時、コイントスを1回行い裏表を当てる。
当たった場合、その攻撃モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで0になる。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。
または、500ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。
《ダーク・ヒーローゾンバイア》 (攻2100→0) (破壊)
エドモンド:LP6500→5000
「うわあああ!」
「男のくせに情けないわね。さ、どうすんの。ターンエンド!?」
「あ、ええと・・・」
「はい、キョドらない。」
「カードを1枚伏せて、ターンエンド・・・。」
エドモンド:LP5000、手札3
場:
場:伏せ×1
キャサリン:LP8000、手札2
場:スナイプストーカー(攻1500)
場:モンスターBOX(永続罠)
「わたしのターン、ドロー! 《スナイプストーカー》の効果発動!」
「ああっ!」
《ガード・ブロック》 (破壊)
「もしかして《スナイプストーカー》の効果、忘れてた? だっさ!」
「・・・っ!」
エドモンドの目に涙が滲んだ。
「これで終わりよ。《きまぐれの女神》を召喚して、墓地の《スキル・サクセサー》の効果で攻撃力800アップ。」
きまぐれの女神 レベル3 光属性・天使族
攻撃力950 守備力700
投げたコインの裏表を当てる。
当たりは1ターンの間このカードの攻撃力が2倍、ハズレは1ターンの間このカードの攻撃力が半分になる。
「効果を発動して、攻撃力2ばーい。ばいばーい!」
エドモンド:LP5000、手札3
場:
場:
キャサリン:LP8000、手札1
場:スナイプストーカー(攻1500)、きまぐれの女神(攻3500)
場:モンスターBOX(永続罠)
エドモンド:LP5000→3500→0
「よっわぁ・・・。ちゃんと本気でデュエルしてる?」
「・・・・・・。」
相手のライフを1ポイントも削れなかった。
エドモンドは自分の弱さに眩暈がした。
「何かさぁ、本気でデュエルに取り組んでるって気がしないのよね。デュエルに真面目に向き合うって姿勢が見えないの。言ってることわかる? 思い当たることあるでしょ? だいたいね、あんたもっと背筋伸ばしなさいよ。そうやって猫背になってるのって、見ててイライラすんのよ。そんなんでデュエルやってて、相手に失礼だと思わないわけ? 多いのよね、カードゲームなら何とかなるって思ってる奴。どうせあんたも、そんなんでしょ? そういう腐った根性で、いつまでも呑気にデュエルしてられると思わないことね!」
「・・・・・・・・・。」
このままの日々が続けば、彼の一生は惨めで虚しいものになっていたに違いない。
◆ ◆ ◆
アメリカ・アカデミアのうち、カイザークラスは3名。
“ファイアマン”の異名を持つ熱血少年、クリス・ヘップバーン。18歳。
その親友で“アイスマン”と呼ばれるクールな少年、ディエゴ・フロスト。19歳。
明るく元気な“サンダーストーム”の少女、レミリア・キュリー。19歳。
それぞれレベル4のデュエリスト能力を持ち、デュエルの腕前も確かだ。
マッケンジー校長からの信頼が篤く、3人とも将来はプロデュエリストを目指している。
「校長っ! お呼びでっすかい!」
「失礼します。」
「ハァイ!」
3人が揃って校長室へ入ってきた。
マッケンジー校長は、笑顔で出迎えた。
「ようこそ諸君。今日は良い話だ。」
「校長から悪い話を聞いた覚えは無いですが。」
ディエゴがクールな笑みを浮かべて言った。
「ハハハ。では、とても良い話と言い換えようか。我が校で、日米プロ交流試合が開かれることになった。そこへ君たちも学校推薦枠として出てもらいたい。」
「おおっ、マジっすか! 燃える!」
「やったあ! わたしデュエル大好き!」
クリスとレミリアが飛び跳ねて喜んだ。
マッケンジー校長も、楽しそうな笑顔だ。
「こちら側からは、レジーとデイビット君も出てもらうことになっている。」
レジーというのはマッケンジー校長の愛娘で、プロになって3年目になる。
同期のデイビット・ラブとは、タッグデュエルやペアデュエルのパートナーを務めることが多い。
「先輩方に恥じないデュエルをしないといけないですね。」
「おいおい、あんまし固くなるなよディエゴ?」
「これが大会の資料だ。各自、目を通しておいてくれ。」
