佐久間と山田のけだるい日常 第七十話 ~喪失~(その4)

「名乗ってみろ。ただ死ぬより、私に名を知られて死ぬ方が名誉なことだぞ?」
その佐久間のセリフは半ば挑発だったが、細身の女と中肉中背の青年は、佐久間を睨みながら答えた。
「ミガロス99号。八武死根也の妻よ。」
「闇鮫竜太郎。八武先生の一番弟子だ。」
「そしてご存知、山田太郎。」
3人は構えて佐久間を注視した。
しかし次の瞬間、佐久間の姿が消えた。
痛みを感じたときには薙ぎ払われた後だった。
「名前は聞いたぞ! もう死んでもいいぞ!」
かろうじて受身を取れたのは、山田だけだった。
ミガロスと竜太郎は病院の壁に背中を強打し、更に壁から出てきた鎖と電流の餌食になった。
「きゃああああっ!?」
「ぐわああああ!?」
「馬鹿め。仲間の仕掛けたトラップに嵌まるとは、連携のレの字も知らないのか?」
ミガロスと竜太郎は、返す言葉も無く黒焦げで落下した。
意識はあるが、竜太郎は立てない。ミガロスも立つには立ったが、ふらついている。
「速い・・・!」
山田も顔色を悪くして呟いている。
「速いのは知ってたが、これほどとはな。」
「これほど?」
佐久間が嘲るように言う。
「たかが今の攻防で、私の速さを知った口を叩くんじゃねえ!」
その言葉が終わる前に、佐久間の蹴りが山田の肩の骨を砕いていた。
「ぐあっ!」
痛みに悲鳴をあげながらも、山田は佐久間の足を掴もうとしたが、そのときには既に射程圏外。しかも頭に一発入れられている。
立ち上がったときに山田の目に映っていた光景は、佐久間に殴り飛ばされたミガロスが再び鎖と電流をお見舞いされているところだった。
「だから言っただろうが。1人で勝てなければ3人でも勝てないと。この私に数の有利だとか手数の有利だとか、そんな常識は通用しねえんだよ。」
「・・・・・・。」
通用しないわけではない。
だが、想定したほどには通用しない。想定を遥かに下回る程度にしか通用しない。それが佐久間闇子だ。
集団の乱戦でこそ実力を発揮する、そんな女だ。
「だが、お前を止めねえと・・・」
「人類が皆殺しってか?」
目を剥いて佐久間がせせら笑う。
「ククク、アハハハハ、人類を守るつもりなのか知らんが、お前も人類の1人ということを忘れてないか? ここでお前が死んだら、お前は守られなかったことになるわけだが?」
「・・・!」
山田の目に光が戻る。
「あん?」
佐久間は、それが気に入らないように不機嫌な表情になる。
「安心したぜ。どうやら佐久間は佐久間らしい。」
「何だそれ・・・。まあいい、とりあえず死んどけ。」
佐久間は山田を薙ぎ払った。
山田の体は壊れた玄関を通過して病院の中まで吹っ飛び、ぐしゃぐしゃっと音がした。
「さぁて、ここの患者でも殺しとくか。」
すると立ち上がってきた竜太郎が、佐久間の前に立ちはだかる。
「患者は死なせない!」
「ならばお前が死ね。」
巨大な拳骨が竜太郎を殴り飛ばした。骨が砕けながら、彼は病院の中まで吹っ飛んだ。
「で、お前も立ち上がってくるのか?」
黒焦げになりながら歩いてくるミガロスを見て、佐久間は肩を竦めた。
「あの人が守っているものを、お前なんかに壊させるものか!」
「よく吼えた。夫婦仲良く、あの世へ逝け。」
佐久間の巨大な右手が横殴りにミガロスを吹っ飛ばした。



つづく

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この記事へのコメント

2014年07月25日 20:05
一方的!不利なのは雰囲気的に分かっていましたが、ここまで一方的とは…!圧倒的な暴力の前でもそれぞれに持つ信念のために絶対に譲らない。しかし、このままでは…。

