本のページ、ページの本 (中編)

果てしなく砂漠が広がっている。
照りつける黒い太陽の下で、白いテーブルに男と女が差し向かいで座っている。
「その本、面白い?」
透明な声で、女が尋ねる。
男は答えない。
「面白いから読んでるの?」
腹を立てる様子も無く、女は訊き方を変える。
彼女の背中で、無惨に毟られた羽が、ひくひくと動いている。
「読んでいるから面白いんだ。」
男は本を閉じて、机に置いた。
「こうして読むのを止めると、つまらなくなってしまう。」
「砂だから。」
「そうだ。」
女は本を手に取って、ページを捲った。

放課後の教室で、少女と少年が話をしている。
『大丈夫って、何が大丈夫なの?』
『俺が側にいるから大丈夫だってことだ。』
『世界は大丈夫ね。』
『それなら概ね大丈夫だろ。お前がどれだけ狂っても、お前はお前でしかないんだから。』
『私としたことが弱気になっていたわね。』
『誰でも弱気になるときはあるさ。』
『お前でもか?』
『しょっちゅうだ。』
『私に寄りかかってくれていいんだよ。』

女は、片羽の天使はページを閉じた。
「面白いね。」
「砂だからな。」
男が答える。
「この少女が読んでいた本に、何が書かれているか気にならない?」
「僕たちの世界が書かれているとでも。」
「そうさ、ディベスタル。お前の名前は出てこなかったが、他の名前は出てきただろう。」
「そういう意味なのか。あるいは、この世界こそ本の中なのか。」
「中と外に大した違いなど無い。こちらにとっては向こうが本の中で、向こうにとっては我々が本の中だ。」
「それで矛盾ないわけだ。」

「「砂だからな。」」

2人は声を揃えて言った。
しかし面白くもない顔のまま、笑う気配も見せなかった。




つづく

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この記事へのコメント

2014年07月19日 14:39
火剣「砂だからな? ミステリーだ。わからん。砂だから。どういう意味だ。賢者コングー、答えよ」
コング「砂に水を足せばどろんこになる。どろんこと言えばどろんこマッサージだ」
ゴリーレッド「荒らしか?」
コング「女子アナが水着姿でどろんこマッサージを受ける体当たり取材。二人の屈強な裸の外国人にどろんこマッサージで転がされ、ちょっと待って、ちょっと待ってと笑いながらも本気で焦る。マジ興奮もん」
ゴリーレッド「無関係な話はよそう」
火剣「今こうして現実と思って会話しているシーンが、実は本の中? ロマンがあるな」
コング「タイトルに謎解きのヒントが。本のページ。ページの本」
ゴリーレッド「人生も一冊の本だったりするかも」
火剣「ならば自分だけの物語を思う存分演じきるしかねえ」
コング「好感度アップを狙うエネゴリ火剣。ワウワウ!」
火剣「うるせえ」
コング「弱気か。僕の辞書に弱気という文字はない」
火剣「人生は強気で行くしかない」
ゴリーレッド「でも人間の弱さをくんであげる優しさも必要」
コング「よくわかる。罵倒していた強気のヒロインが弱気な泣き顔に変わるハーモニーが好き。哀願は女の子の特権だ。許してあげるん」
ゴリーレッド「・・・ダメだ、終了」
2014年07月19日 20:52
ふむ…。そうだな…。この世界、我々はこの世界を世界と認識しているがそれは別の視点から見ればただの一冊の本の中に過ぎないのかも知れん。ただ、そうであっても我々がやることは変わらない。考え、行動し、争い、時に感情を剥き出し、殺し合う。私がいる世界、バイカがいた世界、全て世界だ。それらの世界が交わるか交わらないかに関わらず、必死に生きて、最後に死ぬ。…人生なんて、そんなものでいいのかもしれないな。その程度で。
2014年07月19日 21:40
>火剣さん
もしも自分たちが1冊の本だとしたら、読者に恥じないように生きねばと思うと、身が引き締まります。いつも誰かに見られているという感覚は、自分を客観視する面白さと繋がっていて、道徳も本来はそうした娯楽から派生したものだったのではと思います。

佐久間「砂に水を足せば泥になる。では水莫き砂は?」
山田「砂漠か。心象風景が砂漠というのは、潤いは無いかもしれないが、湿っぽくもない。」
八武「捌くか。俎板に全裸の美女を乗せて、料理人が笑みを浮かべる。手には大きな包丁。殺さないでと必死に懇願する様子に私もう大興奮。」
山田「コングと共に月へ飛べ。」
八武「待ちたまえ。我々が本の中の住人だとしたら、読者サービスというものを考えようと思うんだ。」
山田「お前の趣味以外の何物でもない。」
佐久間「真の読者サービスは、作者が楽しむところから始まるんだ。」
山田「それで、砂だからというのはどういう意味だ?」
佐久間「今は謎のままでいい。謎めいた雰囲気を楽しんで。」
2014年07月19日 21:51
>チュルーリさん
本に描かれた物語も、どこかの世界の現実だとしたら?
そして我々の世界であっても、過去を生きた人々とは本の中でしか会えないわけで、現実と物語の境界線なんて本当は誰にも引けないものなのかもしれません。
やることの中で、考えることが私にとっては最も必死になれることです。考えることは最大の娯楽だという言葉もありますが、ようやくそれを実感しつつある今日この頃です。

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