マッケンジー校長は3人に紙束を配り、3人はそれを持って校長室から出て行った。
「・・・・・・・・・。」
1人になると、マッケンジー校長の笑顔が途端に消えた。
彼の表情は、怯え、あるいは悲しみ。そして怒りに染められていた。
彼には、忘れられない悪夢がある。
血に塗れた運命の翼と、悲劇の闇の悪魔。
かつてプロランキング1位だった男が使っていたモンスターが、人間の魂を取り込んだのを目撃した。
自分自身も、正体不明の闇の魂とやらに体を乗っ取られた経験がある。
そして3度目。
「・・・これで、よろしいんですね?」
マッケンジー校長は、拳を震わせながら呟いた。
その背後から、優しげな笑みを浮かべた女性が出てきた。
綺麗な金髪をたなびかせて、白い布を纏う、さながら天使のような風貌だ。
「そう、それでいいのよ。」
しかしマッケンジー校長には、彼女が悪魔に見えていた。
優しげな声で囁かれようと、それは変わらない。
「約束、守ってくださいね。残りの生徒たちには、手を出さないと・・・。」
「怯えなくてもいいのよ。この“灰天使”チェルシー、これまで約束を違えたことはなく、これから違えることもない。安心して、わたしの人形になりなさい。」
いっそのこと、心まで人形にしてほしかったくらいだ。
人としての心のまま、人でなしの所業を行うのは、苦しく悲しかった。
マッケンジー校長は、チェルシーの顔を見なかった。
見てしまえば、憎悪を抑え切れそうになかった。
そのことを知ってか知らずか、チェルシーは窓の外を見ながら慈愛の笑みを浮かべていた。
つづく
デュエル・アカデミアは、日本近海の某所に本校を構えるが、その他にも様々な分校がある。
そのうちの1つが、アメリカ分校。優秀なデュエリストを輩出している為に、数年前からは“アメリカ・アカデミア”として本校に比肩する地位に上り詰めていた。
制度は本校と似たようなものだが、高等部のクラスは現在4つに分かれている。
まずは、下位のランドクラス。社会的にも下層の出身者が7割を占める。ろくにカードも買えない人間は腕を磨く機会にも恵まれないという現実を反映した状況である。学生寮は男女混合で、あまりプライバシーが守られていない。ここから脱出したいという意欲を持つ者は多い。
中位は男女別で、サンダークラスとスノウクラスに分かれている。
デュエルの腕を寄付金で補って入った者も多く、実力に結構なバラつきがある。中流、上流階級の出身者が多く、肩書き目当てで向上心の乏しい者が過半数を占める。
学生寮は2人か3人でルームシェアすることになっており、設備もしっかりしている。
上位のカイザークラスは別格で、現在は3名しかいない。
ここに入るにはデュエルの実力しかなく、実社会での地位や財力などは大して役に立たない。カードパワー頼みでは、超えられない壁。それがカイザークラスの壁と言っていい。
学生寮は個室であり、その設備は高級ホテル並みである。
このうち、下位のランドクラスで1人の少年が、うだつの上がらない日々を送っていた。
入学して5ヶ月。彼は一度もデュエルで勝ったことがなかった。
「はぁ・・・また負けた・・・。」
ダークネスの悪夢から4年。
エドモンド・ホワイトは16歳になっていた。
相変わらずの天然パーマに、この数年で落ちた視力を補う為に分厚い眼鏡をかけていた。
(どうして負けるんだろう。)
(わかってる。)
(あのときの。)
デュエルに臨むとき、常にダークネスの悪夢が蘇る。
恐怖が思考を鈍らせ、引きを弱くする。
デッキは決して強くはない。
それで勝てるはずもない。
「エディ、あんた、また負けたのー? 情けないわね。」
廊下ですれ違った金髪の少女が絡んできた。
彼女はキャサリン・チェック。スノウクラスのトップだ。
「いっつもウジウジして、それでも男? あんたみたいなの、すっごくイライラするのよ。」
「・・・・・・。」
エドモンドは言い返せなかった。
言い返す言葉が出てこない。
強弁まくし立てられると言語中枢に障害でも出るのか、口を空気だけが出入りしていく。
「おい、キャサリン。そんな“土くれ”なんかに構ってやんなよ。カワイソーだろ?」
周囲の生徒の1人が、せせら笑いながら言う。
彼はエドモンドの心の傷を一生知らずに生きていく。
これがエドモンド・ホワイトの日常。デュエルで負け続け、貶される日々。
上のクラスからは侮蔑の言葉を吐かれることが多いが、同じクラスの人間からは暴力を振るわれることが多かった。
