佐久間と山田のけだるい日常 第七十話 ~喪失~(その3)

「これからどうするか・・・。そうだな。」
佐久間は殺気立った。
「人類を皆殺しにするとか?」
「おい・・・。」
八武は顔を青くした。
「・・・一応、訊いておくが、母親まで殺すのかね?」
「母親? 馬鹿め、私の母親は人間ではない。」
その言葉を聞いて、八武の顔は遠目にわかるほど驚愕で彩られた。
しかし冷静に、次の質問を吹っかけた。
「今の君の肉体が人間だというのは理解しているか?」
「そんなことは百も承知だ。パワーダウンも甚だしい。」
「人間である以上、人間の母親がいると思わないか?」
「それがどうした。」
「・・・・・・。」
八武は、いよいよ険しい顔をした。
「単純に10歳以降の記憶が抜けているわけでもないのか・・・。」
「何をブツクサ言ってる?」
「いや、原因はわからんが、わかったことがある。君を放置しておくわけにはいかない。」
「ほう?」
佐久間は不敵に笑って右手を変形させた。
「私を、どうするってぇ?」
「普段の君でも人殺しはするが、人類皆殺しとか、世界そのものを破壊しようとはしない。それが闇の支配者としてのルールであり、プライドだった。」
「ルール? プライド? それらは殺戮の悦びに勝るものなのか?」
「ふん、いかにも佐久間が言いそうなセリフだが、決して言わないセリフでもある。揺れているな?」
「何が揺れてるって? お前の頭を揺らしてやろうかァ!?」
佐久間が八武に襲いかかった。
八武は跳躍して病院の壁を蹴りながら屋上へ向かう。その後を佐久間が追いかける。
「食らえ、スライム粘着弾!」
「効くかボケぇ!」
佐久間は薙ぎ払った。
しかしスライムは囮だった。病院の壁から何十本もの鎖が飛び出し、同時に手錠が飛び交った。
その殆どを佐久間は右手で薙ぎ払ったが、少しだけ肌に触れたところから高圧電流が流れた。
「かはっ!」
しかし電流が流れながらも佐久間の意識は消えない。屋上へ八武を追い詰める。
「女スパイ用トラップが足止めにしかならないとは・・・!」
八武は悔しくて仕方なかった。
「だが、この屋上に来たが最後!」
途端に白い煙があちこちから噴き出した。更にネバネバした液体や、鉤爪、縄、手錠、鎖、更には磔の十字架までもが佐久間を襲った。
「馬鹿にしてんのかァ!?」
佐久間は薙ぎ払う。薙ぎ払い続ける。
しかしそこへ八武の蹴りが入る。
「ぐっ!?」
「落ちろ。」
八武は佐久間の体を抱えて、地面へ落下。
ずどんと鈍い音がして、佐久間の体は大の字で地面にめり込んだ。
「ふっ・・・!」
べりっと体を剥がして、佐久間は起き上がった。
「その程度かよ、人間?」
「く・・・。」
八武も落下の衝撃でダメージを受けていた。
しかし、笑っていた。
「ククク、急降下ジャーマンは囮に過ぎない! 貴様の体の隅々まで剄を打ち込んだ!」
「なに・・・?」
佐久間は急に体がむず痒くなるのを感じた。
いや、むず痒いどころではない。
「あ・・・・・あっ・・・・・・くぅ・・・・・・・・」
「ハハハハハ! 快楽の海に沈め!」
しかし佐久間は数秒でカッと目を見開いた。
「そんなものが効くとでも思っているのかよ! この佐久間闇子様によォ!?」
佐久間の右腕が、八武にクリーンヒットした。
「ぐぶっ!」
八武は吐血しながら吹っ飛び、病院の玄関を突き破って中まで飛んでいった。
べきっ、ばきっ、ぐしゃっと、嫌な音がコーラスで聞こえる。
「ハァ、ハァ、人間にしては手こずらせやがる・・・!」
効くと思っていたのかと言いつつ、本当は効いている。体中が火照って、敏感になっている。精神を張り詰めていなければ、下着の感触だけで失神しそうだった。
そこへ病院の中から、山田と、更に2人の人物が出てきた。1人は細身の女性、もう1人は中肉中背の青年。
「1人で勝てなきゃ3人がかりでも無駄、無駄、無駄・・・。」
佐久間は乾いた唇を舐めながら、高慢な笑顔を作ってみせた。



