佐久間と山田のけだるい日常 第七十話 ~喪失~(その5)

病院の中では、3人とも生きていた。
ミガロスが飛んできたので、八武がキャッチする。衝撃でまた骨が折れる。
「ミガロス!」
「うう・・・」
生きてるのを確認して、八武は安堵の表情を浮かべた。
「しかし、デタラメに強すぎるねぃ。私の打ち込んだ剄も、いつまで効くか・・・。」
「あれが本来の佐久間だ。俺が好きでもないのに佐久間と同居している理由は、あれを抑える為なんだよ。」
「いつも聞いてる話だが、今は真面目に聞くしかないねぃ。ここまでのバケモノとは。」
そう言って八武は、得心いった顔で溜息をついた。息には血が混じっていた。
「単純な記憶喪失ではない。何かの記憶が抜け落ちてるわけでもない。あれが“山田のいない佐久間”か。」
「逆に言えば、俺が近くにいる間は、ああなることはない。2、3日離れたくらいでも大丈夫なはずだ。」
「山田が愛情を注がないからじゃないのかね?」
「おい死根也、こんなときに冗談はよせ。」
「冗談ではない。こんなときだからこそ、よく聞け。」
八武は、口から血を流しながら言った。
「もう、それ以外に考えられないんだ。私の英知をもってしても、それしか考えつかないんだ。笑ってくれ。」
「死根也・・・。」
「レイプしろ。」
いつもなら跳び膝蹴りでも食らわせたくなるセリフだが、このときばかりは違っていた。たとえ改造人間の八武であっても、だからこそ死なないでいられる深手だ。瀕死の人間が言う言葉は、違う意味を持つ。
「レイプはしないが、何とかやってみる。」
「よーし、男だ。5秒で治療してやる。」
八武は両手を高速で動かして山田の傷を修復していった。
そして倒れた。
「チッ・・・歳は取りたくないな。若い頃なら2秒で全快に出来たが。」
彼の両手はボロボロになっていた。
「十分だ。ゆっくり休んでろ。」
山田は立ち上がって歩き出した。

佐久間が病院内へ入ってきたのは、山田が立ち上がったのと殆ど同時だった。
「ほーう、傷が塞がってやがる。」
「友情と頑丈さが取り得なんでね。」
「ふん、その程度の人間なら組織で何人も見てきた。もう一度、死ね。」
「好きだ。」
「はぁ?」
佐久間は怪訝な顔をした。
「何だろうね、さっきから記憶喪失だの何だのと、人を呪いでもかけられた王女みたいな目で見やがって。愛情を込めたキスでもすれば呪いが解けるとか記憶が戻るとか、そういう話が私はヘドが出るほど嫌いなんだよ!」
佐久間の右手に闇のエネルギーが集約される。
「私のことを知らないなら、少しでも知っておくがいい。私は王女ではない、女王様だ!」
「まんまだな・・。」
山田は乾いた笑いを浮かべた。
「この病院ごと消し飛べっ!!」
闇のエネルギーが爆発を起こし、病院が粉々に吹き飛ぶ。・・・寸前で、背後から閃光と重力波が襲ってきた。
光のエネルギーは闇のエネルギーと相殺し、衝撃も重力波が消し飛ばした。
更に佐久間を怪しい霧が包み込み、それを薙ぎ払ったときには4人が佐久間を囲んでいた。
「地獄から蘇った魔法少女、ホーリーシャイニングライトスパークワンダフル!」
「巨乳から貧乳までこよなく愛するおっぱいマスター、佐久間Q介!」
「その父親であり乳親でもある、おっぱい戦士、佐久間K介!」
「どこでも何でも何度でも、冥府から出でし魔術師、ロバート・スミス!」
「「「「ただいま参上!!」」」」
佐久間は左手で目をこすりながら、唇を歪めた。
「今度は珍問屋か大道芸人か? 何が魔法少女だ、やたらと肌を晒して、みっともない。」
「お前に言われたかないわぁ!」
「おっぱいマスターとか、おっぱい戦士とか、巨乳とか貧乳とか、言ってて恥ずかしくないか?」
「普段の闇子ちゃんだったら、こんなの平気だもん! へっちゃらだもん!」
「乳親って何だよ、意味わかんねえよ。」
「スライム!」
「そしてロバート・スミス・・・お前の名前、どっかで聞いたな。しかし忘れた。」
「貴様の永遠のライバルを忘れるとは!?」
「やかましい。私に覚えられてない奴が、偉そうに語るな。そもそも私以外の生物に生まれて悲しくないのか?」