エドモンドは下層の出身ではなく、ありふれた中流階級の子供である。遠い大金持ちよりも身近な小金持ちという心理なのか、彼は下層の人間から暴力の捌け口にされた。
それはエスカレートし、最近は死の恐怖まで覚えたこともあった。
このままの日々が続けば、彼の一生は惨めで虚しいものになっていたに違いない。
◆ ◆ ◆
「ボクのターン、ドロー。」
エドモンドは怖気づきながらカードを引いた。
左右で、サンダークラスやスノウクラスの面々がニヤニヤ笑いながら見ている。
後ろからは、同じランドクラスの生徒たちが野次を飛ばしている。
「やれやれー、エディ!」
「スノウの女なんかブッ飛ばしちまえ!」
言う方は楽だが、当のエドモンドは汗で眼鏡が曇るほどに苦しかった。
キャサリンに特訓してやるからと無理やり連れてこられ、心の準備も整わないままデュエルを始めていた。
「だ、《ダーク・ヒーローゾンバイア》召喚。カードを、えと、1枚伏せて、ターンエンド。」
ダーク・ヒーローゾンバイア レベル4 闇属性・戦士族
攻撃力2100 守備力500
このカードが戦闘によってモンスターを破壊する度に、このカードの攻撃力は200ポイントダウンする。
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事はできない。
「あー、もう、そんな自信なさげにしてたら相手に失礼でしょ? わたしのターン、ドロー! 《スナイプストーカー》を召喚して、効果発動よ。」
スナイプストーカー レベル4 闇属性・悪魔族
攻撃力1500 守備力600
手札を1枚捨て、フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。
サイコロを1回振り、1・6以外が出た場合、選択したカードを破壊する。
《炸裂装甲》 (破壊)
「あう・・・」
「更に効果発動。」
《ダーク・ヒーローゾンバイア》 (破壊)
「ボクのゾンバイアが!」
「たかがモンスター1体やられたくらいで情けない声出してんじゃないわよ、キモいわね。ダイレクトアタック!」
エドモンド:LP8000→6500
「カードを1枚伏せてターンエンドよ。」
エドモンド:LP6500、手札4
場:
場:
キャサリン:LP8000、手札2
場:スナイプストーカー(攻1500)
場:伏せ×1
「ぼ、ボクのターン、ドロー。」
「はい、どもらない。ちゃんとハキハキ声を出す。マナーを守れないならデュエルする資格は無いわよ。」
「・・・魔法カード《戦士の生還》でゾンバイアを手札に戻して、召喚。攻撃!」
「伏せカード、ちゃんと見なさいよ。《モンスターBOX》発動!」
モンスターBOX (永続罠)
相手モンスターの攻撃宣言時、コイントスを1回行い裏表を当てる。
当たった場合、その攻撃モンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで0になる。
このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。
または、500ライフポイント払わずにこのカードを破壊する。
《ダーク・ヒーローゾンバイア》 (攻2100→0) (破壊)
エドモンド:LP6500→5000
「うわあああ!」
「男のくせに情けないわね。さ、どうすんの。ターンエンド!?」
「あ、ええと・・・」
「はい、キョドらない。」
「カードを1枚伏せて、ターンエンド・・・。」
エドモンド:LP5000、手札3
場:
場:伏せ×1
キャサリン:LP8000、手札2
場:スナイプストーカー(攻1500)
場:モンスターBOX(永続罠)
「わたしのターン、ドロー! 《スナイプストーカー》の効果発動!」
「ああっ!」
《ガード・ブロック》 (破壊)
「もしかして《スナイプストーカー》の効果、忘れてた? だっさ!」
「・・・っ!」
エドモンドの目に涙が滲んだ。
「これで終わりよ。《きまぐれの女神》を召喚して、墓地の《スキル・サクセサー》の効果で攻撃力800アップ。」
きまぐれの女神 レベル3 光属性・天使族
攻撃力950 守備力700
投げたコインの裏表を当てる。
当たりは1ターンの間このカードの攻撃力が2倍、ハズレは1ターンの間このカードの攻撃力が半分になる。
「効果を発動して、攻撃力2ばーい。ばいばーい!」
エドモンド:LP5000、手札3
場:
場:
キャサリン:LP8000、手札1