つづく

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この記事へのコメント

2014年07月24日 14:27
火剣「強いヒロイン。強気のヒロインは好きだが、強過ぎるヒロインもスリルに欠ける」
コング「ヤンクミのような」
ゴリーレッド「ヤンクミ?」
火剣「女スパイ用トラップがなぜ病院に設置してあるんだ?」
ゴリーレッド「やはり警察がスパイを使って調べているんだ」
コング「女スパイ用トラップか。四方八方から両手両足を拘束されたら、強気の女スパイも弱気になる」
火剣「心配するな。命までは取らねえよ」
コング「あたしをどうする気?」
火剣「正直に答えれば許してあげるが、とぼけるなら拷問だ」
ゴリーレッド「ストップ! 佐久間んの話に戻ろう」
コング「そもそも八武院長は何をした? 徑を打ち込むとは」
火剣「怪しい技だな。下着の感触だけで失神しそうって。ミクモウの精神力がなければ、普通の女なら?」
コング「たぶん感度のいい麻衣なら、とっくに寝転がってアンアン乱れている」
火剣「麻衣は結構、雑魚妖怪の攻撃にもアンアン乱れちゃうからな。亜衣を見習え」
ゴリーレッド「何の話をしているのかな?」
コング「そうだ、徑だ。僕もこの技を覚えて進化しよう」
火剣「向上心は大事だ」
ゴリーレッド「コングに向上心はいらない。悪用するだけだ」
コング「平和利用しかしない」
ゴリーレッド「細身の女性と中肉中背の青年?」
2014年07月24日 20:22
佐久間さんと八武さんの本気バトル。理論もルールも罠も暴力も通用しないんだから、厄介過ぎる。この佐久間さんは人間を下に見ているのでその辺りが付け入る隙になりそうです。
八武さんは敗れはしたけれども、バトンを繋いだ。そして山田さんが助っ人を連れて戻ってきた!で、私は山田さんと八武さん以外に佐久間さんに立ち向かえる人材を知らないような…。そうか、八武さんの奥さんとお弟子さんが残ってた!でも、佐久間さんのゲロキャノン(←そんな技あるはずない…?)とかに耐えられるのか?よくよく考えたら、このシリアスモードの佐久間さんがそんな汚らしい下品な技を使うはずがなかったですね、失敬。
2014年07月24日 22:26
>火剣さん
どうして病院に女スパイ用トラップが設置されているのか。ドクターだからとしか言いようがありません。
怪しい技をヒットさせ、そして応援が駆けつけました。戦いの行方は、まだわからない。

八武「ふふふ、相手が強ければ強いほど燃えるのが私。強すぎる美女を、策を弄して捕らえるのが興奮するんじゃないか! 火剣も文句ばっか言ってないで、捕らえる作戦を考えるんだ!」
神邪「ということは、実際には捕らえられなかったんですか?」
八武「どうだったかな・・・。何しろ12年も前のことだから。」
維澄「このときの後遺症で記憶が飛んでいるとか?」
八武「いや待て、また少し思い出してきた。剄を撃ち込まれた佐久間は戦いの中で絶頂して失神。つうっと滴る液体が股から脚にかけて流れる。」
維澄「それは見たい。」
神邪「でも昨日の予想は外れましたよね。電流しか合ってないじゃないですか。」
八武「液体も掠ってたよ。総じて正しい予想だったと言えるだろう。」
維澄「どこが・・・。ネコミミを期待した私の立場は。」
八武「しおりんがいてくれたら、それも可能姉妹。もとい、可能だったんだがなぁ。」
維澄「私が佐久間と会うのは、この5年後だからね。」
八武「ところで、しおりんは私の剄を受けてみる気はないかね? 豊胸効果もバツグンなんだけど。」
維澄「騙されない。もう騙されない。」
八武「ホントなんだけどねぃ。」
2014年07月24日 22:47
>千花白龍さん
またしても正解、ミガロスと竜太郎です。山田さんも合わせて、3対1なら立ち向かえるか・・・?
ゲロキャノンどころか、嗽済み下水砲とか平気で使ってくるのが佐久間闇子という生物ですが、今の彼女は確かに使わないですね。しかし、それは使う必要が無いということでもあります。

八武「ふふふ、人間を舐めている高貴な存在を、人海戦術で捕獲して舌で舐める。これこそエンターテイメントだ! ルビデ、プリスターと協力して、チュルーリを捕まえたいものだなぁ。」
神邪「チュルーリさんは、ずっと梅花さんに捕まっているようなものですけどね。」
八武「ふむ、それもそうか。やっぱりヨーコの方がいいかも。好みだし。」
維澄「私はチュルーリの方が好みかな。」
八武「ちなみに佐久間の戦闘力は53000、私は48000だ。」
維澄「その割には圧倒的。」
八武「悲しいかな、戦闘センスの差なんだよね。山田は31000、ミガロスは29900、竜太郎は16000だけど、まず勝てないなぁ。」

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