やおら低次元な罵り合いが始まったのを見て、山田は溜息をついた。
八武が佐久間と戦っている間に手分けして呼んでおいたのだが、呼んだら呼んだで頭痛の種だった。



つづく

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この記事へのコメント

2014年07月26日 08:36
で、出たー!!!Q介、K介コンビ以外にホーリー…(え~っと)ワンダフルさんとロバート・スミスさんが駆け付けてくれたよ!まさかの超展開に目頭が若干熱くなるのを覚えます。かつては地獄に落としたり落とされたりした仲(?)ですが、それが友情(?)を育む時間となっていたのだ!
多分、人類を守るとか地球を守るとか、そんな大層なことではなくて、佐久間闇子が関わっているという唯一点で集まってくれたメンバー。これが総力戦の醍醐味。
瀕死の八武さんの台詞とか山田さんの告白とか、それらのインパクトをかっさらう四人。ただし、大道芸人の集団と言われて返す言葉もない…。非常事態だからこそ輝く人材達ですね。
2014年07月26日 11:32
火剣「名言が飛び出した。友情と頑丈さが取り得なんでね」
コング「確かに頑丈だが、友情は八武院長との友情か?」
ゴリーレッド「佐久間んとの友情もあるかも」
火剣「愛情ではなくて?」
コング「生贄作戦よりもレイプ作戦のほうが通じるかもしれない」
火剣「キスとか中途半端なことはダメだ」
コング「やはりいきなりボディーブローから押し倒して」
ゴリーレッド「ボディーブローの時点でバトルだと思って即反撃を食らう」
火剣「じゃあ八武医者と協力して強烈な媚薬か、必殺ヘッドホン。そこへ山田太郎がうつ伏せに組み伏す」
コング「後ろ手に手錠で拘束」
火剣「夜月実愛用の手錠の内側にクッション付きのSMグッズで優しさをアピール」
コング「そして一枚一枚剥がし、スッポンポンにして全身愛撫」
火剣「山田太郎にかかっている」
コング「間違っても愛撫中に嫌な顔は禁物だ」
ゴリーレッド「抹殺必至」
火剣「魔法少女、Q介、K介、スミスは期待薄。この4人が薙ぎ払われた時、山田太郎と八武医者の最強コンビで官能作戦だ」
ゴリーレッド「成功確率2%」
コング「何てことを」
2014年07月26日 23:01
>千花白龍さん
KQ親子だけでなく、まさかのライバル登場です。魔法少女と魔術師、何度でも蘇る。かつての敵が駆けつける熱血展開!
懐かしのロバート・スミスは、奇妙な友情? ホーリーなんとかさんは、むしろ山田さんに惚れていたので愛情ですかね。
もはや人類を守るとかどうでもよくなってきてますが、その方が“らしい”なぁと私も思います。

八武「山田の知り合いは奇妙な人々が多いんだ。」
維澄「佐久間の知り合いと言った方がいいのでは。」
神邪「いずれにしても、お二人ともその中に含まれてますが。」
2014年07月26日 23:21
>火剣さん
頑丈さにかけては定評のある山田太郎、ドクターには友情ですが、果たして佐久間には・・・?
相手が相手だけに、生半可なことでは通用しそうにないですが、官能作戦も通用するかどうか。

八武「だからあれほどレイプしろと言ったのに・・・!」
神邪「物理的に無理じゃないですか?」
維澄「意外とキスしたら真っ赤になるかも。」
八武「しかし山田には無理だろう。まして愛撫など耐えられん。」
神邪「そこまでわかっていて、どうしてレイプしろだなんて指示を出したんですか・・・?」
八武「笑ってくれ。極限状態というのは、ろくな作戦が思いつかないものなのだよ。」
神邪「ヘッドホンも持ってないみたいですね。」
維澄「でもまあ、剄が効かない相手にヘッドホンも効くかどうか。」
八武「効いてないはずはないんだが、もう耐性が出来たのかねぃ?」
神邪「撃ち込んだ剄が弱まっているのでは。」
八武「それはある。誰か・・・ヘッドホンを・・・恍惚ヘッドホンを・・・!」
維澄「私がこの場にいたら・・・いや、やっぱりそんな怪しいものに触りたくない。」
八武「そんなこと言って、しおりんも興味あるんだろう?」
神邪「セクハラですよ。」
八武「おやおや厳しいね。」

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