場:スナイプストーカー(攻1500)、きまぐれの女神(攻3500)
場:モンスターBOX(永続罠)
エドモンド:LP5000→3500→0
「よっわぁ・・・。ちゃんと本気でデュエルしてる?」
「・・・・・・。」
相手のライフを1ポイントも削れなかった。
エドモンドは自分の弱さに眩暈がした。
「何かさぁ、本気でデュエルに取り組んでるって気がしないのよね。デュエルに真面目に向き合うって姿勢が見えないの。言ってることわかる? 思い当たることあるでしょ? だいたいね、あんたもっと背筋伸ばしなさいよ。そうやって猫背になってるのって、見ててイライラすんのよ。そんなんでデュエルやってて、相手に失礼だと思わないわけ? 多いのよね、カードゲームなら何とかなるって思ってる奴。どうせあんたも、そんなんでしょ? そういう腐った根性で、いつまでも呑気にデュエルしてられると思わないことね!」
「・・・・・・・・・。」
このままの日々が続けば、彼の一生は惨めで虚しいものになっていたに違いない。
◆ ◆ ◆
アメリカ・アカデミアのうち、カイザークラスは3名。
“ファイアマン”の異名を持つ熱血少年、クリス・ヘップバーン。18歳。
その親友で“アイスマン”と呼ばれるクールな少年、ディエゴ・フロスト。19歳。
明るく元気な“サンダーストーム”の少女、レミリア・キュリー。19歳。
それぞれレベル4のデュエリスト能力を持ち、デュエルの腕前も確かだ。
マッケンジー校長からの信頼が篤く、3人とも将来はプロデュエリストを目指している。
「校長っ! お呼びでっすかい!」
「失礼します。」
「ハァイ!」
3人が揃って校長室へ入ってきた。
マッケンジー校長は、笑顔で出迎えた。
「ようこそ諸君。今日は良い話だ。」
「校長から悪い話を聞いた覚えは無いですが。」
ディエゴがクールな笑みを浮かべて言った。
「ハハハ。では、とても良い話と言い換えようか。我が校で、日米プロ交流試合が開かれることになった。そこへ君たちも学校推薦枠として出てもらいたい。」
「おおっ、マジっすか! 燃える!」
「やったあ! わたしデュエル大好き!」
クリスとレミリアが飛び跳ねて喜んだ。
マッケンジー校長も、楽しそうな笑顔だ。
「こちら側からは、レジーとデイビット君も出てもらうことになっている。」
レジーというのはマッケンジー校長の愛娘で、プロになって3年目になる。
同期のデイビット・ラブとは、タッグデュエルやペアデュエルのパートナーを務めることが多い。
「先輩方に恥じないデュエルをしないといけないですね。」
「おいおい、あんまし固くなるなよディエゴ?」
「これが大会の資料だ。各自、目を通しておいてくれ。」
マッケンジー校長は3人に紙束を配り、3人はそれを持って校長室から出て行った。
「・・・・・・・・・。」
1人になると、マッケンジー校長の笑顔が途端に消えた。
彼の表情は、怯え、あるいは悲しみ。そして怒りに染められていた。
彼には、忘れられない悪夢がある。
血に塗れた運命の翼と、悲劇の闇の悪魔。
かつてプロランキング1位だった男が使っていたモンスターが、人間の魂を取り込んだのを目撃した。
自分自身も、正体不明の闇の魂とやらに体を乗っ取られた経験がある。
そして3度目。
「・・・これで、よろしいんですね?」
マッケンジー校長は、拳を震わせながら呟いた。
その背後から、優しげな笑みを浮かべた女性が出てきた。
綺麗な金髪をたなびかせて、白い布を纏う、さながら天使のような風貌だ。
「そう、それでいいのよ。」
しかしマッケンジー校長には、彼女が悪魔に見えていた。
優しげな声で囁かれようと、それは変わらない。
「約束、守ってくださいね。残りの生徒たちには、手を出さないと・・・。」
「怯えなくてもいいのよ。この“灰天使”チェルシー、これまで約束を違えたことはなく、これから違えることもない。安心して、わたしの人形になりなさい。」
いっそのこと、心まで人形にしてほしかったくらいだ。
人としての心のまま、人でなしの所業を行うのは、苦しく悲しかった。
マッケンジー校長は、チェルシーの顔を見なかった。
見てしまえば、憎悪を抑え切れそうになかった。
そのことを知ってか知らずか、チェルシーは窓の外を見ながら慈愛の笑みを浮かべていた。
つづく

この記事へのコメント
攻撃力2100は、下級アタッカーとしては及第点なノーネ。
種族と属性にも恵まれてる優良カードなノーネ。
心を強く持つノーネ、シニョールエドモンド・・・!