チュルーリ「自分の命一つ守れないのなら人類を守るなんて夢のまた夢。もしくは、人類を守ると豪語するなら、自分の命も守って見せろと言いたいところだ。」
ルビデ「使いどころや若干のニュアンスは違うが、大筋では俺様も同感だ。」
白龍「ルビデが言うと本当にロクでもない使い方しかしそうにないな…。」
チュルーリ「死んだら誰か悲しむ人がいるから人類を守る、と理由を掲げるのなら自分自身も生き残るべきだ。まあ、そんなことも忘れて皆が殺し合う狂った世界だから、バイカが目指した平和などは遠いな。」
白龍「しかし、佐久間さん無双。そうだ、Q介さん達が応援に駆けつけるというのはどうだろう。」
2014年07月25日 21:56
火剣「ほとんどターミネーターだ」
コング「美少女ターミネーターか?」
火剣「違う、シュワターミネーターだ。警察署にいるサラ。刑事は無責任に『ここには30人の警察官がいるからね。絶対に安心だよ』と」
コング「たった30人の人間で止められると思う認識の甘さ」
火剣「まさにミクモウだ」
コング「警察官30人は難なくターミネーターに全滅させられた。果たして病院も全滅させられてしまうのか?」
火剣「人間は弱い。生身の肉体だからな」
コング「よし、生贄を差し出すんだ」
ゴリーレッド「生贄は卑劣な逃げの一手だ」
火剣「八武医者ならともかく、佐久間んに生贄が通用するか?」
コング「やってみなければわからん。生贄の条件は清らかな生娘で当然美少女でなければならん」
火剣「美少年じゃねえのか?」
コング「そうか、その手があったか。美少女じゃ殺されるだけでかわいそうだが、美少年なら生贄になるかもしれない」
ゴリーレッド「却下。戦いあるのみ」
火剣「山田太郎と八武医者はかなり強い。それが鎧袖一触なんだ」
コング「とりあえずミガロスの意地と誇りと愛を見よう」
ゴリーレッド「人妻だと思って他人事だな」
コング「人妻は好きだがさすがに八武院長の妻に手を出すことはない」
火剣「だったらやられてもいいのか?」
2014年07月25日 22:54
>千花白龍さん
この速さと攻撃力が佐久間の強みです。それに加えて話術も厄介。威圧するよりも、間合いをコントロールしたり、気合を高めて調子よく戦うという効果があります。
このままでは勝てないのは明白。果たしてQ介は応援に駆けつけてくれるでしょうか。

維澄「私も応援に駆けつけたかったなぁ。」
八武「そのときは私は味方に襲いかかる自信が。」
神邪「実際そうはならないでしょう・・。」
維澄「それはさておき、大事なテーマだね。自分も世界の一部であることを忘れてはならない。」
神邪「自己犠牲が尊いかどうかは、具体的な中身次第なんですね。美しいと感じる自己犠牲もありますし、狭量な思考停止もあります。後者は他者に犠牲を強いてくるタイプですね。弱い者いじめをしながら、世界を守る側だとか称しているゴミが、のさばっている世の中。」
八武「まあ、山田は実は前者ですらないけどねぃ。山田の自己犠牲は、世界を守る為でなく、佐久間を止めることに集約されている。この意味がわかるね?」
神邪「はい。ドッキドキのラブロマンスを感じます!」
維澄「傍から見てると、佐久間と山田はガチ夫婦。」
八武「いつになったら山田くんは素直になるんだろう。なったらなったで、今度は佐久間が天邪鬼を発揮するんだろうけど。」
維澄「ああ、見たいなあ。本当に見たい。そんな佐久間を見たいものだ。」
2014年07月25日 23:17
>火剣さん
半端に数を揃えようとも、圧倒的な力の前では殆ど意味を成さない。どこでも同じことですね。
一般の患者も入院している八武病院。守る為に美少年を生贄に差し出す方法は・・・やっぱり通用しないでしょうか?

八武「いつもの佐久間なら通用しそうなんだが。」
維澄「そもそも病院を襲わないからね。」
八武「おや、ここに美少年が。」
神邪「待ってください。僕は美少年というカテゴリではありません。ただの虚無です。」
維澄「そうか、私が男装すれば・・・!」
八武「見破られる気がするけど、男装しおりんは見てみたい。」
神邪「佐久間さんに性的な意味で餌食になるのは本望ですが、どう考えても殺されそうな気がするんですよ。」
維澄「でも、そんな危険もワクワクするね。」
神邪「ところで死根也さん、ミガロスさんが殴られてますが、怒らないんですか?」
八武「怒ってるけど?」
神邪「おおう・・。」(ガクブル
維澄「恐妻家に見えて愛妻家。」
八武「妻を愛するのは夫として当然のことじゃないか。妻以外も愛しちゃうけど。」
神邪「余計なことを言わなければ名言でしたのに。」

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