コング「入りたい」
ゴリーレッド「でも個室のようだ」
コング「男女男の組み合わせで一部屋三人にしよう。これぞ嬲り寮」
ゴリーレッド「エドモンド・ホワイト16歳か」
火剣「悪夢の恐怖が敗因か。深刻だな。恐怖の思い出は体が覚えているからな」
コング「ヒロピン候補発見。キャサリン・チェック」
ゴリーレッド「こんな学校でも暴力が存在するのか。悲しい」
コング「キャサリンは恐怖の罰ゲームだな」
火剣「何の罰だ?」
コング「キモい、キョドらない、だっさ、よっわぁと禁句連発のきまぐれ女神は、スッポンポンにして手足を縛り、暴走族の集会場所の海辺に転がす」
火剣「ヒロイン候補はまだいるぞ。レミリア・キュリー19歳。校長の愛娘、レジー」
コング「何、19歳?」
ゴリーレッド「灰天使チェルシーが出てきたか。何やら不穏だ」
ダークネスの悪夢から4年。ミスターTの誘惑にこそ乗らなかったものの、決して勝ったとは言えないエドモンド。芳しくない学生生活を送っています。
その一方で暗躍するチェルシー。果たして何を企んでいるのか。
山田「ランドクラスも流石に個室だよな?」
佐久間「個室に固執するか。」
山田「やかましい。」
佐久間「部屋は男女別だ。個室もあるが、どちらも狭い。壁も薄くて、お喋りが隣の部屋に筒抜け状態。」
八武「壁に小さな穴を開けて、隣の女子部屋を覗き見。」
山田「そんなことしか考えないのか?」
八武「覗き見はロマンだろ。同じ部屋で眺めるのとは違った趣があるんだ。」
山田「どんどん犯罪歴が公開されていく・・・。最低だ。」
佐久間「まあまあ。屋根裏部屋の散歩者みたいなものだ。」
山田「ガチで人殺しじゃねえか!」
八武「それはさておき、エドモンドの代わりは私が務めようではないか。さあ、おぢさんとデュエルしよう。」
山田「うん、いいんじゃないか。」
佐久間「どうした山田。フェミニスト撤回か?」
山田「最初からフェミニストになった覚えは無い。」
八武「私の好みはレミリアだが。」
山田「そっちは駄目。」
八武「何故だ!」
ツヲ「レジーちゃんのピンチ!」
白龍「デイビットさんはもうサターン持ってないのかな…。」
ツヲ「デュエルが全て、という世界はこの世界と比べて楽なのだろうか、苦なのだろうか。残酷なのだろうか、慈愛に満ちているのだろうか。単純なのだろうか、複雑なのだろうか。強さこそ全てなのだろうか、それ以外にも大切なものはあるのだろうか。」
白龍「そこに人がいる、だったら単純なはずはない。悩み、苦しみ、そして生きること。どの世界でも共通するものはある。」
マンガGXから(勝手に)出張! デイビットが所持していたサターンは、例の事件で行方不明になり、紆余曲折を経て、ある人の手に渡りました。これも世界の運命、カードはデュエリストの手に。
その一方で、デュエルが全ての世界といえど、共通するものの方が多いであろうことは想像に難くないですね。それが良いかどうかは別ですが・・・。
八武「そうだ、レジーを忘れてはいけない。」
佐久間「諦めろ。レジーはデイビットの嫁だ。」
山田「それは不確かだが。」
佐久間「そして山田は私の婿だ。」
山田「寝言は寝て言え。」